今冬のインフルエンザ総合対策について(平成20年度)
インフルエンザQ&A |
● | インフルエンザ総論 |
Q.1 | : | インフルエンザと普通の風邪はどう違うのですか? |
Q.2 | : | インフルエンザはいつ流行するのですか? |
Q.3 | : | インフルエンザの流行の歴史について教えてください。 |
Q.4 | : | 現在国内で流行しているインフルエンザはどのような種類ですか? |
Q.5 | : | インフルエンザの外国での流行状況を教えてください。 |
Q.6 | : | インフルエンザと新型インフルエンザはどう違うのですか? |
● | インフルエンザの予防対策とワクチン接種 |
● | インフルエンザの治療と対策 |
● | インフルエンザ総論 |
普通のかぜの多くは、のどの痛み、鼻汁、くしゃみや咳などの症状が中心で、全身症状はあまり見られません。発熱もインフルエンザほど高くなく、重症化することはあまりありません。
一方、インフルエンザは、38℃以上の発熱、頭痛、関節痛、筋肉痛など全身の症状が突然現れます。併せて普通の風邪と同じように、のどの痛み、鼻汁、咳などの症状も見られます。小児ではまれに急性脳症を、高齢者や免疫力の低下している人では肺炎を併発する等、重症になることがあります。
Q.2:インフルエンザはいつ流行するのですか。
インフルエンザは流行性疾患であり、一旦流行が始まると、短期間に多くの人へ感染が広がります。日本では例年11月〜4月に流行します。
Q.3:インフルエンザの流行の歴史について教えてください。
インフルエンザの流行は歴史的にも古くから記載されていますが、科学的に立証されているのは1900年ごろからで、数回の世界的大流行が知られています。中でも、1918年に始まった「スペインインフルエンザ(原因ウイルスA/H1N1亜型)」では、当時、インフルエンザによる死亡者数は全世界で2,000万人とも4,000万人ともいわれ、日本でも約40万人の犠牲者が出たと推定されています。その後、1957年には「アジアインフルエンザ(A/H2N2亜型)」が、1968年には「香港インフルエンザ(A/H3N2亜型)」が世界的な大流行を起こしています。
Q.4:現在国内で流行しているインフルエンザはどのような種類ですか?
インフルエンザの原因となるインフルエンザウイルスは、A型、B型、C型に大きく分類されます。このうち大きな流行の原因となるのはA型とB型です。現在、国内で流行しているインフルエンザは、A/H1N1亜型(ソ連型)とA/H3N2亜型(香港型)、B型の3種類です。これらの亜型は世界中で共通した流行型となっています。流行するウイルス型やA亜型の比率は、各国地域で、また、その年ごとに異なっています。国内における流行状況の詳細は国立感染症研究所感染症情報センターのホームページを参照してください。
http://idsc.nih.go.jp/index-j.html
Q.5:インフルエンザの外国での流行状況を教えてください?
インフルエンザは世界中で流行しています。温帯地方では冬に(南半球では7〜8月)流行が見られます。熱帯・亜熱帯地方では国や地域により様々で、年間を通じて低レベルの発生がみられる地域や、複数の流行をみる地域もあります。流行株は地域によって若干の差はありますが、大きな差はありません。世界の流行状況は、WHOが発行しているホームページなどで知ることができます。
http://www.who.int/csr/disease/influenza/en/
Q.6:インフルエンザと新型インフルエンザはどう違うのですか?
