11月 月例労働経済報告

1 概況

(1)  一般経済の概況

景気は、このところ一部に弱さがみられるものの、回復している。

・ 企業収益は、改善している。設備投資は、このところ弱い動きがみられるものの、基調として増加している。

・ 雇用情勢は、厳しさが残るなかで、このところ改善に足踏みがみられる。

・ 個人消費は、おおむね横ばいとなっている。

・ 住宅建設は、このところ減少している。

・ 輸出は、増加している。生産は、持ち直している。

先行きについては、企業部門の好調さが持続し、これが家計部門へ波及し国内民間需要に支えられた景気回復が続くと見込まれる。一方、サブプライム住宅ローン問題を背景とする金融資本市場の変動や原油価格の動向が内外経済に与える影響等には留意する必要がある。

(2)  労働経済の概況

労働経済面をみると、雇用情勢は、厳しさが残るなかで、このところ改善に足踏みがみられる(第1図)。

・ 完全失業率は、9月は前月比0.2%ポイント上昇し、4.0%となった。

・ 有効求人倍率は、低下傾向で推移している。

・ 新規求人数は、減少している。

・ 就業者数は季節調整値で5ヶ月連続で減少した。雇用者数は季節調整値で2ヶ月ぶりに減少した。

・ 製造業の残業時間は、減少している。

・ 定期給与は横ばい圏内で推移している。現金給与総額は弱含みで推移している。

2 一般経済 

(1)  鉱工業生産・出荷・在庫の動きをみると、生産は、持ち直している。

9月の鉱工業生産(季節調整済前月比、確報、以下同じ)は、1.4%減と2ヶ月ぶりに減少した(第2図)。

業種別にみると、9月は一般機械工業、輸送機械工業、情報通信機械工業等が低下し、電子部品・デバイス工業、その他工業、精密機械工業等が上昇した。

出荷は2.0%減と低下した。在庫は1.1%増と上昇した。

今後の動向については、製造工業生産予測調査によると、製造工業生産は10月3.8%増の後、11月0.7%減となっている。

(2)  最終需要の動向をみると、

[1]  個人消費は、おおむね横ばいとなっている。

二人以上の世帯の実質消費支出(季節調整済前月比、速報、以下同じ)は、8月0.4%増の後、9月0.7%増となった。うち勤労者世帯では8月1.5%増の後、9月0.3%増となった。勤労者世帯の平均消費性向(季節調整値)は8月75.1%の後、9月74.5%となった(第3図)。

消費者態度指数の推移をみると、2007年7〜9月期(季節調整済前期差)は0.4ポイント低下し、43.9となった。なお、10月(原数値前年同月差)は5.4ポイント低下し、42.8となった。

9月の小売業販売額(季節調整済前月比、確報、以下同じ)は、1.5%減、大型小売店販売額は2.1%減となった。また、乗用車(軽を含む)の新車登録台数(原数値前年同月比)は、9月5.0%減の後、10月1.1%増となった。

[2]  設備投資は、このところ弱い動きがみられるものの、基調として増加している。

財務省「法人企業統計季報」によると、全産業の設備投資は、2007年1〜3月期季節調整済前期比1.6%増の後、2007年4〜6月期同10.2%減(うち製造業同1.1%増、非製造業同16.4%減)となっており、全産業、非製造業で3四半期ぶりに減少している。

今後の動向については、日本銀行「企業短期経済観測調査」(9月調査)をみると、全規模の2007年度の設備投資計画(前年度比)は、全産業で4.9%増、製造業は6.8%増、非製造業は3.8%増となっている(第4表)。また、機械受注(船舶・電力を除く民需)は、季節調整済前月比で8月は7.7%減の後、9月は7.6%減となっている。国土交通省「建築着工統計」による非居住用建築物(民間)の工事予定額をみると、8月は季節調整済前月比26.7%減の後、9月は同18.0%減となっている。

