別添1 |
育児支援家庭訪問事業に関する調査結果
I. | 目的 育児支援家庭訪問事業(以下「事業」という。)を推進するための参考資料を得る。 |
II. | 調査期間 平成16年12月〜17年3月 |
III. | 調査方法 都道府県、指定都市、中核市の児童福祉主管部(局)及び母子保健主管部(局)の協力を得て、(1)平成16年度に先駆的に事業を実施している市町村の取組方法、(2)事業を実施していない市町村の理由について調査した。 |
IV. | 調査結果 |
1. | 先駆的に事業を実施している市町村の取組方法 |
1) | ヒアリングを実施した市町村 都道府県、指定都市に先駆的な取組例の推薦を依頼し、以下の6市町村に対してヒアリングを実施した。 |
(1) | 保健部門に中核機関を置いている市町村 北海道札幌市・茨城県水戸市(水戸市担当者の他に茨城県担当者も含む)・千葉県千葉市・高知県中村市(現四万十市) |
(2) | 福祉部門に中核機関を置いている市町村 愛知県犬山市・福岡県福岡市 |
2) | 事業計画上の課題と解決策 |
(1) | 訪問支援者の人材確保及び育成方法
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(2) | 予算確保
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(3) | 市町村合併
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(4) | 行政機関の多部署・多職種の連携例(水戸市) 年度途中からの事業実施であったため、時間的余裕のない中、中核機関の選定や要項策定にあたっては、保健福祉部内各課で慎重に検討した。 特に要項については、本事業がこれまでの保健事業とは異なる取り組みを求めており、現場の保健師には戸惑いがあったため、総務課をはじめ関係各課との協議を必要とした。 また、本事業の重要性や中核機関の事務量について、管理部門(人事課、総務課、財政課)との協議を重ねることによって、平成17年度においては、本事業の専従嘱託員の定員1名を確保することとなった。 |
3) | 事業実施上の工夫点 |
(1) | 行政機関と医療機関の連携についての取組例(札幌市) 医療機関からの情報提供を促進するために、医師会、市立病院の産婦人科及び小児科の医師に検討会に参加してもらい、診療情報提供書の様式や母子保健事業を掲載した医療機関用のマニュアルを一緒に作成することで、医師の理解が得やすくなり、連携が図りやすくなった。 |
(2) | 訪問支援者のサポートについての取組例
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(3) | 保健部門と福祉部門の役割分担の改善例(犬山市) これまで虐待相談は児童福祉部門で受け、乳幼児健康診査の未受診者や養育支援が必要な家庭への支援は母子保健部門で行っていたため、育児支援家庭訪問事業は母子保健部門で運営すべき事業だと当初考えた。しかし、事務局の業務と訪問支援という実践活動の両方を一部門で担うことはかなりの負担になることから、福祉部門は中核機関となって情報を一元的に受けて管理する役割を担い、母子保健部門はそれらの情報をこれまで蓄積してきたアセスメント手法に基づいて支援計画を立て実践していくことについての責任を持つという役割分担とした。 |
4) | 事業開始後の課題 |
(1) | 様式の更新(犬山市) 配布されたアセスメント指標は専門用語が多く、福祉部門にいる事務職では理解しにくいという意見もあり、事務職が理解できるような簡略的な説明資料が必要である。 |
2. | 事業を実施していない理由 各都道府県に、人口規模を勘案した上で約10市町村の抽出を依頼し、事業を実施していない理由(主たる理由2つ)をたずねた。回答があった指定都市9か所、市町村443か所の回答は表1のとおりである。
事業を実施していない理由としては、「人材確保が難しい」、「予算確保が難しい」が多く、「その他」で多かったものは、常勤の職員(保健師、心理職員等)で対応している45か所(10.0%)、市町村単独で類似事業を実施している21か所(4.6%)であった。 また、443市町村を人口10万人未満、10万人以上50万人未満、50万人以上100万人未満、100万人以上で比較したところ、人口10万人未満の自治体を除き、「人材確保が難しい」と「予算確保が難しい」が困難理由の1、2位に挙げられ、人口10万未満の市町村のみ「市町村合併を控えている」が2位であった。 上記の調査結果等を踏まえて、事業を実施していない理由として以下が考えられた。
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V. | 育児支援家庭訪問事業の推進のための方策 今回の調査及び事業設立後に地方自治体から寄せられた意見を踏まえると、事業の推進方策として以下が考えられる。 |
1. | 人材確保及び育成について |
(1) | 市町村間での協働等による人材の確保・育成 人口規模の小さい市町村では、市町村内に居住する者だけでは専門職を確保・育成することが難しいと考えられる。このため、近隣の市町村で人材を確保するために、市町村の協働によって人材の募集、研修及び登録の業務を実施したり、研修の実施にあたって保健・福祉関係の専門職能団体等を活用する方法も考えられる。なお、平成16年度においては人件費のみが交付対象となっていたが、平成17年度より訪問支援者に対する研修費についても交付対象となっている。 |
(2) | 既存の事業への参加者等の活用 市町村が実施する児童福祉事業や母子保健事業には、事業実施のための一定の研修を受けた登録者や、日頃から地域活動を行っている母子保健推進員等のボランティア等が参加している。また、全国には子ども虐待防止相談を実施している民間団体が増えてきており、訪問支援者としての資質を持ち合わせている会員に協力を依頼する方法もある。 |
2. | 予算確保について |
○ | 国の施策(次世代育成支援対策推進法や子ども・子育て支援プラン等)の活用 平成16年末に策定された「子ども・子育て応援プラン」(平成16年12月24日少子化社会対策会議決定)では、育児支援家庭訪問事業について「全市町村での実施を目指す」と明記している。また、平成17年度からは、「次世代育成支援対策交付金(ソフト交付金)」の中の重点配分となる事業として位置づけられており、児童虐待に関わる部門の協働により、各市町村の状況を把握し本事業への取組を推進していく必要がある。 また、本事業が、次世代育成支援対策交付金に位置づけられたことで、事業内容、実施方法等は、地域の特性や創意工夫を活かしたものにすることが可能となったため、それぞれの自治体の実情にあわせたものとして活用することが可能である。 |
