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第3章 相談、調査、診断、判定、援助決定業務

第3章   相談、調査、診断、判定、援助決定業務
第1節   相談援助活動の原則
児童相談所における相談援助活動の展開は第1章第2節図−1に示すとおりである。この中で特に留意すべき原則は以下のとおりである。
(1)  児童相談所の職員が受け付けた相談は、すべて児童相談所の責任において対応すべき相談である。そのため、巡回相談、電話相談等において1回限りで終了した相談についても、児童相談所全体でその妥当性について確認する。
(2)  児童相談所の専門性は職員の協議により維持されるところが大きく、このためにも受理会議、判定会議、援助方針会議等の各会議の位置付けを明確にする。
(3)  相談援助活動は複数の職員によって構成されるチ−ムによって行われるのが原則であるが、その際、相談援助活動に中心となって関わる担当者を決定しておく。
(4)  問題の内容、性格によっては施設関係者や関係機関の担当者、保護者等も含めた調整を柔軟に行っていく。
(5)  虐待などに対する相談援助活動については、幅広い関係機関の参画と相互の連携が重要であり、日頃から関係機関間との意思疎通を十分に図っておく。
 
第2節   相談の受付と受理会議
1. 相談の受付
児童相談所が受け付ける相談は次の5つに大別される。
(1)  子どもに関する家庭その他からの相談のうち、専門的な知識及び技術を要するもの(法第12条)
ただし、子ども本人やその家族など一般の相談者が、自らの相談が専門的な知識及び技術を要するものであるか否かを判断することは通常困難であり、児童相談所においては、相談の受付自体は幅広く行うこととしつつ、その内容に応じて、市町村等の関係機関中心の対応とする、あるいは自らが中心となって対応することとなる。
また、こうした子どもに関する家庭その他からの相談については、市町村が家庭その他から受け付ける相談のうち専門的技術及び知識を要するものについて、児童相談所の技術的援助や助言を求める場合を含む。
(2)  要保護児童を発見した者からの通告又は児童委員を介しての通告(法第25条)
(3)  法第27条の措置を要すると認める者並びに医学的、心理学的、教育学的、社会学的及び精神保健上の判定を要すると認める者についての市町村及び都道府県の設置する福祉事務所の長からの送致(法第25条の7、第25条の8)
(4)  警察官からの送致(少年法第6条の6)
(5)  家庭裁判所からの送致等(少年法第18条、第23条、第24条)
(6)  その他関係機関からの援助依頼、調査依頼、照会、届出等
 
2. 相談の種類、受付経路
児童相談所で受け付ける相談の種類は表−2に示すとおりであり、狭義の要保護児童問題のみでなく、子どもに関する各種の相談を幅広く受け付けることとされている。しかし、相談の内容によっては、他の適当な機関をあっせんするか、主たる対応を関係機関に委ねながら相互に連携しながら援助を行うことが必要な場合もあることに留意する。特に平成16年児童福祉法改正法により、児童家庭相談に応じることが市町村の業務として法律上明確にされるとともに、都道府県等(児童相談所)の役割が専門的な知識及び技術を必要とする事例への対応や市町村の後方支援に重点化されたことを踏まえ、市町村と緊密な連携を図る。なお、相談を受け付ける経路については表−3のとおりである。
 
3. 年齢要件
児童相談所が対象とする子どもは18歳未満の者であるが、次の場合に限り例外規定が設けられている。
(1)  少年法との関係に由来するもの
罪を犯した14歳以上の児童の通告(家庭裁判所が通告の受理機関となる。)(法第25条)
(2)  児童福祉施設等に入所している子ども等の特性等に由来するもの
[1]  里親に委託されている子どもの委託の継続及び児童福祉施設等に入所している子どもの在所期間の延長(法第31条、法第63条の2)
[2]  18歳以上の未成年者について児童相談所長が行う親権喪失の宣告の請求並びに未成年者後見人の選任及び解任の請求(法第33条の6から法第33条の8まで)
[3]  重度の知的障害及び重度の肢体不自由が重複している満18歳以上の者(以下「重症心身障害者」という。)の重症心身障害児施設等への措置(法附則第63条の3)
(3)  妊婦からの相談については、相談の趣旨を十分受け止めた上で、必要に応じ福祉事務所、保健所、市町村保健センター、医療機関等適切な機関にあっせんするとともに、将来新生児等に対する児童相談所の指導・援助の必要性が想定される事例については、問題の早期発見・早期対応、指導・援助の一貫性を確保する観点から、主たる対応機関との情報交換を密にする等、十分な連携を図ることが望ましい。
 
