3月 月例労働経済報告

1 概況

(1)  一般経済の概況

景気は、このところ足踏み状態にある。

・輸出は、緩やかに増加している。生産は、横ばいとなっている。

・企業収益は、弱含みとなっている。設備投資は、おおむね横ばいとなっている。

・雇用情勢は、厳しさが残るなかで、改善に足踏みがみられる。

・個人消費は、おおむね横ばいとなっている。

・住宅建設は、おおむね持ち直している。

先行きについては、改正建築基準法施行の影響が収束していくなかで、輸出が増加基調で推移し、景気は緩やかに回復していくと期待される。ただし、サブプライム住宅ローン問題を背景とするアメリカ経済の減速や株式・為替市場の変動、原油価格の動向等から、景気の下振れリスクが高まっていることに留意する必要がある。

(2)  労働経済の概況

労働経済面をみると、雇用情勢は、厳しさが残るなかで、改善に足踏みがみられる(第1図)。

・完全失業率は、平成20年1月は前月同水準の3.8%となった。

・15〜24歳層の完全失業率は、高水準ながら低下傾向で推移している。

・有効求人倍率は、低下傾向となっている。

・新規求人数は、減少傾向となっている。

・就業者数は季節調整値で4ヶ月ぶりに減少した。雇用者数は季節調整値で2ヶ月連続で減少した。

・製造業の残業時間は、減少している。

・定期給与は横ばい圏内で推移している。現金給与総額は弱含みで推移している。

2 一般経済 

(1)  鉱工業生産・出荷・在庫の動きをみると、生産は、横ばいとなっている。

平成20年1月の鉱工業生産(季節調整済前月比、確報、以下同じ)は、2.2%減と2ヶ月ぶりに減少した(第2図)。

業種別にみると、平成20年1月は電子部品・デバイス工業、輸送機械工業、一般機械工業等が低下し、その他工業、精密機械工業が上昇した。

出荷は1.0%減と低下した。在庫は1.4%減と低下した。

今後の動向については、製造工業生産予測調査によると、製造工業生産は平成20年2月2.9%減の後、3月は2.8%増となっている。

(2)  最終需要の動向をみると、

[1]  個人消費は、おおむね横ばいとなっている。

二人以上の世帯の実質消費支出(季節調整済前月比、速報、以下同じ)は、12月1.6%増の後、1月2.5%増となった。うち勤労者世帯では12月1.7%増の後、1月2.5%増となった。勤労者世帯の平均消費性向(季節調整値)は12月73.9%の後、1月77.6%となった(第3図)。

消費者態度指数の推移をみると、2007年10〜12月期(季節調整済前期差)は5.0ポイント低下し、38.9となった。なお、2月(原数値前年同月差)は12.3ポイント低下し、36.1となった。

1月の小売業販売額(季節調整済前月比、確報、以下同じ)は、0.8%増、大型小売店販売額は1.4%増となった。また、乗用車(軽を含む)の新車登録台数(原数値前年同月比)は、1月3.8%増の後、2月1.0%増となった。

[2]  設備投資は、おおむね横ばいとなっている。

財務省「法人企業統計季報」によると、全産業の設備投資は、2007年7〜9月期季節調整済前期比3.9%増の後、2007年10〜12月期同2.7%減(うち製造業同0.7%減、非製造業同3.9%減)となっており、全産業、製造業、非製造業のすべてで減少している。

今後の動向については、日本銀行「企業短期経済観測調査」(12月調査)をみると、全規模の2007年度の設備投資計画(前年度比)は、全産業で6.8%増、製造業は6.9%増、非製造業は6.8%増となっている(第4表)。また、機械受注(船舶・電力を除く民需)は、季節調整済前月比で12月は3.2%減の後、平成20年1月は19.6%増となっている。国土交通省「建築着工統計」による非居住用建築物(民間)の工事予定額をみると、12月は季節調整済前月比4.5%増の後、平成20年1月は同11.1%減となっている。