新型インフルエンザウイルスとは、毎年ヒトの間で冬に流行するインフルエンザとは異なり、動物、特に鳥類のインフルエンザウイルスがヒトに感染し、ヒトの体内で増えることができるように変化し、ヒトからヒトへと効率よく感染できるようになったもので、このウイルスが感染して起こる疾患が新型インフルエンザです。
新型インフルエンザウイルスはいつ出現するのか、誰にも予測することはできません。人間界にとっては未知のウイルスであり、ほとんどのヒトは免疫を持っていないため、このウイルスは容易にヒトからヒトへ感染して広がり、急速な世界的大流行(パンデミック)を起こす危険性があります。
現時点で、こうした性質を持つ新型インフルエンザの発生は確認されていません。
「新型インフルエンザ」については、こちらのページをご参照下さい。
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/index.html
● | インフルエンザの予防対策とワクチン接種 |
インフルエンザを予防する方法としては、以下があげられます。
1) 流行前のワクチン接種
インフルエンザワクチンは、罹患した場合の重症化防止に有効と報告されており、わが国でも年々ワクチン接種を受ける方が増加しています。
2) 外出後の手洗い、うがい
手洗いは手指などの身体に付着したインフルエンザウイルスを物理的に除去するために有効な方法であり、うがいは口の中を清浄にします。両者とも感染症予防の基本です。外出後の手洗い、うがいは一般的な感染症の予防のためにもお勧めします。
3) 適度な湿度の保持
空気が乾燥すると、のどの粘膜の防御機能が低下し、インフルエンザにかかりやすくなります。特に乾燥しやすい室内では加湿器などを使って、十分な湿度(50−60%)を保つことも効果的です。
4) 十分な休養とバランスのとれた栄養摂取
からだの抵抗力を高めるために十分な休養とバランスのとれた栄養摂取を日ごろから心がけましょう。
5) 人混みや繁華街への外出を控え、やむを得ず外出する際のマスク着用
インフルエンザが流行してきたら、特に高齢者や慢性疾患を持っている人、疲労気味、睡眠不足の人は、人混みや繁華街への外出を控えましょう。やむを得ず外出をして人混みに入る可能性がある場合には、ある程度の飛沫等は捕捉されるため、不織布(ふしょくふ)製マスクを着用することは一つの防御策と考えられます。ただし、人混みに入る時間は極力短時間にしましょう。
※不織布製マスクとは
不織布とは織っていない布という意味で繊維あるいは糸等を織ったりせず、熱や化学的な作用によって接着させたことで布により製造したマスクです。
Q.8:インフルエンザワクチンはどの程度効果があるのですか?
インフルエンザワクチンの接種により、インフルエンザによる重篤な合併症や死亡を予防し、健康被害を最小限にすることが期待されています。ワクチンの効果は、年齢、本人の体調、そのシーズンのインフルエンザの流行株とワクチンに含まれている株の抗原性の一致状況によっても変わります。
日本における研究では、65歳以上の健常な高齢者については、約45%の発病を阻止し、約80%の死亡を阻止する効果があったという報告があります。小児については、1歳以上で6歳未満の幼児では発病(発熱)を阻止する効果は約20〜30%で、1歳未満の乳児では対象症例数が少なく、効果は明らかでなかったという報告があります。
なお、インフルエンザワクチンは、鳥インフルエンザや他のウイルス、その他の病原体による「かぜ」(かぜ症候群)には効果はありません。
Q.9:予防接種法に基づく定期のインフルエンザ予防接種の対象はどのような人ですか?
以下の方々は、インフルエンザにかかると重症化しやすく、またインフルエンザワクチンの接種による効果が認められているため、定期の予防接種の対象となっています。予防接種を希望する方は、かかりつけの医師とよく相談のうえ、接種を受けるか否か判断してください。
- 65歳以上の方
- 60〜64歳で、心臓、じん臓若しくは呼吸器の機能に障害があり、身の周りの生活を極度に制限される方
- 60〜64歳で、ヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能に障害があり、日常生活がほとんど不可能な方
Q.10:予防接種法に基づく定期のインフルエンザ予防接種はどこで受けられますか?
地域の医療機関、かかりつけ医などでインフルエンザワクチンを受けることが出来ますが、自治体によって期間や費用は異なります。インフルエンザワクチン接種可能な医療機関や地域での取り組みについては、地域の保健所、医師会、医療機関、かかりつけ医などに問い合わせてください。
Q.11:インフルエンザ予防接種に望ましい時期はいつですか?
インフルエンザの流行は1月上旬から3月上旬が中心であること、ワクチン接種による効果が出現するまでに2週間程度を要することから、毎年12月中旬までにワクチン接種を受けることが望ましいと考えられます。
Q.12:予防接種法に基づく定期のインフルエンザ予防接種は希望すれば誰でも受けられますか?
予防接種法に基づくインフルエンザワクチンの定期接種が不適当と考えられる方は、予防接種実施規則に以下のように示されています。
<予防接種実施規則第6条による接種不適当者(抜粋)>
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また、以下に該当する方は、予防接種実施要領に基づく接種要注意者とされていますので、接種に際しては、医師とよくご相談ください。
<インフルエンザ予防接種実施要領に基づく接種要注意者>
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Q.13:インフルエンザワクチンの接種によって引き起こされる症状(副反応)にはどのようなものがありますか?
