厚生労働省

  • 文字サイズの変更
  • 小
  • 中
  • 大

10月月例労働経済報告

1 概況

(1)  一般経済の概況

景気は、弱まっている。

・輸出は、緩やかに減少している。生産は、減少している。

・企業収益は、減少している。設備投資は、弱含んでいる。

・雇用情勢は、悪化しつつある。

・個人消費は、おおむね横ばいとなっているが、足下で弱い動きもみられる。

先行きについては、当面、世界経済が減速するなかで、下向きの動きが続くとみられる。加えて、アメリカ・欧州における金融危機の深刻化や景気の一層の下振れ懸念、株式・為替市場の大幅な変動などから、景気の状況がさらに厳しいものとなるリスクが存在することに留意する必要がある。

(2)  労働経済の概況

労働経済面をみると、雇用情勢は、悪化しつつある(第1図)。

・完全失業率は、平成20年8月は前月差0.2ポイント上昇し、4.2%となった。

・15〜24歳層の完全失業率は、高水準ながら低下傾向で推移している。

・有効求人倍率は、低下している。

・新規求人数は、減少している。

・就業者数は季節調整値で前月と同水準であった。雇用者数は季節調整値で2か月ぶりに増加した。

・製造業の残業時間は、減少している。

・定期給与は横ばい圏内で推移している。現金給与総額は弱い動きとなっている。

2 一般経済

(1)  鉱工業生産・出荷・在庫の動きをみると、生産は、減少している。

8月の鉱工業生産(季節調整済前月比、確報、以下同じ)は、3.5%減と2か月ぶりに減少した(第2図)。

業種別にみると、8月は輸送機械工業、一般機械工業、電気機械工業等が低下し、化学工業、電子部品・デバイス工業、金属製品工業が上昇した。

出荷は前月比3.7%減と低下した。在庫は前月比0.3%減と低下した。

今後の動向については、製造工業生産予測調査によると、製造工業生産は9月1.6%増の後、10月は0.1%減となっている。

先行きについては、需要が弱く、在庫率も高まっていることから、当面弱い動きが続くと見込まれる。

(2) 最終需要の動向をみると、

[1]  個人消費は、おおむね横ばいとなっているが、足下で弱い動きもみられる。

二人以上の世帯の実質消費支出(季節調整済前月比、速報、以下同じ)は、7月0.9%増の後、8月3.4%減となった。うち勤労者世帯では、7月横ばいの後、8月1.5%減となった。勤労者世帯の平均消費性向(季節調整値)は7月75.7%の後、8月71.0%となった(第3図)。

消費者態度指数の推移をみると、2008年7〜9月期(季節調整済前期差)は1.1ポイント低下し、31.2となった。なお、9月(原数値前年同月差)は12.7ポイント低下し、31.4となった。

8月の小売業販売額(季節調整済前月比、確報、以下同じ)は、0.7%増、大型小売店販売額は1.1%増となった。また、乗用車(軽を含む)の新車登録台数(原数値前年同月比)は、8月8.0%減の後、9月4.5%減となった。

[2]  設備投資は、弱含んでいる。

財務省「法人企業統計季報」によると、全産業の設備投資は、2008年1〜3月期季節調整済前期比0.4%増の後、2008年4〜6月期同6.1%減(うち製造業同0.9%増、非製造業同10.5%減)となっており、製造業で増加、全産業、非製造業で減少している。

今後の動向については、日本銀行「企業短期経済観測調査」(9月調査)をみると、全規模の2008年度の設備投資計画(前年度比)は、全産業で1.3%減、製造業は3.0%増、非製造業は3.6%減となっている(第4表)。また、機械受注(船舶・電力を除く民需)は、季節調整済前月比で7月は3.9%減の後、8月は14.5%減となっている。国土交通省「建築着工統計」による非居住用建築物(民間)の工事予定額をみると、7月は季節調整済前月比63.9%増の後、8月は同33.2%減となっている。

