2006年世界禁煙デー記念シンポジウム(2006年5月31日,東京)


禁煙支援の輪を広げよう


大阪府立健康科学センター
 健康生活推進部 増居志津子



たばこ問題に対する認識や禁煙に対する準備性が低い

喫煙者のステージ分布のグラフ 今後6カ月以内に禁煙を考えている割合

  日本(大阪府民) 13%

アメリカ 60%



禁煙支援・治療の体制づくり

レベル0 動機づけ(情報提供・たばこ価格・税の引き上げ、職場・公共の場所の禁煙などの環境の整備)
レベル1
(minimal)
自助教材、NRT製剤のOTC利用、禁煙電話相談など
依存度:軽度
レベル2
(moderate)
外来や健診での禁煙治療
依存度:中等度
レベル3
(intensive)
禁煙専門外来や禁煙教室、入院による禁煙治療
依存度:高度
  精神疾患などの禁煙困難症例



レベル1 セルフヘルプ

1. 禁煙のための自助教材やセルフヘルプ法の活用

 ◆ 上手に禁煙するための方法を学ぶ
  ・ 実行の最大の秘訣は禁煙開始日を決めること
  ・ 吸いたくなった時の対処法を考えること
 ◆ インターネット、携帯電話、テキスト教材などを利用する

2. 禁煙補助剤であるニコチンガムを活用する

  ・ 正しい使い方を学ぶことが重要



レベル2 簡易な禁煙治療や支援

1. 職場や地域、医療機関における健診を活用した働きかけ

 ◆ 問診によるスクリーニング
  ・ 禁煙の関心度、タバコ依存症スクリーニングテスト(TDS)を実施
 ◆ 禁煙の関心度に併せた個別支援
  ・ ただし、TDSが5点以上の人は、健康保険による禁煙治療を実施している医療機関を紹介

2. 医療機関での保険診療による禁煙治療

 ◆ 「禁煙治療のための標準手順書」にあわせた指導

 ◆ 指導者研修会の開催



禁煙サポートのためのトレーニングプログラム

基礎講習会(11時間)

基礎講習会(11時間)の写真
講義
禁煙指導の実習
デモンストレーション
ロールプレイング
タバコ検査の測定実習
禁煙サポートの実施に向けての話し合い


体験指導(3ヶ月間)

体験指導(3ヶ月間)の写真
禁煙指導の体験
ケースレポートの提出


添削指導
事例検討会
図
賞賛
改善点に対するアドバイス
総合評価



健診の場での禁煙介入プログラム

健診の場での禁煙介入プログラムの図



指導者の技術レベルと禁煙支援の効果

指導者の技術レベルと禁煙支援の効果のグラフ



標準禁煙治療プログラム

標準禁煙治療プログラムの図



レベル3 集中的な禁煙治療

1. 禁煙専門外来や禁煙教室による集中的な治療

 ◆ 保険診療で禁煙できなかった喫煙者に対する治療
  ・ 精神疾患の患者さんや心理的依存が強い患者さんには、長期間にわたる時間をかけた治療が必要
  ・ 可能ならカウンセリングを実施
 ◆ 入院患者に対する禁煙治療
  ・ 集中的なプログラムで禁煙治療を実施

2. 今後の課題

 ◆ 保険診療のプログラムで禁煙が困難なケースに対する治療の制度化が必要(保険適用の範囲の拡大)



禁煙支援のための自己学習教材の開発

〔目的〕 地域や職域において、効果的に禁煙支援を推進するために必要な基礎知識や実施手法を自己学習により習得

〔学習内容〕
 喫煙の健康影響(能動喫煙)
 喫煙の健康影響(受動喫煙)
 ニコチンの依存性
 禁煙の効果
 禁煙サポートの理論と方法
 禁煙のためのノウハウ
 ニコチン代替療法
 禁煙サポートの経済効果
 効果的な禁煙サポートの企画
10  禁煙サポートの評価方法

〔特徴〕
CD-ROM教材が付いており基礎講義のビデオやロールプレイによる個別支援の方法が動画で視聴できる。
クイズやテストを繰り返し実施することで簡単に楽しみながら知識を習得することができる。



禁煙支援マニュアルの学習内容

●クイズ形式の問題演習
クイズ形式の問題演習の図

●講義ビデオ
講義ビデオの図

●詳細解説
詳細解説の図



禁煙サポートのための自己学習システム(CD-ROM)の効果

 国立保健医療科学院の喫煙者個別健康教育の初級コースに参加した指 導者60名を対象に事前学習として取り組んでもらった
 その結果、短期間に集中的に禁煙サポートに必要な知識や自信を向上させることが明らかになった

態度スコア
態度スコアの表

自信スコア
自信スコアのグラフ

知識スコア
知識スコアのグラフ



今後の課題

1. 指導者に対する教材の提供や研修会の開催
禁煙治療や禁煙支援を普及させるためには、そのために必要な教材や支援・治療方法を学ぶための研修会の開催が必須

2. 喫煙者に対して禁煙に対する動機付けを行うこと
環境的なアプローチと教育的なアプローチが有効

3. 地域や職域、医療の場で禁煙支援や治療に対する体制を整備し、禁煙したいと考えている喫煙者が利用できるようにすること



禁煙サポートにあたっての指導者の心構え

1. 禁煙中にタバコを吸ってしまうことはよくあること。その後どうするかが大切。

2. 禁煙できると患者さんを信じること。
特に精神疾患の患者さんや、依存度の高い患者さんの禁煙は時間がかかるが、あきらめないことが大切。

3. 患者さんにとって禁煙が目標ではなく、禁煙は何かを達成するための、また何かを得るための手段である。禁煙して何がしたいか、どうなりたいかが重要。



家族や友人に対する禁煙サポート

禁煙に関心が低い家族や友人に対しては
一方的に禁煙を迫らない。
家庭内の禁煙化を進める。
子どもからの禁煙へのアプローチは効果的。
責めない、比較しない。
禁煙したい家族や友人に対しては
禁煙の決意を褒めること
さらに、禁煙の実行と継続に対しても褒め続けること
禁煙しやすい環境を身近に作ってあげること
禁煙後にイライラしていても、大目に見てあげること

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