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平成26年結核登録者情報調査年報集計結果(概況)

 本年報は、全国の保健所を通じて報告される結核登録者の状況(平成26年1月1日〜12月31日)を取りまとめたものである。

平成26年 年報のポイント

[1] 年間の新登録結核患者数は初めて2万人を下回り、罹患率も減少傾向が続いているが、 いまだ年間1万9千人以上の結核患者が新たに登録されており、喀痰塗抹陽性肺結核(※1)患者も年間7千6百人以上登録されている。   (参考資料 4-1 [PDF:97KB]参考資料 4-2 [PDF:97KB] 参照)

・新登録結核患者数:  19,615 人
・新登録結核患者罹患率(人口10万対):  15.4(対前年比0.7減)
・喀痰塗抹陽性肺結核患者数: 7,651人
・喀痰塗抹陽性肺結核患者罹患率(人口10万対): 6.0(対前年比0.4減)

[2] 日本の結核罹患率は、欧米諸国と比較すると依然として高くなっている。  (参考資料 1 [PDF:97KB] 参照)

・日本の結核罹患率(人口10万人対の新登録結核患者数)(15.4)は、米国(2.8)の5.5倍、ドイツ(5.1)の3.0倍、オーストラリア(5.4)の2.9倍。

[3] かつて結核がまん延していた時期に結核に感染したが発病せず、現在、高齢となって 発病した者(既感染発病者)が多いと考えられる65歳以上の年齢層とそうではない65歳未満の年齢層とでは、罹患率に大きな差がある。

・65歳未満の者の新登録結核患者の罹患率(人口10万対): 7.2
・65歳以上の者の新登録結核患者の罹患率(人口10万対): 38.9

[4] 結核患者の高齢化はさらに進行し、特に新登録結核患者のうち80歳以上の結核患者 は37.7%となっている。80歳以上については罹患率も高くなっており、70歳代と比較 して約2.7倍となっている。(参考資料 5-1 [PDF:97KB]参考資料 6-1 [PDF:97KB] 参照)

・80歳以上の新登録結核患者が全体に占める割合:36.1%(H25) から37.7%(H26)に増加
・80歳以上の新登録結核患者の罹患率(人口10万対):76.7(H26)
※70〜79歳の新登録結核患者の罹患率(人口10万対):28.4(H26)

[5] 外国出生者の新登録結核患者数は3年連続で1千人を超えており、増加傾向が続いて いる。特に、若年層の新登録結核患者における外国出生者の割合は大きく、20歳代では新登録結核患者の43%が外国出生者となっている。   (参考資料 5-7 [PDF:97KB] 参照)

・15-19歳新登録外国出生結核患者数: 56人(33.3%) (H25;29.1%)
・20-29歳新登録外国出生結核患者数: 511人(43.0%) (H25;41.3%)
・30-39歳新登録外国出生結核患者数: 243人(19.7%) (H25;17.1%)

[6] 日本国内における結核罹患率については依然として地域差がみられ、首都圏、中京、 近畿地域等の大都市において高い傾向が続いている。一方、低まん延とされている結核罹患率10.0を下回っているのは、6県となっている。   (参考資料 2 [PDF:97KB]参考資料 7-1 [PDF:97KB]参考資料 7-2 [PDF:97KB] 参照)

・大都市の新登録結核患者罹患率(人口10万対):
大阪市(36.8)、名古屋市(23.2)、京都市(21.8)、堺市(21.5)、神戸市(21.5)、
東京都特別区(21.2)

・新登録結核患者罹患率(人口10万対)10.0未満の県:
長野県(8.1)、宮城県(9.0)、山梨県(9.2)、新潟県(9.3)、秋田県(9.5)、
福島県(9.6)

[7] 受診が遅れる(症状発現から受診までの期間が2か月以上の割合)患者の割合は、昨 年とほぼ同様であった。しかし、30歳〜59歳の働き盛りで感染性のある結核患者においては遅れが目立ち、平成26年は38%の患者に受診の遅れがみられた。 (参考資料 10-1 [PDF:97KB] 参照)

