ホーム > 政策について > 分野別の政策一覧 > 雇用・労働 > 労働基準 > 安全・衛生 > 統計・災害事例 > 化学物質による災害発生事例について > 4その他の化学物質による中毒等(平成30年)

4 その他の化学物質による中毒等(平成30年)

発生月 業種 被災状況 原因物質 発生状況 発生原因
4月 食料品製造業 中毒1名(休業) 過酢酸 容器等の殺菌に用いる薬剤調合装置に不具合が生じたため、装置内のPAA原液槽(PAA原液:酢酸、過酸化水素、過酢酸を含む水溶液)から原液を抜き取るにあたり、原液を再利用するため、排出管出口でポリバケツに原液を受けて汲み置き容器に一時貯蔵する抜き取り作業に被災者が従事していたところ、呼吸困難の症状を呈し、病院で診断を受けたところ、急性薬物中毒と診断されたもの。 抜き取り作業中に発散したPAA原液に、被災者の呼吸器系がばく露したことが原因と見られる。作業場所である無菌室の気積は1,297m3であり、災害発生時は3570m3/hの能力で全体換気されていた。防毒マスクは事業場に備え付けられておらず、被災者は不織布マスクを2枚重ねて着用していた。 適切な呼吸用保護具未設置
リスクアセスメント未実施
作業標準書・マニュアル未作成
作業標準書・マニュアルの不備
安全衛生教育未実施
作業者の危険有害性認識不足
作業開始前・作業中の濃度測定未実施
1月 化学工業 火災(被災者なし) 硫化鉄 事業場内のタンクから黒煙が上がり、火災の発生を確認したもの。当該タンクは、原油タンクとして使用した後、スロップタンクとして使用されていたが、当該タンクを休止する予定で、タンククリーニングを行っているところであった。発生原因としては内部のスラッジ(発火点 229℃)の除去に当たり、スラッジに含まれる硫化鉄が空気に接触し、酸化発熱反応により熱を持ち発火したものと推定される。スラッジは高さ1.5m程度の山(26×12m)を形成していた。硫化鉄の酸化発熱反応による自然発火に対し、水による湿潤化がタンク開放作業要領には記載されていたが、施工業者の工事施工要領書や安全対策書等には記載がなく、危険性の認識の共有がされていなかった。 緊急時マニュアルの不備
安全衛生教育不足
作業環境管理不足
作業者の危険有害性認識不足
管理責任者等の指示内容の検討不足
6月 その他の建築事業 薬傷3名 (不休) 水酸化ナトリウム 工場内に設置された白液(アルカリ性の水溶液)を供給するタンク内部において、下部に設けられたトラス構造の回転体に付着したスケールを除去する工事を行っていたところ、白液が作業衣を通じて皮膚に接触し、作業員3名が薬傷を負ったもの。作業員はゴーグル、ゴム手袋、保護服、および防じんマスクを使用し、肌が露出する顔等には皮膚を保護する塗布剤を塗っていたが、タンク内部が高温多湿だったため、熱中症を恐れ、合羽等の不浸透性の保護衣を着用していなかった。 適切な保護具未着用
リスクアセスメント未実施
作業標準書・マニュアル未作成
工事業者への指示内容の不備
作業員への指示不備
作業者の危険有害性認識不足
管理責任者等の職務不履行
8月 金属製品製造業又は金属加工業 溶接工肺4名(休業) 亜鉛 工場において、社長と所属労働者4名がアーク溶射機を使用して、鋼材(H鋼 最大長さ:4m)に亜鉛溶射吹き付け作業を行っている時、労働者4名が亜鉛ヒュームを吸引し、帰宅後に発熱、吐き気等があったもの。当初、溶射従事者はエアラインマスクを使用する予定であったが、マスクとコンプレッサを繋ぐホースの連結部が異なって接続できなかったため、全員が使い捨て式防じんマスクを着用して、交替しながら作業を実施した。 適切な呼吸用保護具未着用
呼吸用保護具管理不足・点検不備
安全衛生教育未実施
管理責任者等の職務不履行
