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96/07/26  第60回人口問題審議会総会議事録NO4
(引き続き高橋部長)
    2番目は、生残率で、将来何人の人々が何歳で何人生き残るかということにつ
   いても将来予測をしなければなりません。ここでは、各年次の男女死因別年齢別
   死亡率の実績値を将来に人口学的な方法を用いて延長して、先々の将来生命表を
   つくって、将来の男女年齢別生残率をつくり上げる。それを最終的には6のコ−
   ホ−ト要因法の計算に用いることになります。
    3番目が、国際人口移動で、これも過去の男女年齢別の入国超過率という実績
   を土台として、将来の男女年齢別国際人口移動率を予測します。最終的にはそれ
   を6番目のモデルの中で利用することになります。
    4番目は、出生率で、この場合は非常に複雑に分かれていますが、各回の国勢
   調査から得られる年齢5歳階級別未婚率、あるいは人口動態統計から計測される
   年齢別初婚率に基づいて、世代(コーホート)別の生涯未婚率、一生涯を何%の
   人が未婚で終るかという率をコーホート別、出生、生まれ年次別に予測する。あ
   るいは世代別の平均初婚年齢を予測します。それが一つの方向でモデル化が進み
   ます。もう一つのモデルとしては、夫婦完結出生児数、これは先ほど意識調査で
   も報告がありましたが、結婚した夫婦が一生を終えて何人子どもを産むかという
   のが意識調査、あるいは出産力調査などの分析を通じて得ることができます。そ
   れらに基づいて、世代別の将来の完結出生児数、夫婦の産む子どもの数を予測し
   ます。さらに人口動態統計に基づいてさまざまな数理モデルを使いながら、第1
   子、第2子、第3子、第4子、第5子、という出生順位別の出生年齢別パターン
   をモデル化する。
    こうしたいくつかの情報をもとに世代別の年齢別出生率の数理モデルをつくっ
   て、それを将来の年次ごとの出生率に組み替えて予測を行います。それを最終的
   に人口推計に用いるという方法をとっております。
    そしてもう一つ、5番目に、将来男女がどのくらいの比率で生まれてくるかと
   いうことも必要になってきますので、それについては出生性比を用いて、6のコ
   ーホート要因法によるモデルに投入して全体の計算を行っていく。人口推計はそ
   のような手続きで行うことになります。
    10ページに戻って、推計方法に書かれている部分ということになります。
    推計の種類としては、前回同様に出生率に関して中位、高位、低位の3種類の
   推計を行うという方針でおります。
    3.基準人口については、13ページに国勢調査に基づく、1995年は1%
   人口ですが、年齢ピラミッドがありますが、その人口を基準人口として将来へ人
   口推計していくということになります。
    4.生残率のモデル化の際の仮定ですが、1つは、14ページの図II−3で、
   日本の平均寿命の伸びは諸外国と比べて格段によいという現状があります。した
   がって、将来の仮定として、例えば、以前は行っておりましたが、西欧先進諸国
   の非常に平均寿命の高いところを目標、モデルとして生命表をつくっていくとい
   う手法はとれませんので、現在では、ここ何回かの推計で行っております年齢別
   死亡率に基づく方法ですとか、あるいは死因別年齢別死亡率に基づいて将来に延
   長していくという方法があるんですが、今回の推計では死因別年齢別死亡率を用
   いて将来に延長して将来の生命表をつくるという方法を考えております。
    5.出生率の仮定ということで、今回どのような出生率の仮定を設けるかとい
   う方針が5項目書いてあります。その話に入る前にいくつかの図表を用いながら
   、最近の出生率の変動を踏まえて、現在考えている出生率の仮定についてお話を
   させていただきたいと思います。
    資料17ページ、これは先ほど人口動態統計の報告にもありましたように、戦
   後の出生数ならびに合計特殊出生率の変化をグラフ化してあります。先ほども報
   告ありましたように、この数年の過去の合計特殊出生率の変化を見てみますと、
   平成5年の合計特殊出生率が1.46に、6年に1.50と反転して、平成7年
   に再び1.43へまた低下した。なおかつそれは史上最低の水準であったという
   ことです。これについて既に我々が分析を行ったところでは、この過去5年間、
   90〜95年の出生率低下については、そのほとんどが結婚の変化によって起き
   たということがわかっています。
    18ページがそれを具体的に人口学的な方法によって分析をしたものです。こ
   れをみますと、一番右の欄、1990〜95年で、期首というのが90年の合計
   特殊出生率1.54、そして期末の95年は1.43。その差は変化量−0.1
   1。つまり0.11の低下がこの5年間にみられたということです。これを2つ
