平成19年6月26日

中央労働委員会事務局審査課
     特定独立行政法人等審査官
             下 村 直 樹
  Tel 03−5403−2166
  Fax 03−5403−2250


日本郵政公社 中野郵便局不当労働行為事件
日本郵政公社 杉並郵便局不当労働行為事件
日本郵政公社 杉並南郵便局不当労働行為事件
日本郵政公社 豊島郵便局不当労働行為事件
(平成16年(不)第1・2・3・4号)命令書交付について

中央労働委員会(会長 菅野和夫)は、平成19年6月26日、標記事件に係る命令書を関係当事者に交付したので、お知らせします。

命令の概要等は、次のとおりです。

I 当事者

申立人      (1)郵政産業労働組合(「郵産労」)      (組合員約1,900名 平成18年1月現在)
  (2)郵政産業労働組合東京地方本部   (組合員約  750名 平成18年1月現在)
  (3)郵政産業労働組合中野支部   (組合員       18名 平成18年3月現在)
  (4)郵政産業労働組合杉並支部   (組合員       27名 平成18年5月現在)
  (5)郵政産業労働組合杉並南支部   (組合員       19名 平成18年3月現在)
  (6)郵政産業労働組合豊島支部   (組合員       15名 平成18年3月現在)
     
被申立人      (1)日本郵政公社(「公社」)(東京都千代田区)
   (職員約26万名 平成18年3月現在)
  (2)中野郵便局長 (東京都中野区)
  (3)杉並郵便局長 (東京都杉並区)
  (4)杉並南郵便局長(東京都杉並区)
  (5)豊島郵便局長 (東京都豊島区)

II 事案の概要

本件は、公社が、中野郵便局、杉並郵便局、杉並南郵便局及び豊島郵便局において、他組合に組合事務室を貸与する一方で、郵産労各支部に対して組合事務室の貸与を拒否することは、組合間差別であり、労働組合法第7条第3号の不当労働行為(支配介入)に該当するとして、平成16年9月6日、救済申立てのあった事件である。

III 命令の概要

1 主文の要旨

(1) 公社は、郵産労各支部に対して、本件各郵便局の施設内に組合事務室を貸与しなければならない。また、公社は、組合事務室の場所、広さ等の具体的条件について郵産労各支部と誠意をもって速やかに協議し、合理的な取決めをしなければならない。

(2) 公社は、中労委による本件不当労働行為の認定を誠実に受けとめ、今後このようなことがないよう留意する旨の文書を申立人に手交しなければならない。

(3) 本件各郵便局長に対する申立ては却下する。

2 判断の要旨
(1)組合事務室の貸与に関わる使用者の中立保持義務について

ア 複数の労働組合が併存する場合に、使用者は、各組合との労使関係において各組合に対して中立的な態度を保持し、その団結権を平等に尊重する義務(「中立保持義務」)がある。一方の組合には組合事務室を貸与しておきながら他方の組合に対して貸与を拒否することは、組合間で取扱いを異にする合理的な理由が存在しない限り、使用者が他方の組合の活動力を低下させ、その弱体化を図ろうとする意図を推認させるものとして、労働組合法第7条第3号の不当労働行為(支配介入)に該当する。上記の法理は、公社の事案においても基本的に妥当するものと考えられる。また、上記の合理的な理由の存在は使用者において立証すべきである。

イ 組合間で取扱いを異にする合理的な理由の存否については、一方の組合に貸与された経緯、局舎事情(局舎事情の推移と局舎の現況)、他方の組合の要求に対する当局の対応、貸与されないことによる組合活動への影響等を総合的に勘案して判断すべきである。

(2)不当労働行為の成否について

当局は、開局当時、他組合に対しては、他の用途に予定の施設を使用目的を変更し組合事務室として貸与するなど相応の配慮をしたことが認められる。他方、郵産労各支部に対しては、結成以後、約20年以上にわたる郵産労各支部の再三の要求に対し、組合事務室の貸与を拒否し続けている。しかし、この間の局舎事情としては、局舎施設の使用方法を変更した例が数多く認められることから、その際などに組合事務室の貸与について検討の余地は十分あったものと推認される。また、本件申立て後の局舎の現況についても、局舎施設の使用方法の工夫如何によって、郵産労各支部に組合事務室を貸与するスペースを融通することは十分可能であると認められる。しかるに、郵産労各支部の組合事務室貸与要求に対する当局の対応については、十分な検討を行ったとは到底認められない。その結果、郵産労各支部には組合事務室が貸与されておらず、郵産労各支部はそのことによって少なからぬ不利益を受けている。

したがって、これらを総合勘案すると、本件各郵便局において、当局が他組合に組合事務室を貸与しておきながら、郵産労各支部には組合事務室を貸与しないことに合理的な理由があるとは認められない。よって、本件組合事務室の不貸与は、郵産労各支部の活動力を低下させ、その弱体化を図ろうとする意図を推認させるものとして、労働組合法第7条第3号の不当労働行為に該当すると判断される。

(3)救済方法について

本件については、郵産労各支部の組合員数と他組合の組合員数の間に違いが認められるが、郵産労各支部の組合員数は組合活動をまとまって行うに足りる数と判断されるので、組合事務室の貸与を命ずるのが相当である。

また、申立人は、謝罪文の掲示を求めているが、当委員会は、文書の手交をもって足りるものと認める。

(4)被申立人適格について

不当労働行為救済命令の名宛人とされる使用者は法律上独立した権利義務の主体であることを要すると解されるから、本件の被申立人は法人である公社と判断する。本件各郵便局長は、法人である公社の一組織の長にすぎず、被申立人適格はない。


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