先行きについては、企業収益が減少していることもあり、注視が必要である。

[3]  住宅建設は、おおむね横ばいとなっている。

新設住宅着工総戸数をみると、7月季節調整済前月比1.2%増、8月は同1.2%減の9.4万戸(年率113.0万戸)と3か月ぶりに減少した(第5図)。

新設住宅着工床面積は、7月季節調整済前月比2.1%増の後、8月は同1.7%増となった。

先行きについては、雇用情勢が悪化しつつあり、所得が弱い動きとなっていること、マンション販売在庫数が高い水準にあること等に留意する必要がある。

[4]  公共投資は、総じて低調に推移している。

公共機関からの建設工事受注額は、前年同月比で、7月は14.7%増の後、8月は5.4%減となった。また、公共工事請負金額(「公共工事前払金保証統計」)をみると、8月前年同月比6.0%減の後、9月は同5.5%増となって いる。先行きについては、国、地方の予算状況などを踏まえると、総じて低調に推移していくものと見込まれる。

[5]  輸出は、緩やかに減少している。

通関輸出(数量ベース、季節調整済前期比)は、月別で7月は0.1%減の後 、 8月は1.5%減となっており、四半期別では、平成20年1〜3月期0.1%増の後、平成20年4〜6月期2.0%減となった(第6図)。

地域別には、アジア向け輸出は、横ばいとなっている。アメリカ向け輸出は、全体として減少している。EU向け輸出は、横ばいとなっている。先行きについては、世界経済が減速するなかで、当面、弱い動きが続くと見込まれる。

輸入は、弱含んでいる。

通関輸入(数量ベース、季節調整済前期比)は、月別で7月は4.8%減の後、 8月は2.5%増となっており、四半期別では、平成20年1〜3月期1.6%減の後、平成20年4〜6月期0.3%増となった(第6図)。

地域別には、アジアからの輸入は、全体として緩やかに減少している。アメリカからの輸入は、横ばいとなっている。EUからの輸入は、横ばいとなっている。

(3)  国内企業物価は、緩やかに下落している。消費者物価は、緩やかに上昇している。

9月の国内企業物価(速報)は、前月比0.4%下落(前年同月比6.8%上昇)となり、輸出物価は同2.7%下落(同1.1%下落)、輸入物価は同6.7%下落(同20.0%上昇)となった。

8月の消費者物価は、総合が前年同月比2.1%上昇(前月比0.3%上昇)となり、生鮮食品を除く総合は同2.4%上昇(同0.2%上昇)となった(第7図)。

(4)  企業収益は、減少している。また、企業の業況判断は、悪化している。倒産件数は、増加している。

財務省「法人企業統計季報」によると、全産業の経常利益は、四半期別前年同期比で、2008年1〜3月期17.5%減の後、2008年4〜6月期5.2%減(製造業11.7%減、非製造業0.2%増)、季節調整値で2008年1〜3月期9.1%減の後、2008年4〜6月期14.7%増(製造業8.7%増、非製造業19.3%増)となった。

また、日本銀行「企業短期経済観測調査」(9月調査)によれば、企業の全規模の2008年度の経常利益計画(前年度比)は、2008年度通期では全産業8.1%の減益、製造業8.8%の減益、非製造業7.5%の減益となっている。なお、2008年度上期では、全産業16.4%の減益、製造業19.1%の減益、非製造業13.9%の減益の後、下期では全産業0.6%の増益、製造業2.7%の増益、非製造業1.1%の減益が見込まれている(第8表)。

企業の業況判断D.I.(「良い」−「悪い」)について日本銀行「企業短期経済観測調査」(9月調査)をみると、規模計で、全産業 −14ポイント(7ポイント悪化)、製造業 −11ポイント(8ポイント悪化)、非製造業−16ポイント(6ポイント悪化)となっており、全産業、製造業、非製造業のいずれもで悪化となっている(第9表)。

倒産件数(東京商工リサーチ調べ)は、9月1,408件で、前年同月比34.4%増となった。

(5)  2008年4〜6月期の実質国内総生産(GDP)成長率は、季節調整済前期比0.7%減(年率3.0%減)となった。内外需別にみると、国内需要の寄与度は0.7%減、財貨・サービスの純輸出の寄与度は0.1%減となった。また、名目GDPの成長率は季節調整済前期比0.8%減となった(第10図)。

