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5月月例労働経済報告


1 概況

(1)  一般経済の概況
 景気は、おおむね横ばいとなっているが、引き続き不透明感がみられる。
      企業収益は改善しており、設備投資は持ち直している。
雇用情勢は、失業率が高水準で推移するなど、依然として厳しい。
個人消費は、おおむね横ばいで推移している。
輸出は緩やかに増加している一方、生産は弱含んでいる。

 先行きについては、アメリカ経済等の回復が持続すれば、景気は持ち直しに向かうことが期待される。一方、アメリカ経済の先行き、株価の動向、重症急性呼吸器症候群(SARS)の影響等を巡る不透明感により、我が国の最終需要が引き続き下押しされる懸念が存在している。

(2)  労働経済の概況
 労働経済面をみると、完全失業率が高水準で推移するなど(第1図)、依然として厳しい。
      就業者数及び雇用者数は、横ばいで推移している。
完全失業率は5.4%と前月より0.2%ポイント上昇した。
有効求人倍率は、おおむね横ばいで推移している。
新規求人数は、昨年前半から増加傾向にあったが、年明け以降、そのテンポが緩やかになっている。
所定外労働時間は、緩やかな増加傾向が続いている。

2 一般経済

(1)  鉱工業生産・出荷・在庫の動きをみると、生産は、弱含んでいる。
 3月の鉱工業生産(季節調整済前月比、確報、以下同じ)は、0.1%増と2か月ぶりに増加となった。輸出の増加が緩やかなものにとどまっており、また最終需要の先行きが不透明であることなどを背景に企業が在庫積み増しに慎重であることなどから、基調として弱含んでいる(第2図)。
 業種別にみると、一般機械工業、化学工業、情報通信機械工業等が上昇した。出荷は2.4%減と2か月連続で減少し、在庫は0.5%減と2か月連続で減少した。
 今後の動向については、製造工業生産予測調査によると、製造工業生産は4月 0.9%減の後、5月は2.1%増となっている。

