Ministry of Health, Labour and Welfare

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SARS

重症急性呼吸器症候群(SARS)関連情報

現在までのSARSの疫学

(平成15年4月11日)

SARSは中国広東省にその起源がある新しい疾病である。最初の症例は、知られている限り平成14年11月中旬に診断されている。それ以降、17の国々からSARSの「可能性例」が報告されている。

WHOは継続して調査を続け、適当であると判断した場合には、広範な情報源から入手されるSARSに関する「未確認情報(rumours)」の真偽を確認する。

各国の保健省から現在、公式に報告されているSARS症例の累積症例数は2,781例、死亡例は111例である。世界的なSARS「可能性例」の致死率は4%である。

今日までに発生したSARS症例のほとんどは若年成人である。この伝播形式は、医療従事者と彼らの家族、およびこれらの人々の社会生活上の接触者、そして国際旅行をする人々の年齢を反映している。現在までの情報に基づくと、成人に比べ小児は(感染の有無にかかわらず)SARSを発症する可能性が低いように思われる。

SARSは最も一般的に、感染性のある飛沫への暴露を伴う密接なヒト−ヒトの接触で、またおそらくは感染性のある体液への直接的接触で、伝播しているようである。

中国では、2月に患者数のピークを迎えた後に減少はしているものの、依然としてSARSの新規患者が出ている。本日までに、1,290症例と55死亡例が中国本土から報告されている。

香港では998症例と30死亡例という、世界で2番目に大きなSARSの集団発生が起こっている。淘大花園(アモイガーデン)の居住ブロックで3月27日と4月1日の間に発生した非常に大きな集団発生で、症例数のピークを迎えた。しかしながら、医療従事者のあいだからの患者報告は続き、香港保健当局は感染制御法と地域ベースの公衆衛生の手法を適宜強化している。

カナダではSARS可能性例97例と死亡例10例の集団発生が起こっている。現在までのところ、集団発生は主にトロントに限られている。ほとんどの症例は医療機関に関連した伝播か、既知のSARS症例の密接な接触者の間の伝播に疫学的に結び付けられている。カナダでの集団発生において、慢性の基礎疾患を持つことの多い年齢の高い患者で、致死率が高いように見受けられた。

ベトナムに導入された感染制御と公衆衛生の手法は、ハノイでの集団発生を効果的に制御した。3月24日以降は、ごくわずかな感染伝播の発生報告しかない。2月26日に集団発生が始まって以来、4例の死亡が報告されている。

シンガポールでは、2つの病院のスタッフ、入院患者、面会者の間の患者の集積群を含む新しい症例の報告が続いてはいるが、3月中旬のピークを境に、毎日の症例数の増加は減少に転じている。4月10日の時点で、累積合計で126例の症例と9例の死亡例が報告されている。シンガポールは現在、シンガポール総合病院の57病棟と58病棟で52の人々を巻き込んだ、SARSの19「可能性例」と33「疑い例」からなる新しい患者の集積を調査している。この発端者は3月24日にSARSとは関連の無い慢性疾患の管理のためにこの病院に入院した。この患者は、初めのうちは典型的なSARSの症状は見られなかった為に、隔離はされず、厳格な感染制御の原則に従った管理もされなかった。

米国では症例数が増加し続け、154人が検査中である。米国の報告している数は、「可能性例」と「疑い例」の両方を含んでいる。現在同国では、患者から医療従事者への限定された伝播を報告している。米国からの死亡例の報告は今までのところ無い。

「その地域内での感染伝播鎖が確認されている」ことが明らかになった地域の情報は、最新の症例に関する情報と伝播経路に関する証拠に基づいて毎日更新されている。疫学的情報によると、伝播確認地域が国内で確認されていない国々で発生しているSARS症例は、伝播確認地域のひとつに滞在中、または既知のSARS症例との直接的接触で感染していることが示唆される。
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