3. | 関係機関(特に医療機関)との連携 厚生労働省において把握している虐待を受けて死亡に至った子どもの事例の検証を行ったところ、死亡した子どもの約4割が0歳児であり、0歳児のうち約8割が月齢4ヶ月以下であった。また、行政がすべての子どもに関わる最初の機会が4ヶ月健診であることが多いことがわかっている。 虐待は、発見や対応が遅れるほど手厚い支援が必要になることを踏まえると、妊娠期間中及び出産後の母子の健診や、子どもの疾患等による受診を契機として支援が必要な家庭と接点を持つことのできる医療機関からの積極的な情報提供は重要な意味を持つ。平成16年3月には、医療機関から市町村に情報提供を行った場合は診療報酬が支払われることとなっており、市町村から医療機関に対してこうしたシステムの積極的な活用を依頼する等、医療機関との連携を密にしておくことが重要である。 |
4. | その他(様式等) 厚生労働省が提示した「訪問支援の必要性を判断するための一定の指標(アセスメントシート例)」については、保健部門では通常用いている指標であるが、他分野の職員には専門用語が理解しづらいという意見があるため、事業の趣旨を踏まえつつ、各市町村の実情にあわせてシートを改良することも方策の一つである。 |
【参考事例】北海道札幌市<保健部門による医療機関連携型大都市モデル>
1. | 札幌市の概要
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2. | 行政機関の担当部署 札幌市保健福祉局健康衛生部地域保健課 |
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3. | 中核機関名 各区保健福祉部地域保健課(保健センター) |
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4. | 事業名称 保健と医療が連携した育児支援ネットワーク事業 |
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5. | 事業開始時期 平成15年6月 |
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6. | 事業概要 育児不安や育児困難、または児童虐待に結びつく可能性の高い要因を有する妊婦及び親子(以下「ハイリスク母子」という。)を早期に把握し、医療機関と保健センター等が連携して育児を支援する体制を整備する。
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7. | 事業規模 予算額:9,833千円 平成16年12月1日現在の受け持ち事例数:149 |
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8. | 対象家庭の決定方法 市内に居住する以下の者で、医療機関から情報提供のあった者
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9. | 支援者の職種等 保健センター:保健師・助産師 母子保健訪問指導員:保健師・助産師 |
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10. | 支援者の研修等 保健所実施の職員研修:年1回 母子保健訪問指導員研修:年2回 職員派遣研修:3回 |
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11. | 連携がとれている関係機関名及びか所数 児童相談所、医療機関:25か所、療育施設:1か所、患者会:1か所 |
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12. | 虐待防止ネットワークの有無及び活用状況 虐待防止ネットワーク:有り
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13. | 事業の周知方法等 市内産科婦人科・小児科医療機関211か所に事業内容を周知 |
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14. | 事業を実施する際に出てきた問題点や課題及びその解決策や工夫点等 医療機関との全市的な連携システムを構築するため、事業開始にあたり、医師会代表、医療機関(小児科、産婦人科)代表などの外部関係者や、市立病院及び保健センター関係者による「検討会」を設置した。 検討会では、本市の母子保健をめぐる問題の共有化を図るとともに、事業目的や対象者及び連携方法等について検討し、情報提供が必要な事例の具体例や保健センターが行う母子保健事業(訪問指導における支援内容等)について、医療機関の理解を図ることとした。 これらの検討結果を踏まえ、対象とするハイリスク母子の概念や診療情報提供書の様式及び保健センターにおける母子保健事業を掲載した医療機関用のマニュアルを作成し、事業開始前に小児科、産婦人科を有する医療機関に送付するとともに、産婦人科及び小児科医会に対する説明会を実施し、周知を図った。 |
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15. | 今後の課題等
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【参考事例】茨城県水戸市<保健部門による中規模市モデル>
1. | 市の概要
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2. | 行政機関の担当部署 水戸市保健福祉部保健センター |
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3. | 中核機関名 水戸市保健センター |
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4. | 事業名称 水戸市育児支援家庭訪問事業 |