比較的頻度が高い副反応としては、接種した部位(局所)の発赤・腫脹、疼痛などがあげられます。全身性の反応としては、発熱、頭痛、悪寒、倦怠感などが見られます。また、まれに、ワクチンに対するアレルギー反応(発疹、じんましん、発赤と掻痒感)が見られることがあります。
接種局所の発赤、腫脹、疼痛は、接種を受けられた方の10〜20%に起こりますが、2〜3日で消失します。全身性の反応は、接種を受けられた方の5〜10%にみられ、2〜3日で消失します。
その他にギランバレー症候群(GBS)、急性脳症、急性散在性脳脊髄炎(ADEM)、けいれん、肝機能障害、喘息発作、紫斑などの報告がまれにありますが、これらの疾患とワクチンとの関連についてはまだ明らかになっていません。
ワクチン接種後に発熱した場合も、インフルエンザ以外の他の発熱性疾患にかかった可能性も考えられ、必ずしもワクチンそのものによる副反応ばかりとは限りません。
Q.14:インフルエンザワクチンの接種による死亡例はありますか?
インフルエンザワクチン接種後に起こった生じた死亡の届け出はあります。日本では、昭和51年から平成6年までの、主に小児に対して接種が行われていた頃の統計では、インフルエンザワクチン接種により引き起こされたことが完全には否定できないとして、救済対象と認定された死亡例は約2,500万接種あたり1件でした。また高齢者については、定期接種開始後、約6,380万件程度の接種実施がありますが、救済対象と認定された死亡例はゼロとなっています(平成13年〜平成18年)。
Q.15:インフルエンザワクチンの接種によってインフルエンザを発症することはありますか?
インフルエンザワクチンは不活化ワクチンですので、ワクチンそのものには病原性はありませんから、ワクチン接種によってインフルエンザを発症することはありません。
Q.16:インフルエンザワクチンの接種によって著しい健康被害が発生した場合は、どのような対応がなされるのですか?
予防接種法による定期接種の場合、予防接種を受けたことによる健康被害であると厚生労働大臣が認定した場合に、予防接種法に基づく健康被害の救済措置の対象となります。
また、予防接種法の定期接種によらない任意の接種によって健康被害が生じた場合は、独立行政法人医薬品医療機器総合機構法による被害救済の対象となります。健康被害の内容、程度等に応じて、薬事・食品衛生審議会(副作用被害判定部会)での審議を経た後、医療費、医療手当、障害年金、遺族年金、遺族一時金などが支給されますが、この場合でも厚生労働大臣の判定が必要です。
新たに創設された生物由来製剤感染等被害救済制度により、生物由来製品を適正に使用したにもかかわらず、その製品が原因で感染症にかかり、入院が必要なほどの健康被害が生じた場合の救済も行われることになりました(平成16年4月1日以降に使用された生物由来製品によって生じた感染被害が対象)。
以上の救済制度の内容については、下記のウェブサイトを参照するか、または独立行政法人医薬品医療機器総合機構(TEL:0120-149-931)にご照会ください。
医薬品副作用被害救済制度:http://www.pmda.go.jp/kenkouhigai/help.html
生物由来製剤感染等被害救済制度http://www.pmda.go.jp/kenkouhigai/kansen.html
Q.17:インフルエンザワクチンを接種するにはいくらかかりますか?
予防接種は病気に対する治療ではないため、健康保険が適用されません。原則的に全額自己負担となります。
しかし、予防接種法に基づく定期接種の対象者については、接種費用が市町村によって公費負担されているところもあるので地域の保健所、医師会、医療機関、かかりつけ医などに問い合わせていただくようお願いします。
● | インフルエンザの治療と対策 |
自分のからだを守り、他の人にうつさないために、
・ | 具合が悪ければ早めに医療機関を受診しましょう。 |
・ | 安静にして、休養をとりましょう。特に、睡眠を十分にとることが大切です。 |
・ | 水分を十分に補給しましょう。お茶やスープなど飲みたいもので結構です。 |
・ | 咳・くしゃみなどの症状のある時は、周りの方へうつさないために、不織布製(ふしょくふ)マスクを着用しましょう。(咳エチケット) |
・ | 人混みや繁華街への外出を控え、無理をして学校や職場などに行かないようにしましょう。 |
不織布とは織っていない布という意味で繊維あるいは糸等を織ったりせず、熱や化学的な作用によって接着させた布により製造したマスクです。
Q.19:インフルエンザの治療薬にはどのようなものがありますか?