4. 管轄
児童相談所は則第5条の2に基づき、管轄区域を有しているが、個々の事例の具体的管轄の決定については、以下のことに留意するとともに、子どもの福祉を図るという観点から個々の事例に即した適切な判断を行う。
(1)  相談援助活動は、子どもの保護者(親権を行う者、未成年後見人その他子どもを現に監護する者)の居住地を管轄する児童相談所が原則として行う(居住地主義)。なお、居住地とは、人の客観的な居住事実の継続性又はその期待性が備わっている場所をいい、住民票記載の「住所」や民法の「住所」又は「居所」と必ずしも一致しない。
(2)  保護者の居住地が不明な棄児、迷子等は、その子どもの現在地を管轄する児童相談所が受け付ける。両親等保護者が明らかになった場合には、前記居住地主義に則して管轄を決定する。
(3)  警察からの通告及び送致等は、子どもの保護者の居住地にかかわらずその子どもの現在地を管轄する児童相談所に行われるので、これを受け付けた児童相談所にあっては受け付け後、子どもの状況や家庭環境等について調査、判定を行い、関係児童相談所への移管の適否や移管の方法等について決定する。特に、保護者からの虐待により家出した場合等にあっては、身柄付きで移管を行うなど、子どもの福祉を最優先した判断を行う。
(4)  子どもの居住地と保護者の居住地とが異なる場合は、その子どもの福祉及び児童相談所利用の利便等の事情を考慮し、関係児童相談所と協議の上、事例を管轄する児童相談所を決定する。
(5)  児童福祉施設、指定医療機関に入所している場合及び里親に委託している場合には、保護者の住所の変更に伴う移管は、子どもの福祉にとって必要と認められる場合においては、保護者の転居先を管轄する児童相談所等と十分協議し、事例を管轄する児童相談所を決定する。
(6)  電話による相談は、原則として子どもや保護者等の居住地を問わず、当該相談を受け付けた児童相談所において行い、必要に応じ管轄児童相談所にあっせんする。
(7)  法第33条に規定する一時保護は、子どもの福祉の観点から保護者の居住地にかかわらずその子どもの現在地において行うことができる。しかし、一時保護を行った後にその子どもの居住地が当該児童相談所の管轄区域外であることが判明した場合には、速やかにその子どもの居住地を管轄する児童相談所に移管する。ただし、移管に際しては、事前に移管する児童相談所と移管先の児童相談所が十分に協議する。
(8)  相談の内容等から、他の児童相談所の専門職員が担当することが適当と判断された場合等においては、当該児童相談所と協議の上、当該児童相談所に指導を依頼することができる。
(9)  また、平成16年の児童虐待の防止等に関する法律の一部を改正する法律により、国及び地方公共団体の責務として、「関係省庁相互間その他関係機関及び民間団体の間の連携の強化」が法律上明記されたところである。
この関係機関による連携には、子どもの転居時における自治体相互間の連携も含まれ、児童相談所相互間の連携も求められているところである。
このため、例えば、支援を行っている家庭が他の自治体に転出する際には、連携を図りつつ対応してきた関係機関等に連絡するとともに、児童福祉法第25条等に基づき、転出先の自治体を管轄する児童相談所に通告し、ケースを移管するとともに、当該家庭の転出先やこれまでの対応状況など必要な情報を提供するなど、転出先の児童相談所と十分に連携を図ることが必要である。
 
5. 相談受付の形態
相談の受付には以下の形態がある。
(1)  来所によるもの
[1]   児童相談所に直接来所するもの
[2]   巡回相談、出張相談等の会場に来所するもの
[3]   身柄を伴う通告・送致(迷子、家出した子ども、触法児童等警察や関係者等が子どもを連れて通告・送致してくるもの)
(2) 電話によるもの
[1]   相   談
[2]   通   告
[3]   照   会
(3)  文書によるもの
[1]   通告書
[2]   送致書等
[3]   意見書、届出書、援助・調査依頼書等
(4)  その他
 