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5. | 事業開始時期 平成16年10月 |
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6. | 事業概要 乳幼児の養育について支援が必要でありながら、積極的に自ら支援を求めていくことが困難な家庭に対し、訪問による育児支援を実施することにより、安心して育児のできる環境づくりを行う。 |
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7. | 事業規模 予算額:1,600千円 平成16年12月1日現在の受け持ち事例数:5 |
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8. | 対象家庭の決定方法 乳幼児を養育する家庭と接点のある市役所窓口や医療機関等からの情報を中核機関で集約し、関係者で構成する「子育てアドバイザー派遣検討委員会」で訪問支援者(子育てアドバイザー)派遣の要否を決定する。 なお、検討委員会においては、支援者の職種や支援の期間等についても討議し、対象家庭ごとの支援計画を決定している。 |
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9. | 支援者の職種等 保健師、看護師、栄養士、保育士、子育てOB |
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10. | 支援者の研修等 茨城県が実施する「子育てアドバイザー養成研修」 |
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11. | 連携がとれている関係機関名及びか所数 茨城県福祉相談センター、茨城県水戸保健所、水戸市児童福祉課、水戸市療育センター等 |
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12. | 虐待防止ネットワークの有無及び活用状況 虐待防止ネットワーク:有り、「水戸市児童虐待防止連絡協議会」を設置。
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13. | 事業の周知方法等 関係機関への説明、新聞掲載、少子対策・子育て支援総合ガイドブックに掲載 |
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14. | 事業を実施する際に出てきた問題点や課題及びその解決策や工夫点等
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15. | 今後の課題等
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【参考事例】千葉県千葉市<保健部門による大都市モデル>
1. | 市の概要
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2. | 行政機関の担当部署 千葉市子ども家庭部子育て支援課 |
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3. | 中核機関名 各区保健センター(6か所) |
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4. | 事業名称 千葉市育児支援家庭訪問事業 |
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5. | 事業開始時期 平成16年4月 |
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6. | 事業概要 育児不安の強い家庭に対し、過重な負担がかかる前の段階において、訪問による援助で当該家庭において安定した児童の養育が可能となることを目的とする。 |
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7. | 事業規模 予算額:平成16年度4,645千円 平成16年12月1日現在の受け持ち事例数:549 |
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8. | 対象家庭の決定方法 乳幼児集団健康診査事業等から、育児不安・育児ストレスの問題により孤立感等を抱え、虐待に至る恐れ又は、そのリスクを抱える家庭を事業の対象とする。 |
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9. | 支援者の職種等 保健師、助産師 |
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10. | 支援者の研修等 平成16年度1回実施 |
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11. | 連携がとれている関係機関名及びか所数 児童相談所、子育て支援センター、保育所 |
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12. | 虐待防止ネットワークの有無及び活用状況 虐待防止ネットワーク:有り
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13. | 事業の周知方法等 健診時、健診後に保健師から個別に説明する。 |
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14. | 事業を実施する際に出てきた問題点や課題及びその解決策や工夫点等 4ヶ月児、1歳6ヶ月児、3歳児健診で発見された人を対象としてきたが、もっと早い時期でのアプローチが必要と考えられ、新生児訪問、2ヶ月児訪問等での事後フォロー者を対象に拡げている。 |
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15. | 今後の課題等
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【参考事例】愛知県犬山市<児童福祉部門による中規模市モデル>
1. | 市の概要
