2月 月例労働経済報告

1 概況

(1)  一般経済の概況

景気は、このところ回復が緩やかになっている。

・企業収益は、改善に足踏みがみられる。設備投資は、緩やかに増加している。

・雇用情勢は、厳しさが残るなかで、改善に足踏みがみられる。

・個人消費は、おおむね横ばいとなっている。

・住宅建設は、持ち直しの動きがみられるものの、依然として低い水準にある。

・輸出は、緩やかに増加している。生産は、増勢が鈍化している。

先行きについては、設備投資や輸出が増加基調で推移し、緩やかな景気回復が続くと期待される。ただし、サブプライム住宅ローン問題を背景とするアメリカ経済の減速や金融資本市場の変動、原油価格の動向等から、景気の下振れリスクが高まっていることに留意する必要がある。

(2)  労働経済の概況

労働経済面をみると、雇用情勢は、厳しさが残るなかで、改善に足踏みがみられる(第1図)。

・完全失業率は、12月は前月同水準の3.8%となった。

・15〜24歳層の完全失業率は、高水準ながら低下傾向で推移している。

・有効求人倍率は、低下している。

・新規求人数は、減少している。

・就業者数、雇用者数ともに季節調整値で3ヶ月ぶりに減少した。

・製造業の残業時間は、増加している。

・定期給与は横ばい圏内で推移している。現金給与総額は弱含みで推移している。

2 一般経済 

(1)  鉱工業生産・出荷・在庫の動きをみると、生産は、増勢が鈍化している。

12月の鉱工業生産(季節調整済前月比、確報、以下同じ)は、1.4%増と2ヶ月ぶりに増加した(第2図)。

業種別にみると、12月は輸送用機械工業、食料品・たばこ工業、一般機械工業等が上昇し、情報通信機械工業、精密機械工業が低下した。

出荷は1.6%増と上昇した。在庫は0.4%減と低下した。

今後の動向については、製造工業生産予測調査によると、製造工業生産は平成20年1月0.4%減の後、2月は2.2%減となっている。

(2)  最終需要の動向をみると、

[1]  個人消費は、おおむね横ばいとなっている。

二人以上の世帯の実質消費支出(季節調整済前月比、速報、以下同じ)は、11月1.0%減の後、12月2.3%増となった。うち勤労者世帯では11月2.7%減の後、12月2.6%増となった。勤労者世帯の平均消費性向(季節調整値)は11月73.7%の後、12月73.8%となった(第3図)。

消費者態度指数の推移をみると、2007年10〜12月期(季節調整済前期差)は5.0ポイント低下し、38.9となった。なお、1月(原数値前年同月差)は10.6ポイント低下し、37.5となった。

12月の小売業販売額(季節調整済前月比、確報、以下同じ)は、0.8%減、大型小売店販売額は4.1%減となった。また、乗用車(軽を含む)の新車登録台数(原数値前年同月比)は、12月7.7%減の後、1月3.8%増となった。

[2]  設備投資は、緩やかに増加している。

財務省「法人企業統計季報」によると、全産業の設備投資は、2007年4〜6月期季節調整済前期比10.5%減の後、2007年7〜9月期同4.4%増(うち製造業同2.5%減、非製造業同8.9%増)となっており、全産業、非製造業で2四半期ぶりに増加している。

今後の動向については、日本銀行「企業短期経済観測調査」(12月調査)をみると、全規模の2007年度の設備投資計画(前年度比)は、全産業で6.8%増、製造業は6.9%増、非製造業は6.8%増となっている(第4表)。また、機械受注(船舶・電力を除く民需)は、季節調整済前月比で11月は2.8%減の後、12月は3.2%減となっている。国土交通省「建築着工統計」による非居住用建築物(民間)の工事予定額をみると、11月は季節調整済前月比40.7%増の後、12月は同4.5%増となっている。

