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4月月例労働経済報告


1 概況

(1)  一般経済の概況
 景気は、おおむね横ばいとなっているが、引き続き不透明感がみられる。
      企業収益は改善しており、設備投資は持ち直している。
雇用情勢は、求人が増加傾向にあるものの、失業率が高水準で推移するなど、依然として厳しい。
個人消費は、おおむね横ばいで推移している。
輸出は緩やかに増加している一方、生産は弱含んでいる。

 先行きについては、アメリカ経済等の回復が持続すれば、景気は持ち直しに向かうことが期待される。一方、イラク問題の動向やアメリカ経済の先行き等を巡る不透明感により、我が国の最終需要が引き続き下押しされる懸念が存在している。

(2)  労働経済の概況
 労働経済面をみると、雇用情勢は、依然として厳しい。求人が増加傾向にあるものの、完全失業率が高水準で推移し(第1図)、賃金も弱い動きが続いている。
      就業者数及び雇用者数は、弱含んでいる。
完全失業率は5.2%と前月より0.3%ポイント低下した。
有効求人倍率は、引き続き緩やかに上昇している。
新規求人数は、引き続き増加傾向にある。
所定外労働時間は、緩やかな増加傾向が続いている。

2 一般経済

(1)  鉱工業生産・出荷・在庫の動きをみると、生産は、弱含んでいる。
 2月の鉱工業生産(季節調整済前月比、速報、以下同じ)は、1.7%減と2か月ぶりの減少となった。輸出の増加が緩やかなものにとどまっており、また最終需要の先行きが不透明であることなどを背景に企業が在庫積み増しに慎重であることなどから、基調として弱含んでいる(第2図)。
  業種別にみると輸送機械、電気機械、一般機械等が低下した。出荷は0.8%減と2か月ぶりに減少し、在庫は2.3%減と3か月ぶりに減少した。
 今後の動向については、製造工業生産予測調査によると、製造工業生産は3月 2.8%増の後、4月は同0.2%増となっている。

(2)  最終需要の動向をみると、
(1)  個人消費は、おおむね横ばいで推移している。
 全世帯の実質消費支出(速報)は1月季節調整済前月比2.8%増の後、2月は同2.4%減となり、勤労者世帯では1月同3.6%増の後、2月は同1.1%減となった(前年同月比1.6%減)。勤労者世帯の消費支出を財(商品)・サービス別にみると、2月の財(商品)は実質で前年同月比0.6%減、サービスは同0.6%減となった。勤労者世帯の平均消費性向は1月季節調整値72.3%の後、2月同72.6%となった(第3図)。
 2月の小売業販売額(速報)は季節調整済前月比1.9%増、大型小売店販売額(速報)は同0.5%増となった。
 乗用車(軽を含む)の新車登録台数(速報)は、2月前年同月比5.1%増の後、3月同10.2%増となった。
(2)  設備投資は、持ち直している。
 財務省「法人企業統計季報」によると、全産業の設備投資は、季節調整値で平成14年7〜9月期前期比1.0%減の後、10〜12月期同3.9%(うち製造業同2.9%増、非製造業同4.4%増)と増加に転じるなど、設備投資は持ち直している。
 今後の動向については、日本銀行「企業短期経済観測調査」(3月調査)をみると、全規模の15年度の設備投資計画(前年比)は全産業で3.1%減と減少が見込まれているものの製造業は0.2%増と3年ぶりに前年比増加に転じる計画となっている(第4表)。また、機械受注(船舶・電力を除く民需)は、季節調整済前月比で2月は9.6%減と3か月ぶりの減少となったが、1月7.0%増の反動もあり、基調としては持ち直しの動きが続いており、先行きについて明るい動きもみられている。しかしながら、建設工事受注額(主要建設会社50社民間発注分、非住宅)は、2月は季節調整済前月比で6.8%減と3か月ぶりに減少している。最終需要の先行きが依然不透明なこともあり、設備投資の持ち直しの動きは当面緩慢なものにとどまると見込まれる。
(3)  住宅建設は、おおむね横ばいとなっている。
 新設住宅着工戸数をみると、1月6.8%増の後、2月は3.5%減の9.6万戸(年率115万戸)と3か月ぶりの減少となった(第5図)。2月は減少しているものの1月の反動減もあり、また貸家の着工に下げ止まりがみられることなどから、おおむね横ばいの動きとなっている。
 先行きについては、雇用・所得環境が厳しいことなどから、消費者の住宅取得マインドが低下しており、住宅着工の下押し要因になるものと見込まれる。
(4)  公共投資は、総じて低調に推移している。
 公共機関からの建設工事受注額は、前年同月比で1月17.5%減、2月18.4%減と2か月連続で減少が続いている。また、公共工事請負金額(保証事業会社協会「公共工事前払金保証統計」)をみると、1月前年同月比5.5%減、2月同12.1%減と前年を下回っており、国・地方の予算状況を踏まえると、今後も低調に推移するものと考えられる。
(5)  輸出は、緩やかに増加している。
 通関輸出(数量ベース、季節調整済前期比)は、月別で1月0.2%増の後、2月は2.0%増となっており、四半期別では、7−9月期0.6%増の後、10−12月期2.0%増となった。
 アメリカ向け輸出が、自動車の輸出が減少していることなどから足元減少しているものの、中国向けを中心に機械機器や化学製品等の輸出が増加しており、全体では増加している。
 輸入は、緩やかに増加している。
 通関輸入(数量ベース、季節調整済前期比)は、月別で1月1.4%増の後、2月3.1%減となっており、四半期別では7−9月期3.4%増の後、10−12月期0.7%増となった。 輸入は、鉱物性燃料が引き続き増加していること等から、緩やかに増加している(第6図)。