インフルエンザに対する治療薬としては、抗インフルエンザウイルス薬(リン酸オセルタミビル:商品名タミフル、ザナミビル水和物:商品名リレンザ、塩酸アマンタジン:商品名シンメトレル等)があります。ただし、その効果はインフルエンザの症状が出はじめてからの時間や病状により異なりますので、使用する・しないは医師の判断になります。抗インフルエンザウイルス薬を適切な時期(発症-発熱-から48時間以内)から服用を開始すると、発熱期間は通常1〜2日間短縮され、ウイルス排泄量も減少します。なお、症状が出てから2日(48時間)以降に服用を開始した場合、十分な効果は期待できません。効果的な使用には用法、用量、期間(服用する日数)を守ることが重要です。(添付文書を参照してください。)
Q.20:薬剤耐性のインフルエンザウイルスとは何ですか。
薬剤耐性のインフルエンザウイルスとは、本来有効である薬剤が効かない、あるいは効きにくくなったウイルスのことです。この薬剤耐性のウイルスは、インフルエンザウイルスが増殖する過程において特定の遺伝子に変異が起こることにより生じると考えられています。
Q.21:薬剤耐性のインフルエンザウイルスと普通のインフルエンザウイルスは何が違いますか。
薬剤耐性のインフルエンザウイルスは、本来有効である治療薬に対し有効性の低下(耐性)を示しますが、薬剤耐性のウイルスだから病原性が強くなるという事はなく、現在のところ薬剤耐性のウイルスが通常のインフルエンザウイルスに比較して病状が悪化しているというということはありません。また、薬剤耐性のウイルスの遺伝子の変異は、ワクチンの効果に影響を及ぼしません。
Q.22:我が国における薬剤耐性のインフルエンザウイルスの発生状況はどうなっていますか?
我が国では、地方衛生研究所及び国立感染症研究所の協力によって、ノイラミニダーゼ阻害剤耐性株のサーベイランスを行っています。これはWHOが行なっているインフルエンザサーベイランスの一環でもあります。2009年1月8日時点の薬剤耐性に関する中間報告によると、諸外国と同様我が国でも、オセルタミビル(タミフル)耐性のインフルエンザウイルス(A/H1N1)が分離されています。
現時点では、全国で分離されたインフルエンザウイルス株の数が限られており、また、今後どの型のウイルスが流行の中心となるかについては、引き続きサーベイランスを行い、発生動向を注視することとしています。
なお、今シーズンについては、A/H1亜型とA/H3亜型の両方が分離されているほか、B型も分離されていますが、A/H3亜型ウイルス、B型ウイルスについては、現在のところ、オセルタミビル(タミフル)耐性は確認されていません。
我が国における都道府県別のA/H1亜型、A/H3亜型、B型のウイルス分離・検出状況、及び全国の薬剤耐性のインフルエンザウイルスの最新の状況は、国立感染症研究所のホームページで参照できます。
http://idsc.nih.go.jp/iasr/influ.html
なお、全世界での薬剤耐性のインフルエンザウイルスの最新の状況は、WHOのホームページで参照できます。
http://www.who.int/csr/disease/influenza/h1n1_table/en/index.html
Q.23:インフルエンザにかかったときに、薬剤耐性のインフルエンザウイルスによるものかをどのように判断したらよいですか。
現在、インフルエンザの診断は、臨床症状と迅速診断キットで行われています。この迅速診断キットでは、A型とB型は区別できますが、A/H1亜型、A/H3亜型までは区別することができません。
迅速診断キットの結果、地方衛生研究所や国立感染症研究所で実施されている最新のサーベイランスの情報などを総合的に勘案することが考えられます。
我が国における都道府県別のA/H1亜型、A/H3亜型、B型のウイルス分離・検出状況、及び全国の薬剤耐性のインフルエンザウイルスの最新の状況は、国立感染症研究所のホームページで参照できます。
国立感染症研究所 感染症情報センター
http://idsc.nih.go.jp/iasr/influ.html
(都道府県別のA/H1亜型、A/H3亜型、B型のウイルス分離・検出状況について https://hasseidoko.mhlw.go.jp/Byogentai/Csv/data1j.csv)
(平成21年1月16日現在のインフルエンザ(A/H1N1)オセルタミビル耐性株の国内発生状況について http://idsc.nih.go.jp/iasr/rapid/pr3483.html)
Q.24:感染症発生動向調査で確認されたオセルタミビル(タミフル)耐性のインフルエンザウイルス(A/H1N1)とはどのようなものですか?
