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児童虐待を行った保護者に対する援助ガイドライン

(別添)

児童虐待を行った保護者に対する援助ガイドライン

第1 目的

児童虐待への対応は、「児童虐待の防止等に関する法律」(平成12年法律第82号) (以下「児童虐待防止法」という。)に基づき、発生予防、早期発見・早期対応、子どもの保護や支援、そして保護者の支援が行われており、関係者の努力によりその進展が図られてきたところである。
 しかしながら、保護者の支援は立ち遅れていることから逐次制度改正が行われてきており、平成16年の改正では、同法第4条において、児童虐待を行った保護者に対する親子の再統合の促進への配慮その他の児童虐待を受けた児童が良好な家庭的環境で生活するために必要な配慮をした適切な指導及び支援を行うため、国及び地方公共団体は、必要な体制の整備に努めなければならないこととされ、さらに、平成19年の改正では、同法第11条において、児童虐待を行った保護者が都道府県知事による指導に係る勧告に従わない場合の都道府県知事の講ずべき措置を定める規定が、また、同法第13条において、児童福祉法第27条第1項3号に基づく児童福祉施設又は里親(以下「児童福祉施設等」という。)に対する入所又は委託に係る措置(以下「児童福祉施設入所措置等」という。)を解除する際に、保護者指導の効果等を勘案すべきとする規定が新たに設けられた。
  他方、実態としても保護者への指導・支援は、児童相談所の規模、職員体制、専門職種の陣容、児童福祉関係機関の社会資源の違い等、各自治体ごとに異なった対応が行われており、一定の成果を挙げている自治体がある一方で、取組が緒に就いたばかりの自治体があるのも事実である。
  これらのことから、児童虐待を行った保護者に対する指導・支援を一層推進するために、児童相談所における保護者への指導・支援に関して最低限実施すべき事項を明確にするとともに、その指導効果等を踏まえた措置解除の在り方について基本的なルールを定めたものである。

第2 基本事項

1 ガイドラインの位置づけ

このガイドラインにおいては、児童相談所が、児童虐待相談として受理した相談(通告・送致を含む。)につき、援助方針会議において決定した援助内容に沿って、保護者の問題に対して直接的又は間接的に働きかけを行い、家族機能の回復を図ることを目的として行われる「保護者への指導・支援」に関して基本的ルールを定めるものである。なお、当ガイドラインの適用にあたっては、明らかに児童虐待相談と認められる事例の他、保護者の経済的事情等により児童福祉施設へ入所措置している事例においても、養育放棄と判断される事例も少なからずあることから、運用に当たっては広く適用するよう努められたい。
  基本的ルールは、実際の業務の流れに沿うことを基本として、次の考え方で整理を行うものである。
  実際、児童相談所では、児童虐待に関する相談を受けた場合、[1]相談の受付、[2]受理会議、[3]調査・診断・判定、[4]判定会議、[5]援助方針会議、[6]援助指針の作成、[7]援助の実行、のプロセスで対応し、子どもの一時保護に関しては、必要と認められれば緊急度に応じていずれの場面かによらず実施される。
  保護者への指導・支援は、援助方針会議において子ども及び保護者に関するアセスメントを踏まえて決定することとなるが、当然のことながら、子どもの措置と表裏一体で検討される。子どもの措置の決定においては、児童虐待の程度や保護者の状態、地域の支援体制等を総合的に勘案して在宅又は児童福祉施設入所措置等の選択がなされる。さらに、児童福祉施設入所措置等に関しては、保護者の同意があるかどうかによって児童福祉法第28条第1項1号に基づく児童福祉施設入所措置等(以下「28条措置」という。)が採られるかが決定される。
  このことから、子どもに対して採られる措置を基軸として、保護者への指導・支援のルールを整理する。