6. 相談受付の方法
相談の受付時は子どもや保護者等にとって危機的な状況である場合もあり、この間の相談受付の方法がその後の経過に大きな影響を与えることになる。したがって、子どもや保護者の気持ちを和らげ、秘密は守る旨話す等受容的かつ慎重に対応する。
なお、児童虐待防止法第6条で、児童虐待を受けたと思われる児童を発見した者は、速やかに、これを市町村、都道府県の設置する福祉事務所又は児童相談所に通告しなければならないこととされている。
虐待に関する通告は、必ずしも通告という形でもたらされるとは限らず相談・情報提供等の形態でもたらされることも多いことから、外部からの個人を特定できる虐待に関する情報(要保護児童対策地域協議会等の事例検討の場において協議された事例であって、市町村が送致を要しないものとして対応しているケースに係るものを除く。)については、すべて虐待通告として、虐待相談・通告受付票(虐待対応の手引き:第3章、表3−1を参照)を起こし、緊急受理会議を開き、対応を組織的に協議すること。
市町村、福祉事務所及び児童相談所は、相互に緊密に連携し、夜間、休日等であっても通告を受けて適切な対応が採れるよう所要の体制を整備することが必要である。
このため、児童相談所においては、当直体制の整備など自らが通告を受けて適切な対応が取れるような体制の確保に努めるほか、児童相談所が市町村や福祉事務所とは異なり、立入調査や一時保護等の権限の行使を認められた児童福祉の専門機関であることも踏まえ、夜間、休日等の執務時間外の市町村等からの送致や相談に適切に対応することが必要である。
また、守秘義務にかかわること(児童虐待防止法第6条第3項、同法第7条)や調査項目、速やかな安全確認(児童虐待防止法第8条)等について所内で意思統一を図っておく必要がある。
(1)  直接来所の場合
ア   対応する職員
(ア)  原則として受付相談員が対応すること
(イ)  受付相談員は相談受付の重要性に鑑み、経験豊かな者を充てること
(ウ)  受付相談員不在時等の場合においては、他の相談員、児童福祉司、児童心理司等が対応すること
イ   受付面接の目的
受付面接は、子どもや保護者等の相談の内容を理解し、児童相談所に何を期待し、また、児童相談所は何ができるかを判断するために行われるものである。
ウ   受付面接の内容
受付面接は以下の事項について行う。
(ア)  児童記録票に記載する基本的事項の把握
(イ)  主訴、問題の内容、生育歴、生活歴、現在の状況等の把握
(ウ)  受付面接時の子どもや保護者等の様子の把握
(エ)  緊急対応の必要性の判断と対応
(オ)  児童相談所についての説明、今後の相談援助方法についての説明
(カ)  他機関あっせんの必要性の判断及び対応
エ   受付面接時の留意事項
(ア)  子どもや保護者等と児童相談所との相互信頼関係の樹立をめざすこと
(イ)  事情聴取的な調査は避け、子どもや保護者等の自然な話の流れの中から必要な情報を把握すること
(ウ)  虐待相談等緊急対応が必要な場合には、臨時に受理会議を開いて当面の援助を検討すること
(エ)  他機関へのあっせんが必要と認められる場合には、子どもや保護者等の意向を確認の上、電話であっせん先に連絡をとる等利用者の利便を十分図ること
(オ)  相談の内容によっては児童福祉司、児童心理司が面接を引き継ぐ等柔軟な対応を行うこと
オ   受付面接後の対応
(ア)  受付相談員は受付面接後、児童記録票に聴取した事項のほか、面接所見やその際行った助言等の内容を記入し受理会議に提出すること
(イ)  受付面接のみで終了した事例についても受理会議に提出し、終了の是非及び援助の適否を確認すること
(2)  巡回相談等における受付の場合
巡回相談等の場で受け付けた相談においても、原則的には直接来所の場合と同様であるが、子どもや保護者等の利便を考慮し、柔軟に行う。
(3)  身柄を伴う通告・送致の場合
ア   一般的原則
身柄を伴う通告・送致の場合においても、原則的には直接来所の場合と同様であるが、この場合は、子どもの一時保護等緊急対応の必要性が高い場合が多いので、通告者等からの必要事項の聴取、子どもの面接等を行い、緊急の受理会議を開催し、当面の援助を決定する。その際保護者にも連絡する。
イ   棄児、迷子の受理
棄児については戸籍法(昭和22年法律第224号)上の手続きが行われているか否かを確認し、行われていない時は必ず手続きを行う。また、警察官職務執行法(昭和23年法律第136号)に基づき保護された迷子については、その手配が済んでいるか否かを確認する。(戸籍法第57条、警察官職務執行法第3条)
また、外国人である場合には、平成13年雇児総発第40号「国籍不明な養護児童等への適切な対応について」に基づき、国籍や滞在許可の有無等を確認し、国籍取得など必要な対応について検討する。
ウ   家庭裁判所からの身柄を伴う送致の受付
家庭裁判所から子どもの身柄とともに事件の送致を受けたときは、家庭裁判所の審判等の結果に基づき、その決定の範囲内で、家庭裁判所調査官等との協力を図りつつ、速やかに児童福祉法上の援助を行う。(少年法第18条、第24条第1項第2号)
エ   警察からの身柄を伴う通告への対応
警察が一時保護を要すると思料する要保護児童を発見し、児童相談所に通告した場合、児童相談所においては、夜間、休日等であっても原則として速やかに警察に赴いてその子どもの身柄の引継ぎを行うことが必要である。
ただし、児童相談所が遠隔地にある場合などやむを得ない事情により、児童相談所が直ちに引き取ることができないときには、警察に対して一時保護委託を行うことも考えられる。
また、特に夜間において、児童相談所の職員だけでは対応が著しく困難な場合には、警察職員に一時保護所までの同行を依頼するといった対応が必要となることも考えられる。
児童相談所においては、こうした点も踏まえ、警察との日常的な協力関係を築くよう努めること。
オ   警察からの身柄を伴う送致への対応
警察官から少年法第6条の6第1項に基づき送致された子どもに関しては、事件の重大性等に鑑みて、警察と児童相談所が相互に協力して子どもの身柄の引継ぎを行うことが必要である。
児童相談所においては、必要に応じ子どもを一時保護するとともに緊急の受理会議を開催して今後の対応方針を決定すること。一時保護は、社会診断、心理診断等の必要な診断を行い、援助方針会議において家庭裁判所への送致の必要性の判断や援助方針を決定するまでの間、行うことが必要である。
(4)  電話による相談の場合
ア   電話による相談であっても基本的には直接来所の場合と同様である。
イ   電話による相談には電話相談専用電話にかかってくるものと、児童相談所にかかってくるものとの両方があるが、いずれの場合においても、子どもや保護者等の気持ちを十分受け止めた上で、必要な情報を聴取し適切な助言等を行い、継続的に児童相談所において相談援助活動を行う必要がある場合には、今後の相談援助方法についての説明を行う。
ウ   継続的な相談援助活動を行う必要がある場合に限らず、電話で相談が終結する場合においても、責任ある体制をとるために、原則として受理会議に提出し、児童記録票をおこす。
(5)  電話による通告の場合
ア   電話による通告については、緊急対応の必要性が高い場合が多いので、その際には緊急の受理会議を開催して当面の援助を決定する。なお、学校や保育所、医療機関など関係機関からの電話通告の場合には、後日通告書を送付してもらうこと。また、学校の教職員、保育所の職員、医師、保健師、弁護士その他子どもの福祉に職務上関係のある者からの電話通告の場合には、これに準じた対応をとることが望ましい。
イ   虐待通告等の場合、通告者と虐待等を行っている者との関係等を踏まえ、守秘義務の遵守を含め情報源の秘匿等に十分配慮して対応する。
ウ   通告者の情報だけでは事実関係が不明確な場合、学校や保育所、児童委員、近隣等、その子ども及び家庭の事情等に詳しいと考えられる関係者、関係機関と密接な連絡をとる等、迅速かつ的確な情報収集に努めることにより早期対応を図る。
(6)  電話による照会の場合
電話による照会、特にプライバシ−に関する事項についての照会については、秘密保持の原則との関係から慎重に対応する。緊急な回答が必要な場合以外は文書によることを原則とする。
(7)  通告書による場合
ア   警察からの法第25条による通告は、原則として文書によって行われる。この通告は子どもの保護者の居住地にかかわらず、その子どもの現在地を管轄する児童相談所に対してなされるので、前記4(管轄)を参照すること。
イ   通告書に子どもの所持物が添付されている場合は、法第33条の2の規定に基づき保管等を行う。
ウ   通告書は受理会議において検討する。なお、通告を受けた子どもに必要な援助が行われたときは、その結果を通告者に連絡することが望ましい。
(8)  送致書等による場合
ア   市町村、都道府県の設置する福祉事務所の長又は家庭裁判所から送致を受けたときは、受理会議において検討後一般の事例に準じて行う。
イ   警察官から少年法第6条の6第1項に基づく事例に関して送致を受けたときは、緊急に受理会議を開催して対応方針を決め、迅速に対応する。
ウ   家庭裁判所から送致を受けたときは、家庭裁判所の審判等の結果に基づき、その決定の範囲内で、速やかに児童福祉法上の援助を行う。
(9)  意見書、届出書等による場合
通告書、送致書のほか児童相談所が文書により受け付けるものには以下のようなものがあるが、いずれの場合も受付後、原則として受理会議において検討を行い、一般の事例に準じて行い、又は各事業の実施方法に従う。
[1]   児童福祉施設の長、指定医療機関の長又は里親からの措置の解除、停止、変更、在所期間の延長に関する意見書
[2]   児童福祉施設の長、指定医療機関の長又は里親からの養育状況報告
[3]   療育手帳交付申請書
[4]   特別児童扶養手当認定診断書
[5]   同居児童届出書
(なお養子縁組を申し立てている場合や同居関係に疑いのある事例については、児童相談所への通報が適切に行われるよう都道府県等及び市町村児童福祉主管課と連携を保っておく。)
[6]   家庭裁判所からの援助・協力依頼、特別養子縁組事案等に対する調査嘱託(少年法第16条、家事審判規則第8条)
[7]   他の児童相談所からの調査依頼、照会
[8]   1歳6か月児及び3歳児精神発達精密健康診査受診票
[9]   その他各種証明書送付依頼等
 
