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10月 月例労働経済報告

1 概況

(1)  一般経済の概況
 景気は、持ち直しに向けた動きがみられる。

  ・ 設備投資は増加している。企業収益は改善が続いている。
  ・ 輸出は持ち直し基調にあり、生産は横ばいとなっている。
  ・ 個人消費は、おおむね横ばいで推移している。
  ・ 雇用情勢は、依然として厳しいものの、持ち直しの動きがみられる。

 先行きについては、企業部門が持ち直している中で、アメリカ経済等の回復に伴って、景気は持ち直すことが見込まれる。一方、今後の株価・為替レートや海外経済などの動向には留意する必要がある。

(2)  労働経済の概況
 労働経済面をみると、完全失業率が高水準で推移するなど(第1図)、依然として厳しいものの、持ち直しの動きがみられる。
  ・ 就業者数は持ち直している。雇用者数は増加傾向となっている。
  ・ 完全失業率は5.1%と高水準で推移している。
  ・ 有効求人倍率は、緩やかに上昇している。
  ・ 新規求人数は、増加傾向となっている。
  ・ 所定外労働時間は、増加傾向となっている。

2 一般経済

(1)  鉱工業生産・出荷・在庫の動きをみると、生産は、横ばいとなっている。
 8月の鉱工業生産(季節調整済前月比、速報、以下同じ)は、0.5%減と2か月ぶりに減少となった(第2図)。情報化関連生産財が堅調に推移しているものの、全体として横ばいとなっている。業種別にみると、一般機械工業、その他工業、金属製品工業等が減少した。出荷は0.5%増と3か月ぶりに増加し、在庫は1.0%減と2か月ぶりに減少した。
 今後の動向については、製造工業生産予測調査によると、製造工業生産は9月 2.7%増の後、10月は1.4%増となっている。

(2)  最終需要の動向をみると、
(1)  個人消費は、おおむね横ばいで推移している。
 全世帯の実質消費支出(速報)は7月季節調整済前月比5.7%減の後、8月は同4.3%増となり、勤労者世帯では7月は同6.9%減の後、8月は同7.4%増となった(前年同月比2.2%増)。勤労者世帯の消費支出を財(商品)・サービス別にみると、8月の財(商品)は実質で前年同月比2.8%増、サービスは同2.7%増となった。勤労者世帯の平均消費性向は7月季節調整値73.4%の後、8月同74.0%となった(第3図)。
 8月の小売業販売額(速報)は季節調整済前月比2.8%増、大型小売店販売額(速報)は同4.0%増となった。
 乗用車(軽を含む)の新車登録台数(速報)は、8月前年同月比5.8%減の後、9月同1.0%減となった。
(2)  設備投資は、増加している。
 財務省「法人企業統計季報」によると、全産業の設備投資は、1〜3月期季節調整済前期比1.8%減の後、4〜6月期同5.3%増(うち製造業同4.5%増、非製造業同5.6%増)となり、増加基調にある。
 今後の動向については、日本銀行「企業短期経済観測調査」(9月調査)をみると、全規模の15年度の設備投資計画(前年度比)は3年ぶりに全産業で 2.2%増、製造業は5.9%増、非製造業は1.0%増と増加に転じる計画となっている(第4表)。また、機械受注(船舶・電力を除く民需)は、季節調整済前月比で8月は4.3%減と2か月連続で減少した。建築着工床面積をみると、7月は季節調整済前月比5.2%減の後、8月は同2.4%減となっている。
 先行きについては、企業収益の改善が続くものと見込まれること等から、当面増加傾向で推移するものと見込まれる。
(3)  住宅建設は、おおむね横ばいとなっている。
 新設住宅着工戸数をみると、7月季節調整済前月比8.6%減の後、8月は同8.5%減の8.8万戸(年率106万戸)と2か月連続で減少となった(第5図)。新設住宅着工床面積も、おおむね総戸数と同様の動き(8月同7.0%減)をしている。
 先行きについては、雇用・所得環境が持ち直すなど、消費者の住宅取得マインドが改善に向えば、住宅着工は底堅く推移していくことも期待される。
(4)  公共投資は、総じて低調に推移している。
 公共機関からの建設工事受注額は、前年同月比で7月20.4%減、8月10.2%減と8か月連続で減少が続いている。また、公共工事請負金額(保証事業会社協会「公共工事前払金保証統計」)をみると、8月前年同月比10.6%減、9月同6.9%減と前年を下回っている。
 先行きについては、国・地方の予算状況を踏まえると、今後も低調に推移するものと見込まれる。
(5)  輸出は、持ち直し基調にある。
 通関輸出(数量ベース、季節調整済前期比)は、月別で7月4.4%増の後、8月は3.5%減となっており、四半期別では、1−3月期0.1%増の後、4−6月期0.9%増となった(第6図)。
 地域別には、アジア向け輸出は緩やかに増加しており、アメリカ向け輸出は横ばいとなっており、EU向け輸出は下げ止まりつつある。
 輸入は、増加基調にある。
 通関輸入(数量ベース、季節調整済前期比)は、月別で7月5.2%増の後、8月は10.2%減となっており、四半期別では、1−3月期0.2%減の後、4−6月期4.5%増となった(第6図)。
 地域別には、アジアからの輸入は基調としては増加しており、アメリカからの輸入はこのところ減少しており、EUからの輸入は基調としてはおおむね横ばいとなっている。