2 基本的な考え方

児童虐待を行った保護者に対する指導・支援は、子どもの最善の利益を保障するために実施するものである。
  子どもがその保護者から虐待を受けた場合、必要に応じて保護者から一時的に分離することはあるが、そうした場合であっても当該子ども及び保護者が親子であることには何ら変わりはなく、保護者が虐待の事実と真摯に向き合い、再び子どもとともに生活できるようになる(以下「家庭復帰」という。)のであれば、それは子どもの福祉にとって最も望ましいことである。
  しかしながら、深刻な虐待事例の中には、保護者に対する指導・支援の効果がなく子どもが再び保護者と生活をともにすることが、子どもの福祉にとって必ずしも望ましいとは考えられない事例もある。このような場合についてまで家庭復帰を促進することが望ましいものとは考えられず、むしろ保護者と一定の距離を置いて生活することが子どもの福祉に資するものである。
  家庭復帰を目指す事例に限らず、家庭に戻れなかった事例も含めて、必要なものは、子どもを健全に育むための「良好な家庭的環境」であり、この考え方を基本にした、子ども及び保護者に対する指導・支援を行うことが必要である。

3 用語の使い方

当ガイドラインにおいては、児童虐待防止法で保護者の「指導」・ 「支援」と規定された文言に関しては、「保護者指導」、「保護者支援」の二つの用語に分けて使用し、これらを総称して保護者援助と言う用語を使用する。
  なお、用語の意味は次のとおりである。
  「保護者指導」とは、児童福祉法第26条第1項2号に基づく児童福祉司指導、児童委員指導、児童家庭支援センター指導若しくは障害児相談支援事業を行う者の指導(以下「26条指導措置」という。)又は同法27条第1項2号に基づく児童福祉司指導、児童委員指導、児童家庭支援センター指導、知的障害者福祉司指導、社会福祉主事指導若しくは障害児相談支援事業を行う者の指導(以下「児童福祉司指導措置等」とする。)であり、児童相談所長又は都道府県知事による行政処分として行われるものをいう。なお、児童福祉司指導の一環として行われる児童福祉施設等関係機関による指導は、この概念に含まれる。
  「保護者支援」は、保護者の主体性を尊重した取組であり、保護者のニーズに応じて行う児童福祉法第11条第1項2号ニに基づく指導(以下「11条指導」という。)、児童福祉施設最低基準(以下「最低基準」とする。)に規定された乳児院(最低基準第24条の2)、児童養護施設(最低基準第45条の2)、情緒障害児短期治療施設(最低基準第76条の2)、児童自立支援施設(最低基準第84条の2)に入所する子どもやその家庭の状況等を勘案して、子どもの自立を支援するために策定される計画(以下「自立支援計画」という。)に沿って実践される各施設の取組、並びに、その他関係機関における取組とする。

第3 保護者援助に関する援助指針の策定

1 援助指針は、児童相談所が受理した事例に関して策定するものであり、保護者への援助内容についても明示する。援助指針の策定においては、必要に応じて子ども及び保護者等の当事者の参画を求める。

2 援助指針は、子どもの年齢、心身の状況、発達の状況等を勘案して、具体的な短期目標の設定と長期目標の設定に努め、再評価の時期についても子どもの成長や変化に応じて適時適切に行い、方針を見直す。

3 援助の初期段階は、子どもに対しては新たな生活に慣れること等を目標にした取組を開始する一方で、保護者に対しては短期集中的に濃密な取組を行う時期であることから、これを念頭に置いた計画を策定するとともに、短期目標は、長くとも3か月以内とする。
  初期段階の経過後は、乳幼児の場合は3か月ごと、少年(学童以降)の場合は6か月ごとを目安として目標を設定することとし、再評価、指針の見直しについても、当然のことながらこの期間に併せて実施する。再評価、指針の見直しに当たっては、当該児童福祉施設等と十分協議の上、必要に応じて子ども及び保護者等の当事者の参画を求める。