7. 受理会議
(1)  受理会議の目的
受理会議の目的は以下のとおりである。
児童相談所で受け付けた事例について協議し、主たる担当者、調査及び診断の方針、安全確認(児童虐待防止法第8条)の時期や方法、一時保護の要否等を検討するとともに、既にとられた対応の適否や調査・診断中の事例の結果を報告、再検討し、最も効果的な相談援助方法を検討することである。
なお、来談者の相談内容(主訴)と児童相談所が援助の対象とすべきと考える問題が異なる場合もあるので、受理会議ではこれらについても十分検討を行う。
(2)  受理会議の方法
ア   原則として週1回定例の会議を開催する。このほか虐待通告があった場合等の緊急に受理会議を開催する必要がある場合には随時開催する。
イ   相談・指導部門の長が主宰し、児童相談所長、各部門の長及び受付相談員等が参加する。緊急に受理会議を開催する場合には柔軟に対応する。
ウ   提出する事例は児童相談所でその週に受け付けた全事例、調査・診断の結果報告、再検討を要する事例等である。
エ   事例の中には比較的軽易な検討ですむものから十分な協議を必要とするものまで含まれているので、柔軟な会議運営を心がける。
オ   会議の経過及び結果は受理会議録に記載し、保存する。
カ   会議の結果に基づき、当面の方針や主たる担当者、調査及び診断の方針、一時保護の要否等を決定する。
キ   受理した事例の進行状況の把握・管理のため所長が決裁する。
 
8. 児童記録票の作成
(1)  児童記録票は、世帯ごとではなく相談を受理した子どもごとに作成する。
(2)  受理会議終了後、児童記録票の番号を確定する。再相談の場合は、これまでの児童記録票が再びおこされることになる。
(3)  児童記録票その他子どもに関連した書類は一括してケ−スファイルに収録し、「児童記録票綴」とする。これは秘密保持の原則(法第61条)に基づき、厳重な管理を要するものである。
なお、情報通信技術(IT)の導入により、ケースファイル等の電子化を行うなど事務の効率化を図ることも必要である。
(4)  児童記録票の保存期間
児童記録票の保存期間については少なくとも以下のとおりとするが、将来的に児童記録票の活用が予想される場合は長期保存とする等、個々の事例の内容や性質に応じて、柔軟かつ弾力的に保存期間を設定する。
[1]   法第27条第1項第3号、第4号及び第2項の措置(これらの措置とみなされる措置を含む)をとった子どもの児童記録票は、その子どもが満25歳になるまでの間、なお20歳を超えて措置されている者については当該措置が解除されてから5年間。
[2]   法第26条第1項第2号及び第27条第1項第2号の措置をとった子どもの児童記録票は、その子どもが措置を解除されてから5年間。
[3]   [1]、[2]以外の援助を行った子どもの児童記録票は、その取扱いを終了した日から5年間。
 
第3節   調   査
1. 調査の意義
(1)  調査は子どもや保護者等の状況等を知り、それによって子どもや保護者等にどのような援助が必要であるかを判断するために行われるものであり、相互信頼関係の中で成立するものである。
(2)  したがって、事情聴取的な形ではなく、子どもや保護者等の気持ちに配慮しながら情報の収集を行う。
(3)  調査のための面接がそのまま指導のための面接の場となることも多いので、社会福祉援助技術の基本的原理の一つである「非審判的態度」に心がけ、信頼関係の樹立に努める。
 
2. 調査担当者
(1)  調査は相談・指導部門、判定・指導部門等の児童福祉司、相談員が中心となって行うが、相談の内容によっては他の職員が行う。
(2)  虐待相談の場合、調査に対する客観性の確保が特に強く求められること、保護者等の加害の危険性があること等から、調査に当たっては複数の職員が対応する等、柔軟な対応に努める。
 
