平成21年度 自殺防止対策事業 実施状況
平成21年度は13団体で実施されました。その活動状況を紹介します。(このページの記載内容は、各団体において作成されたものです。)
団体名:一般社団法人日本いのちの電話連盟
事業名:フリーダイヤル「自殺予防いのちの電話」事業の実施
平成21年度活動内容の概要・成果
1.自殺防止のためのネットワーク構築
1)日本自殺予防シンポジウムの開催
1978年以来実施しているが、この年度は実に34回を数えるにいたった。対象:一般市民(佐賀県で開催:佐賀いのちの電話共催)
日本臨床心理士会会長村瀬嘉代子氏等を講師に招き開催、地方都市としては320名の参加は画期的であった。
2)ホームページの充実
各方面に「自殺予防いのちの電話」の情報を発信、諸関係団体とリンクすることによってネットワーク構築をはかった。
2.相談員研修活動の推進
相談員研修事業の一環として、体験学習を各センターの要請にもとづき、27名の講師を各地に派遣した。
さらに10月には札幌市で全国研修担当者セミナーの開催
3.フリーダイヤル「自殺予防いのちの電話」は自殺予防に特化した電話相談として全国(48センター)をネットワークでつなぎ24時間体制で実施。
2001年以来、毎年継続、2007年から当初とは違い毎月10日に行っている。2009年の相談件数は28,330件であった。(通常電話を含めると736,358件)
また、全国37センターで補助事業として市民対象の自殺予防のための公開講座を実施。さらに自殺予防目的の広報・啓発活動を実施し、ポスター、カードの作成・配布、また主要新聞に相談電話番号などを掲載。
事業の成果 フリーダイヤル「自殺予防いのちの電話」事業実施により2008年度に続いて、いのちの電話全体の相談件数が一挙に1万件増加し、自殺問題比率も増加したことである。これは当該補助事業が定着したことを意味すると思われる。地方自治体への自殺予防普及・啓発の一助を担っている。
いのちの電話ホームページ http://www.find-j.jp/


団体名:特定非営利活動法人いわて生活者サポートセンター
事業名:経済的事由での自殺防止を目指したスクリーニングツールの開発事業
平成21年度の活動の概要・成果
9月 第1回経済的事由での自殺防止を目指したスクリーニングツール開発委員会
9月 秋田市で開催された自殺対策全国フォーラム(「いのちを守り、いのちを伝える全国フォーラム」秋田魁新報社他主催)で事例発表
10月 第2回経済的事由での自殺防止を目指したスクリーニングツール開発委員会
11月 盛岡市で開催された第5回自殺予防活動団体地域交流会において事例発表
12月 サポートセンターの設立母体である消費者信用生活協同組合盛岡相談センター及びサポートセンターで試験使用開始試験使用における問題点等について修正
ツールの使用について、岩手県民生活センター担当者、岩手県庁県民くらしの安全課及び障がい保健福祉課の担当者との協議
12月 県下の振興局消費生活相談員、盛岡市消費生活センター相談員、信用生協相談員、サポートセンター相談員を対象に、研修会を実施(参加30名)
岩手県庁から関係機関へツールの活用促進、連携強化に関する文書施行
1月 岩手県各振興局、盛岡市消費生活センター、信用生協各相談センター、サポートセンターで本格使用開始
2月 八幡平市で「いのちの大切さについて考えるセミナー」開催(八幡平市等と共催)
参加者約200名 個別相談会5名
3月 二戸市で「カシオペアいきいき健康作りセミナー」開催(二戸保健所と共催)
参加者約70名
3月 久慈市で「いのちの大切さについて考えるセミナー」開催(久慈保健所と共催)
参加者約300名
3月 盛岡市で開催された「セミナーこころとお金の悩み解決」にて事例発表
3月 第3回経済的事由での自殺防止を目指したスクリーニングツール開発委員会
特定非営利活動法人いわて生活者サポートセンター URL:http://www.iwate-ss.com
団体名:鯖江こころの電話
事業名:自殺防止対策事業
平成21年度活動内容の概要・成果
[1]電話相談
毎日 PM1:30〜4:30 (日・祝日・火曜を除く)
相談員約30名がローテーションを組み対応。
場所 夢みらい館・さばえ電話相談室で受信 年間429件
[2]相談員の研修
毎月1回(第三火曜日 PM1:30〜4:00)
<特記>
(1) 8月18日 館外研修 東尋坊
講師 茂 幸雄氏 東尋坊のちょっと待ておじさん
「死んだらあかん」著者
福井県の三国、東尋坊は年間を通して風光明媚な観光地として有名な場所です。訪れる旅行者は荒波ドンと打つ男性的な安山岩の切り立つ岩柱状昴理という天然記念物の岩肌に感動し、息をのみます。その旅行者に混ざって自殺企図者が年間120人訪れ、過去30年で643人がこの岩場から飛び降りて命を失っています。
全国で青木ヶ原樹海に次いで2番目に自殺者の多い場所になっています。三国の東尋坊は知らない県民はいませんが、広い岩壁のどの場所で身を投げるのかは知る人はほとんどいません。見守りをしてくださっている茂幸雄氏に現地を案内していただき、自殺企図者が自殺をためらっている事実、自殺を思い止った後どう援助していくのか 自殺の背景にある社会問題などお話を聞き多くを学びました。 そして自殺は「防げる死」であるという思いを改めて知りました。

