(整理番号31)
事業評価書(
事前
・事後)
平成17年8月

評価対象(事業名) 中小企業子育て支援助成金(仮称)の創設
担当部局・課 主管部局・課 雇用均等・児童家庭局職業家庭両立課
関係部局・課  

1.事業の内容
(1) 関連する政策体系の施策目標
  番号  
基本目標 男女がともに能力を発揮し、安心して子どもを産み育てることなどを可能にする社会づくりを推進すること
施策目標 働きながら子どもを産み育てることなどを容易にする雇用環境を整備すること
I 育児・介護休業を取りやすく、職場復帰をしやすい環境を整備すること

(2) 事業の概要
事業内容(
新規
・一部新規)
 中小企業で働く労働者が安心して出産し、働きながら子育てをする条件を実現するため、中小企業に対する支援を充実し、育児休業取得者、短時間勤務制度の適用者等が初めて出た中小企業事業主(従業員100人以下)に対する新たな助成金制度を創設する。
 (1) 実施期間
 平成18年度から22年度までの5年間
 (2) 支給要件
 中小企業事業主(従業員100人以下)が次世代育成支援対策推進法の一般事業主行動計画を作成・届出し、同計画に基き、以下のア〜ウのいずれかの措置を講じるもの。
 育児休業の付与
 子の出生後6か月以上育児休業を取得し、職場復帰後6か月以上継続して常時雇用されていること。
 短時間勤務制度の適用(3歳未満)
 労働者が6か月以上短時間勤務の制度を利用したこと。
 育児サービスに係る現物給付又は従業員の負担軽減の補助措置の実施
 当該子が3歳になるまでの間に補助措置等の総額が100万円を超えること。
 (3) 助成額
 (2)のア〜ウのいずれかの対象者が初めて出た場合に、2人目まで次の額を支給する。
 1人目 100万円
 2人目  60万円
予算概算要求額 (単位:百万円)
H14 H15 H16 H17 H18
2,156

(3) 問題分析
(1)現状分析
 100人以下の中小企業で働く女性労働者の子育て環境をみると、出産後半年後も常用雇用者である割合は大企業(従業員500人以上)は60.5%となっているのに対し、100人以下の中小企業では36.3%となっており、多くの女性が出産を契機に離職している状況にある(厚生労働省「21世紀成年者縦断調査」)。
 さらに、企業規模別の育児休業取得率を女性についてみると、概ね規模が大きいほど取得率が高く、5,000人以上規模で76.3%、1,000〜4,999人規模で82.9%、300〜999人規模で80.1%、100〜299人規模で68.5%、30〜99人規模で60.3%であり、中小企業において、取得率が低くなっている状況にある(厚生労働省「平成15年度女性雇用管理基本調査」)。
(2)問題点
 中小企業の女性労働者が働き続けながら子育てを行うことが困難な状況にある理由としては、中小企業にとっては、育児休業等に伴う過大な負担増への懸念があること等が挙げられ、一方労働者にとっても、中小企業での就労実態を踏まえると育児休業等は企業や他の労働者に迷惑をかけると考えていることなどがあげられる。
(3)問題分析
 育児休業等の付与に伴って生じる中小企業の負担を軽減することや休業等は労働者の権利であることについて、事業主や労働者に正しい認識と理解をもってもらうことが必要である。
(4)事業の必要性
 本事業によって個々の中小企業において、出産による育児休業取得の第1号を出すことにより、中小企業に対しては、過大な負担に対する懸念を解消させ、人材確保に役立つことを実感してもらうとともに、労働者に対しては、休業取得に対する心理的な抵抗感を解消させ、労働者どうしの協力意識を醸成させることが可能となる。

(4) 事業の目標
目標達成年度 平成22年度
政策効果が発現する時期 実施以降随時効果の発現が見込まれる
アウトカム指標 H18 H19 H20 H21 H22 目標値/基準値
100人以下企業における育児休業取得率            
(説明)
厚生労働省調査
(モニタリングの方法)
女性雇用管理基本調査
アウトプット指標 H18 H19 H20 H21 H22 目標値/基準値
中小企業子育て支援総合助成金(仮称)の支給企業数            
(説明) (モニタリングの方法)