先行きについては、当面、緩やかな増加傾向で推移すると見込まれるものの、企業収益の改善に足踏みがみられることもあり、注視が必要である。

[3]  住宅建設は、持ち直しの動きがあるものの、依然として低い水準にある。

新設住宅着工総戸数をみると、11月季節調整済前月比11.6%増、12月は同9.9%増の8.0万戸(年率105.0万戸)と2ヶ月連続で増加した(第5図)。

新設住宅着工床面積は、11月季節調整済前月比3.6%増の後、12月は同11.4%増となった。

先行きについては、改正建築基準法施行の影響が当面続くと見込まれる。

[4]  公共投資は、総じて低調に推移している。

公共機関からの建設工事受注額は、前年同月比で、11月は4.3%増の後、12月は15.2%増となった。また、公共工事請負金額(「公共工事前払金保証統計」)をみると、11月前年同月比4.3%減の後、12月は同1.1%減となって いる。

[5]  輸出は、緩やかに増加している。

通関輸出(数量ベース、季節調整済前期比)は、月別で11月は1.4%減の後、 12月は2.4%増となっており、四半期別では、平成19年7〜9 月期3.6%増の後、平成19年10〜12月期3.4%増となった(第6図)。

地域別には、アジア向け輸出は全体として増加、アメリカ向け輸出は全体として横ばい、EU向け輸出は横ばいとなっている。

輸入は、横ばいとなっている。

通関輸入(数量ベース、季節調整済前期比)は、月別で11月は0.5%増の後、12月は4.2%増となっており、四半期別では、平成19年7〜9月期0.8%減の後、平成19年10〜12月期0.6%増となった(第6図)。

地域別には、アジアからの輸入は全体として横ばい、アメリカからの輸入は全体として緩やかに増加、EUからの輸入は緩やかに減少している。

(3)  国内企業物価は、素材価格の上昇により上昇している。消費者物価は、このところ石油製品を中心に上昇しているが、基調としてはわずかな上昇にとどまっている。

1月の国内企業物価(速報)は、前月比0.2%上昇(前年同月比3.0%上昇)となり、輸出物価は同2.4%下落(同5.7%下落)、輸入物価は同2.4%下落(同6.8%上昇)となった。

12月の消費者物価は、総合が前年同月比0.7%上昇(前月比0.2%上昇)となり、生鮮食品を除く総合は同0.8%上昇(同0.3%上昇)となった(第7図)。

(4)  企業収益は、改善に足踏みがみられる。また、企業の業況判断は、慎重さがみられる。倒産件数は、緩やかな増加傾向にある。

財務省「法人企業統計季報」によると、全産業の経常利益は、四半期別前年同期比で、2007年4〜6月期12.0%増の後、2007年7〜9月期0.7%減(製造業3.6%減、非製造業1.5%増)、季節調整値で2007年4〜6月期前期比7.6%増の後、2007年7〜9月期同5.2%減(製造業10.0%減、非製造業1.3%減)となった。

また、日本銀行「企業短期経済観測調査」(12月調査)によれば、企業の全規模の2007年度の経常利益計画(前年度比)は、2007年度通期では全産業1.1%の増益、製造業2.4%の増益、非製造業0.1%の減益となっている。なお、2007年度上期では、全産業5.4%の増益、製造業7.8%の増益、非製造業3.3%の増益の後、下期では全産業2.9%の減益、製造業2.5%の減益、非製造業3.3%の減益が見込まれている(第8表)。

企業の業況判断D.I.(「良い」−「悪い」)について日本銀行「企業短期経済観測調査」(12月調査)をみると、規模計で、全産業2ポイント(2ポイント悪化)、製造業 9ポイント(横ばい)、非製造業−3ポイント(2ポイント悪化)となっており、全産業、非製造業で悪化、製造業で横ばいとなっている(第9表)。

倒産件数(東京商工リサーチ調べ)は、平成20年1月1,174件で、前年同月比7.6%増となった。

(5)  2007年10〜12月期の実質国内総生産(GDP)成長率は、季節調整済前期比0.9%増(年率3.7%増)となった。内外需別にみると、国内需要の寄与度は0.5%、財貨・サービスの純輸出の寄与度は0.4%となった。また、名目GDPの成長率は季節調整済前期比0.3%増となった(第10図)。