4 保護者援助の内容を決定する際には、子どもに対して採られる措置を基軸にして決定すること。

(1)28条措置が採られる場合の保護者援助は、児童福祉司指導措置等を採ることを原則とする。ただし、保護者が重篤な精神疾患による入院や長期収監中である等、指導の実行が困難な場合はこの限りではない。

(2)上記(1)以外の親権者又は未成年後見人(以下「親権者」という。)の同意により児童福祉施設入所措置等が採られる場合の保護者援助は、必要に応じて児童福祉司指導措置等を採ることとし、十分な相談関係が維持される場合は行政処分によらない児童相談所としての11条指導でも差し支えないものとする。
  児童福祉司指導措置等を採るべき例としては、児童虐待の自覚がない保護者、自己中心的な行動を展開する保護者、周囲の援助を拒否する保護者、入所する子どもに無関心な保護者等、保護者の主体性を尊重するだけでは児童の福祉が図れないため、児童相談所が行動の枠組みを示す必要がある事例が考えられる。

(3)子どもが在宅のまま保護者を援助する場合(以下「在宅指導」という。)には、児童相談所の児童福祉司、児童心理司、さらには、市町村(要保護児童対策地域協議会)、児童福祉施設、保健所等と連携・協力して行うこととなるので、それぞれの機関の役割、到達目標を明示するとともに、市町村に対応の責任を移す時期等の見通しを示すこととする。特に、市町村が実施する育児支援家庭訪問事業等の対象となる事例であると考えられる場合には、市町村にその旨を通知する等の具体的な援助を行うこと。
  なお、在宅指導は、事例に応じて児童福祉司指導措置等、26条指導措置、11条指導のいずれかの対応を採ることとなるが、特に、市町村から送致された事例や児童相談所が行動の枠組みを示す必要がある事例は、児童福祉司指導措置等 を採ることが必要である。

5 援助指針は、個々の事例に則して定期的に見直しを行うが、里親へ委託する子ども及び児童福祉施設へ入所している子どもの自立支援計画についても、相互に連携を図り遅滞なく自立支援計画の見直しを行う。この場合、児童福祉施設が把握する子ども及び保護者に関する情報、児童福祉司等が援助過程で把握した情報を相互に共有した上で検討することが必要である。

6 児童福祉施設入所措置等が採られた子どもに関する援助指針は、個々の状態に則して長期目標、短期目標が設定され、目標に向けて保護者援助が進められる。その援助過程で家庭復帰の可否が判明することとなるが、家庭復帰の可能性が低い場合には、状態を適切に評価して出来る限り早期に里親委託等に変更するなど、子どもの立場を考慮した援助指針の策定・見直しに努める。

7 家庭復帰を行う場合には、これまでの保護者援助の経過及び子どもへの援助の経過を総合的に評価し、要保護児童対策地域協議会を活用するなど地域の関係機関における援助体制を組織した上で、一定期間、児童相談所が児童福祉司指導等によりケースマネジメントを行う援助指針を立てることとする。

(参考:図1)保護者援助の全体イメージ

第4 保護者援助の基本ルール

子どもに対して採られた措置に基づき、保護者援助のルールを類型化する。

1 子どもを在宅で生活させながらの保護者援助(在宅指導)

(1) 在宅指導が採られる事例は、児童虐待の状態が深刻ではないと判断される事例であることから、通常は、来所面接、家庭訪問等により、保護者の主体性を尊重しながら児童虐待の理解、子どもとの接し方、養育方法、生活の改善等に関する指導等を継続して行うことが基本である。

(2) 在宅指導は、児童相談所を中心にして、市町村(要保護児童対策地域協議会)、児童福祉施設、保健所等と連携・協力して行うこととなるので、援助内容に関して市町村等に対して丁寧な説明を行い、それぞれの機関の特性を生かした援助を行う。

(3) 児童福祉司指導措置等を採る場合には、決定通知に保護者が行うべきことを明示し、指導するとともに、当該措置が採られた場合には、児童虐待防止法第11条第2項に基づき指導を受けなければならないことを周知する。

