5月 月例労働経済報告
１ 概況
（１） 一般経済の概況
景気は、このところ足踏み状態にある。
・輸出は、伸びが鈍化している。生産は、横ばいとなっている。
・企業収益は、弱含みとなっている。設備投資は、おおむね横ばいとなっている。
・雇用情勢は、厳しさが残るなかで、改善に足踏みがみられる。
・個人消費は、おおむね横ばいとなっている。
・住宅建設は、おおむね持ち直してきたが、このところ横ばいとなっている。
先行きについては、改正建築基準法施行の影響が収束していくなかで、輸出が増加基調で推移し、景気は緩やかに回復していくと期待される。ただし、サブプライム住宅ローン問題を背景とするアメリカの景気後退懸念や株式・為替市場の変動、原油価格の動向等から、景気の下振れリスクが高まっていることに留意する必要がある。
（２） 労働経済の概況
労働経済面をみると、雇用情勢は、厳しさが残るなかで、改善に足踏みがみられる（第１図）。
・完全失業率は、平成20年３月は前月比0.1％ポイント低下し、3.8％となった。
・15〜24歳層の完全失業率は、高水準ながら低下傾向で推移している。
・有効求人倍率は、低下している。
・新規求人数は、減少している。
・就業者数は季節調整値で３か月ぶりに増加した。雇用者数は季節調整値で４か月ぶりに増加した。
・製造業の残業時間は、横ばい圏内で推移している。
・定期給与は横ばい圏内で推移している。現金給与総額は弱含みで推移している。
２ 一般経済
（１） 鉱工業生産・出荷・在庫の動きをみると、生産は、横ばいとなっている。
平成20年３月の鉱工業生産（季節調整済前月比、確報、以下同じ）は、3.4％減と２か月ぶりに減少した（第２図）。
業種別にみると、３月は輸送機械工業、一般機械工業、金属製品工業等が低下し、電子部品・デバイス工業、石油・石炭製品工業、パルプ・紙・紙加工品工業等が上昇した。
出荷は3.9％減と低下した。在庫は0.1％増と上昇した。
今後の動向については、製造工業生産予測調査によると、製造工業生産は４月0.3％減の後、５月は3.4％増となっている。
先行きについては、情報化関連生産財の在庫の動向や今後の輸出の動向等に留意する必要がある。
（２） 最終需要の動向をみると、
[1] 個人消費は、おおむね横ばいとなっている。
二人以上の世帯の実質消費支出（季節調整済前月比、速報、以下同じ）は、２月2.9％減の後、３月2.2％減となった。うち勤労者世帯では、２月3.7％減の後、３月0.6％減となった。勤労者世帯の平均消費性向（季節調整値）は２月72.8％の後、３月72.3％となった（第３図）。
消費者態度指数の推移をみると、2008年１〜３月期（季節調整済前期差）は2.3ポイント低下し、36.5となった。なお、４月（原数値前年同月差）は12.2ポイント低下し、35.2となった。
３月の小売業販売額（季節調整済前月比、確報、以下同じ）は、0.4％増、大型小売店販売額は0.3％増となった。また、乗用車（軽を含む）の新車登録台数（原数値前年同月比）は、３月4.0％減の後、４月5.4％増となった。
[2] 設備投資は、おおむね横ばいとなっている。
財務省「法人企業統計季報」によると、全産業の設備投資は、2007年７〜９月期季節調整済前期比3.9％増の後、2007年10〜12月期同2.7％減(うち製造業同0.7％減、非製造業同3.9％減）となっており、全産業、製造業、非製造業のすべてで減少している。
今後の動向については、日本銀行「企業短期経済観測調査」（３月調査）をみると、全規模の2008年度の設備投資計画（前年度比）は、全産業で5.3％減、製造業は5.8％減、非製造業は5.0％減となっている（第４表）。また、機械受注（船舶・電力を除く民需）は、季節調整済前月比で２月は12.3％減の後、３月は8.3％減となっている。国土交通省「建築着工統計」による非居住用建築物（民間）の工事予定額をみると、２月は季節調整済前月比1.7％減の後、３月は同21.7％増となっている。