先行きについては、企業収益の改善が続いていることから、増加傾向で推移するものと見込まれる。

[3]  住宅建設は、このところ減少している。

新設住宅着工総戸数をみると、8月季節調整済前月比23.0%減、9月は同1.2%減の6.0万戸(年率72.0万戸)と3ヶ月連続で減少した(第5図)。

新設住宅着工床面積は、8月季節調整済前月比17.0%減の後、9月は同3.2%増となった。

先行きについては、改正建築基準法施行の影響が当面続くものの、雇用情勢が改善傾向にあることに加え、家計の所得環境などの回復が続いていけば、住宅着工は底堅く推移していくことが期待される。

[4]  公共投資は、総じて低調に推移している。

公共機関からの建設工事受注額は、前年同月比で、8月9.1%減の後、9月は11.8%減となった。また、公共工事請負金額(「公共工事前払金保証統計」)をみると、9月前年同月比12.1%減の後、10月は同3.2%減となっている。

[5]  輸出は、増加している。

通関輸出(数量ベース、季節調整済前期比)は、月別で9月0.8%増の後、10月は1.4%増となっており、四半期別では、平成19年4〜6月期1.9%増の後、平成19年7〜9月期3.6%増となった(第6図)。

地域別には、アジア向け輸出は増加、アメリカ向け輸出は全体として緩やかに増加、EU向け輸出は全体として緩やかに増加している。

輸入は、緩やかに減少している。

通関輸入(数量ベース、季節調整済前期比)は、月別で9月2.3%増の後、10月は2.1%減となっており、四半期別では、平成19年4〜6月期0.4%減の後、平成19年7〜9月期0.8%減となった(第6図)。

地域別には、アジアからの輸入は緩やかに減少、アメリカからの輸入は横ばい、EUからの輸入は全体として緩やかに減少している。

(3)  国内企業物価は、素材価格の上昇により上昇している。消費者物価は、横ばいとなっている。

10月の国内企業物価(速報)は、前月比0.3%上昇(前年同月比2.4%上昇)となり、輸出物価は同0.8%上昇(同0.1%下落)、輸入物価は同3.9%上昇(同7.5%上昇)となった。

9月の消費者物価は、総合が前年同月比0.2%下落(前月比横ばい)となり、生鮮食品を除く総合は同0.1%下落(同0.1%上昇)となった(第7図)。

(4)  企業収益は、改善している。また、企業の業況判断は、大企業製造業では横ばいとなっているものの、全体としては慎重さがみられる。倒産件数は、緩やかな増加傾向にある。

財務省「法人企業統計季報」によると、全産業の経常利益は、四半期別前年同期比で、2007年1〜3月期7.4%増の後、2007年4〜6月期12.0%増(製造業17.3%増、非製造業8.0%増)、季節調整値で2007年1〜3月期前期比0.2%減の後、2007年4〜6月期同8.5%増(製造業15.0%増、非製造業3.6%増)となった。

また、日本銀行「企業短期経済観測調査」(9月調査)によれば、企業の全規模の2007年度の経常利益計画(前年度比)は、2007年度通期では全産業0.5%の増益、製造業1.8%の増益、非製造業0.5%の減益となっている。なお、2007年度上期では、全産業0.9%の減益、製造業1.2%の増益、非製造業2.8%の減益の後、下期では全産業1.9%の増益、製造業2.3%の増益、非製造業1.6%の増益が見込まれている(第8表)。

企業の業況判断D.I.(「良い」−「悪い」)について日本銀行「企業短期経済観測調査」(9月調査)をみると、規模計で、全産業4ポイント(3ポイント悪化)、製造業9ポイント(4ポイント悪化)、非製造業−1ポイント(4ポイント悪化)となっており、全産業、製造業、非製造業で悪化となっている(第9表)。

倒産件数(東京商工リサーチ調べ)は、10月1,260件で、前年同月比8.0%増となった。

(5)  2007年7〜9月期の実質国内総生産(GDP)成長率は、季節調整済前期比0.6%増(年率2.6%増)となった。内外需別にみると、国内需要の寄与度は0.2%、財貨・サービスの純輸出の寄与度は0.4%となった。また、名目GDPの成長率は季節調整済前期比0.3%増となった(第10図)。