・ 当該指導に従わない場合には、児童虐待防止法第11条第3項において、都道府県知事による勧告を行うことができることとされているので、積極的に勧告を行う。この勧告を行うことにより、効果的に援助を実施できることが期待されるほか、次の手続を採る際の前提条件となることから積極的な運用を行う。

・ 当該勧告に従わない場合には、同条第4項に基づき、必要があると認める場合は、一時保護を行い、28条措置等の必要な措置を講ずるものとされているので、積極的な運用を行う。

・ また、同条第5項では、必要に応じて親権喪失宣告の請求を行う旨も規定されており、これらの連続した対応を採ることにより、子どもの最善の利益を確保するよう努める。

・ 特に、これらの場合には家庭裁判所の審判を仰ぐ必要があるため、援助指針、保護者への援助とこれに対する保護者の態度等を具体的に記録しておくこと。

(4) 児童虐待の悪化が予見される場合には、具体的な指導を行う一方で、状態の悪化への対応方針を定めておき、速やかに一時保護等の対応を行うことができる体制を整備する。

(参考:図2)在宅における保護者援助のイメージ

2 児童福祉施設入所措置等を採る保護者援助

(1) 親権者の同意に基づく児童福祉施設入所措置等の保護者援助

[1] 保護者援助は、子どもが児童福祉施設へ入所する準備段階から開始される。保護者に対しては、同意をした場合であっても保護者自身の問題行為について整理を促す面接に努める。

・ また、初期段階の面接において、できる限り、援助内容に対する意見を聴き取るとともに、将来の見通し等の説明を行うことで保護者援助を受け入れる動機付けが深まるので、丁寧に行うこと。可能ならば、援助指針の策定時ないしは見直しに際しては、保護者等の当事者の参画を得て方針を決めることも必要である。

[2] 親権者の同意により児童福祉施設入所措置等が採られる場合は、保護者の側に保護者援助を受ける意識があることが多いため、児童福祉司指導措置等でなくとも効果が期待できる場合もあるが、児童福祉司指導措置等を採ることも含め、効果的な対応に努める。

・ 親権者の同意を得る際には、子どもの援助内容、保護者の行為改善に向けた援助内容に関しても併せて同意を得ておく。
  「子どもの援助内容」の例としては、児童福祉施設での生活や援助内容、学校での指導内容についてできる限り理解、協力を得るよう努め、子どもの状況によっては通学先の変更や学校行事等に保護者が参加するよう努めることが考えられる。また、「保護者の行動改善に向けた援助内容」の例としては、児童相談所や児童福祉施設での保護者援助プログラムへの参加のための定期的通所や施設での子どもとの定期的面会、保護者への通院指導による通院等が考えられる。
  これらの援助内容についての説明を行い同意を得ることは、保護者が保護者援助を受け入れる動機付けにもなるので、必要な対応である。

[3] 児童福祉司指導措置等を採るべき事例としては、形式的に施設入所に同意はしているものの、児童虐待の自覚が乏しい保護者、自己中心的な行動を展開する保護者、入所する子どもに無関心な保護者等に対して、児童相談所が行動の枠組みを積極的に示す必要がある事例等が考えられる。また、児童福祉司指導措置等を採るタイミングは援助の開始時点にとどまらないものであり、援助の経過の中で、援助指針を見直す際に保護者の評価を行い、必要に応じて適時適切に当該措置を採る。なお、児童福祉司指導措置等を採った場合の対応手順は、次の[5]で詳述する。

[4] 保護者援助の実行は、援助指針の短期目標、長期目標に沿って行う。

・ 初期段階においては、短期集中的に保護者の問題解決に向けたカウンセリング及び指導を行い、保護者の問題点を保護者自身が整理できるよう支援する。

・ 保護者側の問題点の克服等を促すため、医療の受診や生活の安定化等に向けた生活面での遵守事項を提示しつつ養育方法の学習機会設定等行う。また、関係機関が実施する親子の再統合に向けたプログラム等の併用を行うことも必要である。