3 雇用・失業 

(1)[1]  8月の就業者数(季節調整値)は、前月と同水準となった。

就業者数(季節調整値)は、7月に前月差28万人減となった後、8月は前月と同水準となり、6,359万人(原数値は6,405万人、前年同月差41万人減)となった。男女別には、男性が3,724万人(前月差10万人増)、女性が2,634万人(同11万人減)となった(第11表)。

8月の雇用者数(季節調整値)は、2ヶ月ぶりに前月差で増加した。

雇用者数(季節調整値)は、7月に前月差17万人増となった後、8月は同20万人増と増加し、5,531万人(原数値は5,539万人、前年同月差1万人増)となった(第13図)。男女別には、男性が3,223万人(前月差19万人増)、女性が2,308万人(同2万人増)となった(第11表)。雇用形態別(原数値)にみると、常雇が4,762万人(前年同月差7万人減)、臨時雇が668万人(同1万人増)、日雇が109万人(同7万人増)となった。

8月の常用雇用指数(事業所規模5人以上、季節調整済値、確報)は、前月比0.1%減となった。また、一般とパートの別にみると、一般労働者は前月比横ばい、パートタイム労働者は前月比0.2%増となった。

[2]  8月の完全失業率(季節調整値)は、2ヶ月ぶりに前月差で上昇した。

完全失業率(季節調整値)は、7月に前月差0.1ポイント低下の 4.0%となった後、8月は前月差0.2ポイント上昇の 4.2%(原数値は4.1%、前年同月差0.4ポイント上昇)となった。男女別には、男性が4.3%(前月差0.3ポイント上昇)、女性が3.9%(前月と同水準)となった。

8月の完全失業者数(季節調整値)は、2ヶ月ぶりに前月差で増加した。

完全失業者数(季節調整値)は、7月に前月差8万人減となった後、8月は前月差11万人増の275万人(原数値は272万人、前年同月差23万人増)となった。男女別には、男性が168万人(前月差12万人増)、女性が108万人(前月と同水準)となった。

なお、求職理由別(原数値)にみると、 8月は非自発的理由による離職失業者は90万人(前年差15万人増)、自発的理由による離職失業者は107万人(同10万人増)、学卒未就職者は13万人(同4万人増)、その他の理由による失業者は60万人(同3万人減)となった(第11表)。

[3]  8月の労働力人口(季節調整値)は、4ヶ月ぶりに前月差で増加した。

労働力人口(季節調整値)は、7月に前月差36万人減となった後、8月は同11万人増と増加し、 6,634万人(原数値は6,677万人、前年同月差18万人減)となった。

8月の非労働力人口(季節調整値)は、4ヶ月ぶりに前月差で減少した。

非労働力人口(季節調整値)は、7月に前月差40万人増となった後、8月は同15万人減と減少し、4,412万人(原数値は4,366万人、前年同月差22万人増)となった。男女別には、男性が1,449万人(前月差23万人減)、女性が2,963万人(同7万人増)となった。

労働力人口比率(原数値)は、 8月は60.4%(前年同月差0.2ポイント低下)となった。男女別には、男性が73.1%(同0.2ポイント低下)、女性が48.6%(同0.2ポイント低下)となった(第11表)。

就業率(15歳以上人口に占める就業者の割合、原数値)は、8月は58.0%(前年同月差0.4ポイント低下)となった。

(2)  有効求人数(季節調整値)は、前月比1.7%減と3ヶ月連続で減少した。

有効求職者数(季節調整値)は、前月比1.0%増と4ヶ月連続で増加した。

8月の有効求人倍率(季節調整値)は、0.86倍と前月より0.03ポイント低下した。

新規求人数(季節調整値)は、前月比1.7%減と2ヶ月ぶりに減少した。

新規求職者数(季節調整値)は、前月比1.4%増と2ヶ月ぶりに増加した。

8月の新規求人倍率(季節調整値)は、1.24倍と前月より0.04ポイント低下した(第12表)。

正社員の有効求人倍率は、0.53倍(前年同月差0.08ポイント低下)となった。

新規求人(季節調整値)を一般(除パート)とパートの別でみると、8月は一般は前月比1.6%減と3ヶ月連続で減少し、パートについては同0.5%減と2ヶ月ぶりに減少した。新規求職者数(季節調整値)は、一般は前月比1.3%増と2ヶ月ぶりに増加し、パートについては同1.3%増と2ヶ月ぶりに増加した。

