厚生労働省

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7月 月例労働経済報告

1 概況

(1)  一般経済の概況

景気は足踏み状態にあるが、このところ一部に弱い動きがある。

・輸出、生産は、このところ弱含んでいる。

・企業収益は、減少している。設備投資は、おおむね横ばいとなっている。

・雇用情勢は、厳しさが残るなかで、改善に足踏みがみられる。

・個人消費は、おおむね横ばいとなっている。

先行きについては、アメリカ経済が持ち直すにつれ、輸出が増加基調となり、景気は緩やかに回復していくと期待される。ただし、サブプライム住宅ローン問題を背景とするアメリカの景気後退懸念や株式・為替市場の変動、原油価格の動向等から、景気の下振れリスクが高まっていることに留意する必要がある。

(2)  労働経済の概況

労働経済面をみると、雇用情勢は、厳しさが残るなかで、改善に足踏みがみられる(第1図)。

・完全失業率は、平成20年5月は前月と同水準の4.0%となった。

・15〜24歳層の完全失業率は、高水準ながら低下傾向で推移している。

・有効求人倍率は、低下している。

・新規求人数は、減少傾向となっている。

・就業者数は季節調整値で3か月ぶりに減少した。雇用者数は季節調整値で3か月ぶりに減少した。

・製造業の残業時間は、減少している。

・定期給与は横ばい圏内で推移している。現金給与総額は弱含みで推移している。

2 一般経済

(1)  鉱工業生産・出荷・在庫の動きをみると、生産は、このところ弱含んでいる。

平成20年5月の鉱工業生産(季節調整済前月比、確報、以下同じ)は、2.8%増と3か月ぶりに増加した(第2図)。

業種別にみると、5月は輸送機械工業、食料品・たばこ工業、情報通信機械工業等が上昇し、化学工業、精密機械工業、鉄鋼業等が低下した。

出荷は2.0%増と上昇した。在庫は0.5%増と増加した。

今後の動向については、製造工業生産予測調査によると、製造工業生産は6月0.9%減の後、7月は2.2%増となっている。

先行きについては、情報化関連生産財の在庫の動向や今後の輸出の動向等に留意する必要がある。

(2) 最終需要の動向をみると、

[1]  個人消費は、おおむね横ばいとなっている。

二人以上の世帯の実質消費支出(季節調整済前月比、速報、以下同じ)は、4月0.7%減の後、5月0.9%減となった。うち勤労者世帯では、4月0.5%減の後、5月0.8%増となった。勤労者世帯の平均消費性向(季節調整値)は4月76.4%の後、5月72.6%となった(第3図)。

消費者態度指数の推移をみると、2008年4〜6月期(季節調整済前期差)は4.2ポイント低下し、32.3となった。なお、6月(原数値前年同月差)は12.4ポイント低下し、32.6となった。

5月の小売業販売額(季節調整済前月比、確報、以下同じ)は、0.1%減、大型小売店販売額は0.4%減となった。また、乗用車(軽を含む)の新車登録台数(原数値前年同月比)は、5月3.6%減の後、6月2.5%減となった。

[2]  設備投資は、おおむね横ばいとなっている。

財務省「法人企業統計季報」によると、全産業の設備投資は、2007年10〜12月期季節調整済前期比1.9%減の後、2008年1〜3月期同1.3%増(うち製造業同1.5%増、非製造業同1.1%増)となっており、全産業、製造業、非製造業のすべてで増加している。

今後の動向については、日本銀行「企業短期経済観測調査」(6月調査)をみると、全規模の2008年度の設備投資計画(前年度比)は、全産業で1.4%減、製造業は2.4%増、非製造業は3.5%減となっている(第4表)。また、機械受注(船舶・電力を除く民需)は、季節調整済前月比で4月は5.5%増の後、5月は10.4%増となっている。国土交通省「建築着工統計」による非居住用建築物(民間)の工事予定額をみると、4月は季節調整済前月比9.0%減の後、5月は同12.4%増となっている。

