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6月月例労働経済報告


1 概況

(1)  一般経済の概況
 景気は、おおむね横ばいとなっているが、このところ一部に弱い動きがみられる。
      輸出は横ばいとなっている中で、生産は弱含んでいる。
企業収益は改善のテンポが緩やかになり、設備投資は持ち直しの動きが緩やかになっている。
雇用情勢は、失業率が高水準で推移するなど、依然として厳しい。
個人消費は、おおむね横ばいで推移している。

 先行きについては、アメリカ経済等の回復が持続すれば、景気は持ち直しに向かうことが期待される。一方、アメリカ経済やアジア経済等の先行きを巡る不透明感により、我が国の最終需要が引き続き下押しされる懸念が存在している。

(2)  労働経済の概況
 労働経済面をみると、完全失業率が高水準で推移するなど(第1図)、依然として厳しい。
      就業者数及び雇用者数は、横ばいで推移している。
完全失業率は5.4%と高水準で推移している。
有効求人倍率は、おおむね横ばいで推移している。
新規求人数は、昨年前半から増加傾向にあったが、このところ、横ばいとなっている。
所定外労働時間は、横ばいとなっている。

2 一般経済

(1)  鉱工業生産・出荷・在庫の動きをみると、生産は、弱含んでいる。
 4月の鉱工業生産(季節調整済前月比、確報、以下同じ)は、1.5%減と2か月ぶりに減少となった。国内最終需要に力強さがみられず、輸出が横ばいとなっていることを背景に、弱含んでいる(第2図)。業種別にみると、一般機械工業、化学工業、情報通信機械工業等が低下した。出荷は1.1%増と3か月ぶりに増加し、在庫は0.1%減と3か月連続で減少した。
 今後の動向については、製造工業生産予測調査によると、製造工業生産は5月 2.6%増の後、6月は1.1%増となっている。

