中央労働委員会事務局
第二部会担当審査官 榎本 重雄
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平成19年9月3日

ネスレジャパンホールディング(茨城)不当労働行為再審査事件
(平成17年(不再)第8・12号)命令書交付について

中央労働委員会(会長 菅野和夫)は、平成19年9月1日、標記事件に係る命令書を関係当事者に交付しましたので、お知らせします。命令の概要等は、次のとおりです。

I 当事者

[第8号再審査申立人・第12号再審査被申立人]: ネスレ日本株式会社(以下「会社」)
従業員数2800名(平成14年9月6日現在)
[第12号再審査申立人・第8号再審査被申立人]: ネッスル日本労働組合霞ヶ浦支部(以下「霞ヶ浦支部」)
組合員数21名(平成15年4月現在)

II 事案の概要

1  本件は、会社が、自ら提案する団体交渉方式(以下「連名方式」)でなければ応じられないなどとして、霞ヶ浦支部が平成13年5月10日、同年6月15日、同14年1月25日、同年2月6日、同年3月14日、同年4月1日及び同年7月18日に申し入れた団体交渉(以下、平成14年以降の団体交渉を「本件5回の団体交渉」という。)を拒否したこと(第1事件)、基本給通知書等に関連会社の名義(以下「他社名義」)が使用されていることについて、霞ヶ浦支部が団体交渉を申し入れて説明を求めたのに会社及び関連会社2社が応じなかったこと(第2事件)が不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件。

2  初審茨城県労委は、平成17年2月8日、(1)霞ヶ浦工場において、本件5回の団体交渉に誠実に応じること、(2)連名方式に固執して霞ヶ浦支部の運営へ支配介入することの禁止、(3)上記(1)及び(2)に係る文書手交を命じ、(4)同13年5月10日及び同年6月15日に申し入れた団体交渉については、救済申立て期間を徒過しているとして却下し、(5)その余の救済申立てを棄却したところ、会社及び霞ヶ浦支部はこれを不服として、再審査を申し立てた。
  中労委は、初審命令を一部変更したほかは、本件各再審査申立てを棄却した。

III 命令の概要

1 判断の要旨
(1) 本件5回の団体交渉について(第1事件)

ア  団体交渉議題が、組合本部と労働協約締結済のものであるとの会社の主張について

本件5回の団体交渉議題のうち、組合事務所・掲示板の貸与については13年協定書において支部に係るものの貸与も含め組合本部と会社との間で合意済みであるから団体交渉を行う必要はないが、(1)霞ヶ浦支部組合員の白瀬に対する退職強要及びパーソナルカードに関する件、(2)同支部組合員が工場門前で要請行動をした際に管理職の写真撮影をしたことについて、会社が警告書を発出した件などについては、同支部組合員に関する独自の問題が議題となっているので、これらの団体交渉に応じないことは許されず、会社の主張は採用できない。

イ  組合本部及び5支部の間で日程や議題の重複等があるとの会社の主張について

(ア) 組合本部及び5支部の間で団体交渉要求日が近接・重複しているとの会社の指摘について

霞ヶ浦支部と組合本部及び4支部(東京、島田、神戸及び姫路の各支部)の団体交渉要求日が重複している日が一度だけあるが、会社は、霞ヶ浦支部に対し、重複していることを理由に挙げて団体交渉を受け入れられないと回答しておらず、再度日程調整の提案をした事実も認められない。また、他の4回の団体交渉要求日については、日数が接近して会社が団体交渉の申入れを受けることができないほどのものではないことから、会社の主張は採用できない。

(イ) 組合本部及び5支部の間で団体交渉議題が重複しているとの会社の指摘について

本件5回の団体交渉議題はいずれも2、3件であり、重複している議題は組合事務所・掲示板の貸与の件のみであり、この議題について交渉する必要がないことは上記アのとおりであるが、これ以外の議題は霞ヶ浦支部独自の議題と認められることから、会社の主張は採用できない。

ウ  業務の都合があったとの会社の主張について

会社は、霞ヶ浦支部が一度も応じたことがない連名方式による団体交渉を申し入れ、団体交渉を開催するために霞ヶ浦支部の都合を聞いて日程調整を行うなどの努力をした事実が窺えないことなどから、会社の態度は不誠実な対応といえるから、会社の主張は採用できない。

エ  連名方式による団体交渉について

霞ヶ浦支部の団体交渉権が認められて団体交渉が行われていたのに、会社が連名方式による団体交渉のみを申し入れ続けたため、霞ヶ浦支部から反発を受け、結果として全く団体交渉が開催できない状態が続いていたものであるから、会社が連名方式による申入れをしたことをもって団体交渉拒否の正当な理由とすることはできない。

オ  不当労働行為の成否について

以上のことから、会社が霞ヶ浦支部の団体交渉申入れに応じない行為は、労組法第7条第2号に該当する。
  なお、初審命令は、本件について、同条第3号にも該当すると判断したが、この団体交渉拒否をもって、会社が霞ヶ浦支部の組織のあり方や運営の仕方を支配したり、それに介入したとまで認めることはできないから、初審命令のその判断は適当ではない。

(2) 他社名義使用に関する団体交渉に係る会社の対応について(第2事件)

霞ヶ浦工場では、組織再編以降、他社名義が使用されており、霞ヶ浦支部組合員の労働条件に直接関係する基本給通知書等に会社以外の名義が使用されていたのであるから、同支部が支部組合員の問題として会社に説明を求めたことには相応の理由があるといえる。しかしながら、本件では、霞ヶ浦支部が団体交渉を申し入れる前に、他支部が同じ開催日で団体交渉を申し入れていたため、会社は、他支部と日程調整などを行うよう回答したのに、霞ヶ浦支部が、組合内部で日程調整をした上で、改めて団体交渉の申入れをしたり、会社に対して日程調整の申入れをしたなどの事情は認められないことなどから団体交渉が開催できなかったものであり、他社名義使用に関する団体交渉に係る会社の対応をもって、労組法第7条2号の不当労働行為に当たるということはできない。

【参考】本件審査の経過 初審救済申立日 平成14年 9月 6日(茨城県労委平成14年(不)第5号事件)
    平成15年 2月 3日(茨城県労委平成15年(不)第1号事件)
  初審命令交付日 平成17年 2月 8日
  再審査申立日 平成17年 2月18日(平成17年(不再) 8)
    平成17年 2月22日(平成17年(不再)12)

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