   の要素に分割して我々は出生率の分析を行っております。1つは、年齢別有配偶
   出生率の変化。結婚している人の出生率の変化によって−0.11のどれぐらい
   がもたらされているかということ。もう1つは、年齢別有配偶率の変化。つまり
   、結婚している人の割合が各年齢層でどれくらい変化したことが合計特殊出生率
   をどの程度下げたかということを分析してあるわけです。
    それをみますと、有配偶出生率、結婚している人の出生率変化によって実は0
   .07プラスの方向に働いている。つまり、90年から95年については、合計
   特殊出生率が0.11下がったにもかかわらず、夫婦が生んだ出生率のレベルは
   出生率を上げる方向に作用している。ところが、有配偶率の変化、結婚している
   人のパーセンテージの変化をみますと、−0.18。即ち、結婚している人々の
   出生率が上がっているにもかかわらず、それを上回って結婚している人のパーセ
   ンテージが減ったことがこの5年間の出生率を大きく下げていたということを意
   味しているわけです。それだけ、この間の出生率低下に及ぼした結婚の変化が非
   常に大きいということを意味しているわけです。
    そのことをもう少し詳しくみるために、19ページに未婚率の趨勢を表に示し
   てあります。これをみますと、男性のほうは後回しにして、女性のほうをみます
   と、先ほど調査室長からも話がありましたように、25〜29歳の女性の未婚率
   が90年の40.2から95年の49.0と約9ポイントの増加をしている。3
   0〜34歳についても13.9から19.9へ6ポイント増加した。この部分が
   非常に大きく合計特殊出生率の5年間の変化に対しては効いているわけです。1
   8ページの年齢別有配偶率変化による影響の、25〜29歳のところは−0.1
   1となっています。即ち、未婚者の割合が9ポイント上昇したことが合計特殊出
   生率を0.11下げているという関係になっていることがわかろうかと思います
   。それだけ20代後半の女性の未婚率の上昇が合計特殊出生率の低下に対して大
   きく影響していたということです。20ページはグラフ化したものです。これの
   非常に特徴的なことは、男性では、15〜19歳、20〜24歳の若い年齢層は
   別にして、すべての年齢で90〜95年ついては未婚率が上昇ぎみである。女性
   の場合、際立って上昇しているのが25〜29歳と30〜34歳である。男性に
   比べて女性の場合は、30歳代後半、40歳代では未婚率上昇のテンポは緩やか
   であるということが窺えます。
    いままでの見方は、いわば年次単位に出生率なり未婚率をみたものです。とこ
   ろが、我々人口学者はいわばコーホート的にみるということをよく行います。コ
   ーホート的とは何かということがありますので、39ページで、期間出生率とコ
   ーホート出生率という指標について図を示してご説明しておきたいと思います。
    結婚、出産、離婚という事柄というのは、いわば統計は年次単位でとられます
   が、実はそれはある何年かに生まれた世代が年齢の経過とともに経験する事柄と
   いう色彩が非常に強いわけです。つまり、ベビーブームの世代にはベビーブーム
   の世代の人生経験があって、それは別の世代の人々とは相当異なった人生経験を
   描いているということがみられます。したがって、結婚率、出生率ということを
   みる際に、この図でいいますと、斜めに進むような指標をみたほうがはるかに安
   定性が高いということがよく知られているところです。
    それを実際に未婚率についてみたものが21ページの図II−8と図II−9です
   。この図は年齢別出生コーホート別未婚者割合で、それぞれ5年間隔で出生年次
   別に、例えば、1930年から34年に生まれた人々が15〜19歳にはどれく
   らいの未婚率であったか。あるいは20〜24歳ではどれくらいの未婚率であっ
   たかということを世代別に観察したものです。上のグラフは男性で、これをみま
   すと、新しいコーホート、つまり、新しい世代ほど曲線が上のほうにシフトして
   いっている。つまり、時代とともに結婚のしかたが大きく変わってきているとい
   うことが窺えます。下は女性ですが、女性の場合は、戦前世代の人々、1930
   〜34年生まれ、35〜39年、40〜44年、45〜49年生まれの人々はほ
   ぼ似通った未婚のパターンを示しております。ところが、1955〜59年生ま
   れ、それ以降の世代についていうと、そこから上のほうへシフトしていっている
   。つまり、女性についていうと、戦後生まれの人々で結婚のパターンが変わって
   きたということが窺えます。 このように、コーホート的にみた場合に、その特
   質がよく表れるということは我々がコーホートの方法に基づいて出生率を推計す
   るという一つの有力な根拠にもなっています。
