平成22年4月
厚生労働省労働基準局
建設業における足場からの墜落防止措置の実施状況に係る調査結果について
1 趣旨・目的
改正労働安全衛生規則(以下「省令」という。)に基づく足場からの墜落防止措置の確実な履行や、安全衛生部長通達(※)で示した「手すり先行工法」をはじめとするより安全な措置の一層の普及に資するため、その実施状況等について把握するとともに、問題が認められる場合には指導を行うことにより、もって、建設業における足場からの墜落・転落災害の更なる減少を図ることを目的とする。
(※) 足場からの墜落・転落災害を防止するため、昨年6月1日より省令を改正し、対策を強化しているところであり、これと併せて、「より安全な措置」として、「手すり先行工法」の採用等を通達(平成21年4月24日付け安全衛生部長名通達)で示し、指導を行っている。
2 調査対象
原則として、平成21年10月から平成22年2月末までに都道府県労働局・労働基準監督署の担当官が立入った建設現場のうち、高さ2メートル以上の足場が設置されていた「5,056現場」について、当該現場に設置されている「主たる足場」を対象に調査を実施した(対象現場の工事種別や足場の種類等の内訳については図−1から図−6(PDF:157KB)のとおり)。
3 調査結果
省令や安全衛生部長通達に定める足場からの墜落防止措置の実施状況や足場の点検の実施状況、足場からの墜落・転落災害の発生状況等について実態調査を行った(図−7から図−17及び表−1、表−2)。調査結果の概要は以下のとおり。
(1)省令に基づく墜落防止措置の実施状況について
- 調査対象のうち、省令の適用がない「一側足場」を除く足場が設置されていた現場の約92%において、省令に基づく墜落防止措置が実施されている(図−7(PDF:126KB))。
(2)手すり先行工法の採用状況について
ア 一側足場を除く足場全体について
- 対象現場のうち、省令の適用がない「一側足場」を除く足場が設置されていた現場(4,892現場)の約31%において、安全衛生部長通達で示した「手すり先行工法」が採用されている(図−8(PDF:163KB))。
- 発注者別で見ると、「国」発注の工事では約66%、「民間」発注の工事では約17%となっている(図−8(PDF:163KB))。
- 工事種類別では、「土木工事」が約46%と最も高くなっており、「木建工事(低層住宅工事)」が約13%ともっとも低くなっている(図−10(PDF:163KB))。
イ わく組足場について
- 対象現場のうち、「手すり先行工法」が主として適用される「わく組足場」が設置されていた現場(3,289現場)の約41%において、安全衛生部長通達で示した「手すり先行工法」が採用されている(図−9(PDF:163KB))。
- 発注者別で見ると、「国」発注の工事では約86%、「民間」発注の工事では約20%となっている(図−9(PDF:163KB))。
- 工事種類別では、「土木工事」が約67%と最も高くなっており、「木建工事(低層住宅工事)」が約29%ともっとも低くなっている(図−11(PDF:163KB))。
(3)足場の点検の実施状況について
ア 作業開始前の点検について
- 対象現場(5,056現場)の約81%(「一部未実施」も含めると約87%)において、省令に基づく「作業開始前点検」が実施されている(図−12(PDF:189KB))。
- 点検の実施者について見ると、全体の約77%が安全衛生部長通達で示した「職長等」によって実施されている(図−13(PDF:189KB))。
イ 足場の組立・解体後の点検について
- 対象現場(5,056現場)の約86%(「一部未実施」も含めると約90%)において、省令に基づく「組立・解体後の点検」が実施されている(図−14(PDF:189KB))。
- 点検の実施者について見ると、全体の約51%が安全衛生部長通達で示した「教育を受けた作業主任者等」によって実施されている。なお、「第三者」による実施は約1.6%となっている(図−15(PDF:189KB))。
- 点検時における「チェックリスト」の活用状況について見ると、全体の約57%において安全衛生部長通達で示した「チェックリスト」を活用している(図−16(PDF:189KB))。
- 点検結果の記録・保存の状況について見ると、全体の約79%において省令に基づく記録・保存が実施されており、約53%については部長通達で示した「チェックリスト」が記録・保存に当たっても活用されている(図―17(PDF:189KB))。
(4)足場からの墜落・転落災害の発生状況について
ア 労働災害の発生状況
- 対象現場(5,056現場)における足場からの墜落・転落による労働災害(休業4日以上)の発生状況について見ると、全体で69人(うち、死亡3人)となっており、その内訳は、「通常作業時」が52人(うち、死亡2人)、「組立・解体時」が17人(うち、死亡1人)となっている(表−1(PDF:76KB))。
イ 一人親方による災害の発生状況
- また、今回の調査において把握することができた「一人親方」による足場からの墜落・転落による災害(休業4日以上)については、全体で4人となっており、その内訳は、「通常作業時」が3人、「組立・解体時」が1人となっている。なお、死亡災害は発生していない(表−2(PDF:76KB))。
4 今後の対応について
本調査の結果、改正労働安全衛生規則や安全衛生部長通達に基づく足場からの墜落防止措置の普及が着実に進んでいることが明らかになったが、「改正労働安全衛生規則に基づく墜落防止措置」や「足場の点検の実施」、「点検結果の記録・保存」などの省令に基づく措置が一部の現場においてが不十分なものが見られたため、これらの措置の徹底を図るとともに、安全衛生部長通達に基づく「より安全な措置」の更なる普及に努めることとする。
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