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結果の概要

1 賃金の改定の実施状況
   平成14年中に1人当たり平均賃金を引き上げる企業割合は61.5%(前年73.8%),1人当たり平均賃金を引き下げる企業割合は7.0%(同2.2%),賃金の改定を実施しない企業割合は27.1%(同21.3%)で,引き上げる企業割合は前年と比べ大幅に減少した。また,引き下げる企業割合は「引き上げ」と「引き下げ」を区別した平成11年以降最高,実施しない企業割合は調査項目とした昭和50年以降最高となっている。
 これを企業規模別に前年と比較すると,1人当たり平均賃金を引き上げる企業割合は,すべての規模で低下しており,1人当たり平均賃金を引き下げる企業及び賃金の改定を実施しない企業割合はすべての規模で上昇している。(第1表付表1

2 賃金の改定額及び改定率
  (1)  平成14年中における賃金の改定状況(10〜12月実施予定を含む)をみると,常用労働者数による加重平均(以下の記述について同じ)で,賃金の改定額は,3,167円(前年4,163円),賃金の改定率は1.1%(同1.5%)となり,額・率ともに現行の集計を実施している昭和55年以降最低の水準となっている(第2表)。

(2)  1人当たり平均賃金を引き上げる企業の引上げ額は4,656円,引上げ率は1.7%,1人当たり平均賃金を引き下げる企業の引下げ額は10,245円,引下げ率は3.9%となっている。
 企業規模別にみると,賃金の改定額,改定率ともに規模が小さくなるほど低くなっており,すべての規模で前年を下回っている。(第3表

(3)  産業別にみると,賃金の改定額は,製造業が3,809円と最も高く,次いで電気・ガス・熱供給・水道業の3,704円,不動産業の3,348円,鉱業の3,339円の順となっている。また,賃金の改定率は,製造業,電気・ガス・熱供給・水道業,卸売・小売業,飲食店が1.3%,次いで鉱業,不動産業の1.1%,金融・保険業の1.0%の順となっている。
 賃金の改定額では,すべての産業で前年を下回り,賃金の改定率では,電気・ガス・熱供給・水道業は前年と同率であるが,それ以外の産業では前年を下回っている。(第4表

3 賃金の改定額の分布
   賃金の改定額の企業分布を階級別にみると,改定額0円(賃金の改定を実施しない企業を含む)の企業割合が29.4%(前年22.1%)と最も高く,次いで,2,000円〜3,000円未満の12.4%(同11.6%),3,000円〜4,000円未満の11.2%(同12.5%),4,000〜5,000円未満の11.1%(同12.1%)の順となっている(第6図第5表)。

4 賃金の改定の決定時期
   賃金の改定を実施又は予定し額も決定している企業(複数年協定等により話合いを行わなかった企業を除いた数)の割合は全企業の67.4%となっており,これらについて賃金の改定の決定時期を月別にみると,4月が33.7%(前年37.7%)と最も高く,次いで,3月の25.2%(同24.7%),5月の17.7%(同18.2%)の順となっている。
 企業規模別にみると,5,000人以上では3月の割合が64.0%と最も高く,それ以外の規模では4月が最も高くなっている。(第6表

5 ベア・定昇の実施状況
   賃金の改定が未定の企業を除いた企業について,ベア及び定昇の実施状況をみると,「ベアと定昇を区別している」企業割合が44.9%,「ベアと定昇を区別していない」企業割合は55.1%となっている。
 「ベアと定昇を区別している」企業の内訳をみると,「定昇のみ行った・行う」企業割合が27.8%と最も多く,次いで「ベア・定昇ともに行わなかった・行わない」の8.0%,「ベア・定昇ともに行った・行う」の5.7%の順となっている。
 企業規模別にみると,規模が小さいほど「ベアと定昇を区別しなかった」企業割合が高くなっており,規模が大きいほど「定昇のみ行った・行う」企業割合が高くなっている。(第7表