先行きについては、企業収益が弱含みとなっていることもあり、注視が必要である。
[3] 住宅建設は、おおむね持ち直してきたが、このところ横ばいとなっている。
新設住宅着工総戸数をみると、２月季節調整済前月比3.1％減、３月は同5.4％減の9.1万戸（年率108.8万戸）と２か月連続で減少した（第５図）。
新設住宅着工床面積は、２月季節調整済前月比4.2％減の後、３月は同1.3％減となった。
先行きについては、改正建築基準法施行の影響は収束していくと見込まれるものの、マンション販売在庫数が高い水準にあることや建築コストの上昇等に留意する必要がある。
[4] 公共投資は、総じて低調に推移している。
公共機関からの建設工事受注額は、前年同月比で、２月は24.0％増の後、３月は1.2％減となった。また、公共工事請負金額（「公共工事前払金保証統計」）をみると、３月前年同月比12.6％減の後、４月は同4.7％減となっている。先行きについては、国、地方の予算状況などを踏まえると、総じて低調に推移していくものと見込まれる。
[5] 輸出は、伸びが鈍化している。
通関輸出（数量ベース、季節調整済前期比）は、月別で２月は2.8％減の後、３月は0.3％増となっており、四半期別では、平成19年10〜12月期3.4％増の後、平成20年1〜3月期0.1％増となった（第６図）。
地域別には、アジア向け輸出は、全体として伸びが鈍化している。アメリカ向け輸出は、横ばいとなっている。、ＥＵ向け輸出は横ばいとなっている。先行きについては、アメリカ経済の減速等に留意する必要がある。
輸入は、横ばいとなっている。
通関輸入（数量ベース、季節調整済前期比）は、月別で２月は1.4％増の後、３月は0.5％増となっており、四半期別では、平成19年10〜12月期0.9％増の後、平成20年1〜3月期1.6％減となった（第６図）。
地域別には、アジアからの輸入は横ばい、アメリカからの輸入は、全体として緩やかに減少している。ＥＵからの輸入は、緩やかに減少している。
（３） 国内企業物価は、素材価格の上昇により上昇している。消費者物価は、わずかながら上昇している。
４月の国内企業物価（速報）は、前月比0.6％上昇（前年同月比3.7％上昇）となり、輸出物価は同2.5％上昇（同5.9％下落）、輸入物価は同4.3％上昇（同9.4％上昇）となった。
３月の消費者物価は、総合が前年同月比1.2％上昇（前月比0.5％上昇）となり、生鮮食品を除く総合は同1.2％上昇（同0.4％上昇）となった（第７図）。
（４） 企業収益は、弱含みとなっている。また、企業の業況判断は、慎重さが増している。倒産件数は、緩やかな増加傾向にある。
財務省「法人企業統計季報」によると、全産業の経常利益は、四半期別前年同期比で、2007年７〜９月期0.7％減の後、2007年10〜12月期4.5％減（製造業3.3％減、非製造業5.7％減）、季節調整値で2007年７〜９月期6.0％減の後、2007年10〜12月期4.9％減（製造業1.1％減、非製造業7.8％減）となった。
また、日本銀行「企業短期経済観測調査」（３月調査）によれば、企業の全規模の2008年度の経常利益計画（前年度比）は、2008年度通期では全産業2.4％の増益、製造業2.1％の増益、非製造業2.7％の減益となっている。なお、2008年度上期では、全産業1.9％の減益、製造業2.8％の減益、非製造業1.2％の減益の後、下期では全産業7.0％の増益、製造業7.2％の増益、非製造業6.7％の増益が見込まれている（第８表）。