3 雇用・失業

(1)[1]  9月の就業者数(季節調整値)は、5ヶ月連続で前月差で減少した。

就業者数(季節調整値)は、8月に前月差14万人減となった後、9月は同22万人減と減少し、6,373万人(原数値は6,422万人、前年同月差9万人減)となった。男女別には、男性が3,740万人(前月差9万人減)、女性が2,631万人(同15万人減)となった(第11表)。

9月の雇用者数(季節調整値)は、2ヶ月ぶりに前月差で減少した。

雇用者数(季節調整値)は、8月に前月差15万人増となった後、9月は同38万人減と減少し、5,491万人(原数値は5,507万人、前年同月差13万人増)となった(第13図)。男女別には、男性が3,221万人(前月差11万人減)、女性が2,270万人(同27万人減)となった(第11表)。雇用形態別(原数値)にみると、常雇が4,745万人(前年同月差15万人増)、臨時雇が659万人(同5万人増)、日雇が103万人(同7万人減)となった。

9月の常用雇用指数(事業所規模5人以上、季節調整済値、確報)は、前月比0. 3%増となった。また、一般とパートの別にみると、一般労働者は前月比0.3%増、パートタイム労働者は前月比0.1%減となった。

[2]  9月の完全失業率(季節調整値)は、2ヶ月連続で前月差で上昇した。

完全失業率(季節調整値)は、8月に前月差0.2%ポイント上昇の3.8%となった後、9月は同0.2%ポイント上昇の4.0%(原数値は4.0%、前年同月差0.2%ポイント低下)となった。男女別には、男性が4.0%(前月差0.2%ポイント上昇)、女性が4.0%(同0.3%ポイント上昇)となった。

9月の完全失業者数(季節調整値)は、2ヶ月連続で前月差で増加した。

完全失業者数(季節調整値)は、8月に前月差16万人増となった後、9月は同17万人増と増加し、269万人(原数値は269万人、前年同月差11万人減)となった。男女別には、男性が157万人(前月差8万人増)、女性が111万人(同8万人増)となった。

なお、求職理由別(原数値)にみると、 9月は非自発的理由による離職失業者は84万人(前年同月差3万人減)、自発的理由による離職失業者は108万人(同3万人減)、学卒未就職者は12万人(同3万人減)、その他の理由による失業者は61万人(同2万人減)となった(第11表)。

[3]  9月の労働力人口(季節調整値)は、2ヶ月ぶりに前月差で減少した。

労働力人口(季節調整値)は、8月に前月差3万人増となった後、9月は同8万人減と減少し、6,641 万人(原数値は6,691万人、前年同月差20万人減)となった。

9月の非労働力人口(季節調整値)は、2ヶ月ぶりに前月差で増加した。

非労働力人口(季節調整値)は、8月に前月差3万人減となった後、9月は同2万人増と増加し、4,396万人(原数値は4,350万人、前年同月差43万人増)となった。男女別には、男性が1,441万人(前月差2万人減)、女性が2,956万人(同6万人増)となった。

労働力人口比率(原数値)は、9月は60.6%(前年同月差0.3%ポイント低下)となった。男女別には、男性が73.3%(同0.2%ポイント低下)、女性が48.6%(同0.5%ポイント低下)となった(第11表)。

就業率(15歳以上人口に占める就業者の割合、原数値)は、9月は58.1%(前年同月差0.2%ポイント低下)となった。

(2) 有効求人数(季節調整値)は、前月比1.6%減と3ヶ月連続で減少した。

有効求職者数(季節調整値)は、前月と同水準となった。

9月の有効求人倍率(季節調整値)は、1.05倍と前月より0.01ポイント低下した。

新規求人数(季節調整値)は、前月比2.3%減と4ヶ月連続で減少した。

新規求職者数(季節調整値)は、前月比5.1%増と4ヶ月ぶりに増加した。

9月の新規求人倍率(季節調整値)は、1.47倍と前月より0.11ポイント低下した(第12表)。

正社員の有効求人倍率は、0.62倍(前年同月差0.02ポイント低下)となった。

新規求人(季節調整値)を一般(除パート)とパートの別でみると、9月は一般は前月比2.4%減と4ヶ月連続で減少し、パートについては同2.8%減と2ヶ月ぶりに減少した。新規求職者数(季節調整値)は、一般は前月比5.2%増と4ヶ月ぶりに増加し、パートについては同4.6%増と4ヶ月ぶりに増加した。