・ 経過が良好に推移すれば、児童福祉施設において子どもと保護者の面会等が行われることとなり、保護者と施設長、施設の担当者、ファミリーソーシャルワーカー等が主として対応することとなるので、これらの者を介して保護者の支援を行う。
  なお、この場合、児童相談所として施設に対して具体的な援助内容を示すことが必要である。

・ 面会等において親子の関係が良好であれば、外出、外泊を段階的に実行することとなる。この判断は、保護者援助を通して得た評価に加え、施設が把握する子ども及び保護者の情報により、協議の上、時期を決定する。
  特に、外泊は、死亡事件などの発生が報告されており、慎重な対応が必要であり、児童相談所及び児童福祉施設が同席して「家庭復帰の適否を判断するためのチェックリスト(別表)」等を活用して客観的に判断する。

・ 保護者援助の過程において、あらかじめ設定した評価の時期には、遅滞なく援助の評価を行った上、援助指針の検討・見直しを行い、自立支援計画に反映させる。

 ・ 保護者援助が良好な経過をたどり、児童福祉施設入所措置解除(児童福祉司指導等への措置変更を前提とした)が検討できる場合には、次の(3)及び(4)の対応を行う。

・ 保護者援助が良好な経過をたどらない事例としては、例えば、同意をしたものの児童相談所が提示する保護者への援助指針に従わずに面会などを自分の都合で求めるなど、自己中心的に振る舞う保護者等が考えられる。これらの者に対しては、児童福祉司指導措置等により厳しい指導を行うことで変化が生じることも期待できる。児童虐待防止法第12条に基づき、保護者に対して子どもとの面会・通信を制限すること、また、児童福祉司指導措置等が採られていない場合には、当該措置を新たに採ることで保護者援助の効果を高めることも可能である。
  また、保護者が、面会・通信を行わない等、子どもとの関わりに関心を示さない場合には、児童福祉司指導措置等を採り、具体的な指導事項を示して行動化を図る。

[5] 児童福祉司指導措置等を採った場合の対応手順は、次の通りである。

・ 児童福祉司指導措置等の決定通知を送付するに当たって、保護者に対する具体的な指導内容(上記[2]で例示した「保護者の行動改善に向けた援助内容」)に加え、当該措置に従わない場合の措置についての教示を行うなど、指導を受ける動機付けを行った上、指導を行う。

・ 児童福祉司指導措置等に保護者が応じない場合には、児童虐待防止法第11条第3項に基づき、都道府県知事による指導を受けるよう勧告を行う。

・ 当該勧告を行っても、保護者に指導を受ける意識や態度に変化がないと判断される場合には、同条第4項に基づく一時保護を行った上で、28条措置の申立てを行う。28条措置の申立てに当たっては、子どもの年齢、子どもの意向、児童福祉施設における入所期間、保護者の状態等を勘案して、当初から入所している児童福祉施設での生活の継続、又は、愛着関係の形成及び永続的な措置を念頭に置いた里親委託等により、子どもの最善の利益を最優先にした対応を行う。

・ また、同条第5項に基づき、その保護者に親権を行わせることが著しくその子どもの福祉を害する場合には、必要に応じて、適切に、親権喪失宣告の請求を行い、親権に対抗する手段を講じられたい。
  この場合における28条措置の申立てについては、児童福祉法第27条第6項による都道府県児童福祉審議会の意見を聴いて実施する。

(2)28条措置における保護者援助

[1] 28条措置は、保護者が児童虐待を否認するなどして児童福祉施設等への入所を拒否することにより対立関係が生じるが、保護者に対しては28条措置に併せて児童福祉司指導措置等を採り、毅然とした対応を行う。