感染症発生動向調査で確認されたオセルタミビル(タミフル)耐性のインフルエンザウイルス(A/H1N1)については、昨シーズンからヨーロッパを中心に出現しているオセルタミビル(タミフル)耐性ウイルスと同じ北欧系統となっています。昨シーズンは国内での発生頻度は低く、今シーズン、我が国を含めて北半球全体に広まった可能性があります。これまでオセルタミビル(タミフル)耐性ウイルスは感染性が弱いと考えられていましたので、ここまで広まった理由ははっきりしていません。
なお、分離されたインフルエンザウイルス(A/H1N1)については、今シーズンのワクチン株A/ブリスベン/59/2007の類似株であったことから、これらの耐性株に対して今シーズンのワクチンは有効であることが推測されています。
※ オセルタミビル耐性のインフルエンザウイルス(A/H1N1)に関する抗原性解析について
http://idsc.nih.go.jp/iasr/rapid/pr3483.html
Q.25:オセルタミビル(タミフル)耐性のインフルエンザウイルス(A/H1N1)に効果のある薬はありますか?
2009年1月8日時点の感染症発生動向調査の中間報告によると、我が国でもインフルエンザウイルス(A/H1N1)について、オセルタミビル(タミフル)耐性のインフルエンザウイルス(A/H1N1)が分離されていますが、このウイルスには、現在のところ、ザナミビル(リレンザ)に対する耐性の問題は生じていません。
Q.26:薬剤耐性のインフルエンザウイルスについて、新型インフルエンザウイルスに影響はありませんか。
新型インフルエンザウイルスとは、毎年ヒトの間で冬に流行するインフルエンザとは異なり、動物、特に鳥類のインフルエンザウイルスが人に感染し、ヒトの体内で増えることができるように変化し、ヒトからヒトへと効率よく感染できるようになったもので、このウイルスが感染して起こる疾患が新型インフルエンザです。
新型インフルエンザウイルスはまだ世界のどこからも発生していないため、その性質を発生前に予測することは困難ですが、毎年ヒトの間で冬に流行するインフルエンザの薬剤耐性の状況と新型インフルエンザウイルスは通常は関連しないと考えられています。
「新型インフルエンザ」については、こちらのページをご参照下さい。
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/index.html
Q.27:オセルタミビル(タミフル)耐性のインフルエンザウイルスはどのように予防すればよいですか。
オセルタミビル耐性のインフルエンザでも、通常のインフルエンザでも、インフルエンザに対する予防方法は変わりません。一般的な季節性インフルエンザ予防のための以下のようなことが有効と考えられています。
1.外出後の手洗い、うがい
手洗いは手指などの身体に付着したインフルエンザウイルスを物理的に除去するために有効な方法であり、うがいは口の中を清浄にします。両者とも感染症予防の基本です。
2.十分な休養とバランスのとれた栄養摂取
からだの抵抗力を高めるために十分な休養とバランスのとれた栄養摂取を日ごろから心がけましょう。
3.適度な湿度の保持
空気が乾燥すると、のどの粘膜の防御機能が低下し、インフルエンザにかかりやすくなります。特に乾燥しやすい室内では加湿器などを使って、十分な湿度(50−60%)を保つことも効果的です。
4.人混みや繁華街への外出を控え、やむを得ず外出する際のマスク着用
インフルエンザが流行してきたら、特に高齢者や慢性疾患を持っている人、疲労気味、睡眠不足の人は、人混みや繁華街への外出を控えましょう。やむを得ず外出をして人混みに入る可能性がある場合には、ある程度の飛沫等は捕捉されるため、不織布製マスクを着用することは一つの防御策と考えられます。ただし、人混みに入る時間は極力短時間にしましょう。
5.咳エチケットの励行
咳・くしゃみなどの症状のある時は、周りの方へうつさないために、不織布製マスクを着用しましょう。また、くしゃみや咳をする場合は、極力、飛沫を他人に浴びせることがないように気をつけましょう。(咳エチケット)
※不織布製マスクとは
不織布とは織っていない布という意味で繊維あるいは糸等を織ったりせず、熱や化学的な作用によって接着させた布により製造したマスクです。
6.予防接種
薬剤耐性のインフルエンザウイルスの遺伝子の変異は、ワクチンの効果に影響を及ぼしません。我が国で分離されたインフルエンザウイルス(A/H1N1)については、今シーズンのワクチン株の類似株であったことから、これらの耐性株に対して今シーズンのワクチンは有効であることが推測されています。インフルエンザワクチンの効果については、Q8を参照してください。