先行きについては、企業収益が弱含みとなっていることもあり、注視が必要である。

[3]  住宅建設は、おおむね持ち直している。

新設住宅着工総戸数をみると、12月季節調整済前月比9.9%増、平成20年1月は同13.0%増の9.9万戸(年率118.7万戸)と3ヶ月連続で増加した(第5図)。

新設住宅着工床面積は、12月季節調整済前月比11.4%増の後、平成20年1月は同11.0%増となった。

先行きについては、マンションを中心にみられる改正建築基準法施行の影響は収束していくと見込まれるものの、販売在庫数が高い水準にあること等に留意する必要がある。

[4]  公共投資は、総じて低調に推移している。

公共機関からの建設工事受注額は、前年同月比で、12月は15.2%増の後、平成20年1月は12.8%増となった。また、公共工事請負金額(「公共工事前払金保証統計」)をみると、1月前年同月比3.5%減の後、2月は同13.1%増となっている。

[5]  輸出は、緩やかに増加している。

通関輸出(数量ベース、季節調整済前期比)は、月別で12月は2.4%増の後、 平成20年1月は1.4%増となっており、四半期別では、平成19年7〜9月期3.6%増の後、平成19年10〜12月期3.4%増となった(第6図)。

地域別には、アジア向け輸出は全体として増加、アメリカ向け輸出は全体として減少、EU向け輸出は横ばいとなっている。

輸入は、横ばいとなっている。

通関輸入(数量ベース、季節調整済前期比)は、月別で12月は4.2%増の後、 平成20年1月は4.9%減となっており、四半期別では、平成19年7〜9月期0.8%減の後、平成19年10〜12月期0.6%増となった(第6図)。

地域別には、アジアからの輸入は横ばい、アメリカからの輸入は緩やかに増加、EUからの輸入は全体として緩やかに減少している。

(3)  国内企業物価は、素材価格の上昇により上昇している。消費者物価は、わずかながら上昇している。

2月の国内企業物価(速報)は、前月比0.4%上昇(前年同月比3.4%上昇)となり、輸出物価は同0.5%上昇(同5.2%下落)、輸入物価は同1.6%上昇(同10.9%上昇)となった。

1月の消費者物価は、総合が前年同月比0.7%上昇(前月比0.2%下落)となり、生鮮食品を除く総合は同0.8%上昇(同0.4%下落)となった(第7図)。

(4)  企業収益は、弱含みとなっている。また、企業の業況判断は、慎重さがみられる。倒産件数は、緩やかな増加傾向にある。

財務省「法人企業統計季報」によると、全産業の経常利益は、四半期別前年同期比で、2007年7〜9月期0.7%減の後、2007年10〜12月期4.5%減(製造業3.3%減、非製造業5.7%減)、季節調整値で2007年7〜9月期6.0%減の後、2007年10〜12月期4.9%減(製造業1.1%減、非製造業7.8%減)となった。

また、日本銀行「企業短期経済観測調査」(12月調査)によれば、企業の全規模の2007年度の経常利益計画(前年度比)は、2007年度通期では全産業1.1%の増益、製造業2.4%の増益、非製造業0.1%の減益となっている。なお、2007年度上期では、全産業5.4%の増益、製造業7.8%の増益、非製造業3.3%の増益の後、下期では全産業2.9%の減益、製造業2.5%の減益、非製造業3.3%の減益が見込まれている(第8表)。

企業の業況判断D.I.(「良い」−「悪い」)について日本銀行「企業短期経済観測調査」(12月調査)をみると、規模計で、全産業2ポイント(2ポイント悪化)、製造業 9ポイント(横ばい)、非製造業−3ポイント(2ポイント悪化)となっており、全産業、非製造業で悪化、製造業で横ばいとなっている(第9表)。

倒産件数(東京商工リサーチ調べ)は、2月1,194件で、前年同月比8.3%増となった。

(5)  2007年10〜12月期の実質国内総生産(GDP)成長率は、季節調整済前期比0.9%増(年率3.5%増)となった。内外需別にみると、国内需要の寄与度は0.4%、財貨・サービスの純輸出の寄与度は0.5%となった。また、名目GDPの成長率は季節調整済前期比0.2%増となった(第10図)。

