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第6章 長期化する失業


 最近の失業の特徴として、長期失業者が増加していることがあげられる。ここ10年間で長期失業者数は人数で4倍、率でも3倍に増加している。長期失業者の属性は、半数が男性の若年又は高年齢者となっている。長期失業者は、本人の収入はないものの、世帯として収入がある者が大半となっており、世帯の中で生活が支えられている状況にある。しかしながら、失業者の家計の状況は厳しく、他の家族が働いている世帯でもかなりの貯蓄の取り崩しが行われており、長期の失業は家計を圧迫する。失業期間が長期化している背景には景気が停滞していることがあるが、一方で、求職者側からみると就職への緊要度も影響している。また、失業が長期化すると、失業状態から抜け出しにくくなることもあり、これは意欲や能力が低下するためだと考えられる。従って、可能な限り、失業が長期化する前に、再就職できるような支援をしていくことが重要である。


(長期失業者の増加)

 最近10年間で長期失業者数は約70万人増加し人数で約4倍、長期失業率も3倍以上となっている(第29図)。国際的には、日本の長期失業率は依然として低いものの、2000年にはアメリカ、カナダを上回り、イギリスとほぼ同水準となっている。
 長期失業者の属性をみると、半数が男性の若年又は高年齢者となっている。10年前と比べると、特に若年の長期失業者の増加(約5倍)が顕著となっている。また、学歴別では77%が中等教育(高卒)以下となっている。このような傾向は長期失業率についてもいえる。
 長期失業者80万人のうち、63%の者が本人の収入がない。ただし、世帯でみた場合、家族の賃金・給料などで収入がある者が大半であり、世帯全体の中で生活が支えられているといえる。
 失業者世帯の家計の状況を勤労者世帯と比較すると、収入水準が大きく低下するのに対して、消費支出の差はかなり小さい。失業者世帯では、失業前の生活水準を維持するために、相当程度、貯蓄等の取り崩しを行っていることから、失業の長期化は家計を圧迫するものと考えられる。(第30表


(失業期間)

 失業期間については、(1)失業者が失業状態から脱する確率から求めるフロー分析法、(2)失業者にその失業期間を聞くことから求める直接計測法があり、(1)は失業者がどれくらいの期間失業するのかをみるのに適しており、(2)はある時点での失業者の失業期間の分布をみるのに適しているといえる。
 フロー分析法により全失業期間をみると、90年代に長期化しており、2001年には全体で4.3か月、男性5.6か月、女性3.1か月となっている(第31図)。一方、直接計測法により中途失業期間(調査時点における失業期間)をみると、中位数はおおむね増加傾向で推移しており2001年8月には5.3か月となっており、また年齢が上がるにつれて長期化している。直接計測法による方が失業期間が長くなっているが、これは失業の流出の程度が失業の長期化に伴い低下しているためと考えられる。


(長期失業者の増加要因)

 長期失業率は、(1)失業率が高まるか、(2)失業者のうち長期失業者割合が高まった場合に上昇する。長期失業率が上昇した理由について、性、年齢、学歴別にその要因をみると、男性は失業が長期化しやすいこと、若年や中等教育以下の者は失業しやすいこと、高年齢者は失業しやすいとともにいったん失業すると長期化しやすいことが原因となっている(第32図)。
 失業期間が長期化している理由としては、景気が停滞する中で雇用情勢が厳しさを増していることがあげられるが、一方で、求職者側の就職への緊要度も影響している。また、失業期間の長期化自体が、求職者の勤労意欲の低下、職業能力の低下などから、長期化する原因とも考えられる。実際、失業期間が長いものほど就職活動が活発でないことなどがみられる。
 長期失業者がいったん増加すると、それを減らすことが困難になり、失業率が高止まりする可能性がある(履歴現象)。履歴現象が生じるメカニズムについては、(1)失業による技能低下、(2)既存雇用者の労使交渉力が考えられるが、日本においてその点が妥当するかは、必ずしも明確ではない。しかしながら就職率(離脱率)が失業期間の長期化に伴い低下していることから、失業期間が長期化する前に就職促進を進めていくことが重要である。



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