2.評価

(1) 必要性
行政関与の必要性の有無(主に官民の役割分担の観点から)
 無 その他
(理由)企業においては、希望する者すべてが安心して育児休業等を取得できる職場環境となるよう、取り組んでいただく必要があるが、民間に任せたままでは取得率が向上しないことから、本事業はこの達成に向け、特に取組の遅れた中小企業の取組を促進するものであり、また、育児・介護休業法第30条に定められた労働者の仕事と家庭の両立支援施策の一環として、行政が関与する必要がある。
国で行う必要性の有無(主に国と地方の役割分担の観点から)
 無 その他
(理由)中小企業の育児休業の取得促進に関する対策については、国の行う職業生活と家庭生活との両立支援施策と一体的に行う必要があり、またこの対策は全国的に必要であることから、本事業は国が実施することが適当である。
民営化や外部委託の可否
   否
(理由)本事業は、育児・介護休業法に基づき、子を養育する労働者の雇用の継続等を図るための給付金の支給業務を行うこととされている(財)21世紀職業財団に実施させることとしている。
緊要性の有無
   無
(理由)
 少子化の急速な進行が将来の社会経済に重大な影響を及ぼすことが懸念されている中、その要因の1つとして、仕事と子育ての両立に対する負担感が指摘されており、少子化の流れを変えるためには、仕事と家庭の両立支援策の推進や働き方の見直しが非常に重要な課題となっている。
 次世代育成支援については、国を上げて取り組んでいく必要があるが、特に、両立に関する取組に対して負担が大きく、また、育児休業に対する正しい認識が乏しいなどの理由から、大企業に比べ育児休業の取得が進んでいない中小企業について、両立を進める取組を促すことは喫緊の課題であり、本事業の緊急性は極めて高いものと考えられる。

(2) 有効性
政策効果が発現する経路
〈投入〉
 100人以下の中小企業の育児休業取得等の取組に対して助成金の支給。
  ↓
〈結果〉
 育児休業の付与に伴って生じる中小企業の負担が軽減されることにより100人以下の中小企業における育児休業等が促進され、また、育児休業等に対する事業主及び労働者の正しい認識や理解が得られる。
  ↓
〈成果〉
 中小企業で働く労働者が安心して出産し、働きながら子育てできる職場環境を実現。
これまで達成された効果、今後見込まれる効果
 中小企業において、育児休業等の取得が促進され、育児休業に対する事業主や労者の正しい認識や理解が得られることにより、労働者の職業生活と家庭生活の両立がしやすい職場環境が整備されることが見込まれる。
政策の有効性の評価に特に留意が必要な事項


(3) 効率性
手段の適正性。
(a)当該事業を行わない場合
 中小企業における育児休業等に対する過大な負担感や労働者の育児休業の取得に対する心理的な抵抗は解消されず、中小企業における育児休業等取得促進は進まず、特に取組を実施することがないこと等により、成果がなかなか現れないことが想定される。
(b)ほかに想定しうる手段で行った場合
 中小企業に対し、育児休業の取得促進のための取組を推進するよう働きかけたとしても、個々の中小企業では取得の実績がないこと等から、取組への誘因は薄く、十分な成果が現れないことが想定される。
(c)当該事業を行った場合
 当該事業を行うことにより中小企業では、過大な負担への懸念が具体的に解消・軽減され、また、労働者は育児休業取得の心理的な抵抗感を解消することで、より多くの中小企業において育児休業の取得者が発生し、育児休業についての正しい認識と理解が進み、中小企業で働く労働者が安心して出産し、働きながら子育てをする職場環境の実現が期待できる。
費用と効果の関係に関する評価
 本事業の経費は、育児休業等に対する取組が進まない中小企業事業主に対し、育児休業者の発生に伴う負担の軽減を図るものであり、一般事業主行動計画の策定や代替要員の確保、育児サービス利用の補助等、中小企業事業主が育児休業等の利用者を出すことにより実際に要する必要経費であり、この費用の一部を国が負担することにより、中小企業で働く他の労働者も安心して出産し、働きながら子育てをする条件が実現し、より多くの労働者にとって、仕事と家庭の両立を容易に図ることのできる職場環境が整備されるという波及効果が考えられるため、効率的であると考える。
他の類似事業(他省庁分を含む)がある場合の重複の有無
  
(有の場合の整理の考え方)


(4) その他
 本事業は、我が国の喫緊の課題となっている少子化対策の取組の一つとして、労働者が安心して子どもを産み育てられる職場づくりの実現に向けて必要な事業であり、その優先度は非常に高いものと考えられる。

(5) 反映の方向性
 評価結果を踏まえ、平成18年度予算概算要求において所要の予算を要求する。


3.特記事項

(1)学識経験を有する者の知見の活用に関する事項

(2)各種政府決定との関係及び遵守状況
 経済財政運営と構造改革に関する基本方針2005(平成17年6月閣議決定)において、「仕事と家庭・子育ての両立など仕事と生活のバランスを取りつつ、意欲と能力に応じた多様な働き方ができるよう、中小企業に配慮しつつ、環境整備の推進などを官民挙げての国民的な運動として取り組む」とされている。

(3)総務省による行政評価・監視等の状況

(4)国会による決議等の状況(警告決議、付帯決議等)

(5)会計検査院による指摘


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