(2)  最終需要の動向をみると、
(1)  個人消費は、おおむね横ばいで推移している。
 全世帯の実質消費支出(速報)は3月季節調整済前月比0.4%増の後、4月は同1.9%増となり、勤労者世帯では3月同0.6%増の後、4月は同1.5%増となった(前年同月比1.0%減)。勤労者世帯の消費支出を財(商品)・サービス別にみると、4月の財(商品)は実質で前年同月比1.3%増、サービスは同1.7%増となった。勤労者世帯の平均消費性向は3月季節調整値74.3%の後、4月同73.1%となった(第3図)。
 4月の小売業販売額(速報)は季節調整済前月比2.3%減、大型小売店販売額(速報)は同0.6%減となった。
 乗用車(軽を含む)の新車登録台数(速報)は、4月前年同月比7.0%減の後、5月同0.8%減となった。
(2)  設備投資は、持ち直しの動きが緩やかになっている。
 財務省「法人企業統計季報」によると、全産業の設備投資は、季節調整値で平成14年10〜12月期前期比3.4%増の後、平成15年1〜3月期同2.0%減(うち製造業同1.2%減、非製造業同2.4%減)と減少に転じるなど、設備投資は持ち直しの動きが緩やかになっている(第4表)。また、内閣府「法人企業動向調査」(資本金1億円以上、3月調査)をみても、全産業の設備投資額は、季調済前期比で14年10〜12月期(実績)は、3.4%増となっているが、15年1〜3月期(実績見込み)は1.1%減(うち製造業2.4%減、非製造業3.4%減)と若干の減少が見込まれている。
 今後の動向については、日本銀行「企業短期経済観測調査」(3月調査)をみると、全規模の15年度の設備投資計画(前年比)は全産業で3.1%減と減少が見込まれているものの製造業は0.2%増と3年ぶりに前年比増加に転じる計画となっている。また、機械受注(船舶・電力を除く民需)は、季節調整済前月比で4月は1.8%減と2か月ぶりの減少となり、基調としては持ち直しの動きが緩やかになっている。また、建設工事受注額(主要建設会社50社民間発注分、非住宅)は、4月は日本産業分類の改訂にともなって電源開発株式会社及び森林組合が公共機関から民間等に分類変更されたことなどもあり季節調整済前月比で29.9%増と2か月連続で増加している。しかしながら、最終需要の先行きが依然不透明なこともあり、設備投資の持ち直しの動きは当面緩慢なものにとどまると見込まれる。
(3)  住宅建設は、おおむね横ばいとなっている。
 新設住宅着工戸数をみると、3月季節調整済前月比4.8%減の後、4月は同5.6%増の9.7万戸(年率116万戸)と3か月ぶりに増加となった(第5図)。持家は減少幅を縮小し、分譲住宅はおおむね横ばいで推移する中、これまで減少していた貸家の着工が増加したことから、おおむね横ばいの動きとなっている。
 先行きについては、雇用・所得環境が厳しいことなどから、消費者の住宅取得マインドが低下しており、住宅着工の下押し要因になるものと見込まれる。
(4)  公共投資は、総じて低調に推移している。
 公共機関からの建設工事受注額は、前年同月比で3月14.8%減、4月6.1%減と4か月連続で減少が続いている。また、公共工事請負金額(保証事業会社協会「公共工事前払金保証統計」)をみると、4月前年同月比13.0%減、5月同16.4%減と前年を下回っており、国・地方の予算状況を踏まえると、今後も低調に推移するものと考えられる。
(5)  輸出は、横ばいとなっている。
 通関輸出(数量ベース、季節調整済前期比)は、月別で3月0.2%増の後、4月は1.3%減となっており、四半期別では、10−12月期2.0%増の後、1−3月期1.1%増となった。
 アジア向け輸出がこのところ減少していること、アメリカ向け輸出が横ばいとなっていること、EU向け輸出がこのところ減少していること等から、全体で横ばいとなっている。
 輸入は、横ばいとなっている。
 通関輸入(数量ベース、季節調整済前期比)は、月別で3月2.5%増の後、4月0.8%減となっており、四半期別では10−12月期0.7%増の後、1−3月期 0.7%増となった。
 アジアからの輸入が横ばいとなっていること、アメリカからの輸入が弱含んでいること、EUからの輸入が減少していること等から、全体として横ばいとなっている(第6図)。

(3)  国内企業物価は、弱含んでいる。消費者物価は、横ばいとなっている。
 5月の国内企業物価は、前月比0.3%下落(前年同月比1.0%下落)となり、輸出物価は同0.8%下落(同3.1%下落)、輸入物価は同3.0%下落(同2.5%下落)となった。
 4月の消費者物価は、総合が前年同月比0.1%下落(前月比0.3%上昇)、生鮮食品を除く総合が同0.4%下落(同0.3%上昇)となった(第7図)。

(4)  企業収益は、改善が続いているが、そのテンポは緩やかになっている。また、企業の業況判断は、緩やかながら、引き続き改善がみられる。倒産件数は、緩やかに減少している。
 財務省「法人企業統計季報」によると、全産業の経常利益は、季節調整値で10〜12月4.2%増の後、1〜3月3.1%減(製造業9.6%減、非製造業1.7%増)と減少に転じており、改善のテンポは緩やかになっている(第8表)。
 なお、前出の「企業短期経済観測調査」によれば、企業の15年度上期の経常利益計画(前年同期比)は、製造業17.9%の増益、非製造業8.4%の増益と大幅な増益が見込まれている。
 企業の業況判断D.I.(「良い」−「悪い」)をみると、中小企業製造業を中心に緩やかながら引き続き改善がみられる一方、大企業製造業では改善に足踏みがみられる。また、内閣府「法人企業動向調査」によると、企業の業界景気の判断(前期比「上昇」−「下降」)をみると、全産業で前期から横ばいの−24%ポイントとなった(第9表)。
 倒産件数(東京商工リサーチ調べ)は、5月1,452件(前年同月比16.0%減)となっている。セーフティーネット保証の適用件数が増えていること等を背景に、緩やかに減少している。