(3)  国内企業物価、消費者物価は、ともに横ばいとなっている。
 8月の国内企業物価は、前月比横ばい(前年同月比0.6%下落)となり、輸出物価は同0.2%下落(同0.6%上昇)、輸入物価は同0.6%上昇(同3.4%上昇)となった。
 8月の消費者物価は、総合が前年同月比0.3%下落(前月比0.2%上昇)、生鮮食品を除く総合が同0.1%下落(同0.1%上昇)となった(第7図)。

(4)  企業収益は、改善が続いている。また、企業の業況判断は、改善がみられる。倒産件数は、緩やかに減少している。
 財務省「法人企業統計季報」によると、全産業の経常利益は、季節調整値で1〜3月1.8%減の後、4〜6月5.0%増(製造業10.7%増、非製造業1.2%増)となった。
 また、日本銀行「企業短期経済観測調査」(9月調査)によれば、企業の15年度の経常利益計画(前年同期比)は、15年度通期では全規模10.4%の増益、製造業17.3%の増益、非製造業6.2%の増益、上期では全規模6.1%の増益、製造業23.0%の増益、非製造業3.2%の減益の後、下期では全規模13.7%の増益、製造業13.5%の増益、非製造業13.9%の増益が見込まれている(第8表)。
 企業の業況判断D.I.(「良い」−「悪い」)について日本銀行「企業短期経済観測調査」(9月調査)をみると、全規模で-21ポイント(5ポイント改善)、製造業-15ポイント(5ポイント改善)、非製造業-27ポイント(3ポイント改善)となっており、製造業・非製造業ともに改善がみられる(第9表)。
 倒産件数(東京商工リサーチ調べ)は、8月1,266件(前年同月比19.7%減)となっている。セーフティネット保証の適用件数が増えていること等を背景に、緩やかに減少している。

(5)  平成15年4〜6月期の実質国内総生産(GDP)成長率は、季節調整済前期比1.0%(年率3.9%)となった。内外需別にみると、国内需要の寄与度は0.7%、財貨・サービスの純輸出の寄与度は0.2%となった。また、名目GDPの成長率は季節調整済前期比0.3%増となった(第10図)。