3. 調査の開始
調査の開始及び担当者は原則として受理会議を経て決定する。ただし、緊急の場合、巡回相談中の受付の場合等においてはこの限りでない。
虐待通告(「送致」を含む。)を受けた場合であって、安全確認を必要と判断される事例については、速やかに緊急受理会議を開催し、緊急性など個々の事例の状況に応じて、安全確認の実施時期、方法等の対応方針を決定する。
なお、安全確認は、児童相談所職員又は児童相談所が依頼した者により、子どもを直接目視することにより行うことを基本とし、他の関係機関によって把握されている状況等を勘案し緊急性に乏しいと判断されるケースを除き、通告受理後、各自治体ごとに定めた所定時間内に実施することとする。当該所定時間は、各自治体ごとに、地域の実情に応じて設定することとするが、迅速な対応を確保する観点から、「48時間以内とする」ことが望ましい。
また、こうした初期対応のほか、必要に応じて、後日、追加的なアセスメントを適切に実施する。
4. 調査事項
(1)  調査事項は相談の内容によって異なるが、標準的には以下の事項が調査対象となる。
[1]   子どもの居住環境及び学校、地域社会等の所属集団の状況
[2]   子どもの家庭環境、家族の状況
[3]   子どもの生活歴、生育歴
[4]   子ども、保護者等の現況
[5]   過去の相談歴等
[6]   児童相談所以外の機関の子ども・家族への援助経過
[7]   援助等に関する子どもや保護者等の意向
[8]   その他必要と思われる事項
(2)  法第25条の6において、児童相談所は、法第25条の規定による通告を受けた場合において必要があると認めるときは、速やかに、その子どもの状況の把握を行うものとされている。
特に児童虐待に係る通告については、児童相談所が児童虐待防止法第6条第1項の規定による通告又は市町村若しくは都道府県の設置する福祉事務所からの送致を受けたときは、児童相談所長は、必要に応じ近隣住民、学校の教職員、児童福祉施設の職員その他の者の協力を得つつ、その子どもとの面会その他の手段によりその子どもの安全の確認を行うよう努めなければならないこととされている。(児童虐待防止法第8条第2項)
 
5. 調査の方法
調査の方法には面接(所内面接、訪問面接)、電話、照会、委嘱、立入調査等による方法があるが、虐待相談の場合、緊急保護の要否を判断する上で子どもの心身の状況を直接観察することが極めて有効であるため、子どもの安全確認を行う際には、子どもを直接目視することを基本とする。
いずれの場合においても子どもや保護者等の意向を尊重するよう努め、子どもや保護者以外の者から情報を得るときは、原則として子どもや保護者の了解を得てから行うよう配慮する等、プライバシ−の保護に留意する。
ただし、虐待通告等で、対応に緊急を要し、かつ調査等に関し保護者等の協力が得難い場合は、この限りでない。また、性的虐待が疑われる場合には、子どもに与える心理的な負担や子どもの意向に十分配慮して調査を行うことが必要である。具体的な方法については、「子ども虐待対応の手引き」による。
なお、調査に際しては、児童相談所の職員は、その職務上知り得た事項であって、児童虐待に係る通告をした者を特定させるものを漏らしてはならないことに留意する必要がある。(児童虐待防止法第7条)
(1)  面接
ア   子どもや保護者等との面接による情報の収集については、できる限り子どもや保護者等の気持ちに配慮しながら行う。
イ   子どもや保護者等との面接が中心となるが、関係機関の職員等との面接も重要である。特に、虐待相談等の場合、子どもや保護者等との面接だけでは正確な事実関係の把握が困難な場合も多いので、幅広い情報収集に努める。
ウ   子どもの家庭、居住環境、地域社会の状況、所属集団におけるこどもの状況等の理解については、訪問による現地調査により事実を確認する。
エ   虐待相談の場合、緊急保護の要否を判断する上で子どもの心身の状況を直接観察することが極めて有効である。このため、子どもの来所が望めない場合、可能な限り早期の段階で子どもの家庭や所属集団等において子どもの観察を行う。なお、観察に当たっては、観察の客観性、精度の向上を図るため、調査担当者以外に医師や児童心理司等が同行する等、複数の職員が立ち会うことが望ましい。
(2)  調査の協力、委嘱
調査を行うに当たっては市町村長や児童委員に協力を求め、又は児童委員や福祉事務所長に調査の委嘱ができることとされており、十分な連携を行う。(法第12条第4項、第13条第4項、第17条第1項第4号、第18条第4項)
また、法第25条の2第1項の規定により地方公共団体が置くことができる要保護児童対策地域協議会は、要保護児童及びその保護者(以下「要保護児童等」という。)に関する情報その他要保護児童の適切な保護を図るために必要な情報の交換を行うとともに、要保護児童等に対する支援の内容に関する協議を行うことを目的としており、こうした情報の交換や協議を行うため必要があると認めるときは、関係機関等に対し、資料又は情報の提供、意見の開陳その他必要な協力を求めることができる。(法第25条の3)
(3)  照会
直接調査することが困難な場合又は確認を要する場合等には、文書等により照会する。
(4)  立入調査
ア   法第29条に規定する立入調査は、法第28条に定める承認の申立を行った場合だけではなく、虐待や放任等の事実の蓋然性、子どもの保護の緊急性、保護者の協力の程度などを総合的に勘案して、法第28条に定める承認の申立の必要性を判断するために調査が必要な場合にも行えることに留意する。
また、児童虐待防止法第9条の規定では、児童虐待が行われているおそれがあると認めるときに子どもの住所又は居所に立ち入り、必要な調査又は質問させることができること、同条第2項において、立入り及び調査又は質問を正当な理由なく拒否をした場合等については、必要に応じて法第62条第1号の規定の活用を図ること。
イ   立入調査の必要がある場合には、都道府県知事等(児童相談所長に権限が委任されている場合は児童相談所長)の指示のもとに実施する。
ウ   立入調査に当たっては、必要に応じ、市町村に対し関係する職員の同行・協力を求める。また、子ども又は調査担当者に対する保護者等の加害行為等に対して迅速な援助が得られるよう、必要に応じ、児童虐待防止法第10条により警察に対する援助の依頼を行い、これに基づく連携による適切な調査を行うとともに、状況に応じ遅滞なく子どもの一時保護を行うなど、子どもの福祉を最優先した臨機応変の対応に努める。
なお、警察への援助の依頼については、第7章第14節「5.虐待事例等における連携(3)立入調査における連携」を参照すること。
エ   立入調査に当たっては、その後の家庭裁判所における審判等における事実関係の確認に資するため、必要な範囲において写真やビデオあるいはスケッチ等を含め具体的、詳細な調査記録の作成を行うとともに、関係書類等の入手・保存に努める。
オ   立入調査については、平成12年11月20日児発第875号「「児童虐待の防止等に関する法律」の施行について」及び平成16年8月13日雇児発第0813002号「「児童虐待の防止等に関する法律の一部を改正する法律」の施行について」、本指針並びに平成9年6月20日児発第434号「児童虐待等に関する児童福祉法の適切な運用について」及び「子ども虐待対応の手引き」に基づき行う。
(5)  その他
里親委託、養子縁組に関する調査については、本指針に定めるほか、次の通知による。
[1]   平成14年厚生労働省令第115号「里親の認定等に関する省令」
[2]   平成14年厚生労働省令第116号「里親が行う養育に関する最低基準」
[3]   平成14年9月5日雇児発0905001号「里親の認定等に関する省令」及び「里親が行う養育に関する最低基準」について
[4]   平成14年9月5日雇児発0905002号「里親制度の運営について」
[5]   平成14年9月5日雇児発0905004号「養子制度等の運用について」
[6]   平成16年12月28日雇児福発第1228002号「里親が行う職業指導について」
 