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2. | 行政機関の担当部署 犬山市民生部福祉課児童担当 (犬山市民生部子ども未来課児童担当(平成17年4月1日より)) |
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3. | 中核機関名 犬山市民生部福祉課児童担当 (犬山市民生部子ども未来課児童担当(平成17年4月1日より)) |
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4. | 事業名称 犬山市育児支援家庭訪問事業 |
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5. | 事業開始時期 平成16年10月 |
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6. | 事業概要 児童の養育について支援が必要でありながら、積極的に自ら支援を求めていくことが困難な状況にある家庭に、訪問による育児支援を行うことにより、当該家庭において安定した児童の養育を図ることを目的とする。 |
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7. | 事業規模 予算額:1,896千円 平成16年12月1日現在の受け持ち事例数:0 |
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8. | 対象家庭の決定方法 要保護児童に関する相談や通告のあった家庭、乳幼児集団健診事業等から対象となる家庭、児童福祉関連の窓口において気になった家庭をリストアップし、所定のアセスメントを行うことで対象家庭を決定する。 |
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9. | 支援者の職種等 看護師、保育士、社会福祉士等 |
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10. | 支援者の研修等 なし(今後の検討課題) |
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11. | 連携がとれている関係機関名及びか所数 保育所、小中学校、児童館、ファミリー・サポート・センター、子育て支援センター、保健センター、家庭児童相談室、心身障害児通園施設、母子生活支援施設、児童養護施設、警察署、児童相談センター等 |
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12. | 虐待防止ネットワークの有無及び活用状況 虐待防止ネットワーク:有り
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13. | 事業の周知方法等 関係機関への周知については、危機児童家庭連絡協議会(平成17年10月1日より要保護児童対策協議会)などを通じて行う予定。市民への周知については、事業の趣旨から対象家庭となることに拒否感がでる可能性があるため、今のところ、積極的に広報を行う予定はない。 |
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14. | 事業を実施する際に出てきた問題点や課題及びその解決策や工夫点等 市民に対する「児童虐待予防」の趣旨を意識させないよう事業の周知方法と初回訪問時の対応方法。 |
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15. | 今後の課題等 対象家庭を把握すべき関係機関(窓口業務等)の職員に対する意識づけが課題。 |
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16. | 児童福祉部門と保健部門との連携 子ども未来課児童担当と健康推進課母子保健担当で、月に一度、「育児支援検討会議」を開催することで個々の家庭に係る情報を共有し、支援方針の決定を行っている。 |
【参考事例】 | 高知県中村市(現四万十市) <保健部門中心の児童相談所連携型小規模市モデル> |
1. | 市の概要
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2. | 行政機関の担当部署 中村市保健介護課 |
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3. | 中核機関名 中村市健康管理センター |
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4. | 事業名称 育児支援家庭訪問事業 |
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5. | 事業開始時期 平成16年4月 |
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6. | 事業概要
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7. | 事業規模 予算額:2,460千円 平成16年12月1日現在の受け持ち事例数:110 |
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8. | 対象家庭の決定方法 母子健康手帳交付申請時に実施する妊娠届アンケート及び乳幼児健診 |
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9. | 支援者の職種等 保育士、保健師 |
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10. | 支援者の研修等 県主催の母子保健指導者研修会:年1回 児童相談所企画の乳児院視察研修・保育所(高知市)視察研修:年1回 |
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11. | 連携がとれている関係機関名及びか所数 児童相談所・医療機関:4カ所 子育て支援関係:4カ所 幡多保健所 福祉事務所 |