・ 児童福祉司指導措置等を採る際の決定通知に保護者が行うべきことを明示して保護者の理解を促すとともに、指導を受ける義務があることを周知する。

[2] また、保護者との面会・通信が、子どもが望まなかったり、子どもにとって心身の発達や情緒面に悪影響があると考えられる場合には、面会・通信の制限を行う。さらには、保護者がこれらの制限に応じない場合には、接近禁止命令を発出することにより、保護者の行動を制限することを検討する。

[3] 28条措置の場合、児童福祉法第28条第2項において、児童福祉施設への入所期限が2年間と定められていることからも、積極的に児童福祉司指導等を行う。保護者の反応によっては、児童福祉司指導等に従わない場合の対応を行う。

[4] 上記(1)の[5]と内容は重複するが、児童福祉司指導等に従わない場合の対応としては、児童虐待防止法第11条第3項において、都道府県知事による指導に係る勧告を行うことができることとされているので、積極的に当該勧告を行う。この勧告を行うことにより、効果的に援助を実施できることが期待されるほか、次の手続を採る際の前提条件となることから積極的な運用を行う。

・ 当該勧告に従わない場合には、同条第4項に基づき、必要があると認める場合は、28条措置等の必要な措置を講ずるものとされているが、既に、当該事例は28条措置により児童福祉施設に入所しているので、場合によっては、家庭復帰困難事例として里親委託に措置を変更すること(28条措置の承認内容によっては再度28条措置の申立てが必要となる。)を検討する。

・ また、同条第5項では、必要に応じて親権喪失宣告の請求を行う旨も規定されているので、児童福祉施設に入所したままで親権喪失宣告を申立る等により、子どもの最善の利益を確保するよう努める。

[5] 援助の実行においては、保護者に対し、児童福祉司指導措置等が持つ意義、保護者援助の内容、将来の見通し等を伝え、理解を促す。そのためには、面接等の機会を設定し、保護者と向き合い、ねばり強く対応することが重要である。

・ その後の援助については、上記(1)[4]を参考にする。

[6] 児童福祉司指導措置等の効果を勘案して、面会・通信の制限、接近禁止命令が行われている場合には、保護者の指導を受ける態度を勘案して面会・通信の制限の解除、接近禁止命令の取消しを検討する。

[7] 保護者援助は、行きつ戻りつの状態になったり、対立が更に深まったり、膠着状態に陥ることもある。このような状態を適切に評価して、援助指針の見直しに際しては、上記[2]及び[4]に従い、子どもの最善の利益を確保するよう努める。

[8] この後の対応については、下記(3)及び(4)で詳述する。

(参考:図3)児童福祉施設入所措置等における保護者援助のイメージ

(3)家庭復帰を検討する段階における保護者援助

[1] 改正後の児童虐待防止法第13条の規定において、児童福祉施設入所措置等の解除(以下「入所措置等解除」とする。)にあたっては、保護者指導の効果、当該子どもに対し再び児童虐待が行われることを予防するために採られる措置について見込まれる効果等を勘案することとされており、家庭復帰に際して慎重な判断を行わなければならない。

[2] 家庭復帰の適否を判断するためには、

・ これまで行われた保護者援助の効果、援助指針及び自立支援計画の達成状況並びに児童福祉施設長の意見等を勘案した評価

・ 保護者の現状の確認

・ 子どもの意思の確認

・ 家庭復帰する家の状態、家庭環境等を直接確認

・ 地域における援助体制・機能の評価
等を行った上で、「家庭復帰の適否を判断するためのチェックリスト(別表)」等を参考にして客観的かつ総合的に判断する。「家庭復帰の適否を判断するためのチェックリスト」は、施設入所後から局面ごとに使用することで、子どもと家庭の変化を適切に把握することが可能となるので積極的に活用することが望ましい。

・ 特に、過去の虐待による死亡事例においては、母親の妊娠中や出産後間もなくの大変な時期に家庭復帰させたため虐待が再発して亡くなった事例、養育困難をネグレクトと捉えていなくて地域の援助体制も組織せずに家庭復帰をさせたために虐待が再発して亡くなった事例などが報告されていることに留意する。