企業の業況判断D.I.（「良い」−「悪い」）について日本銀行「企業短期経済観測調査」（３月調査）をみると、規模計で、全産業−４ポイント（６ポイント悪化）、製造業２ポイント（７ポイント悪化）、非製造業−７ポイント（７ポイント悪化）となっており、全産業、製造業、非製造業のいずれもで悪化となっている（第９表）。
倒産件数（東京商工リサーチ調べ）は、４月1,215件で、前年同月比8.3％増となった。
（５） 2008年1〜3月期の実質国内総生産（ＧＤＰ）成長率は、季節調整済前期比0.8％増（年率3.3％増）となった。内外需別にみると、国内需要の寄与度は0.3％、財貨・サービスの純輸出の寄与度は0.5％となった。また、名目ＧＤＰの成長率は季節調整済前期比0.4％増となった（第10図）。
３ 雇用・失業
（１）[1] ３月の就業者数（季節調整値）は、３ヶ月ぶりに前月差で増加した。
就業者数（季節調整値）は、２月に前月差22万人減となった後、３月は同４万人増と増加し、6,406万人（原数値は6,336万人、前年同月差15万人減）となった。男女別には、男性が3,740万人（前月差11万人減）、女性が2,666万人（同15万人増）となった（第11表）。
３月の雇用者数（季節調整値）は、４ヶ月ぶりに前月差で増加した。
雇用者数（季節調整値）は、２月に前月差13万人減となった後、３月は同７万人増と増加し、5,518万人（原数値は5,476万人、前年同月差８万人減）となった（第13図）。男女別には、男性が3,213万人（前月と同水準）、女性が2,305万人（同７万人増）となった（第11表）。雇用形態別（原数値）にみると、常雇が4,738万人（前年同月差32万人増）、臨時雇が631万人（同45万人減）、日雇が107万人（同５万人増）となった。
３月の常用雇用指数（事業所規模５人以上、季節調整済値、確報）は、前月比と同水準となった。また、一般とパートの別にみると、一般労働者は前月比0.1％増、パートタイム労働者は同0.2％減となった。
[2] ３月の完全失業率（季節調整値）は、２ヶ月ぶりに前月差で低下した。
完全失業率（季節調整値）は、２月に前月差0.1ポイント上昇の3.9％となった後、３月は前月差0.1ポイント低下の3.8％（原数値は4.1％、前年同月差0.1ポイント低下）となった。男女別には、男性が3.8％（前月差0.2ポイント低下）、女性が3.9％（同0.1ポイント上昇）となった。
３月の完全失業者数（季節調整値）は、４ヶ月ぶりに前月差で減少した。
完全失業者数（季節調整値）は、２月に前月差６万人増となった後、３月は同７万人減と減少し、255万人（原数値は268万人、前年同月差13万人減）となった。男女別には、男性が148万人（前月差９万人減）、女性が107万人（同１万人増）となった。
なお、求職理由別（原数値）にみると、３月は非自発的理由による離職失業者は82万人（前年差７万人減）、自発的理由による離職失業者は95万人（同９万人減）、学卒未就職者は14万人（同４万人減）、その他の理由による失業者は71万人（同５万人増）となった（第11表）。
[3] ３月の労働力人口（季節調整値）は、３ヶ月連続で前月差で減少した。
労働力人口（季節調整値）は、２月に前月差16万人減となった後、３月は同４万人減と減少し、6,659万人（原数値は6,604万人、前年同月差28万人減）となった。
３月の非労働力人口（季節調整値）は、４ヶ月ぶりに前月差で減少した。
非労働力人口（季節調整値）は、２月に前月差12万人増となった後、３月は同１万人減と減少し、4,379万人（原数値は4,437万人、前年同月差39万人増）となった。男女別には、男性が1,450万人（前月差14万人増）、女性が2,928万人（同16万人減）となった。
労働力人口比率（原数値）は、３月は59.8％（前年同月差0.3ポイント低下）となった。男女別には、男性が72.4％（同0.6ポイント低下）、女性が47.9％（同0.1ポイント低下）となった（第11表）。