    22ページは、人口動態統計に基づく指標です。これは先ほどお話がありまし
   たので、ここではスキップさせていただきます。
    23ページの図II−11は、コーホート累積初婚率で、過去何十年の人口動態
   統計から年齢別の初婚率がとれますが、それを生まれ年別に組み替えをすること
   で、それぞれの、例えば1945年生まれ、50年生まれについて、その人々が
   どのように結婚してきたかということを年齢各歳別にその累積過程を統計として
   とったものです。これをみますと、1945年生まれ、50年生まれはずっと上
   、天井のほうまで届いておりまして、最終的に50歳ラインを越えるところでみ
   ますと95%前後に達している。つまり、この世代については、95%の人々が
   結婚をしており、生涯未婚で過ごす人は4、6%であったということを示してい
   るわけです。それ以降の世代については累積過程がだんだん落ちてきている。即
   ち、いわば晩婚化が進んできて、結婚に入る勢い、年齢がどんどん上昇してきた
   ということです。
    ちなみに、若いコーホートについていいますと、例えば、1970年生まれの
   人は現在のところ25歳です。これらの人々が今後どのように結婚するかという
   のはまったくの未知数であります。ここでは参考までに、1995年に観察され
   た年齢別の初婚率ですが、それをつなぎ合わせて、仮に1995年の勢いで今後
   結婚したらどうなるのかということを将来について描いたものです。1970年
   生まれ、75年生まれについていうと、最終的に実現される生涯の結婚率は0.
   80前後になると見られるわけです。ところが、ここにはいくつかの問題点もあ
   るわけです。2割の人々が結婚するようになるのかといいますと、現実は現在、
   1995年についていうと、結婚を延ばしている人が多い。つまり、現在の30
   、31、32歳のところは、見掛け上、初婚率が低く出ているということがある
   わけです。したがって、先々結婚する可能性が残されているので、確実に2割の
   人々が未婚のまま終るということは意味しておりません。
    24ページは、結婚に対する動機というか、インテンション、意欲というもの
   が一体どうなっているのかを調べてみますと、先ほど意識調査の報告にもありま
   したが、私どもの研究所で行っている出生動向基本調査に基づきますと、198
   0年代から90年代にかけて「いずれ結婚するつもり」という人のパーセンテー
   ジはやや落ちてきて、大体現在90%の水準にある。6月に毎日新聞の家族計画
   調査が発表されていますが、その結果をみますと、「いずれ結婚するつもり」と
   いうところに該当する者は90.4%。この5、6年の間をみますと、この「い
   ずれ結婚するつもり」の9割ラインは、どの調査を見ても動いていないわけです
   。したがって、結婚に対する意欲は高いレベルで存在しているということが窺え
   るのではないだろうかということがいえます。ここまでが結婚の変化に関するも
   のです。
    それでは、出生率を大きく動かすもう一つの側面であります、結婚した人々の
   産む子どもの数の水準についてですが、それが25ページの図II−14です。こ
   れをみますと、出生動向基本調査あるいは、先ほど報告のあった意識調査の結果
   をみますと、やや落ちているといっても、これまで産んだ子どもの数のレベルで
   いいますと2.1を越えるレベルにあるというのが、平均出生率に関する現状で
   あります。26ページの、予定子ども数については、先ほど報告がありましたよ
   うに、20代、あるいは30代でこの数年の間みますと2.21ということで、
   したがって、結婚をすれば相当の数の子どもを産むという底堅い水準が維持され
   ていることが窺えます。
    27ページは、理想子ども数です。理想子ども数は先ほどもやや減少ぎみとい
   うことでしたが、このような2.5前後の水準であるということです。
    28ページは、妻の結婚年齢別結婚経過年数別平均出生児数で、結婚年齢の上
   昇というものが出生児数にどのような影響を及ぼしているかということをみます
   と、結婚年齢が遅れた分、最終的に産む子どもの数は年齢が上がれば上がるほど
   落ちてくるという傾向がいままでのところ窺えます。一つは、25〜26歳のと
   ころでみますと2.15のレベルである。現在の女性の平均初婚年齢が26.3
   歳ですので、それに近いところでいうと、2を越える水準となっていますが、今
   後晩婚化が進み、27〜28歳というような水準にまで上るとすると、夫婦の産
   む子どもの数のレベルは2に近い水準にまで低下してくる可能性が含まれている
   ということをこの図は示しています。
    夫婦の出生率に関してはこのように手堅い水準にあるということがいえるかと
   思います。
    さて、それでは最終的に、資料11ページの5.出生率の仮定に戻ります。出