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12. | 虐待防止ネットワークの有無及び活用状況 虐待防止ネットワーク:有り 中村市子ども支援ネットワークを定期的に開催し、その他支援する必要が生じた家庭には、必要に応じてケース検討会を開催して、ネットワークを活用した支援を行っている。 |
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13. | 事業の周知方法等 母子健康手帳交付申請時に周知し、支援員による乳児訪問を紹介する。 |
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14. | 事業を実施する際に出てきた問題点や課題及びその解決策や工夫点等
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15. | 今後の課題等 平成12年より、子育て支援に重点をおいた活動として、育児サークル、子育て応援団の育成に力を注いできた。児童相談所との連携では、虐待の疑いがあったケースの状況確認の依頼があった場合、第一に育児力を低下させないことを念頭におき、過去の乳幼児健診、乳幼児相談の状況を確認しながら協議の上、保健師が訪問を継続して虐待防止につなげている。 育児支援家庭訪問事業を開始する経過として、20年前から中村市母子連絡会と称して、保健所、公立病院、民間病院、児童相談所、保健介護課の職員が、年1回の自主的な交流会を持ち、情報交換していた。その会の中から、今まであった未熟児防止対策を目的とした妊娠届アンケートを、虐待発生予防の目的を加えた妊娠届アンケートとする検討がなされ、平成14年3月から妊娠届アンケートととして開始する。特に、アンケート内容については、児童相談所の医師より指導があり、中村市版を作成し、現在に至る。 中村市では、これまでも乳児健診の受診率は98%であり、乳児健診で問診票、診察から母子の状況を把握し、健診後のカンファレンスで、要支援家庭のフォローをしていた。この妊娠届アンケート(心の問題を含む)の実施により、妊娠時から要支援者に対応することができ、4ヶ月未満の乳児の虐待予防対策が可能となった。しかし、マンパワー不足で妊婦のハイリスク者への対応が困難な中、県のモデル事業「高知県育児支援家庭訪問事業」の話をいただき、これまでの経過を踏まえ、児童相談所、事務部門から市への事業説明を受け、当事業を実施することで、より早い段階の妊婦への支援が可能となった。 今後は、世代間伝達を遮断するための保健師のスキルアップが最重点課題である。 |
【参考事例】福岡県福岡市<児童福祉部門による大都市モデル>
1. | 市の概要
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2. | 行政機関の担当部署 福岡市保健福祉局こども総合相談センター子ども虐待防止推進担当課 (平成17年度から福岡市こども未来局こども総合相談センターこども緊急支援担当課に変更) |
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3. | 中核機関名 福岡市こども総合相談センター(児童相談所) |
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4. | 事業名称 育児支援家庭訪問事業 |
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5. | 事業開始時期 平成16年10月 |
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6. | 事業概要 子育て不安や軽度な被虐待経験等家庭養育上の問題を抱える家庭に対し、子ども家庭支援員を派遣し、子育ての相談・支援を行い、地域における児童虐待の未然防止や再発防止のための安全ネットを図る。 |
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7. | 事業規模 予算額:1,864千円(平成17年度:3,517千円) 平成16年12月1日現在の受け持ち事例数:15(平成17年12月1日現在:35) |
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8. | 対象家庭の決定方法 事業導入が必要な家庭を、こども総合相談センター及び各区保健福祉センターで構成する育児支援家庭訪問支援方針会議で決定することとしている。 (支援対象家庭)
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9. | 支援者の職種等 保育士、看護師、教員、社会福祉士、助産師等の資格所有者を公募、選考試験を経て、養成研修を修了したもの。 |
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10. | 支援者の研修等 養成研修を3日間(1回3時間)実施 |
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11. | 連携がとれている関係機関名及びか所数 保健福祉センター(7区) |
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12. | 虐待防止ネットワークの有無及び活用状況 虐待防止ネットワーク:有り
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13. | 事業の周知方法等 10月の事業開始時記者発表。各区保健福祉センンターへの事業説明、パンフレットの配布。 |
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14. | 事業を実施する際に出てきた問題点や課題及びその解決策や工夫点等 支援員の確保をどうするか→公募制と研修の実施。 対象家庭の決定、支援内容をどうするか→準備段階から区保健福祉センターの保健師に参画してもらい、実務者による支援方針会議を設置し、対象家庭及び支援内容の決定、支援員とのマッチング、評価を行うようにした。 |
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15. | 今後の課題等
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