就業率（15歳以上人口に占める就業者の割合、原数値）は、３月は57.3％（前年同月差0.2ポイント低下）となった。
（２） 有効求人数（季節調整値）は、前月比4.1％減と９ヶ月連続で減少した。
有効求職者数（季節調整値）は、前月比2.2％減と２ヶ月ぶりに減少した。
３月の有効求人倍率（季節調整値）は、0.95倍と前月より0.02ポイント低下した。
新規求人数（季節調整値）は、前月比6.8％減と２ヶ月連続で減少した。
新規求職者数（季節調整値）は、前月比4.3％増と２ヶ月連続で増加した。
３月の新規求人倍率（季節調整値）は、1.25倍と前月より0.15ポイント低下した（第12表）。
正社員の有効求人倍率は、0.60倍（前年同月差0.03ポイント低下）となった。
新規求人（季節調整値）を一般（除パート）とパートの別でみると、３月は一般は前月比7.2％減と２ヶ月連続で減少し、パートについては同5.4％減と４ヶ月ぶりに増加した。新規求職者数（季節調整値）は、一般は前月比3.5％増と２ヶ月連続で増加し、パートについては同6.4％増と２ヶ月連続で増加した。
（３） 産業別にみると、３月の就業者数（原数値）は、教育,学習支援業は前年同月差16万人増、運輸業は同14万人増、飲食店,宿泊業は同５万人増と増加したのに対し、建設業は同20万人減、サービス業は同16万人減、製造業は同６万人減、卸売・小売業及び医療,福祉は同２万人減、情報通信業は同１万人減と減少した。
また、３月の新規求人（原数値）は、医療,福祉は前年同期比0.5％増と増加したのに対し、建設業は同53.1％減、サービス業は同27.7％減、製造業は同20.4％減、情報通信業は同16.3％減、運輸業は同15.2％減、卸売・小売業は同13.3％減、教育,学習支援業は同12.9％減、飲食店,宿泊業は同12.0％減と減少した。
（４） 雇用に先行して動くと考えられる指標についてみると、所定外労働時間（事業所規模５人以上、季節調整済指数、確報）は、製造業では２月に前月比1.5％増となった後、３月は同0.6％増、調査産業計では２月に前月比2.9％増となった後、３月は同1.0％減となった。
４ 賃金・労働時間
（１） ３月の現金給与総額（事業所規模５人以上、産業計、確報、以下同じ）は285,974円で、前年同月比1.5％増となった。就業形態別にみると、一般労働者は前年同月比1.3％増、パートタイム労働者は同1.5％増となった。
内訳をみると、所定内給与は前年同月比0.8％増（一般労働者同0.8％増、パートタイム労働者同1.3％増）となったほか、所定外給与は同4.0％増、特別給与は同8.9％増となった（第16図）。
また、きまって支給する給与は前年同月比1.1％増（一般労働者同1.0％増、パートタイム労働者は同1.2％増）となった。
（２） ３月の総実労働時間（事業所規模５人以上、産業計、確報、以下同じ）は150.3時間で、前年同月比0.4％減となった。就業形態別にみると、一般労働者は前年同月比0.4％減、パートタイム労働者は同1.0％減となった。
内訳をみると、所定内労働時間は138.8時間で前年同月比0.5％減（一般労働者同0.5％減、パートタイム労働者同1.1％減）、所定外労働時間は11.5時間で前年同月比0.9％増（一般労働者同1.4％増、パートタイム労働者同横ばい）となった。なお、月間出勤日数は19.3日で前年同月差0.1日減となった。
３月の製造業の所定外労働時間（確報）は17.2時間で、前年同月比横ばいとなった。規模別にみると、500人以上規模で前年同月比1.9％増、100〜499人規模で同0.6％増、30〜99人規模で同3.5％増、５〜29人規模で同9.1％減となった（第17図）。
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