・全年齢有症状肺結核のうち受診が遅れる割合:18.8%
(H24;18.7%、H25;18.1%)
・(再掲)30-59歳の有症状喀痰塗抹陽性肺結核のうち受診が遅れる割合:38.0%
(H24;33.7% 、H25;31.5%)

[8] 小児結核(0〜14歳)の新登録結核患者数は、昨年に比べ25%減少した。しかし、 結核性髄膜炎、粟粒結核の重症患者6人の発生があった。このうち結核性髄膜炎は5例(0〜4歳は2例、5〜9歳は3例でうち外国出生者1例)、粟粒結核は2例(0〜4歳は1例、10〜14歳は1例で外国出生者)、うち1人は結核性髄膜炎と粟粒結核の併発であった。  (参考資料 5-1 [PDF:97KB]参考資料 5-2 [PDF:97KB]参考資料 5-3 [PDF:97KB] 参照)

・小児新登録結核患者数:49人
(H22;89人、H23;84人、H24;63人、H25;66人)
・小児新登録喀痰塗抹陽性肺結核患者数:1人
(H22;7人、H23;5人、H24;5人、H25;0人) ・小児新登録結核性髄膜炎:5例
(H22;0例、H23;1例、H24;1例、H25;2例) ・小児新登録粟粒結核:2例
(H22;0例、H23;2例、H24;0例、H25;0例)

[9] 新登録肺結核患者の培養陽性(※2)者のうち多剤耐性結核(イソニアジド(INH) 及びリファンピシン(RFP)の両剤に対して耐性)患者は56人であった。このうち外 国出生者は34%に当たる19人であった。薬剤感受性試験(※3)結果が判明した者 のうち、多剤耐性結核患者の割合は、引き続き1%未満を推移している。新たに登 録された肺結核培養陽性の患者における薬剤感受性試験結果の把握率も、近年横 ばい傾向である。(参考資料11 [PDF:97KB]参照)

・薬剤感受性試験結果が判明した者のうち多剤耐性結核患者の割合:0.7%
・新登録肺結核培養陽性患者のうち薬剤感受性試験結果が把握された者の割合:74.5%

[10] 潜在性結核感染症(LTBI) (※4)の新登録患者の総数は、昨年と比べ415名増加した。 特に最も伸び率が高い40歳以上の者については600人以上増加した。 (参考資料 5-4 [PDF:97KB] 参照)

・潜在性結核感染症(LTBI)新登録患者数:  7,562人(H25;7,147人)
・40歳以上のLTBI治療対象者数: 4,470人 (H25;3,852人)

[11] 新登録結核患者で糖尿病を合併している割合は近年上昇傾向だったが、平成26 年は減少した。 (参考資料 12 [PDF:97KB] 参照)

・糖尿病を合併している新登録結核患者の割合: 14.0%
(H23;13.7%、H24;14.3%、H25;14.5%)

[12]  医療従事者における新登録結核患者数は、看護師・保健師は減少傾向だったが、平成26年はやや増加した。一方、増加傾向であったその他の医療従事者では減少がみられ、特に医師については約3割減少した。(参考資料13-1 [PDF:97KB]参考資料 13-2 [PDF:97KB]参考資料 13-3 [PDF:97KB] 参照)

・看護師・保健師:249人
(H22;316人、H23;350人、H24;294人、H25;234人)
・医師:47人
(H22;91人、H23;81人、H24;62人、H25;66人)
・その他の医療従事者:255人
(H22;157人、H23;242人、H24;280人、H25;281人)

(※1)喀痰塗抹陽性肺結核:
患者の痰から多量の結核菌が排出されている結核のことであり、周囲の人達への感染源となりやすい。

(※2)培養陽性:患者の痰などを培養して結核菌を検出した結核のことであり、排出されている菌が少ない場合は、喀痰塗抹陽性肺結核よりも、周囲の人達への感染は起こりにくい。

