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1月月例労働経済報告


1 概況

(1) 一般経済の概況

 景気は、引き続き一部に持ち直しの動きがみられるものの、このところ弱含んでいる。

 先行きについては、アメリカ経済等の回復が持続すれば、景気は持ち直しに向かうことが期待される。一方、世界経済の先行き懸念や我が国の株価の低迷などにより、我が国の最終需要が引き続き下押しされる懸念が存在している。

(2) 労働経済の概況

 労働経済面をみると、雇用情勢は、依然として厳しい。求人が増加傾向にあるものの、完全失業率が高水準で推移し(第1図)、賃金も弱い動きが続いている。


2 一般経済

(1)  鉱工業生産・出荷・在庫の動きをみると、生産は、弱含んでいる。
 11月の鉱工業生産(季節調整済前月比、速報、以下同じ)は、1.6%減と3か月連続の減少となるなど、基調として弱含んでいる(第2図)。
 業種別にみると電気機械、輸送機械、その他工業等が減少した。出荷は0.8%減と2か月ぶりに減少し、在庫は2.4%減と3か月ぶりに減少した。
 今後の動向については、製造工業生産予測調査によると、製造工業生産は12月0.3%増の後、1月は同1.2%増となっている。

(2) 最終需要の動向をみると、

(1)  個人消費は、横ばいで推移している。
 全世帯の実質消費支出(速報)は10月季節調整済前月比2.3%減の後、11月は同2.2%減となり、勤労者世帯では10月同2.7%減の後、11月は同2.1%減となった(前年同月比3.4%減)。勤労者世帯の消費支出を財(商品)・サービス別にみると、11月の財(商品)は実質で前年同月比0.2%減、サービスは同4.3%減となった。勤労者世帯の平均消費性向は10月季節調整値72.7%の後、11月同71.9%となった(第3図)。
 11月の小売業販売額(速報)は季節調整済前月比2.2%増、大型小売店販売額(速報)は同6.8%増となった。
 乗用車(軽を含む)の新車登録台数(速報)は、11月前年同月比5.7%増の後、12月同0.3%増となった。

(2)  設備投資は、下げ止まりつつある。
 財務省「法人企業統計季報」によると、全産業の設備投資は、季節調整値で平成14年4〜6月期前期比2.5%減の後、7〜9月期同2.0%減(うち製造業同4.8%減、非製造業同0.8%減)と減少幅が縮小しており、下げ止まりつつある(第4表)。
 今後の動向については、先行指標である機械受注(船舶・電力を除く民需)が、平成14年前半に底入れしたものとみられることから、設備投資は次第に底入れに向かうものとみられる。しかしながら、機械受注の直近の動きをみると、10月に季節調整済前月比4.1%減の後、11月も同0.2%減と2か月連続で減少しており、日本銀行「企業短期経済観測調査」(12月調査)において、全規模の14年度の設備投資計画(前年比)は、製造業で10.4%減、非製造業3.2%減、全産業で5.1%減と減少が見込まれていることなどを考えると、設備投資は底入れした後も低調に推移することが見込まれる。
 建設工事受注額(主要建設会社50社民間発注分、非住宅)は、11月は季節調整済前月比で28.4%減と3か月連続で減少している。

(3)  住宅建設は、緩やかに減少している。
 新設住宅着工戸数をみると、10月は特殊要因(東京、大阪など都市部に分譲マンションの大型物件の着工があったこと)により季節調整済前月比6.8%増と大幅に増加したものの、11月は貸家、分譲住宅が減少し、同5.9%減の9万3千戸(年率112万戸)となり、8月、9月とほぼ同水準となった。(第5図
 先行きについては、雇用・所得環境が厳しいことなどから、消費者の住宅取得マインドが低下しており、引き続き減少が続くものと考えられる。

(4)  公共投資は、総じて低調に推移している。
 公共機関からの建設工事受注額は、前年同月比で10月11.4%減の後、11月は同1.0%増と増加している。また、公共工事請負金額(保証事業会社協会「公共工事前払金保証統計」)をみると、10月前年同月比6.4%減、11月同8.6%減と前年を下回っている。国・地方の予算状況を踏まえると、今後も低調に推移するものと考えられる。

