1 概況
(1) | 一般経済の概況 景気は、持ち直しに向けた動きがみられる。
先行きについては、企業部門が持ち直している中で、アメリカ経済等の回復に伴って、景気は持ち直すことが見込まれる。一方、今後の株価・為替レートや海外経済などの動向には留意する必要がある。 |
||||||||||
(2) | 労働経済の概況 労働経済面をみると、完全失業率が高水準で推移するなど(第1図)、依然として厳しいものの、持ち直しの動きがみられる。
|
2 一般経済
(1) | 鉱工業生産・出荷・在庫の動きをみると、生産は、横ばいとなっている。 8月の鉱工業生産(季節調整済前月比、速報、以下同じ)は、0.5%減と2か月ぶりに減少となった(第2図)。情報化関連生産財が堅調に推移しているものの、全体として横ばいとなっている。業種別にみると、一般機械工業、その他工業、金属製品工業等が減少した。出荷は0.5%増と3か月ぶりに増加し、在庫は1.0%減と2か月ぶりに減少した。 今後の動向については、製造工業生産予測調査によると、製造工業生産は9月 2.7%増の後、10月は1.4%増となっている。 |
||||||||||
(2) | 最終需要の動向をみると、
|
||||||||||
(3) | 国内企業物価、消費者物価は、ともに横ばいとなっている。 8月の国内企業物価は、前月比横ばい(前年同月比0.6%下落)となり、輸出物価は同0.2%下落(同0.6%上昇)、輸入物価は同0.6%上昇(同3.4%上昇)となった。 8月の消費者物価は、総合が前年同月比0.3%下落(前月比0.2%上昇)、生鮮食品を除く総合が同0.1%下落(同0.1%上昇)となった(第7図)。 |
||||||||||
(4) | 企業収益は、改善が続いている。また、企業の業況判断は、改善がみられる。倒産件数は、緩やかに減少している。 財務省「法人企業統計季報」によると、全産業の経常利益は、季節調整値で1〜3月1.8%減の後、4〜6月5.0%増(製造業10.7%増、非製造業1.2%増)となった。 また、日本銀行「企業短期経済観測調査」(9月調査)によれば、企業の15年度の経常利益計画(前年同期比)は、15年度通期では全規模10.4%の増益、製造業17.3%の増益、非製造業6.2%の増益、上期では全規模6.1%の増益、製造業23.0%の増益、非製造業3.2%の減益の後、下期では全規模13.7%の増益、製造業13.5%の増益、非製造業13.9%の増益が見込まれている(第8表)。 企業の業況判断D.I.(「良い」−「悪い」)について日本銀行「企業短期経済観測調査」(9月調査)をみると、全規模で-21ポイント(5ポイント改善)、製造業-15ポイント(5ポイント改善)、非製造業-27ポイント(3ポイント改善)となっており、製造業・非製造業ともに改善がみられる(第9表)。 倒産件数(東京商工リサーチ調べ)は、8月1,266件(前年同月比19.7%減)となっている。セーフティネット保証の適用件数が増えていること等を背景に、緩やかに減少している。 |
||||||||||
(5) | 平成15年4〜6月期の実質国内総生産(GDP)成長率は、季節調整済前期比1.0%(年率3.9%)となった。内外需別にみると、国内需要の寄与度は0.7%、財貨・サービスの純輸出の寄与度は0.2%となった。また、名目GDPの成長率は季節調整済前期比0.3%増となった(第10図)。 |
3 雇用・失業
(1) |
|
||||||
(2) | 有効求人(季節調整値)は、8月は前月比1.3%減と5か月ぶりに減少し、有効求職者数(季節調整値)は同2.2%減と2か月連続の減少となった。有効求人倍率(季節調整値)は、緩やかに上昇しており、8月は0.63倍(前月差0.01ポイントの上昇)となった。 新規求人(季節調整値)は、増加傾向となっている。新規求人(季節調整値)は8月は前月比1.3%減と2ヶ月連続で減少した。新規求職者数(季節調整値)は前月比4.4%減と2ヶ月連続で減少した。新規求人倍率(季節調整値)は、8月は1.08倍と前月より0.04ポイント上昇した(第12表)。 新規求人(季節調整値)を一般(除パート)、パートの別でみると8月は、一般は前月比2.0%減と2か月連続で減少し、パートは前月と同水準となった。新規求職(季節調整値)は、一般は前月比4.2%減と2ヶ月連続で減少し、パートは同5.3%減と2ヶ月連続で減少した 常用新規求職者数(除パート、原数値)のうち事業主都合離職者は、8月は前年同月比10.0%減と11か月連続で減少した。 |