(5)  平成15年1〜3月期の実質国内総生産(GDP)成長率は、季節調整済前期比0.1%(年率0.6%)となった。内外需別にみると、国内需要の寄与度は0.2%、財貨・サービスの純輸出の寄与度は-0.1%となった。また、名目GDPの成長率は季節調整済前期比0.4%減となった(第10図)。

3 雇用・失業

(1)
(1)  就業者数は、4月は3か月ぶりに前月比で減少した。就業者数(季節調整値)は、3月前月差30万人増の後、4月は同27万人減と減少し、6309万人(原数値は6306万人、前年同月差27万人減)となった。男女別には、4月は、男性が3724万人(前月差3万人増)、女性が2585万人(同31万人減)となった。
 雇用者数は、4月は2か月ぶりに前月比で減少した。雇用者(季節調整値)は、3月前月差32万人増の後、4月は同5万人減と減少し、5342万人(原数値は5312万人、前年同月差6万人減)となった。男女別には、男性が3176万人(前月差21万人増)、女性が2166万人(同27万人減)となった。雇用形態別(原数値)には、4月は、常雇が4602万人(前年同月差33万人減)、臨時雇が592万人(同20万人増)、日雇が118万人(同7万人増)となっている(第11表)。
 「毎月勤労統計調査」(確報)により、4月の常用雇用指数(事業所規模5人以上、季節調整済指数)をみると、前月比0.4%減となった。また、一般、パート別にみると、一般労働者は前月比0.5%減、パートタイム労働者は同0.5%増となった。
(2)  4月の完全失業率(季節調整値)は前月と同水準の5.4%となった。男女別には、男性が5.6%(前月差0.1%ポイント低下)、女性が5.1%(同0.3%ポイント上昇)となった。
 4月の完全失業者数(季節調整値)は、前月差3万人増の362万人(原数値は385万人、前年同月差10万人増)となり、引き続き高水準で推移している。男女別には、男性が222万人(前月差3万人減)、女性が140万人(同7万人増)となった。
 求職理由別(原数値)にみると、4月は、非自発的理由による離職者は153万人(前年同月差8万人減)、自発的理由による離職者は122万人(同18万人増)、その他の理由による失業者は76万人(同3万人減)となった(第11表)。また、失業期間1年以上の完全失業者は、1〜3月は112万人(前年同期差9万人増)となった。
(3)  4月の労働力人口(季節調整値)は、前月差24万人減の6674万人(原数値は6691万人、前年同月差17万人減)となった。非労働力人口(季節調整値)は、前月差28万人増の4274万人(原数値は4245万人、前年同月差55万人増)となった。男女別には、男性が1354万人(前月差2万人増)、女性が2919万人(同27万人増)となった。
 労働力率(原数値)は、4月は、61.1%(前年同月差0.4%ポイント低下)となった。男女別には、男性が74.5%(同0.5%ポイント低下)、女性が48.6%(同0.1%ポイント低下)となった(第11表)。

(2)  有効求人(季節調整値)は、4月は前月比0.3%増と2か月ぶりに増加し、有効求職者数(季節調整値)は同0.5%減と3か月ぶりに減少した。有効求人倍率(季節調整値)は、おおむね横ばいとなっており、4月は0.60倍と前月と同水準となった。
 新規求人(季節調整値)は、昨年前半から増加傾向にあったが、このところ、横ばいとなっている。新規求人(季節調整値)は3月前月比0.9%減の後、4月は同0.8%増と3か月ぶりに増加した。新規求職者数(季節調整値)は3月前月比7.7%減の後、4月は3.9%増と2か月ぶりに増加した。新規求人倍率(季節調整値)は、4月は1.03倍と前月より0.03ポイント低下した第12表)。
 新規求人(季節調整値)を一般(除パート)、パートの別でみると、4月は、一般は前月比2.2%増と3か月ぶりに増加し、パートは同1.6%減と3か月ぶりに減少した。新規求職(季節調整値)は、一般は前月比3.4%増と2か月ぶりに増加し、パートは同0.7%減と2か月連続で減少した。
 常用新規求職者数(除パート、原数値)のうち事業主都合離職者は、4月は前年同月比15.6%減と7か月連続で減少した。