6. 記録及び社会診断
(1)  調査内容は正確、簡潔、客観的に児童記録票に記載し、資料の出所、日時等を明らかにする。
(2)  子どもや保護者等の言動のほか、調査担当者が指導した事項についても記載する。
(3)  調査担当者は必ず調査に基づく調査所見を児童記録票に記載する。
この調査所見は問題の様相、原因、援助等に関する所見を含む社会診断であり、判定のための資料となる。
 
第4節   診   断
1. 診断の意義
(1)  問題に直面している子どもの福祉を図るためには、その子どもの状況及び家庭、地域状況等について十分に理解し、問題解決に最も適切な専門的所見を確立する必要がある。
(2)  このため、医学(特に精神医学及び小児医学)、心理学、教育学、社会学、社会福祉学等の専門的知識・技術を効果的に活用し、客観的に診断する。
(3)  なお、診断は判定の前提であるので、判定の意義を十分理解し行う。
 
2. 診断担当者
診断には社会診断、心理診断、医学診断、行動診断、その他の診断がある。診断は、必要と判断される各診断に対し専門性を有する者が担当する。
 
3. 診断の開始
診断の開始及び担当者は原則として受理会議を経て決定する。ただし、緊急の場合、巡回相談中の受付の場合等においてはこの限りでない。
 
4. 子どもや家庭が抱える問題の理解に必要な資料
子どもや家庭が抱える問題の理解のため、子どもの年齢などを考慮しつつ、次のような側面からの資料を総合し、統合する。
[1]   心身の状況(健康状態、表情、発達、社会生活能力、学力、興味の範囲等)
[2]   情緒成熟度(分化、表出、統制等)
[3]   欲求と障害(欲求の強さ、不満、防衛、忍耐度等)
[4]   現在の適応状況(家庭、所属集団、地域等)
[5]   対人関係(親子関係、家族関係、友人関係等)
[6]   文化的、社会的環境(地域社会の状況、規範、伝統、文化等)
[7]   家庭の状況(構成、家族歴、生活歴、家庭環境等)
[8]   その他必要と思われる事項
 
5. 診断の方法
診断の方法には社会診断、心理診断、医学診断、行動診断、その他の診断があるが、いずれの場合においても多角的・重層的に行い、また子どもや保護者等の意向を尊重し、プライバシ−の保護に留意する。心理検査等を実施する場合及び関係者等との面接を実施する場合には、子どもや保護者等にその必要性を説明し、了解を得て行うよう配慮する。さらに、診断のための面接は、子どもや保護者に対する援助と結びついていくことにも配慮する必要がある。
(1)  社会診断
ア   児童福祉司、相談員等によって行われる社会診断は、調査により子どもや保護者等の置かれている環境、問題と環境との関連、社会資源の活用の可能性等を明らかにし、どのような援助が必要であるかを判断するために行う。
イ   具体的な調査方法については第3章第3節に示すとおりである。
(2)  心理診断
ア   児童心理司によって行われる心理診断は、面接、観察、心理検査等をもとに心理学的観点から援助の内容、方針を定めるために行う。また心理診断は、所内における面接・観察のみならず、家庭訪問などによる生活場面なども積極的に活用すること。
イ   家庭環境、生活歴等は、原則として受付相談員又は児童福祉司等が聴取した記録を利用するが、必要に応じて児童心理司自ら補足的に聴取する。
ウ   面接による情報の収集については、できる限り子どもや保護者等の気持ちに配慮しながら行う。
エ   言語表現の不十分な子ども、情緒や適応性に不安定さを示す子ども等を理解するため、自然的観察、条件的観察等適切な方法を考慮する。
オ   心理診断を行うに当たっては、医師との協力関係を保ち、医学診断の必要性があると認められる場合には医師の診察等を求める。また、必要に応じて外部の専門家の協力を得て実施するものとする。
カ   心理診断及び子どもや保護者等に指導した事項については必ず児童記録票に記載し、判定のための資料とする。
(3)  医学診断
ア   医師(精神科医、小児科医等)の行う医学診断は、問診、診察、検査等をもとに、医学的な見地から子どもの援助(治療を含む。)の内容、方針を定めるために行う。
イ   児童相談所で実施できない検査や治療等を要する場合には速やかに適切な医療機関にあっせんする。
ウ   特別児童扶養手当認定診断書等の作成の場合には児童心理司等の協力を得て行う。
エ   医学診断及び子どもや保護者等に対し指導した事項については必ず児童記録票に記載し、判定のための資料とする。
オ   関係機関等から診断書の提出を求められた場合には、子ども又は保護者の了解を得て、診断書を添付し、児童相談所長名で回答する。
(4)  行動診断
ア   一時保護部門の児童指導員、保育士等によって行われる行動診断は、基本的生活習慣、日常生活の状況、入所後の変化等、子どもの生活全般にわたる参与的観察、生活場面における面接をもとに、援助の内容、方針を定めるために行う。
イ   行動診断は、原則として週1回定例の観察会議において検討し、児童記録票に記載し、判定のための資料とする。
(5)  その他の診断
ア   場合によっては、理学療法士、言語聴覚士等による診断が必要である。
イ   その他児童相談所において診断することが困難な場合には他の機関に依頼し又は、すでに診療を受けている医師等がある場合にはその診断書等を求め判定に役立てる。
 