※ オセルタミビル耐性のインフルエンザウイルス(A/H1N1)に関する抗原性解析について
http://idsc.nih.go.jp/iasr/rapid/pr3483.html
なお、これらの感染対策に唯一、完璧な方法はありません。これらを効果的に組み合わせて、インフルエンザの予防に取り組むことが大切です。
Q.28: 迅速診断キットでインフルエンザA型に感染しているとわかった場合、どのような治療が行われるのですか。
抗インフルエンザウイルス薬は、A型又はB型インフルエンザウイルス感染症と診断された全ての患者に対して必須のものではなく、患者さんの状態を十分観察した上で、医師が、本剤の使用の必要性を検討することとなっています。
高齢者、基礎疾患を有する者等で、肺炎等を併発するなど重症化しやすい高危険群に対して、医師が抗インフルエンザウイルス薬の投与が必要と判断した場合には、耐性が確認されていない抗インフルエンザウイルス薬の投与が検討されます(※1)。その際、地域での流行状況に留意してください(※2)。
なお、厚生労働省においては、医療機関の協力を得ながら、地域的な偏在等が生じないよう、抗インフルエンザウイルス薬の安定供給に努めているところです。
※ 1A/H3N2ウイルス、B型ウイルスについては、現在のところオセルタミビル(タミフル)耐性は確認されていません。また、A/H1N1、A/H3N2、B型ウイルスのいずれにおいても、ザナミビル(リレンザ)耐性は確認されていません。
※ 2我が国における都道府県別のA/H1亜型、A/H3亜型、B型のウイルス分離・検出状況、全国の薬剤耐性のインフルエンザウイルスの状況等については、下記ホームページを参照してください。
国立感染症研究所感染症情報センター
http://idsc.nih.go.jp/iasr/influ.html
(都道府県別のA/H1亜型、A/H3亜型、B型のウイルス分離・検出状況について https://hasseidoko.mhlw.go.jp/Byogentai/Csv/data1j.csv)
(平成21年1月16日現在のインフルエンザ(A/H1N1)オセルタミビル耐性株の国内発生状況について http://idsc.nih.go.jp/iasr/rapid/pr3483.html)
(参考)
・米国疾病管理センター(CDC):インフルエンザウイルス(A/H1N1)におけるオセルタミビル耐性の発生状況を踏まえた、2008/09インフルエンザシーズンにおける抗インフルエンザウイルス薬の使用における暫定的推奨について
http://www2a.cdc.gov/HAN/ArchiveSys/ViewMsgV.asp?AlertNum=00279
・ インフルエンザ等感染症に関する相談窓口:インフルエンザの流行状況をはじめとした感染症の一般的予防方法や予防接種の意義、有効性、副反応等に関する国民の疑問に的確に対応するため、(株)保健同人社にインフルエンザ等感染症に関する相談窓口を開設しています。
開設時期:平成20年7月1日(火)〜平成21年3月31日(火)
対応日時:月曜日〜金曜日(祝祭日除く)09:30〜17:00
電話番号:03−3234−3479
Q.29:タミフル服用後に、異常行動による転落死が起きているなどの報道がなされていますが、厚生労働省としてはどのように対応しているのですか。
タミフル服用後に患者が転落死した事例等が報告されたことを受けて、平成19年3月には、予防的な措置として、添付文書を改訂し、下記の注意を添付文書の警告欄に記載し、「緊急安全性情報」を医療機関に配布することを製造販売元の中外製薬株式会社に指示しました。
タミフルの服用と転落・飛び降り又はこれらにつながるような異常な行動や突然死などとの関係については、平成19年4月以降、薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会において調査・審議が行われ、副作用等報告、非臨床試験(動物実験等)、臨床試験、疫学調査等の結果を検討しています。現時点においては、これらの結果から直ちにタミフルの服用と異常な行動及び突然死との因果関係を示唆するような結果は得られていませんが、明確な結論を得るために必要な解析には至っていません(疫学調査及び臨床試験)。
上記調査会での調査・審議において、引き続き、特に、疫学調査及び臨床試験については、十分かつ慎重な検討や分析等を進めることとしています。