3 雇用・失業

(1)[1]  12月の就業者数(季節調整値)は、3ヶ月ぶりに前月差で減少した。

就業者数(季節調整値)は、11月に前月差51万人増となった後、12月は同4万人減と減少し、6,437万人(原数値は6,396万人、前年同月差42万人増)となった。男女別には、男性が3,735万人(前月差10万人減)、女性が2,704万人(同9万人増)となった(第11表)。

12月の雇用者数(季節調整値)は、3ヶ月ぶりに前月差で減少した。

雇用者数(季節調整値)は、11月に前月差54万人増となった後、12月は同23万人減と減少し、5,535万人(原数値は5,531万人、前年同月差60万人増)となった(第13図)。男女別には、男性が3,209万人(前月差11万人減)、女性が2,326万人(同12万人減)となった(第11表)。雇用形態別(原数値)にみると、常雇が4,761万人(前年同月差67万人増)、臨時雇が663万人(同5万人増)、日雇が107万人(同12万人減)となった。

12月の常用雇用指数(事業所規模5人以上、季節調整済値、確報)は、前月比0.1%減となった。また、一般とパートの別にみると、一般労働者は前月比0.4%増、パートタイム労働者は同1.0%減となった。

[2]  12月の完全失業率(季節調整値)は、前月と同水準であった。

完全失業率(季節調整値)は、11月に前月差0.2%ポイント低下の 3.8%となった後、12月は前月と同水準の 3.8%(原数値は3.5%、前年同月差0.2%ポイント低下)となった。男女別には、男性が3.9%(前月と同水準)、女性が3.7%(同0.1%ポイント上昇)となった。

12月の完全失業者数(季節調整値)は、3ヶ月ぶりに前月差で増加した。

完全失業者数(季節調整値)は、11月に前月差11万人減となった後、12月は同2万人増と増加し、254万人(原数値は231万人、前年同月差13万人減)となった。男女別には、男性が151万人(前月と同水準)、女性が104万人(同3万人増)となった。

なお、求職理由別(原数値)にみると、 12月は非自発的理由による離職失業者は75万人(前年同月と同水準)、自発的理由による離職失業者は93万人(同8万人減)、学卒未就職者は9万人(同1万人減)、その他の理由による失業者は50万人(同5万人減)となった(第11表)。

[3]  12月の労働力人口(季節調整値)は、3ヶ月連続で前月差で増加した。

労働力人口(季節調整値)は、11月に前月差41万人増となった後、12月は同2万人増と増加し、 6,696万人(原数値は6,627万人、前年同月差29万人増)となった。

12月の非労働力人口(季節調整値)は、3ヶ月ぶりに前月差で増加した。

非労働力人口(季節調整値)は、11月に前月差43万人減となった後、12月は同12万人増と増加し、4,355万人(原数値は4,417万人、前年同月差3万人増)となった。男女別には、男性が1,453万人(前月差10万人増)、女性が2,901万人(同1万人増)となった。

労働力人口比率(原数値)は、 12月は60.0%(前年同月差0.1%ポイント上昇)となった。男女別には、男性が72.5%(前年同月差0.2%ポイント低下)、女性が48.3%(同0.5%ポイント上昇)となった(第11表)。

就業率(15歳以上人口に占める就業者の割合、原数値)は、12月は57.9%(前年同月差0.3%ポイント上昇 )となった。

(2) 有効求人数(季節調整値)は、前月比0.8%減と6ヶ月連続で減少した。

有効求職者数(季節調整値)は、前月比0.3%増と6ヶ月ぶりに増加した。

12月の有効求人倍率(季節調整値)は、0.98倍と前月より0.01ポイント低下した。

新規求人数(季節調整値)は、前月比1.3%増と7ヶ月ぶりに増加した。

新規求職者数(季節調整値)は、前月比3.4%増と 3 ヶ月ぶりに増加した。

12月の新規求人倍率(季節調整値)は、1.45倍と前月より0.02ポイント低下した(第12表)。

正社員の有効求人倍率は、0.63倍(前年同月差0.05ポイント低下)となった。

新規求人(季節調整値)を一般(除パート)とパートの別でみると、12月は一般は前月比0.4%増と7ヶ月ぶりに増加し、パートについては同4.3%増と2ヶ月ぶりに増加した。新規求職者数(季節調整値)は、一般は前月比3.0%増と3ヶ月ぶりに増加し、パートについては同6.6%増と3ヶ月ぶりに増加した。