(5)  輸出は、横ばいとなっている。
 通関輸出(数量ベース、季節調整済前期比)は、月別で10月5.0%増の後、11月は4.9%増となっており、四半期別では、4−6月期7.3%増の後、7−9月期1.5%減となった。
 輸出は、年来の在庫積み増しの動きに一服感が見られていることなどから弱含んでいたが、このところ通信機、科学光学機器などが増加しており、全体として横ばいとなっている。
 輸入は、伸びが鈍化している。
 通関輸入(数量ベース、季節調整済前期比)は、月別で10月2.0%減、11月0.4%減となっており、四半期別では4−6月期2.1%増の後、7−9月期5.4%増となった。
 輸入は、鉱物性燃料が引き続き増加しているが、生産が弱含んでいることを背景に、全体として伸びが鈍化している(第6図)。
(3)  国内卸売物価は、横ばいとなっている。消費者物価は、弱含んでいる。
 11月の国内卸売物価は、前月比0.1%上昇(前年同月比0.3%下落)となり、輸出物価は同1.5%下落(同横ばい)、輸入物価は同1.2%下落(同5.7%上昇)となった。
 11月の消費者物価は、総合が前年同月比0.4%下落(前月比横ばい)、生鮮食品を除く総合が同0.8%下落(同横ばい)となった(第7図)。

(4)  企業収益は、改善している。また、企業の業況判断は、緩やかながら、引き続き改善がみられる。倒産件数は、減少している。
 財務省「法人企業統計季報」によると、全産業の経常利益は、季節調整値で平成14年4〜6月5.5%増の後、7〜9月4.8%増(製造業14.2%増、非製造業0.3%減)と増加が続くなど、企業収益は改善している(第8表)。
 なお、前出の「企業短期経済観測調査」によれば、企業の14年度下期の経常利益計画(前年同期比)は、製造業42.9%の増益、非製造業3.9%の増益と大幅な増益が見込まれている。
 企業の業況判断D.I.(「良い」−「悪い」)をみると、製造業は全ての規模で「悪い」超幅は縮小した。一方、非製造業は規模別にみると、大企業で「悪い」超幅が拡大している。(第9表)。倒産件数(東京商工リサーチ調べ)は、11月1,435件(前年同期比20.8%減)となるなど減少している。

(5)  平成14年7〜9月期の実質国内総生産(GDP)成長率は、季節調整済前期比0.8%増(年率3.2%増)となった。内外需別にみると、国内需要の寄与度は1.0%、財貨・サービスの純輸出の寄与度は-0.2%となった。なお、平成13年度の実質GDP成長率は、-1.4%減となった(第10図)。


3 雇用・失業

(1)

(1)  就業者数は、11月は4か月連続で前月比で減少し、弱含んでいる。就業者数(季節調整値)は、10月前月差6万人減の後、11月は前月差6万人減と減少し、6313万人(原数値は6346万人、前年同月差84万人減)となった。男女別には、10月は、男性が3705万人(前月差16万人減)、女性が2607万人(同9万人増)となった。
 雇用者数は、11月は若干前月比で増加したものの、基調としては弱含んでいる。雇用者(季節調整値)は、10月前月差31万人減の後、11月は前月差13万人増と増加し、5314万人(原数値は5350万人、前年同月差22万人減)となった。男女別には、男性が3141万人(前月差1万人減)、女性が2173万人(同14万人増)となった。雇用形態別(原数値)には、11月は、常雇が4583万人(前年同月差83万人減)、臨時雇が642万人(同64万人増)、日雇が124万人(同4万人減)となっている(第11表)。
 「毎月勤労統計調査」(確報)により、11月の常用雇用指数(事業所規模5人以上、季節調整済指数)をみると、前月比0.1%減となった。また、一般、パート別にみると、一般労働者は前月比0.2%減、パートタイム労働者は同0.5%増となった。

(2)  11月の完全失業率(季節調整値)は前月より0.2%ポイント低下し5.3%となった。男女別には、男性が5.6%(前月差0.3%ポイント低下)、女性が4.9%(同0.2%ポイント低下)となった。
 11月の完全失業者数(季節調整値)は、前月差14万人減の356万人(原数値は338万人、前年同月差12万人減)となったものの、引き続き高水準で推移している。男女別には、男性が221万人(前月差11万人減)、女性が133万人(同6万人減)となった。
 求職理由別(原数値)にみると、11月は、非自発的理由による離職者は152万人(前年同月差29万人増)、自発的理由による離職者は107万人(同5万人減)、その他の理由による失業者は61万人(同27万人減)となった(第11表)。

