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平成22年度 がん対策評価・分析事業 報告書の概要(あなたの思いを聞かせてください!がん対策に関するアンケート調査)

1.目的

 「がん患者と家族によるがん対策の評価」を行うため「がん対策推進基本計画 中間報告書(以下、中間報告書)」の施策について、分野別施策の取り組みを対象に、がん医療の受け手であるがん患者や家族からの声を集め、収集した情報を分析することにより、がん患者・家族にとって真に必要とされる施策を確認することを目的としている。

2.調査の概要

(1)調査対象

 がん診療連携拠点病院(377施設、平成22年11月現在)に外来通院中または入院中のがん患者またはご家族の方

(2)調査方法

 郵送による調査票の回収または、アンケート用紙を受け取った人に限り専用ウェブページからの回答

(3)分析手法

 重要度を問う定量的な「集計分析」における手法及び「内容分析」における手法を参考にしながら、自由記述から得られた生の声(コメント)を一定のルールに従い分類し、施策に対するニーズ(施策上の課題)の抽出を行い、その結果として、中間報告書に記載のある施策に対する取り組みに加えて、中間報告書には記載されていない新たな患者・家族のニーズを分析。

(4)調査期間

 2010(平成22)年12月6日〜12月31日

(5)有効回答数

 2,273件

(6)回答者属性

  • 回答者は60 歳代が最も多く828 人(36.4%)
  • 回答者の性別は男性(47.7%)と女性(51.4%)とほぼ同じ割合
  • 患者家族の回答者は362 人(15.9%)
  • がんと診断されてからの経過年数は、「1 年未満」が最も多く841 人(37.0%)
  • 現在の治療の状況に関しては、「治療を継続中」が最も多く1,719 人(75.6%)
  • 現在の医療機関のかかり方については、「外来通院中」が最も多く1,427 人(62.8%)
  • 再発や転移の経験については「ある」という回答が約半数の1,056 人(46.5%)
  • 今までに受けた治療(複数回答有)については、「化学療法」が1,829 人(80.5%)、「手術」が1,626 人(71.5%)、「放射線療法」が735 人(32.3%)

3.結果の概要

 本調査は、がん対策推進基本計画の分野別施策である「放射線療法及び化学療法の推進並びに医療従事者の育成」「緩和ケア」「在宅医療」「がん医療に関する相談支援及び情報提供」「がん登録」「がんの早期発見」の6 分野を対象とし、収集した情報の分析や考察を行う「がん対策評価・分析委員会」を設置し、以下にその分析結果及び結果を受けた考察をまとめている。

(1)分野1 放射線療法及び化学療法の推進並びに医療従事者の育成

 中間報告書に記載のある取り組みについては、現在行われている放射線療法や化学療法の実施体制の整備をさらに進めるにあたり、地域格差等の医療へのアクセスに関する問題を解消するための実効性を伴う策を検討するなどの工夫が期待されていることが示された。チーム医療体制の充実、抗がん剤等の医療品が早期に使用できるようにするための新薬の開発・審査体制の見直しが期待されていることも示された。

 調査で明らかになった中間報告書に記載のない取り組みに関しては、治療における経済的負担や精神的・身体的な痛みの軽減策へのニーズが明らかになっており、治療を通して、患者・家族の抱えるさまざまな負担の軽減に関わるさらに具体的な取り組みが求められている。また、治療のリスクや限界、治療成績などの情報提供を充実強化するというニーズも明らかになっている。

(がん対策評価・分析委員会による総合考察にあげられた主な点)

  • 放射線療法及び化学療法を行う部門の整備や医療従事者の育成を進める際は、数を増やすことにとどまらず、質の担保の観点からの取り組みが求められている。
  • 部門の整備や医療従事者の育成に関する取り組みを検討する際、現況と需要とのギャップがいまだ不明な部分もあるので、それらを把握しつつ進める必要がある。

(2)分野2 緩和ケア

 中間報告書に記載のある取り組みについては、緩和ケアに関わる医師や医療従事者の育成、緩和チームや地域ネットワークによる緩和ケアの提供へのニーズが示されており、その体制が整うことが患者・家族のニーズにあった緩和ケアの提供につながると考えられる。また、医療用麻薬については、適正に使用するための取り組みを推進する施策へのニーズが示された。

 調査で明らかになった中間報告書に記載のない取り組みに関しては、治療の初期段階から身体的・精神的な痛みを緩和するという緩和ケアの考え方の浸透に加え、家族を含む心のケアの更なる充実や初期からの緩和ケアの実施など、緩和ケアの具体的な提供内容を向上させるための策などへのニーズが明らかになった。

(がん対策評価・分析委員会による総合考察にあげられた主な点)

  • 緩和ケアについての正しい理解が患者・家族にも医療者にも浸透するような施策が求められる。
  • がんの治療と並行して治療初期からの緩和ケアが実施できるような体制など、患者や家族のニーズにあった、早期から緩和ケアを提供できるための仕組みを整備する策が求められている。