6 賃金カット等の実施状況
   全企業のうち,平成14年中に何らかの賃金カット等を実施又は予定している企業割合は14.8%(前年4.0%)で,このうち,「賃金カットを行った・行う」企業割合は70.8%,「諸手当の減額を行った・行う」企業割合は46.1%となっている。また,「賃金カットを行った・行う」企業の内訳をみると,「賃金の改定と同時期に決めた」企業割合は34.6%,「賃金の改定と別時期に決めた」企業割合は36.1%となっている。
 企業規模別にみると,規模が大きいほど賃金カット等を実施した企業割合が高くなっている(第9表)。
 なお,賃金カット等を実施又は予定している企業割合は,「1人当たり平均賃金を引き上げた・引き上げる企業」では15.7%,「1人当たり平均賃金を引き下げた・引き下げる企業」では89.3%であった。(付表6
 賃金カット等を実施又は予定している企業について,その対象者と実施期間をみると,対象者は「管理職と管理職以外全員」が34.6%と最も高く,次いで「管理職のみ」の31.4%,「管理職と管理職以外の一部」の16.7%の順となっている。実施期間は「1年以上」が54.4%と最も高く,「半年以上1年以内」が31.0%,「半年以内」が14.6%となっている(第10表)。

7 賃金の改定額と賞与の支給額との決定状況
   賃金の改定を実施又は予定していて額も決定している企業について,賃金の改定と賞与との決定状況をみると,「賃金の改定額と賞与支給額を同時期に決めた」企業割合は30.4%,「賃金の改定額と賞与支給額を別の時期に決めた」企業割合は46.1%となっている。「賃金の改定額と賞与支給額を同時期に決めた」企業のうち,「夏と冬の両方の賞与支給額を決めた」企業割合は20.6%,「夏の賞与支給額のみを決めた」企業割合は9.8%となっている。賃金の改定額と賞与支給額の重点の置き方をみると,いずれも「どちらともいえない」とする企業割合が高くなっている。
 企業規模別にみると,規模の大きいほど「賃金の改定額と賞与支給額を同時期に決めた」企業割合が高くなっている。(第11表

8 賃金の改定事情
  (1)  賃金の改定を実施又は予定していて額も決定している企業について,賃金の改定の決定に当たり最も重視した要素をみると,「企業業績」をあげた企業が81.0%(前年72.6%)と最も高く,それ以外では「世間相場」の8.5%(同17.2%),「労使関係の安定」の2.8%(同2.1%),「労働力の確保・定着」の2.7%(同3.8%)の順となっている。
 企業規模別にみると,すべての規模で「企業業績」をあげた企業が最も高くなっている。(第12表
 「企業業績」をあげた企業割合は過去最高の平成11年に次いで高く,「世間相場」をあげた企業割合は,調査項目とした昭和45年以降最も低くなっている(付表10)。
 なお,「1人当たり平均賃金を引き下げた・引き下げる」企業についてみた場合には,「企業業績」の87.4%に次いで「雇用の維持」の9.4%となっている(第13表)。

(2)  「企業業績」を重視したすべての企業について,自社の業績をどう評価しているかをみると,「良い」と評価した企業割合は7.1%で,「悪い」と評価した企業割合は70.2%,「どちらともいえない」が22.7%であった。
 また,「良い」と評価した企業のうち,1人当たり平均賃金を引き上げた・引き上げる企業は92.1%,「悪い」と評価した企業では56.5%,「どちらともいえない」では80.5%であった。(第14表

(3)  「世間相場」をあげたすべての企業(最も重視したものを1つ,そのほかに重視したものを2つまでの最大3つまでの複数回答による。)を対象として,賃金の改定の決定に当たり世間相場として最も参考にした企業の種類をみると,「同一産業同格企業」が36.6%(前年39.7%)と最も高く,次いで,「系列企業」の23.8%(同19.3%),「同一地域企業」の16.5%(同14.9%)の順となっている(第15表)。

(4)  1人当たり平均賃金を引き上げた・引き上げる企業について,賃金の改定の決定に当たり労働者のどの層に重点を置いたか(最も重視したものを1つ,そのほかに重視したものを2つまでの最大3つまでの複数回答による。)をみると,「重点を置いた」企業は69.7%で,このうち,「一般職若年層」に最も重点を置いた企業が28.9%と最も高くなっている(第16表第7図)。

9 人件費負担の対策
   人件費の負担に対し,企業が当面どのような対策に力を入れるかをみると,最も力を入れる対策として「売上高の増加,新製品の開発」をあげた企業割合が38.7%(前年38.0%)と最も高く,次いで「諸経費等コストの削減」の15.9%(同13.4%),「パートタイム労働者への切替え,下請け,派遣労働者等の活用」の14.1%(同11.1%)の順となっている。
 企業規模別にみると,規模が大きいほど「人員削減,欠員不補充」をあげた企業割合が高くなっている。(第17表


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