先行きについては、企業収益が減少していることもあり、注視が必要である。

[3]  住宅建設は、このところ横ばいとなっている。

新設住宅着工総戸数をみると、4月季節調整済前月比5.8%増、5月は同6.8%減の8.9万戸(年率107.2万戸)と2か月ぶりに減少した(第5図)。

新設住宅着工床面積は、4月季節調整済前月比1.4%増の後、5月は同7.9%減となった。

先行きについては、マンション販売在庫数が高い水準にあることや建築コストの上昇等に留意する必要がある。

[4]  公共投資は、総じて低調に推移している。

公共機関からの建設工事受注額は、前年同月比で、4月は0.1%増の後、5月は11.1%減となった。また、公共工事請負金額(「公共工事前払金保証統計」)をみると、4月前年同月比4.7%減の後、5月は同9.6%減となっている。先行きについては、国、地方の予算状況などを踏まえると、総じて低調に推移していくものと見込まれる。

[5]  輸出は、このところ弱含んでいる。

通関輸出(数量ベース、季節調整済前期比)は、月別で4月は2.4%減の後、5月は3.0%増となっており、四半期別では、平成19年10〜12月期3.4%増の後、平成20年1〜3月期0.1%増となった(第6図)。

地域別には、アジア向け輸出は、弱含んでいる。アメリカ向け輸出は、横ばいとなっている。EU向け輸出は、全体として緩やかに減少している。先行きについては、アメリカ経済の今後の動向等に留意する必要がある。

輸入は、横ばいとなっている。

通関輸入(数量ベース、季節調整済前期比)は、月別で4月は0.1%減の後、5月は2.9%減となっており、四半期別では、平成19年10〜12月期0.9%増の後、平成20年1〜3月期1.6%減となった(第6図)。

地域別には、アジアからの輸入は横ばいとなっている。アメリカからの輸入は、全体として緩やかに減少している。EUからの輸入は、横ばいとなっている。

(3)  国内企業物価は、素材価格の上昇により上昇している。消費者物価は、緩やかに上昇している。

6月の国内企業物価(速報)は、前月比0.8%上昇(前年同月比5.6%上昇)となり、輸出物価は同2.7%上昇(同4.2%下落)、輸入物価は同7.4%上昇(同17.0%上昇)となった。

5月の消費者物価は、総合が前年同月比1.3%上昇(前月比0.8%上昇)となり、生鮮食品を除く総合は同1.5%上昇(同0.8%上昇)となった(第7図)。

(4)  企業収益は、減少している。また、企業の業況判断は、一段と慎重さが増している。倒産件数は、緩やかな増加傾向にある。

財務省「法人企業統計季報」によると、全産業の経常利益は、四半期別前年同期比で、2007年10〜12月期4.5%減の後、2008年1〜3月期17.5%減(製造業15.7%減、非製造業18.6%減)、季節調整値で2007年10〜12月期6.7%減の後、2008年1〜3月期9.2%減(製造業11.2%減、非製造業7.5%減)となった。

また、日本銀行「企業短期経済観測調査」(6月調査)によれば、企業の全規模の2008年度の経常利益計画(前年度比)は、2008年度通期では全産業4.4%の減益、製造業6.9%の減益、非製造業2.3%の減益となっている。なお、2008年度上期では、全産業14.6%の減益、製造業19.4%の減益、非製造業10.3%の減益の後、下期では全産業6.2%の増益、製造業6.9%の増益、非製造業5.7%の増益が見込まれている(第8表)。

企業の業況判断D.I.(「良い」−「悪い」)について日本銀行「企業短期経済観測調査」(6月調査)をみると、規模計で、全産業−7ポイント(3ポイント悪化)、製造業−3ポイント(5ポイント悪化)、非製造業−10ポイント(3ポイント悪化)となっており、全産業、製造業、非製造業のいずれもで悪化となっている(第9表)。

倒産件数(東京商工リサーチ調べ)は、6月1,324件で、前年同月比11.7%増となった。

(5)  2008年1〜3月期の実質国内総生産(GDP)成長率は、季節調整済前期比1.0%増(年率4.0%増)となった。内外需別にみると、国内需要の寄与度は0.5%、財貨・サービスの純輸出の寄与度は0.5%となった。また、名目GDPの成長率は季節調整済前期比0.5%増となった(第10図)。

