平成19年8月22日

中央労働委員会事務局
第三部会担当審査総括室
 室長 神田義宝
TEL 03(5403)2172
FAX 03(5403)2250

西川産業不当労働行為再審査事件(平成15年(不再)第10号)
命令書交付について

中央労働委員会第三部会(部会長 赤塚信雄)は、平成19年8月22日、標記事件に係る命令書を関係当事者に交付したので、お知らせします。命令の概要等は、次のとおりです。

I 当事者

再審査申立人 三多摩合同労働組合
(組合員数130名(14.2.20現在))
組合員A
再審査被申立人 西川産業株式会社(東京都中央区)
(従業員数900名(14.2.20現在))

II 事案の概要

1 本件は、西川産業株式会社(以下「会社」という。)が、いわゆるマネキン社員(販売専門員)であって、三多摩合同労働組合(以下「組合」という。)の組合員であるAに対して、同人の勤務していた株式会社丸井(以下「丸井」という。)吉祥寺店へのマネキン社員の派遣中止等を理由として、9年10月1日以降、雇用契約を更新しなかったこと(以下「本件雇止め」という。)が労働組合法第7条第1号の不当労働行為に当たるとして、組合及びA(以下「組合ら」という。)が10年9月30日に、東京都労働委員会に救済を申し立てた事件である。

2 東京都労働委員会は、15年1月21日、本件雇止めは不当労働行為に当たらないとして救済申立てを棄却することを決定し、同年2月27日に命令書を交付した。これを不服として、組合らは、同年3月13日、再審査を申し立てた。

III 命令の概要

1 主文

本件再審査申立てを棄却する。

2 判断要旨

(1)組合らは、丸井吉祥寺店での会社ベッドの販売中止に伴う同店へのマネキン社員の派遣中止の必要性を本件雇止めの理由とする会社の主張に対して、本件雇止めの翌年に丸井新宿インテリア館及び渋谷店インザルームが閉鎖された際、会社は両店舗に派遣していた会社のマネキン社員7名全員を他の丸井店舗、家具専門店等に配転しており、会社が上記7名と同様にAを配転する措置をとらなかったのは、Aが組合員であったことによるものである旨主張する。

(2)会社が、Aについては配転等の方策を講じることなく本件雇止めにしたのに対し、10年8月の丸井新宿インテリア館及び渋谷店インザルームの閉鎖の際には、両店舗に派遣していたマネキン社員7名全員に関し、他の丸井店舗等に派遣する取扱いをしていることは、確かである。
  しかしながら、マネキン社員7名についても、全員をいったん雇止めとした上、新たな雇用条件を提示して雇用契約の締結を求め、7名全員が新たな雇用契約の締結に応じたため、会社は同人らを他の丸井店舗等に派遣したものである。このように、いったん雇止めにしている点では、その取扱いにおいてAの場合と異なるものではなかった。
  そして、7名に対する再雇用等の措置は、本件雇止めの1年後のものであるほか、上記両店舗の閉鎖に当たっては、丸井において、単にこれを閉鎖するものではなく、その代わりに周辺における他の店舗の家具売場を拡充してインテリア製品の全体的な売上げをカバーする営業方針をとった事情がある。また、両店舗における会社商品の売上高は、会社からマネキン社員を派遣している丸井の店舗における会社商品の総売上高の約5割を占め、上記閉鎖は会社に与える影響が極めて大きく、これを埋め合わせる方策が必要であった。すなわち、会社の上記措置は、丸井の営業方針に合わせるものであるとともに、そうした営業方針の下で、会社がマネキン社員を派遣しても採算の取れる前提に立った措置であったと認められ、Aの場合とは時期や状況を異にするものであった。
  その上、会社側は、マネキン社員について、派遣先とトラブルを起こすような者はいらない、気に食わなければ自ら次の職場に移るべきだと考え対応していたことがうかがえること、A自身も、現に、6年4月(Aの8年1月8日付け組合加入前)、同人を引き揚げるようにとの会社からの要請を受けた株式会社池袋マネキン紹介所(Aは、同紹介所を通じて会社に入社した。)から「次は、エアコン販売の仕事があるからその面接に行く準備をしてほしい。」旨指示された際に、会社には何も問い合わせることなく、同紹介所の指示に従い、エアコン販売の仕事の面接を受けていること、また、会社におけるAの雇用期間は、5年12月11日から9年9月30日までの約3年10か月であり、その間、会社は、Aの雇用を拒否する旨の通知を繰り返し、組合との交渉の結果これを撤回して、雇用が更新され継続してきたものであること等の事実関係を総合すると、Aと会社との雇用関係は、マネキン社員における雇用の流動性を前提に、それほど長期間の継続を想定せずに、最長1年の有期雇用契約によっていたものと推認される。
  したがって、上記のような7名の社員の場合とAとの取扱いの差をもって、本件雇止めがAが組合員であったことによるものである旨の組合らの主張は採用できず、本件再審査申立てには理由がない。

【参考】

1 本件審査の概要
救済申立年月日平成10年9月30日(東京都労委平成10年(不)第76号)
初審命令交付年月日平成15年2月27日
再審査申立年月日平成15年3月13日
2 初審命令主文

本件申立てを棄却する。


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