平成19年12月26日

中央労働委員会事務局
  第一部会担当審査総括室
    室長      西 野  幸 雄
    Tel 03−5403−2157
    Fax 03−5403−2250

南労会(10年度及び11年度賃上げ等)不当労働行為再審査事件
(平成14年(不再)第15号・第19号)命令書交付について

  中央労働委員会第一部会(部会長 渡辺 章)は、平成19年12月25日、標記事件に係る命令書を関係当事者に交付したので、お知らせします。
  命令の概要等は、次のとおりです。

I  当事者

使用者側:医療法人南労会(「南労会」)(大阪市港区)

従業員  約260名(平成13年3月現在、以下同じ)

労働者側:全国金属機械労働組合港合同(「組合」)(大阪市港区)

組合員  約800名

全国金属機械労働組合港合同南労会支部(「支部」)(大阪市港区)

組合員  約 30名

        

II  事案の概要

1  本件は、南労会が、(1)平成10年度及び同11年度賃上げについて、新賃金体系に組合らが同意することを定昇の条件としながら、これに関する誠実な団体交渉(「団交」)を行わず、組合らが新賃金体系に同意しなかったとして支部組合員にのみ定昇を実施しなかったこと、(2)新賃金体系への移行に際し、組合らが求める過去の未実施賃上げ分の精算に応じなかったこと、(3)平成10年夏季及び年末並びに同11年夏季の各一時金について、過去の未実施賃上げ分を実施しないまま算定したこと、また、遅刻早退控除及び処分等控除を実施したことが不当労働行為であるとして、大阪府労委に救済申立てがあった事件である。

2  初審大阪府労委は南労会に対し、(1)平成10年度及び同11年度の定昇相当分の賃上げを各年4月から実施すること、(2)新賃金体系の移行方法等について誠実に協議して決定すること、(3)本件各一時金について、平成3年8月4日以前の勤務時間に基づいて遅刻早退回数を計算して各一時金の減額分を算定し直し、既払額との差額を支払うこと、(4)文書手交を命じ、(5)その余の申立てを棄却したところ、南労会及び組合らはこれを不服として、それぞれ再審査を申し立てた。

III  命令の概要

1  主文要旨(初審命令主文を一部変更)

(1) 新賃金体系の具体的運用基準等に関して組合らと誠実に団交を行うこと

(2) 支部組合員に対し、平成10年度及び同11年度の定昇相当分の賃上げを各年4月から実施すること

(3) 新賃金体系移行に当たり、平成7年度ないし同9年度の未実施賃上げ相当額を精算するものとし、その精算方法について、支部組合員に不利とならないよう組合らと誠実に協議して決定すること

(4) 本件各一時金について、平成3年8月4日以前の勤務時間に基づいて遅刻早退回数を計算して各一時金の減額分を算定し直し、既払額との差額を支払うこと

(5) 上記(2)により実施した賃上げ相当額を基準にして、上記(4)で支給することとなる本件各一時金を算定し、既払額との差額を精算すること

(6) 文書手交

(7) その余の救済申立を棄却

(8) その余の本件各再審査申立を棄却

2  判断の要旨

(1) 平成10年度及び同11年度賃上げ並びに新賃金体系移行について

ア  新賃金体系移行に関する団交について(労組法7条2号の不当労働行為に該当)
  南労会は、本件賃上げの交渉において、組合らが求める職能給の運用実態に関する資料等の提出を拒否するなど実質的な協議を行わず、定昇実施の条件とした新賃金体系移行について誠実な団交を行ったものとは認められない。

イ  平成10年度及び同11年度賃上げについて(労組法7条1号・3号の不当労働行為に該当)
  南労会が組合らが新賃金体系移行に同意しなかったとして定昇を実施しなかったことは、従前の経緯からみると、南労会が本件賃上げの交渉において組合らが同意しがたい条件をあえて提案したことによるものであって、従前から新賃金体系導入に反対してきた組合ら及び支部組合員を嫌悪して、経済的に不利益に取り扱い、また、組合らの運営に支配介入したものである。

ウ  過去の未実施賃上げ分の精算について(労組法7条1号・3号の不当労働行為に該当)
  平成7年度から同11年度における過去の未実施賃上げ分について、南労会が組合らの求める精算に応じなかったことは、従前の経緯からみると、上記の未実施賃上げにより生じた賃金格差を固定させ、支部組合員を経済的に不利な状況に留めようとしたものであって、従前から新賃金体系導入に反対してきた組合ら及び支部組合員を嫌悪して、支部組合員を経済的に不利益に取り扱い、また、組合らの運営に支配介入したものである。

(2) 本件各一時金について

ア  本件各一時金の算定について(救済申立てを棄却)
  本件各一時金における過去の未実施賃上げ分の取扱いについては、今後の労使協議に委ねられた未解決の問題であったとみるのが相当であって、南労会が、本件各一時金の算定に当たり、過去の未実施賃上げ分を算定基礎となる基本給に反映しなかったことをもって、直ちに不当労働行為であるとはいえない。

イ  遅刻早退控除について(労組法7条1号・3号の不当労働行為に該当)
  南労会が、本件各一時金について、本件遅刻早退控除を実施したことは、3年変更等に反対する支部及び3年変更前の勤務時間に従って勤務している支部組合員を嫌悪し、南労会の方針に従わせるためにことさら不利益に取り扱ったものであり、また、組合らの運営に支配介入したものである。

ウ  処分等控除について(救済申立てを棄却)
  警告書交付の対象となった組合員の行為は、いずれも繰り返し警告等を受けているにもかかわらずこれに従わず、自己の主張を頑なに押し通そうとしたもので、正当な理由なく上司の業務指示あるいは職場規律に反する行為であったといえる。よって、本件処分等控除は不当労働行為であるとはいえない。

【参考】

1  本件審査の概要    初審救済申立日 平成11年 5月19日(平成11年(不)第46号)ほか2件

初審命令交付日 平成14年 3月29日

再審査申立日  平成14年 4月 2日(使)、同年4月12日(労)

2  初審命令主文要旨  上記IIの2のとおり


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