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平成12年3月31日
厚生省生活衛生局
農林水産省農林水産技術会議事務局

スナック菓子から我が国で安全性未確認の遺伝子組換えトウモロコシが検出されたという消費者団体の指摘に対する調査について


1 経緯

 平成11年7月29日、国内の消費者団体が、市販のスナック菓子原料について民間企業に依頼して検査を行った結果、一部のスナック菓子に我が国で食品等への安全性未確認の遺伝子組換えトウモロコシ品種であるMON830/831/832*1、MS3*2及びDLL25*3由来の原料が含まれているとの検査結果を発表した。そこで、厚生省及び農林水産省は、これらのトウモロコシ品種がスナック菓子に混入しているかどうかの確認に必要な調査を行うとともに、厚生省国立医薬品食品衛生研究所及び農林水産省食品総合研究所においてスナック菓子の検査を行った。

2 指摘を受けたトウモロコシ品種の調査について

 指摘を受けたトウモロコシ品種のうちMON 830/831/832及びMS3の品種は、平成9年に商品化の開発を中止しているため、商業栽培が行われることはあり得ない旨の情報を平成11年9月に米国政府から入手した。

3 スナック菓子の検査について

(1) 検査方法

 消費者団体から指摘を受けたスナック菓子と同一ロット又はほぼ同時期に生産されたスナック菓子について、PCR法*4を用いて、指摘を受けたトウモロコシに導入された遺伝子の有無を確認した。

(2) 検査結果

ア 検査を行ったスナック菓子から除草剤耐性遺伝子(CP4EPSPS遺伝子)*5及び雄性不稔遺伝子(barnase遺伝子)*6が検出された。
イ アで検出されたCP4EPSPS遺伝子及びbarnase遺伝子が、指摘を受けた安全性未確認の遺伝子組換えトウモロコシMON830/831/832及びMS3由来のものであるのかどうかについて、さらに検査を行った結果、これらの系統に特有のDNA配列は検出されなかった。
ウ 検出されたCP4EPSPS遺伝子の由来を確認するため、さらに検査を行った結果、安全性確認済みの遺伝子組換えダイズ由来(品種名:Roundup Readyダイズ)に特有のDNA配列が検出された。

エ 一方、検出されたbarnase遺伝子の由来を確認するため、さらに検査を行った結果、組換えトウモロコシの生産が行われていない平成元年及び平成5年に採取したトウモロコシからもこの遺伝子が検出された。さらに検査を行った結果、トウモロコシの皮に付着した粉塵からbarnase遺伝子が検出されたが、皮を除去したトウモロコシからはbarnase遺伝子は検出されなかった。

オ 検査を行ったスナック菓子からは、DLL25トウモロコシに特有のDNA配列は検出されなかった。

4 結論

 以上により、指摘を受けたスナック菓子に我が国で安全性未確認の遺伝子組換えトウモロコシが含まれている可能性はないと判断された。


*1:MON830/831/832

 モンサント社が開発した除草剤グリホサート(商品名:ラウンドアップ)で枯れないトウモロコシ(ラウンドアップ・レディー・トウモロコシ)の品種。
 当該品種について、我が国は、環境及び食品としての安全性確認を行っていないが、米国では食品としての安全性について平成8年に米国食品医薬品庁(FDA)が承認を行っている(環境に対する安全性については、同社が当該品種の商業化を中止したため、米国農務省(USDA)は承認を行っていない)。

*2:MS3

 プラント・ジェネティック・システムズ社(現アベンティス・クロップ・サイエンス社)が開発した雄性不稔(花粉ができない)のトウモロコシの品種。
 当該品種について、我が国は、環境及び食品としての安全性確認を行っていないが、米国では環境に対する安全性について平成8年にUSDAが、食品としての安全性について同年にFDAがそれぞれ承認を行っている。

*3:DLL25

 デカルブ・ジェネティックス社(現モンサント社)が開発した除草剤グリフォシネート(商品名:バスタ)で枯れないトウモロコシの品種。当該品種について、我が国は、環境に対する安全性を平成10年に、食品としての安全性を平成11年にそれぞれ確認している。米国では環境に対する安全性について平成7年にUSDAが、食品としての安全性について平成8年にFDAがそれぞれ承認を行っている。

*4:PCR法

 polymerase chain reaction法(=ポリメラーゼ連鎖反応法)。特定の DNAだけを短時間に大量複製する方法。この方法により、目的とするDNA配列の存在の有無について検討した。その結果、存在を示唆する複製産物が得られた場合には、そのDNA配列を解読して、開発企業より得られたDNA配列の情報と比較し、目的とするDNA配列の存在を確認した。

*5:CP4EPSPS遺伝子

 土壌中に一般に存在するアグロバクテリウム(Agrobacterium )に由来する遺伝子である。除草剤グリホサートは植物内のEPSPSタンパク質に作用し、アミノ酸の合成を阻害することで植物を枯死させるが、CP4EPSPSタンパク質は除草剤グリホサートの阻害作用を受けないので、この遺伝子が挿入された植物はグリホサート耐性形質となる。

*6:barnase遺伝子

 土壌中に一般に存在するバチルスアミロリキュエファシエンス(Bacillusamyloliquefaciens)に由来する遺伝子であり、RNA分解酵素を発現する。このRNA分解酵素を葯で働かせると、葯の正常な生育が阻害されるため、おしべが形成されず、雄性不稔性となる。


問い合わせ先:
厚生省生活衛生局
食品保健課長 松原 了
連絡先:中村、井関
電 話:[現在ご利用いただけません](内線2454,2447)
    03-3595-2326(ダイヤルイン)
ホームページアドレス:https://www.mhlw.go.jp/topics/idenshi/index.html

農林水産技術会議事務局
先端産業技術研究課長 吉田 岳志
連絡先:田部井、江上
電 話:03-3502-8111(内線5116,5122)
    03-3502-3919(直通)
ホームページアドレス:http://ss.s.affrc.go.jp/docs/sentan/entry.htm


(参考資料)

検査方法について(試験材料及び分析方法)

1 試験材料

(1)試験材料

 消費者団体から指摘を受けたスナック菓子と同一ロット又はほぼ同時期に生産されたスナック菓子を検査に用いた。

(2)比較対照

 分析方法が正確に行われたことを確認するため、スナック菓子中に指摘を受けたトウモロコシが入っているかどうかの検査を行うにあたり、指摘を受けたトウモロコシ品種(当該品種のDNA配列)を比較対照として用いた。

2 分析方法

 PCR法を用いて指摘を受けた組換えトウモロコシに導入された遺伝子の有無を検査した。具体的には、次により検査を行った。

(1)MON830/831/832に導入された除草剤耐性遺伝子(CP4EPSPS遺伝子)及びMS3に導入された雄性不稔遺伝子(barnase(RNA分解酵素)遺伝子)の検出

・ CP4EPSPS遺伝子及びbarnase遺伝子を検査するために必要なプライマーを設計し、PCR分析を行った。
(2)MON830/831/832及びMS3を特異的に検出するプライマーによる検出
・ MON830/831/832を特異的に検査するために必要なプライマーを設計し、PCR分析を行った。
・ MS3を特異的に検出するために必要なプライマーを設計し、PCR分析を行った。
(3)DLL25を特異的に検出するプライマーによる検査

 DLL25を特異的に検査するために必要なプライマーを設計し、PCR分析を行った。

図


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