平成19年10月18日

中央労働委員会事務局
第一部会担当審査総括室
室長  西野幸雄

Tel 03−5403−2157
Fax 03−5403−2250


日本ロール製造不当労働行為再審査事件
(平成18年(不再)第24号)命令書交付について

中央労働委員会第一部会(部会長 渡辺 章)は、平成19年10月18日までに、標記事件に係る命令書を関係当事者に交付したので、お知らせします。

命令の概要等は、次のとおりです。

I 当事者

再審査申立人:

全日本金属機械情報機器労働組合(東京都北区)
組合員約9,000名(平成19年1月現在)

全日本金属機械情報機器労働組合東京地方本部(東京都北区)
組合員約4,000名(平成19年1月現在)

全日本金属機械情報機器労働組合東京地方本部
日本ロール製造支部(「支部」又は「組合」)(東京都江戸川区)
組合員   15名(平成19年1月現在)

再審査被申立人:

日本ロール製造株式会社(「会社」)(東京都江戸川区)
従業員約 110名(平成19年1月現在)

II 事案の概要

1 本件は、会社が、(1)平成11年7月29日付け「協定書」において別途自主交渉するものとされた解決金問題を議題とする支部の交渉申入れに対して、誠意ある団体交渉を行わなかったこと、(2)平成10年7月27日付け「合意書(職員)」において、新賃金制度発足時に基本給を是正するとされていた支部の組合員Aに対し、基本給の是正を行わなかったこと、(3)上記「合意書(職員)」において、昇格か手当をつけるとされていた支部の組合員Bについて、課長昇格に伴う昇給を行わなかったことが、不当労働行為であるとして救済申立てのあった事件である。

2 初審東京都労働委員会は、上記の救済申立てを棄却する命令を交付したところ、組合はこれを不服として、再審査を申し立てた。

III 命令の概要

1 主文の要旨(初審命令主文を一部変更)

(1) 組合員Bに対し他の課長昇格者に支払われてきた基本給との差額を支払うこと

(2) 文書手交(上記(1)について)

(3) その余の救済申立ては棄却

(4) その余の本件再審査申立ては棄却

2 判断の要旨
(1) 解決金問題を議題とする団体交渉について(救済申立てを棄却)

本件について、会社に団体交渉拒否あるいは不誠実団体交渉の不当労働行為があったとは認められないとした初審判断は相当である。その理由は次のとおりである。

本件については、会社が解決金を支払う意思はないとの姿勢であったことは、組合も承知していたと考えられ、組合から団体交渉等で声を上げていかなければ事態の進展を期待することは難しいと推測される。このような本件の性格を踏まえて平成14年10月15日の解決金問題を議題とする団体交渉申入れ後の状況についてみると、(1)10月17日の団体交渉は秋闘交渉として開催されたものであるが、秋闘要求以外の複数の議題についても交渉が行われているのであるから、解決金問題についても議題に取り上げ得る可能性は十分にあったこと、(2)同日の団体交渉において、少なくとも組合としては解決金問題に関する今後の団体交渉開催についての会社の意向を確認すること等は行えたはずであったこと、(3)それ以後も組合は解決金についての団体交渉を求めたとの事実は認められないなど、組合は消極的な対応をとっていたとみられること、これらを併せ考えると10月15日の組合からの団体交渉申入れに対して会社が何らの回答をしなかったことには問題なしとはしないが、そのことをもって直ちに団体交渉拒否あるいは不誠実団体交渉に当たるということはできず、また、10月17日の団体交渉における会社の交渉態度についても不誠実団体交渉に当たるということはできない。

(2) 組合員Aの基本給是正について(救済申立てを棄却)

本件について、会社に不当労働行為があったとは認められないとする初審判断は相当である。その理由は次のとおりである。

組合員Aの基本給是正にかかる労使交渉の経緯等をみると、同人の基本給是正については労使間の合意に至っておらず、平成12年12月27日の会社提案(基本給を1万円増額して役付手当を1万円減額すること)は、従来の経緯を踏まえた上で、改めて基本給是正を重視した是正案を提示したものであり、一応の合理性があったということができる。

したがって、組合員Aの基本給是正が実現しない主たる理由は、会社の上記提案に対して組合があくまでも3万円の増額を求め、労使双方がそれぞれ金額について歩み寄りを全く行わずに合意に至らないことにあると認められる。また、その他にこれが組合員Aの組合活動を理由とする不利益取扱い又は支配介入に該当するとする事実も認められない。

(3) 組合員Bの課長昇格について(労組法7条1号・3号の不当労働行為に該当)

本件について、組合員Bの課長昇格に伴う昇給を行わなかったことは不当労働行為に当たらないとした初審判断は誤りであり、これを取り消すこととする。その理由は次のとおりである。

会社が組合員Bの課長昇格に伴う昇給を行わなかったことについては、(1)「合意書(職員)」の趣旨に反するものであり、この点について、課長昇格発令当時の経営状況によるなどとする会社の主張はいずれも合理性はなく、(2)平成13年8月に組合員Bが書記長を解任された後も組合の申入れにもかかわらず会社の対応は遅れ、組合員Bに対して昇給なしの昇格を一方的に通知するなど、その対応は極めて誠実さに欠けるものである。これらの点からすると、会社が組合員Bの課長昇格に伴う昇給を行わなかったことは、組合との協定を尊重せず、これを誠実に履行しない態度を組合員に対して表白することにより、また組合員Bに対する不利益取扱いにより、組合の弱体化を企図した支配介入として労組法7条3号の不当労働行為に当たる。

また、組合の書記長の職にあり、上記「合意書(職員)」の対象者であった組合員Bに対する取扱いは、従前の課長昇格者に対する一般的な取扱いとは異なる差別的なものであったことからすると、会社が組合員Bの課長昇格に伴う昇給を行わなかったことは、労組法7条1号の不当労働行為にも該当すると判断する。

【参考】

1 本件審査の概要

初審救済申立日 平成15年3月14日(東京都労委平成15年(不)第23号)
初審命令交付日 平成18年3月30日
再審査申立日  平成18年4月14日(平成18年(不再)第24号)

2 初審命令主文要旨

上記IIの2のとおり


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