   生率の仮定については、1)から5) で要約してありますので、これについて簡
   単にお話させていただきます。
    出生率の仮定設定の方法としては、期間出生率法とコーホート出生率法があり
   ますが、我々の総合的な判断で最近の出生児の低下が主として結婚の遅れ、つま
   りコーホート的な結婚の遅れがあり、さらに出生のタイミングの遅れによって起
   きていると考えられますので、今回の推計では前回同様にコーホート出生率法を
   採用して人口推計を行いたいと思っております。
    ちなみに、33ページに、前回推計において行ったコーホート別年齢別出生率
   の予測値と実現値をプロットした図があります。コーホート別に出生率を予測す
   ると適合度が相当高い、我々の出生率の予測した結果を検討してみますとこの精
   度は高いと考えております。
    第2点目として、出生率の予測に関連しては、出生を第1子、第2子、第3子
   、第4子、第5子という出生順位に分けて推定をするということを行います。こ
   れについては後半に資料も添付してありますので、必要に応じてご覧になってい
   ただきたいと思いますが、基本的には、コーホート出生率の数理モデルを用いま
   す。専門的になりますが、4パラメーターのガンマ分布モデルというもので、結
   婚の発生、第1子出産の発生であるとか、その形状に関するパラメーターである
   とか、生涯未婚のパラメーター、無子発生のパラメーター、結婚年齢・出産年齢
   のパラメーター、出生順位別にその出産の標準偏差がどの程度あるのか、といっ
   たようなことで、パラメーター化したモデルを用いてコーホート的に推計をする
   ということです。
    4番目になりますが、現在、初婚ならびに出生過程がほとんど進んでないコー
   ホートがあるわけです。例えば、1990年生まれのコーホートとか、あるいは
   今年生まれたばかりのコーホートは先々どのような結婚をして、どのような未婚
   の状態でどうなるのかということに関してですが、これらについては、先ほど申
   し上げたような人口動態統計に基づくモデルであるとか、あるいは意識調査に基
   づくレベル等を参考にしながら、先々の完結出生児のレベル、生涯未婚のレベル
   、無子率のレベルを設定して、コーホート的なモデルで予測をするということに
   なります。
    5番目は総括的なことになりますが、合計特殊出生率の今後の推移は、生涯未
   婚率ならびに平均初婚年齢の上昇の程度、夫婦の完結出生児数の低下の程度によ
   りますので、3つの変化が永続的なものでない限り、いずれ今回も30代の出生
   率は反転上昇することになると考えております。といいますのは、先ほど結婚の
   ところで話しましたように、現在まさに20代後半、30代前半の人々は結婚の
   先延ばしをしている。ところが結婚の意欲は9割ある。それらの人々がある程度
   遅れながらも結婚の中に入ってくるというメカニズムが起こりますので、その分
   必ず出生率の反転は考えられるということです。ところが、どの程度反転するか
   ということになりますと、2030年時点の合計特殊出生率の水準でいいますと
   、前回中位推計の値を相当下回るものになろうというふうには考えております。
   以上は出生率の仮定に関することです。
    もう一つ、出生性比の仮定に関しては、35ページに過去の出生性比の推移が
   ありますが、年次を変えていろいろ平均をとってみますと、約105.6と安定
   していますので、生まれた赤ちゃんの男女の比率は女性100に対して男性10
   5.6という予測値のもとに推計をしようというふうに考えております。
    7番目、国際人口移動の仮定については、36ページの法務省の出入国管理統
   計によりますと、近年、入国者、出国者、総数は増加していますが、出入国の差
   は非常に小さいということがあります。しかも、38ページに過去数年、6年間
   ぐらいの年齢パターンの比較がありますが、年次によって非常に変動しやすいと
   いう傾向をもっています。したがって、国際人口移動については、過去の平均を
   用いて、それを将来一定と仮定するということを考えております。
    以上の基本的な枠組みに基づいて、現在将来の人口推計について準備中である
   ということをご報告させていただきます。以上です。
宮澤会長 どうもありがとうございました。それでは、只今の人口推計の基本的考え方
   について、ご意見、ご質問ございましたら、お願いします。
八代委員 いま非常に精緻でロジカルな推計方法をご説明いただいたんですが、基本的
   な疑問は、これまで10回にわたる、しかも最近の何回にもわたる人口推計がな
   ぜ一貫して過小評価してきたかということについてのご説明がなかったわけでし
   て、要するにロジカルな推計で一貫して過小評価するということは、今回もロジ
   カルに間違う可能性は十分にあるわけですね。ですから、なぜ過去のこのような