3 雇用・失業

(1)
(1)  就業者数は、8月は2ヶ月連続で前月比で減少した。就業者数(季節調整値)は、7月前月差22万人減の後、8月は同18万人減と減少し、6321万人(原数値は6361万人、前年同月差10万人減)となった。男女別には、8月は、男性が3718万人(前月差8万人減)、女性が2603万人(同9万人減)となった。
 雇用者数は、8月は3ヶ月ぶりに前月比で減少した。雇用者(季節調整値)は、7月前月差13万人増の後、8月は同30万人減と減少し、5338万人(原数値は5347万人、前年同月差16万人減)となった。男女別には、8月は、男性が3150万人(前月差20万人減)、女性が2188万人(同10万人減)となった(第11表)。雇用形態別(原数値)には、8月は、常雇が4618万人(前年同月差8万人減)、臨時雇が603万人(同7万人減)、日雇が126万人(前年同月同水準)となっている。
 「毎月勤労統計調査」(確報)により、8月の常用雇用指数(事業所規模5人以上、季節調整済指数)をみると、前月比0.1%増となった。また、一般、パート別にみると、一般労働者は前月比0.1%増、パートタイム労働者は同 0.3%減となった。
(2)  8月の完全失業率(季節調整値)は前月より0.2%ポイント低下し5.1%となった。男女別には、男性が5.3%(前月より0.2%ポイントの低下)、女性が4.8%(前月より0.1%ポイントの低下)となった。
 8月の完全失業者数(季節調整値)は、前月差13万人減の339万人(原数値は333万人、前年同月差28万人減)となり、引き続き高水準で推移している。男女別には、男性が207万人(前月差9万人減)、女性が131万人(同5万人減)となった。
 求職理由別(原数値)にみると、8月は、非自発的理由による離職者は134万人(前年同月差12万人減)、自発的理由による離職者は110万人(同19万人減)、その他の理由による失業者は66万人(同1万人増)となった(第11表)。
(3)  8月の労働力人口(季節調整値)は、前月差31万人減の6658万人(原数値は6693万人、前年同月差39万人減)となった。非労働力人口(季節調整値)は、前月差33万人増の4309万人(原数値は4264万人、前年同月差77万人増)となった。男女別には、男性が1386万人(前月差18万人増)、女性が2924万人(同15万人増)となった。
 労働力率(原数値)は、8月は、61.0%(前年同月差0.6%ポイント低下)となった。男女別には、男性が74.3%(同0.9%ポイント低下)、女性が48.6%(同0.2%ポイント低下)となった(第11表)。
(2)  有効求人(季節調整値)は、8月は前月比1.3%減と5か月ぶりに減少し、有効求職者数(季節調整値)は同2.2%減と2か月連続の減少となった。有効求人倍率(季節調整値)は、緩やかに上昇しており、8月は0.63倍(前月差0.01ポイントの上昇)となった。
 新規求人(季節調整値)は、増加傾向となっている。新規求人(季節調整値)は8月は前月比1.3%減と2ヶ月連続で減少した。新規求職者数(季節調整値)は前月比4.4%減と2ヶ月連続で減少した。新規求人倍率(季節調整値)は、8月は1.08倍と前月より0.04ポイント上昇した(第12表)。
 新規求人(季節調整値)を一般(除パート)、パートの別でみると8月は、一般は前月比2.0%減と2か月連続で減少し、パートは前月と同水準となった。新規求職(季節調整値)は、一般は前月比4.2%減と2ヶ月連続で減少し、パートは同5.3%減と2ヶ月連続で減少した
 常用新規求職者数(除パート、原数値)のうち事業主都合離職者は、8月は前年同月比10.0%減と11か月連続で減少した。
(3)  産業別にみると、8月の就業者数(原数値)は、建設業は前年同月差28万人減、製造業は同14万人減、飲食店,宿泊業は同9万人減、運輸業は同10万人減と減少したのに対して、卸売・小売業は同17万人増、医療,福祉は同23万人増、サービス業は同3万人増と増加している。
 8月の新規求人(原数値)は、建設業は前年同月比1.3%増、製造業は同7.1%増、運輸・通信業は同6.0%増、卸売・小売業,飲食店は同7.3%増、サービス業は同13.4%増と増加している。
(4)  雇用に先行して動くと考えられる指標についてみると、製造業の所定外労働時間(季節調整値)は、増加傾向となっている。所定外労働時間(事業所規模5人以上、季節調整済指数)は、製造業では、7月(確報値)前月比1.1%増の後、8月(確報値)前月比2.5%増となり、調査産業計では、7月前月比0.7%増の後、8月は同0.3%増となった。
 日本銀行「全国企業短期経済観測調査」(9月調査)によると、雇用人員判断DI(「過剰」-「不足」)は、全産業では12%ポイント(6月調査から3%ポイント低下)となり、低下傾向にあるものの、依然として高い水準にある第13図)。
 厚生労働省「労働経済動向調査」によると、4〜6月期に雇用調整を実施した事業所割合は22%と1〜3月期と同水準となった(第14図)。また、7〜9月期に実施予定の事業所割合は20%、10〜12月期に実施予定の事業所割合は18%と低下が見込まれている。
 内閣府「景気ウォッチャー調査」による9月の2〜3か月先の景気の先行き判断DI・雇用関連は56.6で前月を3.1ポイント上回り、6か月連続で上昇した。

4 賃金・労働時間

(1)  8月の現金給与総額(産業計、確報、以下同じ)は295,611円で、前年同月比 1.7%減となった。就業形態別にみると、一般労働者は前年同月比1.2%減、パートタイム労働者は0.1%減となった。
 内訳をみると、所定内給与は前年同月比0.3%減(一般労働者同0.2%増、パートタイム労働者同0.2%増)となったほか、所定外給与は同3.2%増、特別給与は同19.6%減となり、実質賃金は同1.2%減となった(第15図)。

(2)  8月の総実労働時間(産業計、確報、以下同じ)は146.7時間で、前年同月比 1.4%減となった。就業形態別にみると、一般労働者は前年同月比1.1%減、パートタイム労働者は横ばいとなった。
 内訳をみると、所定内労働時間は137.1時間で前年同月比1.7%減(一般労働者同1.5%減、パートタイム労働者同0.1%減)、所定外労働時間は9.6時間で同3.3%増となった。なお、月間出勤日数は19.0日で前年同月差は0.3日減となった。
 8月の製造業の所定外労働時間(確報)は14.4時間で、前年同月比8.3%増となった。規模別にみると、500人以上規模で前年同月比6.9%増、100〜499人規模で10.3%増、30〜99人規模で同10.3%増、5〜29人規模で同7.0%増となった(第16図)。

(注)  日本標準産業分類の改訂に伴い、総務省統計局「労働力調査」に係る表記は、平成15年1月結果の公表以降、新産業分類で表記し、平成14年以前の対前年同月増減については、改訂による影響のない又は小さい産業について表章している。
 なお、10月例労働経済報告に掲載されている資料出所において「労働力調査」以外の資料出所においては、旧産業分類に基づいて表記されている。


10月の主要変更点

月例労働経済報告参考表
データ取得エクセルでダウンロードできます。(参考表)

データ取得エクセルでダウンロードできます。(図表)


問合わせ先
政策統括官付 労働政策担当参事官室 分析第二係
電話 03(5253)1111  内線7732

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