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まえがき

 「厚生労働省 海外情勢報告(厚生労働省・海外情勢白書)」は、諸外国の労働情勢及び社会保障の情勢全般に関する情報を整理・分析し、広く提供することを目的として、各国の(1)経済及び雇用失業情勢、(2)賃金・労働時間等の状況、(3)労使関係の動向、(4)社会保障の動向等について、厚生労働省が本年度より毎年とりまとめ、公表するものとしたものです。
 本年の「2000年厚生労働省 海外情勢報告(厚生労働省・海外情勢白書)」では、主要諸国の2000年から2001年初頭にかけての労働及び社会保障情勢全般の情報を第1部においてとりまとめました。また、第2部では、主要APEC諸国の人材養成の現状についてとりまとめました。
 主要諸外国における2000年の雇用情勢は、世界的な景気の拡大傾向に裏付けられ、また、引き続き雇用問題への積極的な取り組みもあって全般的に明るい傾向が続いています。
 先進諸国においては、アメリカ、カナダ及びイギリスでは、失業率は長期の低下傾向が続いています。また、ドイツ及びフランスにおいては、失業率は引き続き高水準ながらも98年からは低下傾向で推移しています。
 また、アジア諸国においては、韓国では、景気の回復に伴い、失業率も低下しています。中国においては、景気が拡大し、就業者が増加している一方、失業者も増加しています。タイ及びインドネシアでは景気の回復はみられるものの、失業率は通貨危機の発生前より高い水準となっています。
 近年、我が国においては経済面をはじめとして停滞が続いております。一方アジアのAPEC諸国においては、経済危機による打撃は大きなものがあるものの、中長期的には次第にその力をつけつつあり、我が国に急速に追いつきつつあります。これは人材養成の面でも例外ではなく、特にITの活用能力の面では、我が国より進んでいると思われる場面もあります。これまで我が国はアジアの経済大国としてアジア各国から学ぶべき対象とされ、実際我が国自身、意識的と無意識的とを問わず、自らアジアをリードする立場にあると自認して行動してきた感があります。しかしながら、近年のこのようなアジア諸国の発展をみると、今後ともそのような立場を保ち続けることが可能かどうかについては、予断を許さない状況にあり、その正否を握る重要な鍵の1つは、今後とも高度な人材養成を行っていけるかどうかにあると考えられます。
 また折しも本年は、熊本県においてAPEC人材養成大臣会合が開催され、ITの進展により経済全体に様々な可能性をもたらし得る新たな国際環境の中で、各国が有為な人材を養成するための方策等について、各国の人材養成担当大臣が討議を行うこととなっております。
 このような状況を踏まえ、本年はAPEC諸国の人材養成を取り上げることとしました。この中には、アメリカ等いわゆる先進国といわれる国のみならず、APEC諸国のうち、近年特に人材育成の面をはじめとして経済面での発展が著しい国を取り上げ、各国の人材養成の現状について分析しています。今後における我が国の人材育成のあり方について広く考える材料を提供することといたしました。この報告が、発展の著しいアジア諸国を含むAPEC諸国の人材養成のあり方を学び、もって我が国の更なる発展のあり方について足下を見つめ直すべき機会を提供するものとなれば幸いです。
 労使関係者をはじめ広く我が国国民の活動の場が海外に広がる中で、海外の労働情報及び社会保障情報を求める声はますます高まっていると認識しております。本書が、そのような国民の要望にいささかなりとも応えることができ、また、海外の労働情勢及び社会保障情勢に関する理解を通じて我が国と諸外国との相互理解の促進に貢献することができるなら、これに勝る喜びはありません。同時に、本書に照会した諸外国の事例が、我が国の国民の利益の更なる拡大のため、今後の政策立案に活かされるように念願しております。なお、今後の本書の更なる充実のため、各方面からの御指導及び御協力をいただくことを切に望んでやみません。

厚生労働省大臣官房国際総括審議官
中野秀世

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