したがって、当面の予防措置として平成19年3月に講じた措置を継続することが妥当であり、引き続き医療関係者、患者・家族等に対して注意喚起を図ることとしています。
なお、調査会の資料は、厚生労働省のホームページの下記アドレスに掲載しています。
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/12/s1225-7.html
(添付文書の警告欄に追加された文章)
10歳以上の未成年の患者においては、因果関係は不明であるものの、本剤の服用後に異常行動を発現し、転落等の事故に至った例が報告されている。このため、この年代の患者には、合併症、既往歴等からハイリスク患者と判断される場合を除いては、原則として本剤の使用を差し控えること。 また、小児・未成年者については、万が一の事故を防止するための予防的な対応として、本剤による治療が開始された後は、(1)異常行動の発現のおそれがあること、(2)自宅において療養を行う場合、少なくとも2日間、保護者等は小児・未成年者が一人にならないよう配慮することについて患者・家族に対し説明を行うこと。 なお、インフルエンザ脳症等によっても、同様の症状が現れるとの報告があるので、上記と同様の説明を行うこと。 |
(参考)各年代におけるインフルエンザに関する注意喚起の内容は以下のとおりです。
年代 | インフルエンザへの抵抗力(体力) | インフルエンザによる死亡例 | 注意喚起 (2月28日) |
タミフルの添付文書情報(3月20日改訂) | ||||||
乳幼児 | 低 | 多い | 治療開始後少なくとも2日間は一人にならないように配慮 |
|
||||||
10歳以上 未成年者 |
高 | 少ない | 治療開始後少なくとも2日間は一人にならないように配慮 |
|
||||||
成人 | 中 | 少ない | ― | 本剤の必要性を慎重に検討 | ||||||
高齢者 | 低 | 非常に 多い |
― | 本剤の必要性を慎重に検討 |
ザナミビル水和物(リレンザ)及び塩酸アマンタジン(シンメトレル等)についても、転落・飛び降り等につながるような異常な行動の報告があります。このような状況も踏まえ、平成19年12月の薬事・食品衛生審議会医薬等安全対策部会安全対策調査会において、これらの医薬品についても、次の点を添付文書の使用上の注意に記載し、インフルエンザに罹患した小児・未成年者の異常行動発現のおそれについて改めて医療関係者、患者・家族等に対し注意喚起を図ることが適当であるとされたところです。
・因果関係は不明であるものの、本剤の使用後に異常行動等の精神神経症状を発現した例が報告されている。
・小児・未成年者については、異常行動による転落等の万が一の事故を防止するための予防的な対応として、本剤による治療が開始された後は、(1)異常行動の発現のおそれがあること、(2)自宅において療養を行う場合、少なくとも2日間、保護者等は小児・未成年者が一人にならないよう配慮することについて患者・家族に対し説明を行うこと。
なお、当該調査会の資料は、厚生労働省のホームページの下記アドレスに掲載しています。
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/12/s1225-7.html
Q.31:抗生剤はインフルエンザに効果がありますか?
インフルエンザウイルスに抗生剤は効きませんが、特に高齢者や体の弱っている方は、インフルエンザにかかることにより細菌にも感染しやすくなっています。このため、細菌にも感染する(混合感染)ことによっておこる肺炎、気管支炎などの合併症に対する治療として、抗生剤等が使用されることはあります。
Q.32:インフルエンザにかかったら、どのくらいの期間外出を控えればよいのでしょうか?一般的に、インフルエンザ発症前と発症してから3〜7日間はウイルスを排出すると言われています。そのためにウイルスを排出している間は、患者は感染源になります。
排泄されるウイルス量は解熱とともに減少しますが、解熱後もウイルスを排出すると言われています。排出期間の長さには個人差がありますが、咳などの症状が続いている場合には、不織布製マスクをするなど、周囲への配慮が望まれます。
参考までに、学校保健法では、「解熱した後2日を経過するまで」をインフルエンザによる出席停止期間としています(ただし、病状により学校医その他の医師において伝染のおそれがないと認めたときはこの限りではありません)。