(3)  国内企業物価、消費者物価は、これまでの原油価格上昇の影響等により、ともに横ばいとなっている。
 3月の国内企業物価は、前月比0.1%上昇(前年同月比0.7%下落)となり、輸出物価は同0.4%下落(同6.1%下落)、輸入物価は同0.4%上昇(同1.8%上昇)となった。
 2月の消費者物価は、総合が前年同月比0.2%下落(前月比0.3%下落)、生鮮食品を除く総合が同0.7%下落(同0.1%下落)となった(第7図)。

(4)  企業収益は、改善している。また、企業の業況判断は、緩やかながら、引き続き改善がみられる。倒産件数は、おおむね横ばいで推移している。
 財務省「法人企業統計季報」によると、全産業の経常利益は、季節調整値で7〜9月5.6%増の後、10〜12月4.7%増(製造業17.2%増、非製造業3.1%減)と増加が続くなど、企業収益は改善している。
 なお、前出の「企業短期経済観測調査」によれば、企業の15年度上期の経常利益計画(前年同期比)は、製造業17.9%の増益、非製造業8.4%の増益と大幅な増益が見込まれている(第8表)。
 企業の業況判断D.I.(「良い」−「悪い」)をみると、中小企業製造業を中心に緩やかながら引き続き改善がみられる一方、大企業製造業では改善に足踏みがみられる(第9表)。
 倒産件数(東京商工リサーチ調べ)は、2月1,454件(前年同期比13.1%減)となっている。ここ4か月、1,400件台で推移しているなど、おおむね横ばいの動きとなっている。

(5)  平成14年10〜12月期の実質国内総生産(GDP)成長率は、季節調整済前期比0.5%増(年率2.2%増)となった。内外需別にみると、国内需要の寄与度は0.2%、財貨・サービスの純輸出の寄与度は0.3%となった。また、名目GDPの成長率は季節調整済前期比0.1%減となった。なお、平成14年の実質GDP成長率は、0.3%増となった(第10図)。

3 雇用・失業

(1)
(1)  就業者数は、2月は2か月ぶりに前月比で増加したものの、弱含んでいる。就業者数(季節調整値)は、1月前月差9万人減の後、2月は前月差10万人増と増加し、6306万人(原数値は6193万人、前年同月差55万人減)となった。男女別には、2月は、男性が3721万人(前月差5万人増)、女性が2584万人(同3万人増)となった。
 雇用者数は、2月は2か月連続で前月比で減少し、弱含んでいる。雇用者(季節調整値)は、1月前月差8万人減の後、2月は前月差1万人減と減少し、5315万人(原数値は5262万人、前年同月差10万人減)となった。男女別には、男性が3155万人(前月差4万人減)、女性が2159万人(同2万人増)となった。雇用形態別(原数値)には、1月は、常雇が4543万人(前年同月差33万人減)、臨時雇が608万人(同28万人増)、日雇が111万人(同4万人減)となっている(第11表)。
 「毎月勤労統計調査」(速報)により、2月の常用雇用指数(事業所規模5人以上、季節調整済指数)をみると、前月比0.2%減となった。また、一般、パート別にみると、一般労働者は前月比0.3%増、パートタイム労働者は同1.6%減となった。
(2)  2月の完全失業率(季節調整値)は前月より0.3%ポイント低下し5.2%となった。男女別には、男性が5.5%(前月差0.1%ポイント低下)、女性が4.9%(同0.6%ポイント低下)となった。
 2月の完全失業者数(季節調整値)は、前月差19万人減の349万人(原数値は349万人、前年同月差7万人減)となり、引き続き高水準で推移している。男女別には、男性が215万人(前月差4万人減)、女性が134万人(同16万人減)となった。
 求職理由別(原数値)にみると、2月は、非自発的理由による離職者は153万人(前年同月差4万人増)、自発的理由による離職者は105万人(同8万人減)、その他の理由による失業者は74万人(同1万人減)となった(第11表)。
(3)  2月の労働力人口(季節調整値)は、前月差8万人減の6656万人(原数値は6542万人、前年同月差62万人減)となった。非労働力人口(季節調整値)は、前月差13万人増の4272万人(原数値は4383万人、前年同月差86万人増)となった。男女別には、男性が1353万人(前月差1万人増)、女性が2918万人(同10万人増)となった。
 労働力率(原数値)は、2月は、59.8%(前年同月差0.7%ポイント低下)となった。男女別には、男性が73.4%(同0.8%ポイント低下)、女性が47.1%(同0.6%ポイント低下)となった(第11表)。

