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G8労働大臣会合議長総括(仮訳)

G8社会サミット
人々を第一に。
危機の人的側面にともに立ち向かう

―G8労働大臣会合議長総括(仮訳)―

1.G8の労働大臣、EU雇用・社会・機会均等担当コミッショナーは、3月29日から31日まで、ILO事務局長、OECD事務総長、IMF第1副専務理事と、「人々を第一に。危機の人的側面にともに立ち向かう」との議題について議論するため、ローマで会した。大臣は、3月29日にソーシャル・パートナーの代表者との対話を行った。ブラジル、中国、インド、南アフリカ、メキシコ、エジプトの雇用労働大臣が2日目に議論に参加した。

2.我々G8労働大臣は、深刻な世界規模の経済停滞が労働市場に与えるインパクトに立ち向かうため、共通の原則に基づき、適切で効果的な政策を議論し、確認した。我々は、現在の世界が直面する状況を抜け出るためには、経済的手法と社会的手法の統合が必要とされていると信じている。

3.危機の人的側面にともに立ち向かうことは、経済、社会及び政治の安定性のために重要である。経済政策、雇用政策及び社会政策を相互に強化することは、危機により生じた深刻な職の喪失に対処し、経済の混乱の影響を受けた人々や家計に所得救済(income relief)・訓練及び再訓練サービスを提供し、人的資本を維持するために不可欠である。適切なマクロ経済政策は、失業を防ぎ、労働市場への速やかな復帰を可能とし、社会的排除を未然に防ぐことを可能とする、雇用・社会政策に関連付けられていなければならない。

4.全てのG8各国、OECD加盟国において、労働市場の状況は減退しており、いくつかの国においては、未曾有のペースで進んでいる。OECDの平均失業率は2009年1月、前年より約1%高い6.9%に達した。このことは、2009年1月までの1年間において、OECD域内で720万人以上の労働者が失業者となったことを意味する。しかし、職の喪失は急速に広がっており、世界中で、失業や働く貧困層が更に増大している。

5.直近のOECDの見通しでは、OECD域内の失業率は、2007年の5.6%と比較して、2010年までに10%に達する可能性があると指摘している。このことは、2007年と比較して、2010年には更に2500万人以上の失業者が発生することを意味する。これは、戦後のOECDの失業率の中で、最も大きな、そして急激な増加である。ILOは、世界中の失業は今年中に4000万人増加する可能性があると予測する。

6.危機に対処するに当たり、鍵となる戦略には以下のものが含まれる。

a  自信を取り戻すための仕事の創出及び効果的な雇用・労働市場政策の促進

b  消費、投資の再活性化を通じた早急な回復の持続を目的とした、効果的で責任のある社会保護システム(社会保障及び労働保護)を通じた人々とのその家族の収入の支援

c  雇用維持を可能とし、社会的排除を防止し、総体としての経済成長と個々人のキャリアの見通し(prospects)を支えるため、適切な教育及び訓練政策を通じた人的資源開発の育成(fostering)

d  持続可能な成長や発展を実現するため、金融・経済の課題と同様に社会的課題への積極的な対処

7.我々は、構造的な政策が、現在の混乱の持続性を減少させるための妥当な手段であることを再確認し、また雇用・社会保護措置と、成長、生産性及び社会的一体性を維持するための構造的な政策との一貫性を長期的に確保しなくてはならない。我々は、グローバル化の社会的側面を促進し、人々が金融の混乱から生じる課題に適切に対処できるようにするための責任を明確にする。

(対処の必要性)

8.我々は、危機の雇用への影響を減らし、経済回復期における職の潜在的成長力を最大化するため、さらに一貫した(coherent)対処を図ることに同意した。我々は、職を保護・増加させ、技能を開発し、社会保護を強化するために、統合して用いることができる、数々の共通する措置を特定した。これらは、大きく、以下の4類型に分けられる。

i  失業を減らすため的を絞った効果的な積極的労働市場政策を促進すること。

ii 訓練の提供と一体となった部分的な失業制度(補償された短時間労働やワークシェアリング等)を通じたものを含め、労働市場との関係を維持し、大規模な失業を防止するため、技能開発の促進及び仕事と労働市場のニーズのマッチング

iii 影響を受けた労働者及び家族を支援するための効果的な社会保護システムを確保すること。

iV 労働市場を、より広い構造的変化に対応可能なものとすること。

9.適切に設計された失業給付制度と結び付けられた積極的労働市場政策は、失業者が労働市場に復帰する可能性を高め、長期の失業を防止する。我々政府は、このような政策が給付の支払いと、効果的な職のマッチングサービスを統合し、必要な者に対し他の労働市場への道を示す、効果的、近代的で適切に機能する、公的な、そして国家政策に従い私的な雇用サービスにより提供されることを確保しなければならない。

10.人々への投資が、生産性を高め、回復を奏功させるための不可欠な手段である。技能向上に焦点を当てる政策は、将来の労働市場のニーズに合致することを確保するものでなければならない。そのため我々は、特にリ・スキリング(re-slkilling)とアップ・スキリング(up-skilling)に重点を置いた訓練・技能に注目することにより、人々の質の高い教育へのアクセスを確保し、また雇用・雇用可能性の維持・回復を確保しなくてはならない。これらは、労働者の労働市場への関係を維持すること、長期の失業を防ぐこと、又は失業者・不完全雇用者が、より持続的な職への復帰の可能性を増やし、回復期に至った際に新たな機会を有効に活用するために、技能を向上させるために不可欠である。これらの訓練の多くは職場において実施されているが、政府が支援するプログラムや雇用サービスについて、訓練や資格認定を実行する際、企業、ソーシャルパートナーや他の関係者と緊密に協力する必要がある。