3 雇用・失業 

(1)[1]  5月の就業者数(季節調整値)は、3ヶ月ぶりに前月差で減少した。

就業者数(季節調整値)は、4月に前月差13万人増となった後、5月は同19万人減と減少し、6,400万人(原数値は6,478万人、前年同月差21万人減)となった。男女別には、男性が3,744万人(前月差1万人減)、女性が2,658万人(同16万人減)となった(第11表)。

5月の雇用者数(季節調整値)は、3ヶ月ぶりに前月差で減少した。

雇用者数(季節調整値)は、4月に前月差5万人増となった後、5月は同6万人減と減少し、5,517万人(原数値は5,576万人、前年同月差4万人増)となった(第13図)。男女別には、男性が3,214万人(前月差7万人増)、女性が2,302万人(同12万人減)となった(第11表)。雇用形態別(原数値)にみると、常雇が4,846万人(前年同月差30万人増)、臨時雇が623万人(同31万人減)、日雇が107万人(同5万人増)となった。

5月の常用雇用指数(事業所規模5人以上、季節調整済値、速報)は、前月比0.1%増となった。また、一般とパートの別にみると、一般労働者は前月比0.1%減、パートタイム労働者は同0.8%増となった。

[2]  5月の完全失業率(季節調整値)は、前月と同水準であった。

完全失業率(季節調整値)は、4月に前月差0.2ポイント上昇の4.0%となった後、5月は前月と同水準の4.0%(原数値は4.0%、前年同月差0.2ポイント上昇)となった。男女別には、男性が4.2%(前月差0.2ポイント上昇)、女性が3.7%(前月差0.2ポイント低下)となった。

5月の完全失業者数(季節調整値)は、前月と同水準であった。

完全失業者数(季節調整値)は、4月に前月差10万人増となった後、5月は前月と同水準の265万人(原数値は270万人、前年同月差12万人増)となった。男女別には、男性が164万人(前月差9万人増)、女性が101万人(同8万人減)となった。

なお、求職理由別(原数値)にみると、5月は非自発的理由による離職失業者は94万人(前年差10万人増)、自発的理由による離職失業者は95万人(同5万人増)、学卒未就職者は13万人(同3万人減)、その他の理由による失業者は64万人(同1万人増)となった(第11表)。

[3]  5月の労働力人口(季節調整値)は、2ヶ月ぶりに前月差で減少した。

労働力人口(季節調整値)は、4月に前月差24万人増となった後、5月は同18万人減と減少し、6,665万人(原数値は6,748万人、前年同月差9万人減)となった。

5月の非労働力人口(季節調整値)は、3ヶ月ぶりに前月差で増加した。

非労働力人口(季節調整値)は、4月に前月差19万人減となった後、5月は同15万人増と増加し、4,375万人(原数値は4,296万人、前年同月差18万人増)となった。男女別には、男性が1,432万人(前月差8万人減)、女性が2,945万人(同26万人増)となった。

労働力人口比率(原数値)は、5月は61.1%(前年同月差0.1ポイント低下)となった。男女別には、男性が73.7%(同0.1ポイント低下)、女性が49.2%(同0.2ポイント低下)となった(第11表)。

就業率(15歳以上人口に占める就業者の割合、原数値)は、5月は58.6%(前年同月差0.3ポイント低下)となった。

(2)  有効求人数(季節調整値)は、前月比1.7%増と11ヶ月ぶりに増加した。

有効求職者数(季節調整値)は、前月比2.3%増と3ヶ月ぶりに増加した。

5月の有効求人倍率(季節調整値)は、0.92倍と前月より0.01ポイント低下した。

新規求人数(季節調整値)は、前月比0.9%増と2ヶ月連続で増加した。

新規求職者数(季節調整値)は、前月比3.2%増と2ヶ月ぶりに増加した。

5月の新規求人倍率(季節調整値)は、1.35倍と前月より0.03ポイント低下した(第12表)。

正社員の有効求人倍率は、0.53倍(前年同月差0.03ポイント低下)となった。

新規求人(季節調整値)を一般(除パート)とパートの別でみると、5月は一般は前月比0.5%増と2ヶ月連続で増加し、パートについては同3.0%増と2ヶ月連続で増加した。新規求職者数(季節調整値)は、一般は前月比3.2%増と2ヶ月ぶりに増加し、パートについては同0.6%増と2ヶ月ぶりに増加した。