(2)  最終需要の動向をみると、
(1)  個人消費は、おおむね横ばいで推移している。
 全世帯の実質消費支出(速報)は2月季節調整済前月比2.4%減の後、3月は同0.4%増となり、勤労者世帯では2月同1.1%減の後、3月は同0.6%増となった(前年同月比2.3%減)。勤労者世帯の消費支出を財(商品)・サービス別にみると、3月の財(商品)は実質で前年同月比2.6%減、サービスは同1.3%増となった。勤労者世帯の平均消費性向は2月季節調整値72.6%の後、3月同74.3%となった(第3図)。
 3月の小売業販売額(確報)は季節調整済前月比1.2%減、大型小売店販売額(確報)は同1.8%減となった。
 乗用車(軽を含む)の新車登録台数(速報)は、3月前年同月比10.2%増の後、4月同7.0%減となった。
 内閣府「消費動向調査」の消費者態度指数(季節調整値)は3月36.1と前期に比べ2.0ポイント低下した。
(2)  設備投資は、持ち直している。
 財務省「法人企業統計季報」によると、全産業の設備投資は、季節調整値で平成14年7〜9月期前期比1.0%減の後、10〜12月期同3.9%増(うち製造業同2.9%増、非製造業同4.4%増)と増加に転じるなど、設備投資は持ち直している。また、内閣府「法人企業動向調査」(資本金1億円以上、3月調査)をみても、全産業の設備投資額は、季調済前期比で14年10〜12月期(実績)は、3.4%増となっているが、15年1〜3月期(実績見込み)は1.1%減(うち製造業2.4%減、非製造業3.4%減)と若干の減少が見込まれている(第4表)。
 今後の動向については、日本銀行「企業短期経済観測調査」(3月調査)をみると、全規模の15年度の設備投資計画(前年比)は全産業で3.1%減と減少が見込まれているものの製造業は0.2%増と3年ぶりに前年比増加に転じる計画となっている。また、機械受注(船舶・電力を除く民需)は、季節調整済前月比で3月は3.8%増と2か月ぶりの増加となり、基調としては持ち直しの動きが続いている。また、建設工事受注額(主要建設会社50社民間発注分、非住宅)は、3月は季節調整済前月比で4.0%増と2か月ぶりに増加している。しかしながら、最終需要の先行きが依然不透明なこともあり、設備投資の持ち直しの動きは当面緩慢なものにとどまると見込まれる。
(3)  住宅建設は、おおむね横ばいとなっている。
 新設住宅着工戸数をみると、2月は3.5%減の後、3月は4.8%減の9.1万戸(年率110万戸)と2か月連続で減少となった(第5図)。持家は減少幅を縮小し、分譲住宅はおおむね横ばいで推移する中、これまで減少していた貸家の着工が増加したことから、おおむね横ばいの動きとなっている。
 先行きについては、雇用・所得環境が厳しいことなどから、消費者の住宅取得マインドが低下しており、住宅着工の下押し要因になるものと見込まれる。
(4)  公共投資は、総じて低調に推移している。
 公共機関からの建設工事受注額は、前年同月比で2月18.4%減、3月14.8%減と3か月連続で減少が続いている。また、公共工事請負金額(保証事業会社協会「公共工事前払金保証統計」)をみると、3月前年同月比15.6%減、4月同13.0%減と前年を下回っており、国・地方の予算状況を踏まえると、今後も低調に推移するものと考えられる。
(5)  輸出は、緩やかに増加している。
 通関輸出(数量ベース、季節調整済前期比)は、月別で2月2.0%増の後、3月は0.2%増となっており、四半期別では、10−12月期2.0%増の後、1−3月期1.1%増となった。
 アジア向け輸出が、中国向けを中心に春節の影響等から足元減少しているものの、アメリカ向け自動車輸出の減少が下げ止まりつつあることのほか、EU向け輸出が緩やかに増加していること等から、全体では増加している。
 輸入は、緩やかに増加している。
 通関輸入(数量ベース、季節調整済前期比)は、月別で2月3.1%減の後、3月2.5%増となっており、四半期別では10−12月期0.7%増の後、1−3月期0.7%増となった。
 輸入は、生産が弱含んでいるものの、鉱物性燃料が引き続き増加していることのほか、中国からの輸入が趨勢的に増加していること等から、緩やかに増加している(第6図)。

(3)  国内企業物価、消費者物価は、ともに横ばいとなっている。
 4月の国内企業物価は、前月比0.2%下落(前年同月比0.8%下落)となり、輸出物価は同1.0%下落(同4.8%下落)、輸入物価は同0.7%下落(同1.1%下落)となった。
 3月の消費者物価は、総合が前年同月比0.1%下落(前月比0.3%上昇)、生鮮食品を除く総合が同0.6%下落(同0.3%上昇)となった(第7図)。

(4)  企業収益は、改善している。また、企業の業況判断は、緩やかながら、引き続き改善がみられる。倒産件数は、おおむね横ばいで推移している。
 財務省「法人企業統計季報」によると、全産業の経常利益は、季節調整値で7〜9月5.6%増の後、10〜12月4.7%増(製造業17.2%増、非製造業3.1%減)と増加が続くなど、企業収益は改善している。
 なお、前出の「企業短期経済観測調査」によれば、企業の15年度上期の経常利益計画(前年同期比)は、製造業17.9%の増益、非製造業8.4%の増益と大幅な増益が見込まれている(第8表)。
 企業の業況判断D.I.(「良い」−「悪い」)をみると、中小企業製造業を中心に緩やかながら引き続き改善がみられる一方、大企業製造業では改善に足踏みがみられる。また、内閣府「法人企業動向調査」によると、企業の業界景気の判断(前期比「上昇」−「下降」)をみると、全産業で前期から横ばいの−24%ポイントとなった(第9表)。
 倒産件数(東京商工リサーチ調べ)は、4月1,495件(前年同期比7.2%減)となっている。セーフティーネット保証の適用件数が増えていること等を背景に、おおむね横ばいで推移している。