(※3)薬剤感受性試験:治療を始める前に、患者に合った結核治療薬を選択するための検査。当該検査で、イソニアジド(INH)及びリファンピシン(RFP)が効かない多剤耐性結核かどうかを判断する。

(※4)潜在性結核感染症(latent tuberculosis infection; LTBI):
結核を発病していないが、結核菌が感染していることを強く疑う場合に、結核発病の可能性が高いため治療が必要なことがあり、これを潜在性結核感染症と呼ぶ。

1 新登録結核患者数、罹患率について

参考資料 4-1 [PDF:97KB]参考資料 4-2 [PDF:97KB] 参照)

  • 平成26年中に新たに結核患者として登録された者の数は19,615人で、前年より880人(4.3%)減少した。減少率を見ると、平成24年から平成25年にかけての減少率は3.7%であり、平成25年から平成26年にかけての減少率は4.3%であることから、減少幅は0.6ポイント大きくなった。
  • 平成26年の罹患率(人口10万対)は15.4であり、前年の16.1より0.7(4.3%)減少した。減少率を見ると、平成24年から平成25年にかけての減少率は3.6%であり、平成25年から平成26年にかけての減少率は4.3%であることから、減少幅は0.7ポイント大きくなった。
  • 菌喀痰塗抹陽性肺結核の患者数は7,651人で、前年より468人(5.8%)の減少であった
  • 菌喀痰塗抹陽性肺結核の罹患率(人口10万対)は6.0であり、前年の6.4より0.4減少した。菌喀痰塗抹陽性肺結核の患者が新登録結核の総患者数に占める割合は39.0%で、前年より0.6ポイント小さくなった。
区分 平成22年 平成23年 平成24年 平成25年 平成26年
新登録結核患者数 23,261人 22,681人 21,283人 20,495人 19,615人
  罹患率(人口10万対) 18.2 17.7 16.7 16.1 15.4
菌喀痰塗抹陽性肺結核患者数 9,019人 8,654人 8,237人 8,119人 7,651人
新登録結核患者数に占める割合 38.8% 38.2% 38.7% 39.6% 39.0%
  • 都道府県別の罹患率をみると、大阪府、長崎県、和歌山県、京都府、東京都の順に高く、長野県、宮城県、山梨県、新潟県、秋田県の順に低かった。罹患率の一番高い大阪府は 24.5であり、同府の中でも大阪市の罹患率は最も高く36.8であった。

参考資料 2 [PDF:97KB]参考資料 7-2 [PDF:97KB] 参照)

2 年末時結核登録者数、有病者数、有病率について

参考資料 8 [PDF:97KB]参照)

  • 平成26年末現在の結核登録者数は47,845人であり、前年より1,969人減少した。うち、活動性全結核の患者数は13,513人であり、前年より444人減少した。
区分 平成22年 平成23年 平成24年 平成25年 平成26年
結 核 登 録 者 数 55,573人 55,196人 52,173人 49,814人 47,845人
  活動性全結核患者数 17,927人 17,264人 14,858人 13,957人 13,513人
有病率(人口10万対) 14.0 13.5 11.7 11.0 10.6

3 新登録潜在性結核感染症者数について

参考資料 5-4〜5-6 [PDF:97KB] 参照)

  • 平成26年に新たに登録された潜在性結核感染症の患者数は7,562人で、前年の7,147人に比べ415人増加した。職業別では、全体の患者数に占める医療職の割合は減少し、29.1%となっており、常勤職(医療職、接客業、教員・保育士を除く)の割合は21.2%と横ばいであった。一方、無職・その他が全体に占める割合は20.9%と昨年の17.0%より3.9%増加した。
    (新登録潜在性結核感染症患者全体に占める医療職の割合 看護師・保健師 15.4%、医師 2.4%、その他医療職 11.3%)

4 死亡者数、死亡率、死亡順位

参考資料 3 [PDF:97KB] 参照)

  • 平成26年中の結核による死亡者数は2,099人(概数)で、前年の2,087人に比べ12人増加した。死亡率は1.7、死因順位は26位といずれも昨年と同じであった。

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