(3)  産業別にみると、5月の就業者数(原数値)は、医療,福祉は前年同月差34万人増、サービス業は同21万人増、情報通信業は同12万人増、教育,学習支援業は同8万人増と増加したのに対し、建設業は同32万人減、卸売・小売業は同23万人減、飲食店,宿泊業は同10万人減、製造業は同7万人減と減少した。なお、運輸業は前年同月と同水準であった。

また、5月の新規求人(原数値)は、医療,福祉は前年同月比5.6%増、飲食店,宿泊業は同2.1%増と増加したのに対し、サービス業は同28.1%減、建設業は同26.4%減、情報通信業は同19.7%減、製造業は同17.6%減、卸売・小売業は同14.6%減、教育,学習支援業は同14.0%減、運輸業は同9.1%減と減少した。

(4)   雇用に先行して動くと考えられる指標についてみると、所定外労働時間(事業所規模5人以上、季節調整済指数、速報)は、製造業では4月に前月比3.7%減となった後、5月は同0.6%減、調査産業計では4月に前月比1.6%減となった後、5月は同0.3%増となった。

日本銀行「全国企業短期経済観測調査」(6月調査)によると、雇用人員判断D.I.(「過剰」-「不足」)は、全産業では−5%ポイント(3月調査より4%ポイント上昇)となっている(第14図)。

厚生労働省「労働経済動向調査」によると、2008年1〜3月期に雇用調整を実施した事業所割合は13%となり2007年10〜12月期から2%ポイント上昇した(第15図)。また、2008年4〜6月期に実施予定の事業所割合は13%、2008年7〜9月期に実施予定の事業所割合は9%となっている。

4 賃金・労働時間

(1)  5月の現金給与総額(事業所規模5人以上、産業計、速報、以下同じ)は275,815円で、前年同月比0.2%増となった。就業形態別にみると、一般労働者は前年同月比0.2%増、パートタイム労働者は同0.4%増となった。

内訳をみると、所定内給与は前年同月比0.3%増(一般労働者同0.2%増、パートタイム労働者同0.5%増)となったほか、所定外給与は同1.0%減、特別給与は同2.4%増となった(第16図)。

また、きまって支給する給与は前年同月比0.1%増(一般労働者同0.2%増、パートタイム労働者同0.5%増)となった。

(2)  5月の総実労働時間(事業所規模5人以上、産業計、速報、以下同じ)は146.8時間で、前年同月比0.4%減となった。就業形態別にみると、一般労働者は前年同月比0.2%減、パートタイム労働者は同1.7%減となった。

内訳をみると、所定内労働時間は136.3時間で前年同月比0.3%減(一般労働者同0.2%減、パートタイム労働者同1.7%減)、所定外労働時間は10.5時間で同0.9%減(一般労働者同1.6%減、パートタイム労働者同横ばい)となった。なお、月間出勤日数は19.0日で前年同月差横ばいとなった。

5月の製造業の所定外労働時間(速報)は14.9時間で、前年同月比3.9%減となった。規模別にみると、500人以上規模で前年同月比2.9%減、100〜499人規模で同5.5%減、30〜99人規模で同2.9%増、5〜29人規模で同13.4%減となった(第17図)。

7月の主要変更点

月例労働経済報告のポイントPDF版(PDF:95KB)

月例労働経済報告PDF版(PDF:155KB)


月例労働経済報告参考表

データ取得エクセルでダウンロードできます。(参考表 (Excel:171KB))

データ取得エクセルでダウンロードできます。(図表 (Excel:4,126KB))

問合わせ先

政策統括官付 労働政策担当参事官室 分析第二係

電話 03(5253)1111 内線7732

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