[3] 家庭復帰の方針を決定した場合には、市町村(要保護児童対策地域協議会)、当該子どもが入所する児童福祉施設等と協働して、当該保護者が、地域の関係機関から適切な援助を受けるように指導するとともに、子どもが家庭や地域で安全に暮らせる環境を整えるとともに市町村に対して援助内容を明確に伝える。
  特に、地域における援助内容を決定するには、市町村(要保護児童対策地域協議会)とともに事例検討を行い、子どもの心身の状態、昼間過ごす場、家の状態、家族状況、家庭環境、保護者の遵守事項等を関係機関が理解した上で、各機関が具体的に支援する役割を決めることが重要である。

[4] 家庭復帰の決定は、児童福祉施設入所措置等の停止を行った上で、家庭生活が支障なく送れることを確認する必要があるので、入所する児童福祉施設、地域の関係機関の協力を得て多くの視点からの情報を把握する。その上で、児童福祉司指導措置等への措置変更又は継続指導を採ることとして家庭復帰を決定する。
  なお、子どもに対して児童福祉施設等入所措置等を採り、併せて、保護者に対する児童福祉司指導措置等を採っていた場合には、児童福祉司指導措置等に集約する。

[5] 子どもが児童福祉施設等へ入所している間に、保護者が当該児童相談所の管轄地域から他の地域へ転居した場合には、「児童相談所運営指針について」(平成2年3月5日児発第133号)の第3章第2節の4の(5)において、「保護者の住所の変更に伴う移管は、子どもの福祉にとって必要と認められる場合においては、保護者の転居先を管轄する児童相談所等と十分協議し、事例を管轄する児童相談所を決定する。」こととしている。
  児童虐待の場合は、入所措置をした児童相談所が一貫して対応することが少なからずあると考えられるが、この場合には、保護者の住所地を管轄する児童相談所に協力を仰ぎ、保護者宅に外泊する場合の調査依頼等が行える体制を整えるとともに、家庭復帰の適否を決定する段階で、子どもが入所する児童福祉施設、保護者の住所地を管轄する児童相談所と次の内容に関して協議して方針を決定する。

・ 家庭復帰を行う時期

・ 家庭復帰後の援助体制、援助内容

・ 移管時期及び移管の方法

ただし、保護者援助の実施及びその効果等を勘案することなく、保護者の転居を理由とした家庭復帰を行ってはならないことは言うまでもない。

(4)家庭復帰後の保護者援助

[1] 保護者援助によって児童虐待のリスクが逓減して家庭復帰ができたとしても、当面の期間は、当該家庭の状況の変化を即座に把握し、対応するために継続した援助を続けることが必要であり、一定期間(少なくとも6か月間程度)は、児童福祉司指導措置等又は継続指導を採るものとする。

[2] 児童相談所は、市町村(要保護児童対策地域協議会)と役割を分担して、家庭訪問のタイミングや回数、子どもが所属する機関の役割等に関して統一的な対応方法を共有するとともに、児童相談所が当該事例のケースマネジメントを担うことを明確にしておく。
  また、市町村の援助機関では、養育状態が悪化した場合の統一的な対応方法を共有し、状態の変化が起きれば躊躇なく実行する。

[3] この期間、当該家庭の経過が良好であれば、児童福祉司指導措置等を解除し、その後の対応を市町村に引き継ぐこととする。

第5 その他

子どもの最善の利益を確保するためには、保護者援助を実効あるものにしなければならない。そのためには、児童相談所が有する専門性を結集して対応することに加え、市町村、児童福祉関係機関、保健機関、医療機関、民間団体が有する機能を引き出すことが重要であることから、都道府県及び児童相談所は、これらの関係機関等の連携・協力を受けて保護者援助を実施する体制の整備に引き続き努めること。

また、民間団体等が行う保護者援助プログラム等の有用性を勘案して、積極的に活用することにより、効果的かつ効率的な保護者援助に努めることが重要である。

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