6月 化学工業 中毒性表皮壊死症等、化学物質による皮膚炎1名 (休業) 3-ビニル [1、4] ベンゾジオキシノ [2、3-c] ピリダジン 被災者は医薬品原薬の中間体である3-ビニル [1、4] ベンゾジオキシノ [2、3-c] ピリダジン(以下「VDP」という。)の濡れ拭き掃除及び中間体が付着した保温材を外す作業を行っていた。保温材を外す作業中、中間体のしぶきを少量、顎に受け、翌日、首に軽度の水泡を発症した。2週間後、手・腕にかぶれが認められ、その3日後には首・額にも同様の症状が現れたため、病院で治療を行ったものの症状が改善せず、転院したところ入院加療となった。作業者は、保護帽、保護メガネ、作業衣、手袋を着用していたが、経皮ばく露のおそれのない、不浸透性の保護具ではなかった。定常作業については、使用する化学物質、作業標準に対してのリスクアセスメントを実施していたが、被災者が実施した作業は非定常作業であったため、作業標準が定められておらず、リスクアセスメントも実施されていなかった。 適切な保護具未着用
保護具管理不足・点検不備
リスクアセスメント不足
作業標準書・マニュアルの不備
緊急時マニュアル未作成
作業者の危険有害性認識不足
管理責任者等の指示内容の不備、危険有害性認識不足
11月 金属精錬業 火災(被災者なし) アセチレン 労働者が、工場内において、工具ボックス製作のため、アセチレンガス切断用吹管(以下、「吹管」という)を用いて作業をしていた。昼休憩をはさみ、午後の作業開始のため、アセチレンボンベを所定の0.05MPa、酸素を所定の0.7MPaに調節し、ボンベのガス漏れ等を確認したのちに、吹管のアセチレンバルブを開き、点火したところ、逆火により、アセチレンガスボンベから異音とともに炎が上がった。このとき、吹管の酸素バルブ(切断用・予熱用)は閉まったままであった。午前中の作業終了時のガス抜きの際、酸素の圧力を0.7MPaと設定しており、適正圧0.3MPaより相当高く、アセチレンガス0.07MPaを大きく上回っていることから、アセチレンガスホース内に酸素が流入した状態でガス抜きを終え、午後にアセチレンガスと酸素の混合ガスが残った状態で作業を開始したため、混合ガスの燃焼速度がアセチレンガスの供給速度を超えたことにより逆火に至ったものと推定される。 リスクアセスメント未実施
作業標準書・マニュアルの不備
安全衛生教育不足
作業者の作業手順・指示等の不履行
管理責任者等の職務不履行
機器・設備の破損
5月 研究又は調査の事業 爆発 負傷1名(休業) トリアジド化合物 被災者は、塩化シアヌルを出発原料として、メチロール化合物の合成経路を探索することを目的とした実験を行っており、第一段階としてトリアジド化合物を生成していた。被災時はナスフラスコに残っていた約5gのトリアジド化合物を小分けしようとしていた。左手でナスフラスコを寝かせた状態で持ち、右手で金属製スパチュラ(サジ)をフラスコに入れたところ、窒素ガスが爆発的に発生、その圧力でフラスコが破裂した。破裂したフラスコのガラス片で、右目、左手を負傷した。アジド化合物は、衝撃、摩擦、熱により爆発する可能性があるため、樹脂製のスパチュラを使用するのが化学的な常識であるところ、金属製のものを使用、さらに、保護メガネ、保護手袋等の保護具も着用していなかった。 適切な保護具未着用
リスクアセスメント未実施
作業標準書・マニュアル未作成
安全衛生教育未実施
作業者の危険有害性認識不足
作業者の作業手順・指示等の不履行
管理責任者等の職務不履行
異常反応・暴走反応による温度・圧力上昇に伴う機器・設備の破損