3 雇用・失業

(1)[1]  1月の就業者数(季節調整値)は、4ヶ月ぶりに前月差で減少した。

就業者数(季節調整値)は、12月に前月差4万人減となった後、1月は同13万人減と減少し、6,424万人(原数値は6,321万人、前年同月差43万人増)となった。男女別には、男性が3,749万人(前月差4万人増)、女性が2,675万人(同19万人減)となった(第11表)。

1月の雇用者数(季節調整値)は、2ヶ月連続で前月差で減少した。

雇用者数(季節調整値)は、12月に前月差9万人減となった後、1月は同23万人減と減少し、5,524万人(原数値は5,475万人、前年同月差25万人増)となった(第13図)。男女別には、男性が3,211万人(前月差11万人減)、女性が2,314万人(同10万人減)となった(第11表)。雇用形態別(原数値)にみると、常雇が4,734万人(前年同月差71万人増)、臨時雇が637万人(同38万人減)、日雇が103万人(同10万人減)となった。

1月の常用雇用指数(事業所規模5人以上、季節調整済値、確報)は、前月比0.1%増となった。また、一般とパートの別にみると、一般労働者は前月比0.3%増、パートタイム労働者は同0.7%減となった。

[2]  1月の完全失業率(季節調整値)は、前月と同水準であった。

完全失業率(季節調整値)は、12月に前月と同水準の3.8%となった後、1月も前月と同水準の3.8%(原数値は3.9%、前年同月差0.1%ポイント低下)となった。男女別には、男性が3.9%(前月差0.1ポイント上昇)、女性が3.7%(前月と同水準)となった。

1月の完全失業者数(季節調整値)は、2ヶ月連続で前月差で増加した。

完全失業者数(季節調整値)は、12月に前月差2万人増となった後、1月は同2万人増と増加し、256万人(原数値は256万人、前年同月差8万人減)となった。男女別には、男性が154万人(前月差4万人増)、女性が102万人(同2万人減)となった。

なお、求職理由別(原数値)にみると、12月は非自発的理由による離職失業者は81万人(前年差4万人減)、自発的理由による離職失業者は103万人(同2万人増)、学卒未就職者は7万人(同1万人減)、その他の理由による失業者は62万人(同3万人減)となった(第11表)。

[3]  1月の労働力人口(季節調整値)は、4ヶ月ぶりに前月差で減少した。

労働力人口(季節調整値)は、12月に前月差8万人増となった後、1月は同15万人減と減少し、6,679万人(原数値は6,577万人、前年同月差35万人増)となった。

1月の非労働力人口(季節調整値)は、2ヶ月連続で前月差で増加した。

非労働力人口(季節調整値)は、12月に前月差3万人増となった後、1月は同12万人増と増加し、4,368万人(原数値は4,469万人、前年同月差12万人減)となった。男女別には、男性が1,440万人(前月差7万人減)、女性が2,927万人(同19万人増)となった。

労働力人口比率(原数値)は、1月は59.5%(前年同月差0.2ポイント上昇)となった。男女別には、男性が72.3%(前年同月と同水準)、女性が47.6%(同0.5ポイント上昇)となった(第11表)。

就業率(15歳以上人口に占める就業者の割合、原数値)は、1月は57.2%(前年同月差0.3ポイント上昇)となった。

(2) 有効求人数(季節調整値)は、前月比1.9%減と7ヶ月連続で減少した。

有効求職者数(季節調整値)は、前月比1.4%減と2ヶ月ぶりに減少した。

1月の有効求人倍率(季節調整値)は、0.98倍と前月と同水準であった。

新規求人数(季節調整値)は、前月比1.4%増と2ヶ月連続で増加した。

新規求職者数(季節調整値)は、前月比2.1%減と2ヶ月ぶりに減少した。

1月の新規求人倍率(季節調整値)は、1.49倍と前月より0.06ポイント上昇した(第12表)。

正社員の有効求人倍率は、0.64倍(前年同月差0.03ポイント低下)となった。

新規求人(季節調整値)を一般(除パート)とパートの別でみると、1月は一般は前月比0.3%増と2ヶ月連続で増加し、パートについては同1.6%増と2ヶ月連続で増加した。新規求職者数(季節調整値)は、一般は前月比2.1%減と2ヶ月ぶりに減少し、パートについては同0.4%減と2ヶ月ぶりに減少した。