(2)9月8日「絵本に見る個人の尊厳」
大谷大学教授 佐賀枝 夏文氏
相談員だけでなく一般市民に呼びかけ約50名で講義を聞きました。
佐賀枝 夏文著「ぼくは いまここにいる」バウムという名の小さな実生の無夢樹が、みんなに助けられ大きく成長していくというストーリーと成広のり子氏の美しい絵の絵本を中心に小さく・弱く・名もない命もひとつひとつが大切な命であるという構成で、受講者は多くの感動を受けました。この絵本を映像にとって館の「お月見会」で秋の夜の上映会を行い 集まった多くの人に命の大切さを学んでいただきました。
(3) 平成22年 3月16日〜7日 危機介入へ向けての研修会 於 神明苑
参加者 電話相談員
講 師 福井県立大学教授 真野元四郎氏
危機介入の基礎を学びロールプレーを行いました。
相談員が日頃感じていることや、相談を受けた内容についてのケース討論を行いました。

[3]広報活動
リーフレット・ティッシュ・ハンドタオル各 2000個製作。
いろいろのイベントなどで相談活動を広くアピールするグッズとして活用しました。[4]講演会参加者に配りました。
[4]講演会
H22・3・28 「千の風になって」
講 師 新井満氏
会 場 鯖江市文化センター 大ホール
参加者 1000人
新井満氏のコンサートとトークで1000人の参加者を魅了しました。「私のお墓の前で泣かないでください」の一節が生まれるまでの新井氏の大きな人間愛、優しさ、生きる苦しみ、よろこびなどたくさんのエピソードが語られ、人が生きるということの奥深さ・すばらしさが聴衆に多くのものを訴え感動の渦が巻き起こりました。

団体名:認定特定非営利活動法人国際ビフレンダーズ東京自殺防止センター
平成21年度活動内容の概要・成果
電話による相談(自殺したい人の気持ちを聴き、受けとめ、感情に寄り添い、精神面での支えを提供、20時〜翌朝6時。火曜日のみ17時〜)、自殺者遺族が集まる場の提供(エバーグリーンの集い、月1回)、困難な中にいる人の話し合いの場の提供(コーヒーハウス、週2回)及び自殺防止活動を広く知ってもらうための講演会・ワークショップの開催などを中心に活動している。1998年設立。国際的な自殺防止組織「国際ビフレンダーズ」に加盟し、その憲章に基づき活動を進めている。2009年1月〜12月の電話相談件数は13,396件。電話相談担当は2010年3月現在51名。4月から火曜日の相談開始時間を3時間前倒しし、17時からとした。また、9月と3月には東京都と協力し、48時間の特別相談を計2回実施した。

国際ビフレンダーズ東京自殺防止センター URL:http://www.befrienders-jpn.org/
団体名:
社団法人金沢こころの電話
事業名:「いのちとこころの絆の回復事業」
【事業1】新規の電話相談時間帯(21:00〜23:00)の設置
1007件の相談電話を受け、自殺念慮者や精神的に危機状態にある人への心的支援ができた。よって、自殺防止へとつながった。
【事業2】相談支援者等への研修会開催
1日研修×4回、2泊3日の対人相互援助グループワーク1回を実施、県内外より述べ151名の参加。今後のより深い支援が期待できる。
【事業3】一般市民対象のアンケート調査の実施
県内1000名のアンケート調査を実施、自殺に対する一般市民の思いを把握でき、また自殺防止への啓蒙にも役立った。結果考察を報告集として発行、県内外の諸関係団体に配布、好評を得ている。
【事業4】出前講座の実施
県内機関7か所において、当該機関・団体の人数、目的、地域性に応じた講座を開講。自殺防止への即効性のある効果が予想できた。