10月 化学工業 化学熱傷1名(休業) 1,3−ジイソプロピルカルボジイミド 1,3−ジイソプロピルカルボジイミド(以下「DIC」という。)の製造実験を行っていた。製造品の切り替え整備を行う際に、床のU字溝から同製剤を含んだ汚泥を掻き出したところ、汚泥の周辺に同製剤の蒸気が漂い、この蒸気に作業者が暴露したもの。製造に使用した反応器を洗浄した際に希硫酸を添加して中和したものの、これが充分に中和されず、排出された洗浄廃液に当該物質が残留していたものと思料される。作業者は、途中で臭気を感じるまで、防毒マスクを着用していなかった。なお、DICの製造作業に伴うリスクアセスメントを実施済みであったが、製造実験計画の策定段階では、後整備における分解、中和作業時の残留リスク(分解、中和が不完全の想定)に対する検討がなされていなかった。 適切な呼吸用保護具未着用
リスクアセスメント不足
作業標準書・マニュアルの不備
作業者の作業手順・指示等の不履行
管理責任者等の指示内容の検討不足
8月 鉄骨・鉄筋コンクリート造家屋建築工事業 化学熱傷4名(休業) 強アルカリ性水 小学校校舎改修工事において、1階トイレのピット内の片付作業(便器のはつりがらの撤去)を行っていたところ、ピット内に溜まった水で濡れた部位に痛み、炎症等があり、受診したところ、化学熱傷と診断されたもの。溜まり水を分析したところ、pH=13の強アルカリ性であった。強アルカリ化の原因は、長年にわたる配管の結露水や掃除に使用されたアルカリ性洗剤に由来するものと推定される。作業者は、保護帽、軍手、安全靴を着用していたが、手袋や安全靴は特に防水性のあるものではなかった。工事着手前のリスクアセスメントに際し、有害性に係る事項の調査が行われていなかった。 適切な保護具未着用
リスクアセスメント不足
作業標準書・マニュアル未作成
清掃不足
工事業者への指示内容の不備
作業主任者・管理責任者等の指示内容の不備、危険有害性認識不足
平成28年9月 その他の事業(ガス充填業務) 爆発1名(死亡) 酸素 液化酸素が入っているボンベに、安全弁から酸素が漏れ出ている異常が見られたため、被災者は異常のあるボンベから空のボンベに、液化酸素を移し替える移充填作業を行っていたところ、移充填元のボンベ(異常のあるボンベ)が爆発したことにより、移充填作業を行っていた被災者が爆死したもの。ボンベの加圧コイルの継手の破断面を後日観察したところ、疲労亀裂が生じていた。加圧コイル部から酸素が漏洩していたところに、急激な弁操作を行ったため、圧力差により内層が外層に衝突して着火したものと推定される。定常作業については作業要領が存在するが、非定常作業である移充填作業については、作業要領は存在せず、リスクアセスメントについても取り組まれていない。 リスクアセスメント未実施
作業標準書・マニュアル未作成
装置・設備の管理不足・点検不備
装置・設備の点検基準未作成
作業者の作業手順・指示等の不履行
応力腐食割れ
平成28年1月 金属製品製造業又は金属加工業 肺水腫2名(死亡)化学熱傷2名(休業) NOxガス 工場内の排水処理を行う棟内で被災者2名が金属排水濃縮設備の内部に付着した銀を除去するため、廃硝酸と呼ばれる濃度約50%の硝酸水溶液を用いて、同設備の内部を洗浄していたところ、銀等と硝酸が化学反応を起こしたことにより大量のNOxガス(一酸化窒素、二酸化窒素等の窒素酸化物)が発生し、同設備の覗き窓のガラスが破裂し、同設備内部の硝酸、NOxガスが周囲に漏洩し、近傍で別作業を行っていた派遣労働者2名が肺水腫により死亡、設備の内部を洗浄していた2名が化学熱傷等により負傷した。濃度の高い硝酸水溶液を使用したことや伝熱管に蒸気を通して化学反応を促進させる加熱を行ったことなどから短時間に大量のNOxガスが発生したものと推定される。 作業標準書・マニュアル未作成
安全衛生教育未実施
装置・設備の管理不足・点検不備
装置・設備の点検・管理体制不備
検知・警報装置の管理不足・点検不備
作業者の危険有害性認識不足
異常反応・暴走反応による温度・圧力上昇に伴う機器・設備の破損

ホーム > 政策について > 分野別の政策一覧 > 雇用・労働 > 労働基準 > 安全・衛生 > 統計・災害事例 > 化学物質による災害発生事例について > 4その他の化学物質による中毒等(平成30年)

ページの先頭へ戻る