(5)  平成15年1〜3月期の実質国内総生産(GDP)成長率は、季節調整済前期比0.0%(年率0.0%)となった。内外需別にみると、国内需要の寄与度は0.2%、財貨・サービスの純輸出の寄与度は-0.2%となった。また、名目GDPの成長率は季節調整済前期比0.6%減となった(第10図)。

3 雇用・失業

(1)
(1)  就業者数は、3月は2か月連続で前月比で増加した。就業者数(季節調整値)は、2月前月差10万人増の後、3月は同30万人増と増加し、6336万人(原数値は6266万人、前年同月差31万人減)となった。男女別には、3月は、男性が3721万人(前月同水準)、女性が2616万人(同32万人増)となった。
 雇用者数は、3月は3か月ぶりに前月比で増加した。雇用者(季節調整値)は、2月前月差1万人減の後、3月は同32万人増と増加し、5347万人(原数値は5296万人、前年同月差4万人増)となった。男女別には、男性が3155万人(前月同水準)、女性が2193万人(同34万人増)となった。雇用形態別(原数値)には、3月は、常雇が4583万人(前年同月差11万人減)、臨時雇が594万人(同3万人増)、日雇が119万人(同12万人増)となっている(第11表)。
 「毎月勤労統計調査」(確報)により、3月の常用雇用指数(事業所規模5人以上、季節調整済指数)をみると、前月同水準となった。また、一般、パート別にみると、一般労働者は前月比0.1%減、パートタイム労働者は同0.6%増となった。
(2)  3月の完全失業率(季節調整値)は前月より0.2%ポイント上昇し5.4%となった。男女別には、男性が5.7%(前月差0.2%ポイント上昇)、女性が4.8%(同0.1%ポイント低下)となった。
 3月の完全失業者数(季節調整値)は、前月差10万人増の359万人(原数値は384万人、前年同月差5万人増)となり、引き続き高水準で推移している。男女別には、男性が225万人(前月差10万人増)、女性が133万人(同1万人減)となった。
 求職理由別(原数値)にみると、3月は、非自発的理由による離職者は151万人(前年同月差2万人減)、自発的理由による離職者は126万人(同12万人増)、その他の理由による失業者は73万人(同5万人減)となった(第11表)。
(3)  3月の労働力人口(季節調整値)は、前月差42万人増の6698万人(原数値は6649万人、前年同月差27万人減)となった。非労働力人口(季節調整値)は、前月差26万人減の4246万人(原数値は4292万人、前年同月差62万人増)となった。男女別には、男性が1352万人(前月差1万人減)、女性が2892万人(同26万人減)となった。
 労働力率(原数値)は、3月は、60.7%(前年同月差0.5%ポイント低下)となった。男女別には、男性が74.1%(同0.8%ポイント低下)、女性が48.1%(同0.2%ポイント低下)となった(第11表)。

(2)  有効求人(季節調整値)は、3月は前月比0.7%減と7か月ぶりに減少し、有効求職者数(季節調整値)は同0.6%増と2か月連続で増加した。有効求人倍率(季節調整値)は、おおむね横ばいとなっており、3月は0.60倍と前月を0.01ポイント下回った。
 新規求人(季節調整値)は、昨年前半から増加傾向にあったが、年明け以降、そのテンポが緩やかになっている。新規求人(季節調整値)は2月前月比1.1%減の後、3月は同0.9%減と2か月連続で減少した。新規求職者数(季節調整値)は2月前月比2.6%増の後、3月は7.7%減と3か月ぶりに減少した。新規求人倍率(季節調整値)は、3月は1.06倍と前月より0.07ポイント上昇した第12表)。
 新規求人(季節調整値)を一般(除パート)、パートの別でみると、3月は、一般は前月比1.7%減と2か月連続で減少し、パートは同0.9%増と2か月連続で増加した。新規求職(季節調整値)は、一般は前月比7.5%減と3か月ぶりに減少し、パートは同2.8%減と2か月ぶりに減少した
 常用新規求職者数(除パート、原数値)のうち事業主都合離職者は、3月は前年同月比11.5%減と6か月連続で減少した。