11.世界的な経済危機は、G8の労働市場の構造的調整を加速させている。その結果、様々なセクターが多様な影響を受けている。我々の政府は、労働者が新たな職が必要とする適切な技能を身につけられるよう、技能と訓練に関する措置を実行に移さなければならない。我々は、2008年の新潟会合で既に協調されたように、潜在的な新たな雇用機会が、将来、環境技術から生じるであろうことに留意する(グリーン・ジョブ)。社会サービス部門(即ち、健康、教育、児童、高齢者及び障害者のケア)も、他の重要な目標の達成に資するとともに、雇用機会を提供する。

12.必要に応じて最低賃金を含めた、効果的で責任のある収入支援プログラムは、最も貧困な者と最も脆弱な者を保護しなければならないが、同時に、求職のインセンティブを確保するものでなければならない。社会保護制度は、自動安定化及び消費の円滑化と同様に消費者マインドの下支えや雇用創出への多大な貢献の観点から、重要な経済的便益を有している。高齢者の早期退職を失業の削減のための手段として用いないこともまた、重要である。

13.世界的な経済停滞がもたらした変化に最も適切に対応するためには、労働市場の効果的な機能を確保することが重要である。いくつかの措置が、次のとおり考えられる。a)一時的な雇用助成金及び職業紹介サービスを含む積極的労働市場政策、b)特に失業者や解雇の危機に直面する人々に対する訓練や技能向上、c)レイオフを防止し、企業の解雇や再雇用に伴うコストを低減し、企業固有の人的資本の損失を防止する、パートタイム、労働時間の短縮を含む、一時的な柔軟な勤務形態(work arrangement)。

14.世界的な景気後退の雇用及び社会への影響に対処するうえで、ソーシャルパートナーの積極的関与が重要である。経済の再構築の枠組みへの、より多くの労働者の関与を含む、力強く効果的で意義のある社会的対話は、高度の経済成長を達成し、生活水準を向上させるのみならず、危機が労働者と使用者に与える影響を緩和する可能性がある。社会的対話の強化は、ソーシャル・パートナーの国際的フォーラムへの積極的な関与を可能にする。

15.我々の社会は、世界経済の統合から利益を得ている。保護主義は今般の危機の主要なリスクの一つであり、避けなければならない。国境を閉鎖することは、金融の溶解から生じる圧力を和らげるのではなく、これに対する対応能力を損ねることになるだろう。世界的な職の危機への対処は、その根底で、このようなリスクに立ち向かう。

16.我々は、人的資本を保護、発展させ、現在の金融危機から生じる雇用及び社会的課題に世界レベルで対処し、より持続可能な発展を促進、確保し、また社会的一体性を促進するため、新興国・発展途上国及び国際機関との対話と協力を促進することを約束した。ILOのディーセント・ワークアジェンダ及び更なる進展もまた、これらのゴールに到達するための効果的な手段である。

17.現在の停滞は、国家にとって、その約束した社会的基準を緩める口実と受け止められるべきではない。むしろ、それらが効率的、効果的であり、特に最も脆弱な者を含めて実際に危機により影響を受けた全ての人々を支援するものであることを確保するため、社会保護スキームを評価し、実現可能であれば拡大する機会である。適切な社会保護の仕組みがまだ存在しない国においては、保護するための新たな方策を実行するため、時宜を得た行動が求められる。この点から、ILOの労働における基本原則及び権利に関するILO宣言(ILO Declaration on Fundamental Principles and Rights at work)及び2008年の公正なグローバル化のための社会正義に関するILO宣言の完全な尊重と効果的な実行が、特に重要である。

18.ドレスデン会合の議長総括に沿って、CSRイニシアティブを促進することは、労働者と経営者の信頼を回復する努力を強化するものである。この文脈で、労働基準の履行は政府の役割であるが、持続可能な企業及びCSRの促進は重要である。ILOの多国籍企業及び社会政策に関する三者宣言及びOECDの多国籍企業ガイドラインの長所を踏まえ、これらの2機関は、国際的な企業の社会発展への貢献を助長するため、引き続き協力する必要がある。

19.グローバルガバナンスの新しい文脈において、全てのレベルにおけるより良い政策の一体性が優先課題である。社会的側面が、持続可能な経済社会活動の促進に関する議論を目的とするものも含め、社会、労働、雇用の優先課題を経済金融の課題と結びつけ、より統合されたガバナンスの重要な一部である。さらに、国際機関は、社会政策と経済政策の関係のモニタリングに資する包括的な指標を発展させるため、ともに行動することが求められる。

20.我々は、国際機関、特にIMF、OECD及びILOに、この文書の原則に基づき、効果的な雇用政策及び社会保護政策が危機の影響を軽減し、持続可能な回復を確保するため、アドバイスや政府との協力を行う際に、労働市場と社会的影響を考慮に入れること及び、教訓を共有し、より詳細な提言を作成することを推奨する。我々は、現在のG20プロセスが、これら及び他の関連機関の作業を認識するよう働きかける。

21.我々は、雇用・雇用可能性を促進し、社会的保護を向上させ、より多くの職を創出するための今後の措置について、対話を継続することを約束した。来るG20ロンドン・サミットは、今回の会合の成果、メッセージを示す、関連する機会となるだろう。我々は、2009年のILO総会において「世界労働協定」の提案を検討することに、興味を持って言及する。7月のラ・マッダレーナ・サミットは、首脳らが、この議論を継続し、新たな措置を促進する機会となるだろう。OECDの労働担当大臣会合は、これらの論点についてより詳細に検討する更なる機会となるだろう。

22.我々G8労働大臣は、この会議を、全てのG8アジェンダを促進するための重要な場として  評価する。そのため、我々は、カナダ政府がG8議長国として、2010年の本会合の開催を積極的に検討することを推奨する。

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