 (3)  産業別にみると、9月の就業者数(原数値)は、飲食店、宿泊業は前年同月差5万人増、情報通信業は同2万人増、卸売・小売業は同1万人増と増加したのに対し、教育、学習支援業は同22万人減、製造業は同11万人減、医療、福祉及びサービス業は同8万人減、建設業及び運輸業は同2万人減と減少した。

また、9月の新規求人(原数値)は、サービス業は前年同期比18.1%減、情報通信業は同17.6%減、建設業は同14.8%減、製造業は同14.4%減、運輸業は同12.7%減、飲食店、宿泊業は同11.1%減、卸売・小売業は同10.4%減、教育、学習支援業は同2.5%減、医療、福祉は同1.4%減と、主要全産業で減少した。

 (4)  雇用に先行して動くと考えられる指標についてみると、所定外労働時間(事業所規模5人以上、季節調整済指数、確報)は、製造業では8月に前月比1.0%減となった後、9月は同0.5%増、調査産業計では8月に前月比0.4%増となった後、9月は同0.5%増となった。

日本銀行「全国企業短期経済観測調査」(9月調査)によると、雇用人員判断D.I.(「過剰」-「不足」)は、全産業では-9%ポイント(6月調査より1%ポイント低下)となっている(第14図)。

厚生労働省「労働経済動向調査」によると、2007年4〜6月期に雇用調整を実施した事業所割合は13%となり2007年1〜3月期に比べて1%ポイント上昇した(第15図)。また、2007年7〜9月期に実施予定の事業所割合は12%、2007年10〜12月期に実施予定の事業所割合は10%となっている。

4 賃金・労働時間

 (1)  9月の現金給与総額(事業所規模5人以上、産業計、確報、以下同じ)は273,008円で、前年同月比0.6%減となった。就業形態別にみると、一般労働者は前年同月比0.2%増、パートタイム労働者は同1.6%減となった。

内訳をみると、所定内給与は前年同月比0.4%減(一般労働者同0.2%増、パートタイム労働者同1.5%減)となったほか、所定外給与は同1.3%増、特別給与は同10.3%減となった(第16図)。

また、きまって支給する給与は前年同月比0.3%減(一般労働者同0.4%増、パートタイム労働者は同1.5%減)となった。

 (2)  9月の総実労働時間(事業所規模5人以上、産業計、確報、以下同じ)は148.6時間で、前年同月比2.6%減となった。就業形態別にみると、一般労働者は前年同月比2.0%減、パートタイム労働者は同2.5%減となった。

内訳をみると、所定内労働時間は137.8時間で前年同月比2.6%減(一般労働者同2.4%減、パートタイム労働者同2.7%減)、所定外労働時間は10.8時間で前年同月比1.0%増(一般労働者同2.1%増、パートタイム労働者同0.6%増)となった。なお、月間出勤日数は19.2日で前年同月差0.4日減となった。

9月の製造業の所定外労働時間(確報)は16.5時間で、前年同月比1.7%減となった。規模別にみると、500人以上規模で前年同月比0.6%増、100〜499人規模で同1.1%増、30〜99人規模で同1.2%増、5〜29人規模で同11.1%減となった(第17図)。

11月の主要変更点

月例労働経済報告のポイント(PDF:29KB)

月例労働経済報告(PDF:368KB)

月例労働経済報告参考表

データ取得エクセルでダウンロードできます。(参考表 (Excel:170KB))

データ取得エクセルでダウンロードできます。(図表 (Excel:3.247KB))

問合わせ先

政策統括官付 労働政策担当参事官室 分析第二係

電話 03(5253)1111 内線7732

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