 (3)  産業別にみると、1月の就業者数(原数値)は、医療、福祉は前年同月差26万人増、情報通信業は同20万人増、運輸業は同13万人増、教育、学習支援業は同9万人増、卸売・小売業は同1万人増と増加したのに対し、製造業は同28万人減、建設業は同7万人減、飲食店、宿泊業は同5万人減、サービス業は同4万人減と減少した。

また、1月の新規求人(原数値)は、医療、福祉は前年同期比4.3%増、教育、学習支援業は同3.5%増と増加したのに対し、サービス業は同19.8%減、建設業は同16.9%減、製造業は同11.4%減、情報通信業は同9.6%減、運輸業は同8.0%減、卸売・小売業は同5.7%減、飲食店、宿泊業は同4.3%減と減少した。

 (4)  雇用に先行して動くと考えられる指標についてみると、所定外労働時間(事業所規模5人以上、季節調整済指数、確報)は、製造業では12月に前月比0.6%減となった後、1月は同2.6%減、調査産業計では12月に前月と同水準となった後、1月は前月比1.0%減となった。

日本銀行「全国企業短期経済観測調査」(12月調査)によると、雇用人員判断D.I.(「過剰」-「不足」)は、全産業では-10%ポイント(9月調査より1%ポイント低下)となっている(第14図)。

厚生労働省「労働経済動向調査」によると、2007年10〜12月期に雇用調整を実施した事業所割合は11%となり2007年7〜9月期と同水準となった(第15図)。また、2008年1〜3月期に実施予定の事業所割合は12%、2008年4〜6月期に実施予定の事業所割合は9%となっている。

4 賃金・労働時間

 (1)  1月の現金給与総額(事業所規模5人以上、産業計、確報、以下同じ)は282,082円で、前年同月比1.6%増となった。就業形態別にみると、一般労働者は前年同月比1.8%増、パートタイム労働者は同0.1%増となった。

内訳をみると、所定内給与は前年同月比0.7%増(一般労働者同1.0%増、パートタイム労働者同0.2%増)となったほか、所定外給与は同0.1%増、特別給与は同22.6%増となった(第16図)。

また、きまって支給する給与は前年同月比0.7%増(一般労働者同0.9%増、パートタイム労働者は同0.1%増)となった。

 (2)  1月の総実労働時間(事業所規模5人以上、産業計、確報、以下同じ)は138.3時間で、前年同月比1.8%減となった。就業形態別にみると、一般労働者は前年同月比1.6%減、パートタイム労働者は同1.8%減となった。

内訳をみると、所定内労働時間は127.8時間で前年同月比1.8%減(一般労同1.7%減、パートタイム労働者同1.8%減)、所定外労働時間は10.5時間で前年 同月比0.9%減(一般労働者同0.8%減、パートタイム労働者同横ばい)となった。なお、月間出勤日数は17.8日で前年同月差0.4日減となった。

1月の製造業の所定外労働時間(確報)は15.0時間で、前年同月比2.0%減となった。規模別にみると、500人以上規模で前年同月比3.6%増、100〜499人規模で同1.7%減、30〜99人規模で同1.3%減、5〜29人規模で同11.9%減となった(第17図)。

3月の主要変更点

月例労働経済報告のポイントPDF版(PDF:30KB)

月例労働経済報告PDF版(PDF:384KB)


月例労働経済報告参考表

データ取得エクセルでダウンロードできます。(参考表 (Excel:169KB))

データ取得エクセルでダウンロードできます。(図表 (Excel:3,306KB))

問合わせ先

政策統括官付 労働政策担当参事官室 分析第二係

電話 03(5253)1111 内線7732

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