(3)  産業別にみると、4月の就業者数(原数値)は、建設業は前年同月差33万人減、製造業は同59万人減、卸売・小売業は同27万人減、飲食店,宿泊業は4万人減と減少したのに対し、運輸業は同25万人増、医療,福祉は同33万人増、サービス業は同20万人増と増加している。
 4月の新規求人(原数値)は、建設業は前年同月比1.0%減と減少したのに対し、製造業が同8.1%増、運輸・通信業は同14.6%増、卸売・小売業,飲食店は同2.1%増、サービス業は同15.5%増と増加している。

(4)  雇用の先行指標と考えられる製造業の所定外労働時間(季節調整値)は、横ばいとなっている。所定外労働時間(事業所規模5人以上、季節調整済指数)は、製造業では、3月(確報値)前月比0.3%増の後、4月(確報値)前月同水準となり、調査産業計では、3月前月比0.3%減の後、4月同1.3%減となった。
 日本銀行「全国企業短期経済観測調査」(3月調査)によると、雇用人員判断DI (「過剰」-「不足」)は、若干低下したものの、依然として高い水準にある第13図)。
 厚生労働省「労働経済動向調査」によると、1〜3月期に雇用調整を実施した事業所割合は22%、4〜6月期に実施予定の事業所割合は23%、2003年7〜9月期に実施予定の事業所割合は19%と引き続き低下が見込まれている(第14図)。
 内閣府「景気ウォッチャー調査」による5月の2〜3か月先の景気の先行き判断DI・雇用関連は46.0で前月を1.9ポイント上回り、2か月連続で上昇した。

4 賃金・労働時間

(1)  4月の現金給与総額(産業計、確報、以下同じ)は285,476円で、前年同月比 0.6%減となった。就業形態別にみると、一般労働者は前年同月比0.2%減、パートタイム労働者は0.9%増となった。
 内訳をみると、所定内給与は前年同月比0.6%減(一般労働者同0.2%減、パートタイム労働者同0.8%増)となったほか、所定外給与は同2.8%増、特別給与は同14.7%減となり、実質賃金は同0.6%減となった(第15図)。

(2)  4月の総実労働時間(産業計、確報、以下同じ)は156.4時間で、前年同月比 0.4%減となった。就業形態別にみると、一般労働者は前年同月比0.3%減、パートタイム労働者は0.5%増となった。
 内訳をみると、所定内労働時間は146.2時間で前年同月比0.7%減(一般労働者同0.7%減、パートタイム労働者は0.5%増)、所定外労働時間は10.2時間で同4.0%増となった。なお、月間出勤日数は20.3日で前年同月差は0.1日減となった。
 4月の製造業の所定外労働時間(確報)は14.9時間で、前年同月比10.4%増となった。規模別にみると、500人以上規模で前年同月比8.6%増、100〜499人規模で10.8%増、30〜99人規模で同10.7%増、5〜29人規模で同12.6%増となった(第16図)。

(注)  日本標準産業分類の改訂に伴い、総務省統計局「労働力調査」に係る表記は、平成15年1月結果の公表以降、新産業分類で表記し、平成14年以前の対前年同月増減については、改訂による影響のない又は小さい産業について表章している。
 なお、6月月例労働経済報告に掲載されている資料出所において「労働力調査」以外の資料出所においては、旧産業分類に基づいて表記されている。


6月の主要変更点

月例労働経済報告参考表
データ取得エクセルでダウンロードできます。(参考表)

データ取得エクセルでダウンロードできます。(図表)



問合わせ先
政策統括官付 労働政策担当参事官室 分析第二係
電話 03(5253)1111  内線7728


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