平成21年3月30日

中央労働委員会事務局第一部会担当

審査総括室 審査官 辰野  伸之

Tel03-5403-2169

Fax03-5403-2250

ブックローン(継続雇用)不当労働行為再審査事件
(平成20年(不再)第16号・17号)命令書交付について

中央労働委員会第一部会(部会長 諏訪康雄)は、平成21年3月30日、標記事件に係る命令書を関係当事者に交付したので、お知らせします。命令の概要等は、次のとおりです。

− 命令のポイント −

1 改正高齢法に規定する継続雇用制度の導入措置にかかる協定締結資格を有しない組合からであっても、組合員の継続雇用を交渉事項とする団体交渉申入れがあったときは、その拒否は労働組合法第7条第2号の不当労働行為に当たる。

2 就業規則に明確に規定された継続雇用の申込手続を所定の期限までに行わなかった組合員Aを会社が継続雇用しなかったのは、Aが申込手続を熟知し、申込みが可能であるにもかかわらず、手続に従わなかったためであるから、継続雇用しなかったことは組合員であるがゆえであると認められず、不当労働行為には当たらない。

I 当事者

会社
ブックローン株式会社(「会社」):従業員27名

労働組合
全日本建設運輸連帯労働組合関西地区生コン支部(「組合」):組合員約1800名

II 事案の概要

本件は、会社が、[1]組合員Aの継続雇用問題について、平成19年1月18日付けの団交申入れ(以下「本件団交申入れ」)に対して、改正高齢法(※)にかかる継続雇用制度に関する労使協定の締結資格がないなどとして応じなかったこと、[2]組合員Aに対し、定年後の継続雇用の措置をとらなかったことが、不当労働行為であるとして、救済申立てがなされた事件である。

初審大阪府労働委員会は、上記[1]については不当労働行為に該当するとして、会社に対し文書手交を命じ、[2]については不当労働行為に当たらないとして組合の申立てを棄却したところ、会社は平成20年4月14日、団体交渉拒否による文書手交の取消を求めて、組合は同月15日、団体交渉の応諾及び組合員Aの継続雇用を求めて、それぞれ再審査を申し立てた。

III 命令の概要

1 主文

本件各再審査申立てを棄却する。

2 判断の要旨

(1) 本件団交申入れにかかる拒否について

ア 改正高齢法に規定する継続雇用制度の導入措置にかかる協定締結資格の有無と、会社が組合と組合員の定年到達以降の継続雇用について団体交渉義務を負うか否かとは別個の問題であるから、当該協定締結資格を有しない組合からであっても、その組合員の60歳以降の継続雇用を交渉事項とする団体交渉の申入れがあったときは、会社は誠実に団交に応じなければならない。

イ 本件団体交渉申入れにおいては、従前の交渉議題とは異なり、組合員Aの継続雇用問題という個別の労働条件について交渉を要求したものであって、義務的団体交渉事項に該当するが、仮に本件団体交渉申入れの交渉議題を高年齢者雇用確保措置全般であると解したとしても、会社の継続雇用制度とは異なる形態での雇用確保を求める団体交渉を組合が申し入れることを何ら妨げるものではなく、本件団交申入れに対する会社の対応は、労働組合法第7条第2号の団交拒否の不当労働行為に当たる。

(2)  組合員Aの継続雇用問題について

会社は、継続雇用の申込手続を会社就業規則において、継続雇用の対象者が所定の期限までに所定の方法による申込みをすべきことを明確に定めているのであるから、同手続の規定が単なる訓示規定と解することはできず、また、組合員Aは、従前から継続雇用希望の申込みの手続を熟知し、所定の期限までに継続雇用希望の申込みを行うことが可能であったにもかかわらず、その手続に従わなかったのであるから、会社がAを継続雇用しなかったことは、労働組合の組合員であるがゆえであると認めることはできず、不当労働行為には当たらない。

※ 改正高齢法:高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部を改正する法律

高年齢者の65歳までの安定した雇用を確保するため、定年の引上げ、継続雇用制度の導入、定年の定めの廃止のいずれかの措置を会社に義務付ける法律

【参考】

本件審査の概要

初審救済申立日  平成19年4月25日(大阪府労委平成19年(不)第16号)

初審命令交付日  平成20年4月2日

再審査申立日    平成20年4月14日(16号)、同年4月15日(17号)
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