 (3)  産業別にみると、12月の就業者数(原数値)は、情報通信業は前年同月差32万人増、卸売・小売業は同15万人増、医療、福祉及び教育、学習支援業は同 9万人増、運輸業は同6万人増と増加したのに対し、建設業は同23万人減、飲食店、宿泊業は同12万人減、製造業は同1万人減と減少した。また、サービス業では前年同月と同水準であった。

また、12 月の新規求人(原数値)は、教育、学習支援業は前年同期比4.1%増、医療、福祉は同3.5%増と増加したのに対し、サービス業は同25.4%減、建設業は同20.2%減、製造業及び情報通信業は同17.6%減、運輸業は同13.9%減、飲食店、宿泊業は同13.0%減、卸売・小売業は同12.0%減と減少した。

 (4)  雇用に先行して動くと考えられる指標についてみると、所定外労働時間(事業所規模5人以上、季節調整済指数、確報)は、製造業では 11月に前月比1.2%増となった後、12月は同0.9%減、調査産業計では 11月に前月比1.2%減となった後、12月は同0.1%増となった。

日本銀行「全国企業短期経済観測調査」(12月調査)によると、雇用人員判断D.I.(「過剰」-「不足」)は、全産業では-10%ポイント(9月調査より1%ポイント低下)となっている(第14図)。

厚生労働省「労働経済動向調査」によると、2007年7〜9月期に雇用調整を実施した事業所割合は11%となり2007年4〜6月期に比べて2%ポイント低下した(第15図)。また、2007年10〜12月期に実施予定の事業所割合は11%、2008年1〜3月期に実施予定の事業所割合は10%となっている。

4 賃金・労働時間

 (1)  12月の現金給与総額(事業所規模5人以上、産業計、確報、以下同じ)は597,546円で、前年同月比1.7%減となった。就業形態別にみると、一般労働者は前年同月比1.3%減、パートタイム労働者は同2.0%減となった。

内訳をみると、所定内給与は前年同月比0.4%増(一般労働者同0.6%増、パートタイム労働者同0.6%減)となったほか、所定外給与は同0.5%減、特別給与は同3.3%減となった(第16図)。

また、きまって支給する給与は前年同月比0.2%増(一般労働者同0.6%増、パートタイム労働者は同0.6%減)となった。

 (2)  12月の総実労働時間(事業所規模5人以上、産業計、確報、以下同じ)は150.2時間で、前年同月比1.8%減となった。就業形態別にみると、一般労働者は前年同月比1.4%減、パートタイム労働者は同1.8%減となった。

内訳をみると、所定内労働時間は138.8時間で前年同月比1.7%減(一般労同1.6%減、パートタイム労働者同1.8%減)、所定外労働時間は11.4時間で前年同月比0.2%減(一般労働者同0.4%増、パートタイム労働者同0.1%増)となった。なお、月間出勤日数は19.4日で前年同月差0.2日減となった。

12月の製造業の所定外労働時間(確報)は17.3時間で、前年同月比0.5%減となった。規模別にみると、500人以上規模で前年同月比1.5%増、100〜499人規模で同0.6%減、30〜99人規模で同3.5%増、5〜29人規模で同7.4%減となった(第17図)。

2月の主要変更点

月例労働経済報告のポイント(PDF:30KB)

月例労働経済報告(PDF:374KB)


月例労働経済報告参考表

データ取得エクセルでダウンロードできます。(参考表 (Excel:169KB))

データ取得エクセルでダウンロードできます。(図表 (Excel:3,266KB))

問合わせ先

政策統括官付 労働政策担当参事官室 分析第二係

電話 03(5253)1111 内線7732

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