(3)  産業別にみると、3月の就業者数(原数値)は、建設業は前年同月差23万人減、製造業は同65万人減、飲食店,宿泊業は4万人減と減少したのに対し、運輸業は同35万人増、卸売・小売業は同4万人増、医療,福祉は同32万人増、サービス業は同9万人増となっている。
 3月の新規求人(原数値)は、建設業は前年同月比5.0%減と減少したのに対し、製造業が同11.9%増、運輸・通信業は同14.2%増、卸売・小売業,飲食店は同5.3%増、サービス業は同15.4%増となっている。

(4)  雇用の先行指標と考えられる製造業の所定外労働時間(季節調整値)については、緩やかな増加傾向が続いている。所定外労働時間(事業所規模5人以上、季節調整済指数)は、製造業では、2月(確報値)前月比1.8%減の後、3月(確報値)同0.3%増となり、調査産業計では、2月前月比0.6%減の後、3月同0.3%減となった。
 日本銀行「全国企業短期経済観測調査」(3月調査)によると、雇用人員判断DI (「過剰」-「不足」)は、若干低下したものの、依然として高い水準にある第13図)。
 厚生労働省「労働経済動向調査」によると、2002年10〜12月期に雇用調整を実施した事業所割合は23%、2003年1〜3月期に実施予定の事業所割合は24%、2003年4〜6月期に実施予定の事業所割合は22%となっている(第14図)。
 内閣府「景気ウォッチャー調査」による4月の2〜3か月先の景気の先行き判断DI・雇用関連は44.1で前月を3.1ポイント上回り、2か月ぶりに上昇した。

4 賃金・労働時間

(1)  3月の現金給与総額(産業計、確報、以下同じ)は298,682円で、前年同月比 1.1%減となった。就業形態別にみると、一般労働者は前年同月比0.7%減、パートタイム労働者は同1.0%増となった。
 内訳をみると、所定内給与は前年同月比0.3%減(一般労働者同0.2%増、パートタイム労働者同0.8%増)となったほか、所定外給与は同4.7%増、特別給与は同14.8%減となり、実質賃金は同0.8%減となった(第15図)。

(2)  3月の総実労働時間(産業計、確報、以下同じ)は150.7時間で、前年同月比 0.2%増となった。就業形態別にみると、一般労働者は前年同月比0.3%増、パートタイム労働者は同1.0%増となった。
 内訳をみると、所定内労働時間は140.3時間で前年同月比0.2%減(一般労働者同0.1%減、パートタイム労働者は0.8%増)、所定外労働時間は10.4時間で同6.2%増となった。なお、月間出勤日数は19.5日で前年同月差は横ばいとなった。
 3月の製造業の所定外労働時間(確報)は15.1時間で、前年同月比14.4%増となった。規模別にみると、500人以上規模で前年同月比12.4%増、100〜499人規模で15.3%増、30〜99人規模で同16.3%増、5〜29人規模で同16.0%増となった(第16図)。

(注)  日本標準産業分類の改訂に伴い、総務省統計局「労働力調査」に係る表記は、平成15年1月結果の公表以降、新産業分類で表記し、平成14年以前の対前年同月増減については、改訂による影響のない又は小さい産業について表章している。
 なお、3月月例労働経済報告に掲載されている資料出所において「労働力調査」以外の資料出所においては、旧産業分類に基づいて表記されている。


5月の主要変更点

月例労働経済報告参考表
データ取得エクセルでダウンロードできます。(参考表)

データ取得エクセルでダウンロードできます。(図表)



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