(3)分野3 在宅医療

 中間報告書に記載のある取り組みについては、希望する際に安心して在宅医療を選択できるよう、在宅医療の提供体制や連携の強化に関する取り組みに加えて、急に具合が悪くなった時の対応策や在宅医療を提供する医療機関の不足の解消策へのニーズが示された。また、在宅医療の質を評価するための仕組みを検討することへの期待に加えて、どの程度まで在宅医療が進んでいるかという評価の結果を開示することも求められていると考えられる。

 調査で明らかになった中間報告書に記載のない取り組みに関しては、経済的負担の軽減策に関するニーズがある。中でも、在宅医療では、医療保険のみならず介護保険での対応の必要性が示された。また、家族の負担の軽減につながるような取り組みについてのニーズもあると考えられる。

(がん対策評価・分析委員会による総合考察にあげられた主な点)

  • 在宅医療を望むときに安心して選択できるように提供体制や連携の強化とともに障壁となる要因の解明とその解決策が求められる。
  • 在宅医療における家族の負担を軽減する策を検討する必要がある。

(4)分野4 がん医療に関する相談支援及び情報提供

 中間報告書に記載のある取り組みについては、拠点病院に設置されている相談支援センターの充実につながる取り組みと共に、がん医療全体を通しての連携や相談支援センターの利用につながる取り組みが期待されている。また、がんに関する情報については、さまざまながんに関する情報の充実とともに、信頼性のある情報が提供されるよう、情報の質を担保する取り組みが求められている。

 調査で明らかになった中間報告書に記載のない取り組みに関しては、地域による情報の格差の解消などを含め、提供する相談支援及び情報提供の質を向上させ均てん化するというニーズ、拠点病院に設置されている相談支援センターや国立がん研究センターの「がん情報サービス」の認知を向上させる取り組みに関するニーズが明らかになった。

(がん対策評価・分析委員会による総合考察にあげられた主な点)

  • 相談支援と情報提供の取り組みは、患者や家族、国民ががんに向き合う際に欠かせない支えであり、がん医療も含めすべての施策分野に共通して必要とされるテーマであるため、広義の「相談支援及び情報提供」としてもとらえ、横断的・連続的な視点で実施する必要がある。
  • がん診療や療養全般を通して連続性のある相談支援・情報提供が求められている。患者や家族が必要な時に困難なく相談支援を受けられたり、信頼できる情報を活用できるように、相談支援センターにおける支援や情報提供につなげていく仕組みが求められる。

(5)分野5 がん登録

 中間報告書に記載のある取り組みについては、認知度向上にむけたさらなる検討が求められており、がん登録データの公開や活用によってがん登録への理解・協力や支援を広め、がん登録実施機関を増やしたり、がん登録についての研修を実施し人材を育成することによってがん登録の整備と質の向上につながることが期待される。

 調査で明らかになった中間報告書に記載のない取り組みに関しては、患者や家族ががん登録のデータを活用する手法の検討や医療者側が活用する手法の検討についてのニーズが明らかになっており、がん登録の認知度を上げるのみならずがん登録を行っていることによる利点を示すことが求められていると言える。また、収集される個人情報の適切な取り扱い等の取り組みへのニーズなども明らかになった。

(がん対策評価・分析委員会による総合考察にあげられた主な点)

  • がん登録の意義、目的、データの活用手法についての理解が十分でないために認知度が低いと考えられ、実施体制の整備とともに、がん登録を行うことによる利点を明確に示す必要がある。
  • 個人情報の適切な管理はきわめて重要であり、個人情報の保護に向けた体制がどのように構築されているかについての理解の推進につながる取り組みが求められる。

(6)分野6 がんの早期発見

 中間報告書に記載のある取り組みについては、ひきつづきがん検診の普及啓発を行うことに加えて、実際に検診の受診につながるための受診勧奨施策を検討し、実施することが重要であると示された。また、がん検診の精度管理を進めることによる地域や施設間で検診の質の格差を生まない取り組みや、適切な情報提供を実施することによる検診についての正しい理解や知識の普及に向けての取り組みが求められている。

 調査で明らかになった中間報告書に記載のない取り組みに関しては、より受診しやすい検診の実施体制に関するニーズやがん検診についての情報提供を強化することへのニーズが明らかになった。がん検診の普及啓発と並行して、実施体制をさらに充実させることが求められていると言える。また、経済的負担の軽減に関する取り組みへのニーズも明らかとなった。

(がん対策評価・分析委員会による総合考察にあげられた主な点)

  • がん検診の体制整備に加え、検診の意義・必要性の分かりやすさや受診へつなげる動機付け支援、経済的理由による阻害要因の軽減など、利用者視点の改善がより一層重要である。
  • 「受診率向上」という枠組みのみではなく、死亡率の低減、QOL(生活の質)の向上などの視点で対策を検討することも重要である。調査で明らかになったニーズは早期発見による生存率の向上という成果につなげていく上で重要であると考えられる。

4.その他

 研究目的等により個別アンケート調査のコメント閲覧をご希望される場合は、下記宛てにお申し出ください。

(照会先)

○厚生労働省健康局総務課がん対策推進室
TEL03−5253−1111(内線4604)

○特定非営利活動法人 日本医療政策機構 市民医療協議会
TEL03−5614−7796

特定非営利活動法人 日本医療政策機構 市民医療協議会サイトリンク
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