社団法人金沢こころの電話 〒920−0964金沢市本多町3丁目1番10号 事務局電話 (076)222-7531 FAX専用(076)222-5352 |
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団体名:性と人権ネットワークESTO
事業名:性的少数者の自殺防止のための自尊感情向上プロジェクト
平成21年度活動内容の概要・成果
事業内容:
(1)自尊感情向上プロジェクト「Bridge of Heart」(全3回) 参加者28名
- 全3回とも参加者から好評で、秋田県内では触れられない性的少数者の現状について知ることが出来たことを喜んでもらえました。参加者の多くは会員とリピーターでしたが、初めての話を打ち明けてくれる人が数人いたため、これまでの活動の場では、話しにくい雰囲気があったことを反省できました。ゲイの当事者から「Bridge of Heart」の問合せがあったが、周囲に当事者であることを知られることを怖れて、結局は参加をしてもらえませんでした。また、参加と支援をしたいという中高年男性からの電話がありましたが、性的少数者への誤解を感じたため参加をお断りしました。
(2)性的少数者の実態調査 (回答者 15名)
- 調査票への回答は、参加者が重複したため予定より少なくなりました。
(3)秋田県内の精神科への受診状況調査(配布数 55件 回答数 10件)
- 返送数の少なさから精神科の関心の低さが伺えます。
(4)性的少数者の自殺・うつ病防止パンフレット作成 【秋田県内配布先 計421通】
精神科、自殺・うつ病防止協力病院、中学・高校・大学の養護教諭と学生相談員、自殺防止の民間団体、相談機関、人権・男女共同参画・市民活動団体
- 秋田県内外から、全国で初めての取組みと好評をいただき、パンフレットの追加送付依頼が数件ほど寄せられました。
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第1回11月7日 大江千束さん(LOUD代表) 「嘘のない自分で友人や家族と 共に生きる」 同性愛当事者 |
第2回11月28日 高井叡空さん(尼僧) 「私の性別を決めるもの」 性分化疾患当事者 |
第3回12月26日 平田俊明さん(AGP共同代表) 「自尊感情と心の健康の回復」 同性愛当事者 |
ホームページのURL HP http://akita.cool.ne.jp/esto/
団体名:特定非営利活動法人 蜘蛛の糸
事業名:「自殺予防活動の手引」作成
平成21年度活動内容の概要・成果
<概要>
事業内容:実践マニュアル『自殺防止の現場力』作成・配布
経 緯:自殺対策基本法制定から4年。13年間自殺者数3万人が続いているのにも関わらず、自殺予防活動団体は、その数も少なく、対策の方針を暗中模索している段階にある。しかし、この深刻な事態を打開するためには、自殺予防活動団体の「量的拡大」と「質的深耕」が必須であると考える。これから自殺予防活動開始及び既存の団体に対して、指標となる手引きが必要であると考え、本マニュアルを作成するに至った。
内 容:統計分析から現場からのノウハウまで、現場ですぐに活用できる実践的なマニュアルとして「自殺者数統計」の章、「相談現場」の章
「100社アンケート」の章、「生きる希望と勇気」の章
「実践活動」の章、秋田県民間団体の紹介で構成されている。
配 送 先:都道府県、政令指定都市の自殺担当課、 秋田県内市町村、全国民間団体、マスコミ各社ほか 1300冊配布
そ の 他:蜘蛛の糸のホームページに掲載
<成果>
本マニュアルは、地元新聞社に記事としても取り上げられ、自殺予防活動団体はじめ、救急救命士、裁判所、一般の方等様々な分野からの問い合わせがあった。当法人の活動への注目度と、自殺問題に関する県民の関心の高さを実感した。
平成22年の秋田県内自殺者数は368人で、昨年比で70人減少。ピーク時の平成15年の559人から34%減少で、平成10年から13年間続いた自殺者「400人の壁」をようやく破ることができた。また、当法人が活動の中心としている自営業者の自殺者数が43人と昨年比で13人、26%減少した。当法人活動開始時点の平成14年の89人と比べると46人減少、つまり秋田県における自営業者の自殺者数は、9年間で半数以下になったことになる。
日本全体としては、未だ自殺者数3万人を下ることはないが、自殺対策は地道な活動の積み重ねであり、活動の成果が出るまでにはある程度の時間を要する。本マニュアルが日本全体の民間団体の自殺予防活動の活力となり、日本の自殺防止対策の思考に少しでも貢献できるのではないかと感じている。
ホームページのURLなど: http://www.kumonoito.info/