第5節   判   定
1. 判定の意義
(1)  判定は、相談のあった事例の総合的理解を図るため、前節の診断をもとに、各診断担当者等の協議により行う総合診断である。
(2)  判定は適切な援助の内容及びそれにかかわる援助指針の作成と不可分の関係にある。
(3)  判定は援助の経過の中で修正の必要が生ずる場合もあり、適宜再判定を実施する。
(4)  判定は子どもの身体的、心理的、社会的特性を十分考慮して行う。
また、判定は問題を有する主体、問題の発生している場所、問題の内容等について明確にする。
(5)  判定は子どもを含む家族、所属集団全体を視野に入れて行い、また、当事者の問題解決能力や地域の支援体制等も考慮に入れて行う。
(6)  緊急対応が必要か、カウンセリング等が必要か等、援助の質の検討も判定の重要な要素である。
(7)  判定には児童相談所の相談援助活動の限界及び措置、あっせん等を行う施設、機関等の援助能力の判断も含まれる。
 
2. 判定の方法
(1)  判定は、児童福祉司、相談員等による社会診断、医師による医学診断、児童心理司等による心理診断、保育士、児童指導員等による行動診断、その他の診断を基礎として、原則として関係者の協議により行い、判定の所見、援助指針案はその結果に基づきケースの主担者が作成する。
なお、高度に専門的な判断が必要な場合には、児童相談所外部の専門家の意見を積極的に求め、これを十分に踏まえて判定を行うこと。
(2)  以下の事例については、原則として判定会議により行う。
[1]   児童福祉施設への入所措置及び里親、指定医療機関への委託措置を要する事例
[2]   措置による指導及び継続指導を必要とする事例
[3]   現に[1]又は[2]の援助を行っている事例の援助指針を再検討する場合
[4]   その他必要と認められる事例
 
3. 判定会議
(1)  判定会議は各担当者の診断をもとに、援助に有効な判定を導き出すために行い、原則として週1回定例的に開催し、判定・指導部門の長が主宰する。
(2)  判定会議においては、原則として児童相談所長、各部門の長、各担当者等が参加し、社会診断、心理診断、医学診断、行動診断、その他の診断等を総合的に検討し、判定を行い、これに基づき援助指針案を検討する。
(3)  事例の中には比較的軽易な検討ですむものから十分な協議を必要とするものまで含まれているので、柔軟な会議運営を心がける。
(4)  会議の経過及び結果は判定会議録に記載し、保存する。
 
第6節   援助方針会議
(1)  援助方針会議は調査、診断、判定等の結果に基づき子どもや保護者等に対する最も効果的な援助指針を作成、確認するために行う。援助指針は、援助方針会議の結果に基づき事例の主担当者が作成する。なお、援助指針の意義、内容等については、第1章第4節を参照すること。
(2)  援助方針会議は、原則として受理会議後、児童相談所が相談援助活動を行うこととしたすべての事例の援助について検討を行う。
現に援助中の事例の終結、変更(措置の解除、停止、変更、在所期間の延長、援助指針の変更等も含む)等についても検討を行う。その際、事例の中には比較的軽易な検討ですむものから十分な協議を必要とするものまで含まれているので、柔軟な会議運営を心がける。
なお、在宅の虐待事例については、状況の変化等についてのフォローを確実に行うため、ITシステムの導入・進行管理台帳の整備等を行うことにより、すべての事例について定期的に現在の状況を会議において検討することが必要である。
(3)  援助の決定に当たっては、特別な場合を除き、子どもや保護者の意向を尊重するとともに、子どもの最善の利益の確保に努める。
(4)  援助方針会議においては、緊急対応が必要か、カウンセリングが必要か等の援助の内容の検討及び児童相談所、施設、機関等の援助能力も考慮に入れ検討を行う。
(5)  援助方針会議は措置部門の長が主宰し、原則として週1回定例的に開催し、児童相談所長、各部門の長、事例を担当した児童福祉司、児童心理司等の事例担当者等が参加し、多角的・重層的に検討を行う。
(6)  会議の経過及び結果は援助方針会議録に記入し、保存する。
(7)  援助方針会議に提出された事例の個々の援助は、所長が決定する。
 
第7節   都道府県児童福祉審議会への意見聴取
1   趣旨
(1)  法第27条第1項第1号から第3号までの措置(第3項の規定により採るもの及び第28条第1項第1号又は第2号ただし書きの規定により採るものを除く。)もしくは第2項の措置を採る場合又は第1項第2号もしくは第3号もしくは第2項の措置を解除し、停止し、もしくは他の措置に変更する場合で、後に述べる要件に合致する場合は、都道府県児童福祉審議会の意見を聴かなければならない。(法第27条第6項)
この場合の意見聴取は、都道府県知事等の諮問に対し児童福祉審議会が答申を行うものである。(法第8条第5項)
なお、法第28条第6項の規定による家庭裁判所の勧告を受けて、法第27条第1項第2号の措置を採る場合については、都道府県児童福祉審議会の意見を聴する必要はない。
(2)  都道府県児童福祉審議会への意見聴取は、児童相談所における援助の決定の客観性と専門性の向上を図ることにより、子どもの最善の利益を確保しようとするものであり、この趣旨を十分踏まえ、積極的な活用を図るとともに、取り扱いに適正を期すること。
 