||||||
(3) | 産業別にみると、8月の就業者数(原数値)は、建設業は前年同月差28万人減、製造業は同14万人減、飲食店,宿泊業は同9万人減、運輸業は同10万人減と減少したのに対して、卸売・小売業は同17万人増、医療,福祉は同23万人増、サービス業は同3万人増と増加している。 8月の新規求人(原数値)は、建設業は前年同月比1.3%増、製造業は同7.1%増、運輸・通信業は同6.0%増、卸売・小売業,飲食店は同7.3%増、サービス業は同13.4%増と増加している。 |
||||||
(4) | 雇用に先行して動くと考えられる指標についてみると、製造業の所定外労働時間(季節調整値)は、増加傾向となっている。所定外労働時間(事業所規模5人以上、季節調整済指数)は、製造業では、7月(確報値)前月比1.1%増の後、8月(確報値)前月比2.5%増となり、調査産業計では、7月前月比0.7%増の後、8月は同0.3%増となった。 日本銀行「全国企業短期経済観測調査」(9月調査)によると、雇用人員判断DI(「過剰」-「不足」)は、全産業では12%ポイント(6月調査から3%ポイント低下)となり、低下傾向にあるものの、依然として高い水準にある(第13図)。 厚生労働省「労働経済動向調査」によると、4〜6月期に雇用調整を実施した事業所割合は22%と1〜3月期と同水準となった(第14図)。また、7〜9月期に実施予定の事業所割合は20%、10〜12月期に実施予定の事業所割合は18%と低下が見込まれている。 内閣府「景気ウォッチャー調査」による9月の2〜3か月先の景気の先行き判断DI・雇用関連は56.6で前月を3.1ポイント上回り、6か月連続で上昇した。 |
4 賃金・労働時間
(1) | 8月の現金給与総額(産業計、確報、以下同じ)は295,611円で、前年同月比
1.7%減となった。就業形態別にみると、一般労働者は前年同月比1.2%減、パートタイム労働者は0.1%減となった。 内訳をみると、所定内給与は前年同月比0.3%減(一般労働者同0.2%増、パートタイム労働者同0.2%増)となったほか、所定外給与は同3.2%増、特別給与は同19.6%減となり、実質賃金は同1.2%減となった(第15図)。 |
(2) | 8月の総実労働時間(産業計、確報、以下同じ)は146.7時間で、前年同月比
1.4%減となった。就業形態別にみると、一般労働者は前年同月比1.1%減、パートタイム労働者は横ばいとなった。 内訳をみると、所定内労働時間は137.1時間で前年同月比1.7%減(一般労働者同1.5%減、パートタイム労働者同0.1%減)、所定外労働時間は9.6時間で同3.3%増となった。なお、月間出勤日数は19.0日で前年同月差は0.3日減となった。 8月の製造業の所定外労働時間(確報)は14.4時間で、前年同月比8.3%増となった。規模別にみると、500人以上規模で前年同月比6.9%増、100〜499人規模で10.3%増、30〜99人規模で同10.3%増、5〜29人規模で同7.0%増となった(第16図)。 |
(注) | 日本標準産業分類の改訂に伴い、総務省統計局「労働力調査」に係る表記は、平成15年1月結果の公表以降、新産業分類で表記し、平成14年以前の対前年同月増減については、改訂による影響のない又は小さい産業について表章している。 なお、10月例労働経済報告に掲載されている資料出所において「労働力調査」以外の資料出所においては、旧産業分類に基づいて表記されている。 |
問合わせ先 政策統括官付 労働政策担当参事官室 分析第二係 電話 03(5253)1111 内線7732