平成19年6月19日

中央労働委員会事務局
 第一部会担当審査総括室
  室長   西 野  幸 雄
  Tel 03−5403−2157
  Fax 03−5403−2250


尼崎市・尼崎市教育委員会(平成17年度団交)不当労働行為再審査事件
(平成18年(不再)第52号)命令書交付について

中央労働委員会第一部会(部会長 渡辺章)は、平成19年6月18日、標記事件に係る命令書を関係当事者に交付したので、お知らせします。

命令の概要等は、次のとおりです。

I 当事者

再審査申立人        大阪教育合同労働組合
組合員337名(平成19年1月16日現在)
再審査被申立人
尼崎市
尼崎市教育委員会

II 事案の概要

1 本件は、尼崎市(以下「市」)及び尼崎市教育委員会(以下「市教委」)が、(1)平成17年度中に行われた大阪教育合同労働組合(以下「教育合同」)尼崎支部(以下「支部」)の構成員である外国人外国語指導助手(以下「ALT」)の平成18年度報酬等を議題とする団体交渉(以下「本件団交」)において誠実に交渉しなかったこと、(2)本件団交継続中に、支部所属のALTに対し、平成18年度職務委嘱契約に係る同意書の署名と提出を行わせたこと(以下「平成18年度ALT委嘱契約手続」)が不当労働行為であるとして、平成18年4月14日、教育合同から、救済申立てがされた事案である。

2 初審大阪府労働委員会(以下「大阪府労委」)は、教育合同が、地方公務員法(以下「地公法」)適用職員と労働組合法(以下「労組法」)適用労働者で組織される混合組合であるところ、その法的性格は地公法適用職員が主体となって組織された職員団体と判断されるから、申立人適格が認められないとして、教育合同の救済申立てをいずれも却下した。教育合同はこれを不服として、平成18年8月9日、再審査を申し立てた。

III 命令の概要

1 主文

(1)初審決定中、市に対する救済申立てを却下した部分を取り消し、同部分に係る救済申立てを棄却する。

(2)その余の本件再審査申立てを棄却する。

2 判断の要旨
(1) 教育合同の申立人適格について

初審決定は、労働団体の法的性格を一元的に取り扱うことを前提に、当該労働団体の一時点の構成員の量ないし質的構成を捉えて基準とするものであるが、これは基準として曖昧かつ不確定であって構成員に不測の不利益を被らせるものである上、労組法及び不当労働行為救済制度の趣旨を没却するものであって妥当でない。労組法及び不当労働行為救済制度の趣旨たる労働者の団結権保障並びに労働組合加入及び労働組合選択の自由の保障、また我が国の批准するILO87号条約、同98号条約等の国際条約及び同条約批准を受けて行われた国家公務員法、地公法を始めとする国内法諸法規の改正整備を踏まえると、混合組合についても、労組法適用構成員に関わる問題については労組法第7条各号の別を問わず一律に不当労働行為救済手続における申立人適格を認めるのが相当である。また、教育合同のうち地公法適用構成員は、別途登録職員団体(以下「(職)教育合同」)を結成しており、同構成員らの権利利益の保護ないし行使はこれを代表する(職)教育合同による市・市教委との団体交渉等を通じて行われることとなっており、組織及び活動の識別性、分別性は明確であるから、職員団体と労働組合を区別する法の規定ないし趣旨を潜脱する事態が生じることもない。したがって、教育合同の申立人適格を否定した初審決定は、労組法の解釈適用を誤ったものといわざるを得ない。

(2) 市教委の被申立人適格について

市教委は法律上独立した権利義務の主体ではないので、被申立人適格を認められない。

(3) 本件団交の不誠実団交該当性について

市・市教委が、本件団交事項に即して、ALTの勤務条件全般を最も良く知る立場にある市教委職員課課長補佐らを交渉担当者にしたことには一応の合理性が認められ、同人らは、教育合同・支部からの提案や回答要求に対し、適宜の方法で検討し、休憩後又は次回団交までに何らかの回答や修正提案を示すなどの対応をしており、本件団交に支障が生じたという事情も特に認められない。また、本件団交当時、人件費削減策等の諸施策を市全体で継続している状況下にあり、ALT報酬の削減をどのような方法で行うかは政策的問題であることを考えると、なお近隣ALTの報酬水準を考慮して引下げ率を5%とした市・市教委側提案に合理性がないとはいえない。そして、市・市教委は、教育合同・支部の資料ないし説明要求に対し、適当な資料を準備するなどして対応しているほか、2度にわたる譲歩(引下げ率2.5%まで譲歩)を行っており、本件団交は十分な説明義務が尽くされた誠実なものであったと評価できる。本件団交が打切りとなったのは、第5回団交において、市・市教委の譲歩案を、教育合同・支部が拒否したことにより、行き詰まり状態になったためと認められる。

以上によれば、本件団交が不誠実団交ないし団交拒否の不当労働行為に当たるとする教育合同の主張は採用できない。

(4) 平成18年度ALT委嘱契約手続の支配介入該当性について

平成18年度ALT委嘱契約手続きにおいて、市・市教委が一方的に支部所属のALT5名に対し、不合理な勤務条件を強いたとはいえないし、意に反する書面の提出を強要したともいえない。また、市・市教委が、教育合同・支部の組織ないし運営、活動に何らかの影響を及ぼすことを意図して同委嘱契約手続を遂行したと推察できる事情もなく、これが、支配介入の不当労働行為に当たるとする教育合同の主張は採用できない。

【参考】本件審査の概要

初審救済申立日 平成18年4月14日(大阪府労委平成18年(不)第27号)

初審決定交付日 平成18年8月9日

再審査申立日 平成18年8月9日(労)


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