2   都道府県児童福祉審議会の意見を聴かなければならない事例について
(1)  次の2つの要件のいずれかに合致する場合は、都道府県児童福祉審議会の意見を聴かなければならない。
ア   子どももしくはその保護者の意向が児童相談所の措置と一致しないとき
イ   児童相談所長が必要と認めるとき(令第32条)
(2)  子どももしくはその保護者の意向が児童相談所の措置と一致しないときとは、児童相談所の援助方針会議を経て出された援助方針と、子どももしくは保護者の双方もしくはいずれかの意向が一致しない場合をさす。子ども等の意向と児童相談所の援助方針が異なる事例は、子どもの真のニーズの把握並びにこれに基づく親への代弁・説得・調整、強制的介入、司法機関等関係機関との調整等、より幅広い専門性が求められるとともに、判断の客観性がより強く求められるからである。
具体的な事例を例示すると下記のとおりである。
ア   保護者が子どもの監護を怠っている場合や親子浮浪の事例で、児童相談所としては子どもを施設入所させる必要があると判断しているが、保護者や子どもに問題意識がなく、保護者、子どもの双方が、施設入所を拒んでいる場合
イ   親が行方不明等のため、子どもたちだけで生活している事例で、客観的に子どもの福祉が害されていると判断されるため、児童相談所としては施設入所を勧めているにもかかわらず、子どもが当該措置を強く拒んでいる場合
ウ   触法・ぐ犯相談において、児童相談所としては施設入所措置が適当と判断しているが、保護者の意向が定まらず、子どもも施設入所を強く拒んでいる場合
エ   法28条に基づく施設入所措置に対する家庭裁判所の承認に関する申立てを行うべきかどうか児童相談所としては判断しかねる場合
オ   子ども及び保護者の同意を得て施設入所措置を採った事例で、その後保護者等の意向が変化し、引き取りを強く要求している場合
(3)  児童相談所長が必要と認める場合とは、措置決定又は措置決定後の援助について、法律や医療等の幅広い分野における専門的な意見を求める必要があると判断する場合や、子ども又は保護者の意向の確認が不可能又は困難なため、子どもの最善の利益を確保する上でより客観的な意見を求める必要があると判断する場合等である。具体的な例としては下記のものが考えられるが、これらの例のほか、特に、虐待相談や施設での援助等に係る子どもからの苦情相談等、一般的に権利侵害性が強いと考えられる事例については、より客観的な判断が求められることから、積極的に都道府県児童福祉審議会の意見を求めることが望ましい。
ア   児童相談所の援助方針と子ども又は保護者の意向は一致しているが、措置解除をめぐって、より幅広い観点からの客観的な意見を求めることが妥当と判断される場合
特に、児童福祉法第28条の規定に基づく措置の解除については、保護者に対する指導措置の効果や子どもの心身の状態、地域のサポート体制などについての総合的な評価に基づき検討し、判断する必要がある。このため、措置解除の客観性と専門性の向上の観点から、できる限り児童福祉審議会の意見聴取を行うよう努めること。また、児童相談所と子どもが入所している施設の意見が異なる場合なども意見聴取が必要である。
イ   保護者が行方不明等でその意向が確認出来ず、かつ子どもが幼少等の理由によりその意向を明確に把握し難い場合
ウ   措置変更の場合等で、保護者が行方不明等でその意向が確認出来ず、子どもは当該措置に同意の意を示しているが、子どもの最善の利益を確保する上で、より幅広い観点からの客観的な意見を求めることが妥当と判断される場合
 
3   意向について
(1)  「意思」が法的な意思形成能力に裏付けられた概念であるのに対し、「意向」は「意思とまでには至らない志向、気持ち」といった意味であり、全ての子ども等の意向を、その年齢、成熟度等に応じて考慮することを基本とするものである。
従って、子どもの援助の決定に当たっては、子どもや保護者等に対し児童相談所の援助方針等について個々の年齢や理解力等に配慮しながら十分な説明を行い、その意向を把握するよう努める。
(2)  意向の把握に当たっては、子どもや保護者等それぞれについて児童相談所の援助方針を承諾する場合は承諾書を、不承諾の場合はその理由を付した不承諾書を求めることを原則とするが、子ども等の年齢、その他の理由から承諾書・不承諾書により難い場合は、児童相談所の説明方法や説明内容、これに対する子どもの反応等を克明に記録し、児童記録票綴に編綴しておく。
 
4   手続き
(1)  2(1) に該当する事例について、援助に関する児童相談所長の考えを付して事前に都道府県児童福祉審議会の意見を求めることを原則とするが、あらかじめ児童福祉審議会の意見を聴くいとまがない場合はこの限りでない。この場合、採った措置について速やかに都道府県児童福祉審議会に報告する。(令第32条)
(2)  児童相談所長は、都道府県児童福祉審議会に意見を求めようとするときは、原則として子どもや保護者等に対しその旨説明を行い、また児童福祉審議会の意見具申があったときは、その内容等について迅速かつ懇切に説明を行う。
(3)  児童相談所長は、都道府県児童福祉審議会に対し意見を求めるに当たっては、事例の概要や援助に関する意見、子ども及び保護者等の意向等を記載した資料を作成し、これに基づき説明を行い、その意見を求める。
(4)  児童相談所長は、都道府県児童福祉審議会の意見を尊重して援助の決定を行う。
(5)  都道府県児童福祉審議会の意見と実際の措置が異なった場合は、速やかに理由を付して都道府県児童福祉審議会に報告する。
(6)  都道府県児童福祉審議会の意見を聴取した事例について、その後の経過等を随時報告するとともに、児童相談所における相談や措置の状況等についても適宜報告することが望ましい。
(7)  都道府県児童福祉審議会に意見を求めるに当たり、人名を伏せる、審議終了後配付資料を回収する等、子どもや保護者等のプライバシー保護に十全の配慮を行う。
なお、配付資料については必要最小限に止め、特に家庭裁判所の少年調査記録等、他機関の作成に係る資料等については当該機関の了解を得ずこれを提出することは認められないこと。
 

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