   精緻な推計が過小評価かということを是非次回にでもご説明いただきたいと思い
   ます。
    それから、関連して、私が一番問題だと思うのは、ご説明ありましたいまの晩
   婚化というのが単に結婚を先延ばしているんだという非常に強い説明なんですが
   、これが本当かどうか。つまり、この根拠は意識調査の24ページの女性が、い
   ずれ結婚するつもりだということが9割でとまっているということなんですが、
   この、いずれというのは、よい相手がみつかれば、という条件付きであって、み
   つからなければ結婚しないというのがいろんなほかの調査でもあるわけで、その
   いい相手がどうかというのは、女性の自分の経済力にも依存するわけですね。で
   すから、その意味で私がここで一番危惧してるのは、より経済的な要因がどうい
   うふうに入っているのか。例えば、私どもが個人的にあった感じでは、女性の晩
   婚化を説明する最も重要な要因というのは高学歴化でありまして、女性の4大進
   学率が過去の場合、女性の晩婚化とピッタリ合っている。ところが、女性の4大
   進学率が最近加速しているわけでして、しかも男性のほうはほぼ横ばいになって
   いますから、男性とのギャップが縮まっていく。しかし、まだまだそのギャップ
   は大きいわけです。アメリカの女性と比べてもまだ4大進学率は低いわけです。
   しかも、その進学内容がどんどん従来の文学部から経済学部、工学部、理工学部
   というような実学的なほうにシフトしてまして、それは結局女性の経済的地位を
   ますます高める要因になって、そうなるとますます結婚を焦る必要はない。よっ
   ぽどいい相手がいなければ結婚はしない。ですから、いずれ結婚したいというこ
   とと、実際に結婚するということとの乖離がいまますます広がっている状況で、
   従来と同じような、結婚を先延ばししてるだけだという前提は非常に危険ではな
   いかと思っています。
宮澤会長 ありがとうございました。この段階で何かコメントがありますか。
高橋部長 いま非常に晩婚化ということを強調しましたが、前回推計においても、我々
   は生涯未婚のレベルでいいますと、相当高いレベルを想定しております。前回推
   定時点で生涯未婚率のレベルは国勢調査でみられるレべルが4.4%でしたが、
   人口推計で仮定したレベルは、女子の高学歴化、若い世代における男女の賃金比
   の縮小傾向といったことを考慮して、若いコーホートについては生涯未婚率を1
   1%としております。したがって、今回についても、先々のコーホートについて
   は、例えば、厚生白書にも示されていますが、高学歴者の生涯未婚率あるいは平
   均初婚年齢は非常に高いものがあります。そうした分析を行いまして、生涯未婚
   率のレベルの選定であるとかいうことはモデルに反映していこうというふうに考
   えております。
吉原委員 私もいま八代委員のおっしゃったことと同じような疑問といいますか、問題
   意識をもっているんですが、厚生省の人口問題研究所の将来推計に、なんという
   か、不信感みたいなものがだんだん生じはじめてる気持ちがしないでもないんで
   すね。要するに、全然実際が違うからですね。しかも、説明の前半に、平成4年
   の推計と比べてあまり違ってないという説明、人口の問題を3年や4年であまり
   違ってないじゃないかとおっしゃるのは常識的にみても、私はそれを説明で強調
   されるのはおかしい。10年とか20年とか、場合によっては30年、40年で
   比較をされないと、それだけでたいして違ってないよというのはどうかなと思い
   ます。もし、今度の推計であんまり大きく実績と違うことになると厚生省の推計
   というのはなんだということになりますから、説明は説明でおっしゃったように
   ロジカルで、私も精緻な推計だと思いますが、実際には推計の考え方を、変える
   必要があるかどうかわかりませんけど、今度の推計はよほど慎重にやっていただ
   かないと、日本の将来をいろんな意味でミスリードしてしまう心配があると思い
   ます。特に前回の推計が中位よりもむしろ実際には低位のほうになってるわけで
   すね。それから、出生率も反転するといいながら、かなりそれは遅れている。今
   度また反転するとおっしゃって、いずれ反転するんでしょうけれども、あまりに
   も違いすぎる。厚生省の推計はいろんな意味で楽観的すぎるんじゃないかという
   ことがいわれているわけですから、そういうことも頭において、あまり論理的な
   理由だけで推計をされないほうがいいんじゃないかという気がしますので、申し
   上げておきます。
NO5に続く
  問い合わせ先 厚生省大臣官房政策課調査室
     担 当 真鍋(内2250)、大内(内2931)
     電 話 (代)[現在ご利用いただけません]


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