(2)  有効求人(季節調整値)は、2月は前月比0.7%増と6か月連続で増加し、有効求職者数(季節調整値)は同0.4%増と7か月ぶりに増加した。有効求人倍率(季節調整値)は、引き続き緩やかに上昇しており、2月は0.61倍と前月を0.01ポイント上回った。
 新規求人(季節調整値)は、引き続き増加傾向にある。新規求人(季節調整値)は1月前月比1.2%増の後、2月は同1.1%減と3か月ぶりに減少した。新規求職者数(季節調整値)は1月前月比0.5%増の後、2月は2.6%増と2か月連続で増加した。新規求人倍率(季節調整値)は、2月は0.99倍と前月より0.03ポイント低下した第12表)。
 新規求人(季節調整値)を一般(除パート)、パートの別でみると、2月は、一般は前月比2.0%減と3か月ぶりに減少し、パートは同0.6%増と2か月ぶりに増加した。新規求職(季節調整値)は、一般は前月比2.3%増と2か月連続で増加し、パートは同3.6%増と2か月ぶりに増加した
 常用新規求職者数(除パート、原数値)のうち事業主都合離職者は、1月は前年同月比15.9%減と5か月連続で減少した。

(3)  産業別にみると、2月の就業者数(原数値)は、製造業は前年同月差14万人減、卸売・小売業は同11万人減、飲食店,宿泊業は16万人減、サービス業は同32万人減と減少したのに対し、建設業は同13万人増、運輸業は同20万人増、医療,福祉は同17万人増となっている。
 2月の新規求人(原数値)は、建設業は前年同月比1.2%減と減少したのに対し、製造業が同16.8%増、運輸・通信業は同17.2%増、卸売・小売業,飲食店は同6.4%増、サービス業は同13.4%増となっている。

(4)  雇用の先行指標と考えられる製造業の所定外労働時間(季節調整値)は、緩やかな増加傾向が続いている。所定外労働時間(事業所規模5人以上、季節調整済指数)は、製造業では、1月(確報値)前月比1.9%増の後、2月(速報値)同1.1%減となり、調査産業計では、1月前月比2.4%増の後、2月同0.6%減となった。
 日本銀行「全国企業短期経済観測調査」(3月調査)によると、雇用人員判断DI (「過剰」-「不足」)は、若干低下したものの、依然として高い水準にある
第13図)。
 厚生労働省「労働経済動向調査」によると、2002年10〜12月期に雇用調整を実施した事業所割合は23%、2003年1〜3月期に実施予定の事業所割合は24%、2003年4〜6月期に実施予定の事業所割合は22%と引き続き低下が見込まれている(第14図)。
 内閣府「景気ウォッチャー調査」による3月の2〜3か月先の景気の先行き判断DI・雇用関連は41.0で前月を2.0ポイント下回り、3か月ぶりに低下した。

4 賃金・労働時間

(1)  2月の現金給与総額(産業計、速報、以下同じ)は281,218円で、前年同月比0.1%増となった。就業形態別にみると、一般労働者は前年同月比0.5%増、パートタイム労働者は同0.1%減となった。
 内訳をみると、所定内給与は前年同月比0.2%減(一般労働者同0.1%増、パートタイム労働者同0.2%減)となったほか、所定外給与は同6.6%増、特別給与は同10.6%減となり、実質賃金は同0.5%増となった(第15図)。なお、平成14年冬季賞与は、前年比5.0%減(前年同3.7%減)となった。

(2)  2月の総実労働時間(産業計、速報、以下同じ)は150.9時間で、前年同月比0.1%減となった。就業形態別にみると、一般労働者は前年同月比0.2%増、パートタイム労働者は同0.2%増となった。
 内訳をみると、所定内労働時間は141.0時間で前年同月比0.6%減(一般労働者同0.5%減、パートタイム労働者同横ばい)、所定外労働時間は9.9時間で同6.5%増となった。なお、月間出勤日数は19.6日と前年同月差0.1日減となった。
 2月の製造業の所定外労働時間(速報)は14.8時間で、前年同月比16.5%増となった。規模別にみると、500人以上規模で前年同月比17.2%増、100〜499人規模で18.6%増、30〜99人規模で同20.2%増、5〜29人規模で同12.3%増となった(第16図)。

(注)  日本標準産業分類の改訂に伴い、総務省統計局「労働力調査」に係る表記は、平成15年1月結果の公表以降、新産業分類で表記し、平成14年以前の対前年同月増減については、改訂による影響のない又は小さい産業について表章している。
 なお、3月月例労働経済報告に掲載されている資料出所において「労働力調査」以外の資料出所においては、旧産業分類に基づいて表記されている。


4月の主要変更点

月例労働経済報告参考表
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