(3)  産業別にみると、8月の就業者数(原数値)は、サービス業及び情報通信業は前年同月差21万人増、医療,福祉は同18万人増、運輸業は同10万人増と増加したのに対し、卸売・小売業は同22万人減、飲食店,宿泊業は同19万人減、建設業は同13万人減、製造業は同10万人減、教育,学習支援業は同1万人減と減少した。

また、 8月の新規求人(原数値)は、サービス業は前年同月比32.8%減、製造業は同26.4%減、情報通信業は同25.1%減、建設業は同22.1%減、運輸業は同21.5%減、卸売・小売業は同20.5%減、教育,学習支援業は同14.2%減、飲食店,宿泊業は同11.2%減、医療,福祉は同1.7%減と全産業で減少した。

(4)   雇用に先行して動くと考えられる指標についてみると、所定外労働時間(事業所規模5人以上、季節調整済指数、確報)は、製造業では 7月に前月比1.6%減となった後、8月は同2.8%減、調査産業計では7月に前月比0.8%増となった後、8月は同1.7%減となった。

日本銀行「全国企業短期経済観測調査」(9月調査)によると、雇用人員判断D.I.(「過剰」-「不足」)は、全産業では−2%ポイント(6月調査より3%ポイント上昇)となっている(第14図)。

厚生労働省「労働経済動向調査」によると、2008年4〜6月期に雇用調整を実施した事業所割合は14%となり2008年1〜3月期から1%ポイント上昇した(第15図)。また、2008年7〜9月期に実施予定の事業所割合は13%、2008年10〜12月期に実施予定の事業所割合は11%となっている。

4 賃金・労働時間

(1)  8月の現金給与総額(事業所規模5人以上、産業計、確報、以下同じ)は284,657円で、前年同月比0.1%増となった。就業形態別にみると、一般労働者は前年同月比横ばい、パートタイム労働者は同0.7%増となった。

内訳をみると、所定内給与は前年同月比0.5%増(一般労働者同0.4%増、パートタイム労働者同1.0%増)となったほか、所定外給与は同1.7%減、特別給与は同3.7%減となった(第16図)。

また、きまって支給する給与は前年同月比0.4%増(一般労働者同0.3%増、パートタイム労働者同0.8%増)となった。

(2)  8月の総実労働時間(事業所規模5人以上、産業計、確報、以下同じ)は144.3時間で、前年同月比2.4%減となった。就業形態別にみると、一般労働者は前年同月比2.5%減、パートタイム労働者は同1.7%減となった。

内訳をみると、所定内労働時間は134.1時間で前年同月比2.4%減(一般労働者同2.5%減、パートタイム労働者同1.7%減)、所定外労働時間は10.2時間で同2.9%減(一般労働者同3.0%減、パートタイム労働者同3.5%減)となった。なお、月間出勤日数は18.7日で前年同月差0.4日減となった。

8月の製造業の 所定外労働時間(確報)は14.6時間で、前年同月比7.6%減となった。規模別にみると、500人以上規模で前年同月比7.4%減、100〜499人規模で同8.2%減、30〜99人規模で同1.4%減、5〜29人規模で同13.2%減となった(第17図)。

10月の主要変更点

月例労働経済報告のポイントPDF版(PDF:92KB)

月例労働経済報告PDF版(PDF:169KB)


月例労働経済報告参考表

データ取得エクセルでダウンロードできます。(参考表 (Excel:168KB))

データ取得エクセルでダウンロードできます。(図表 (Excel:8,135KB))

問合わせ先

政策統括官付 労働政策担当参事官室 分析第二係

電話 03(5253)1111 内線7732

PDFファイルを見るためには、Adobe Readerというソフトが必要です。
Adobe Readerは無料で配布されています。(次のアイコンをクリックしてください。) Get Adobe Reader


トップへ