(3)  11月の労働力人口(季節調整値)は、前月差21万人減の6666万人(原数値は6684万人、前年同月差96万人減)となった。非労働力人口(季節調整値)は、前月差9万人増の4262万人(原数値は4249万人、前年同月差117万人増)となった。男女別には、男性が1368万人(前月差18万人増)、女性が2895万人(同9万人減)となった。
 労働力率は、11月は、61.1%(前年同月差1.0%ポイント低下)となった。男女別には、男性が74.3%(同1.3%ポイント低下)、女性が48.7%(同0.7%ポイント低下)となった(第11表)。
(2)  有効求人(季節調整値)は、11月は前月比0.1%減と3か月ぶりに減少し、有効求職者数(季節調整値)は同1.2%減と2か月続けて減少した。有効求人倍率(季節調整値)は、引き続き緩やかに上昇しており、11月は0.57倍と前月を0.01ポイント上回った。
 新規求人(季節調整値)は、11月は減少したものの、基調としては増加傾向にある。新規求人(季節調整値)は10月前月比4.2%増の後、11月は同4.0%減と3か月ぶりに減少した。新規求職者数(季節調整値)は10月前月比1.5%減の後、11月は2.9%減と2か月連続で減少した。新規求人倍率(季節調整値)は、11月は0.97倍と前月より0.01ポイント減少した第12表)。
 新規求人(季節調整値)を一般(除パート)、パートの別でみると、11月は、一般は前月比4.8%減と3か月ぶりに減少し、パートも同2.8%減と3か月ぶりに減少した。新規求職(季節調整値)は、11月は一般は前月比2.9%減と2か月連続で減少、パートは同2.9%減と3か月ぶりに減少している。
 常用新規求職者数(除パート、原数値)のうち事業主都合離職者は、11月、前年同月比7.0%減と2か月連続で減少した。

(3)  産業別にみると、11月の就業者数(原数値)は、建設業は前年同月差6万人減、製造業は同55万人減、卸売・小売業,飲食店は同29万人減と減少したのに対し、運輸・通信業は同11万人増、サービス業は同12万人増となっている。
 11月の新規求人(原数値)は、建設業は前年同月比8.0%減と減少したのに対し、製造業が同21.5%増、運輸・通信業は同6.3%増、卸売・小売業,飲食店は同3.0%増、サービス業は同10.2%増となっている。

(4)  雇用の先行きに関する指標については先行きに弱い動きもみられる。雇用の先行指標と考えられる製造業の所定外労働時間(季節調整値)は、11月は増加したものの、最近の生産の動きを反映し、基調として増加傾向が弱まっている。所定外労働時間(事業所規模5人以上、季節調整済指数)は、製造業では、10月(確報値)前月比0.6%減の後、11月(確報値)同1.6%増となり、調査産業計では、10月前月比0.8%減の後、11月同0.4%増となった。
 日本銀行「全国企業短期経済観測調査」(12月調査)によると、雇用人員判断DI (「過剰」-「不足」)は前期より若干低下したものの、依然として高い水準にある第13図)。
 厚生労働省「労働経済動向調査」によると、7〜9月期に雇用調整を実施した事業所割合は25%、10〜12月期に実施予定の事業所割合は24%、2003年1〜3月期に実施予定の事業所割合は22%と引き続き低下が見込まれている。(第14図
 内閣府「景気ウォッチャー調査」による12月の2〜3か月先の景気の先行き判断DI・雇用関連は38.4で前月を1.7ポイント下回り、4か月連続の低下となった。


4 賃金・労働時間

(1)  11月の現金給与総額(産業計、確報、以下同じ)は293,524円で、前年同月比0.8%減となった。就業形態別にみると、一般労働者は前年同月比横ばい、パートタイム労働者は同2.0%減となった。
 内訳をみると、所定内給与は前年同月比1.0%減(一般労働者同横ばい、パートタイム労働者同2.5%減)となったほか、所定外給与は同5.9%増、特別給与は同5.9%減となり、実質賃金は同0.5%減となった(第15図)。

(2)  11月の総実労働時間(産業計、確報、以下同じ)は157.3時間で、前年同月比1.0%減となった。就業形態別にみると、一般労働者は前年同月比0.2%減、パートタイム労働者は同2.1%減となった。
 内訳をみると、所定内労働時間は147.2時間で前年同月比1.5%減(一般労働者同1.0%減、パートタイム労働者同2.4%減)、所定外労働時間は10.1時間で同6.5%増となった。なお、月間出勤日数は20.4日と前年同月差0.2日減となった。
 11月の製造業の所定外労働時間(確報)は14.9時間で、前年同月比18.9%増となった。規模別にみると、500人以上規模で前年同月比20.8%増、100〜499人規模で17.7%増、30〜99人規模で同19.9%増、5〜29人規模で同19.3%増となった (第16図)。


1月の主要変更点

月例労働経済報告参考表
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