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平成11年財政再計算に基づく被用者年金制度の財政検証 要旨

平成11年財政再計算に基づく被用者年金制度の財政検証要旨

はじめに
 平成8年3月の閣議決定において、年金数理部会に対し、被用者年金制度の安定性、公平性の確保に関し検証を行うことが要請されており、平成11年財政再計算に基づき財政検証を行った。

被保険者数・組合員数の見込み
 共済各制度は組合員数の将来見通しについて複数のケースを設定しているが、厚生年金との比較を行う必要などから、「厚生年金の被保険者と同様の傾向で減少する」場合を中心に財政検証を行う。

各制度の財政状況の評価

・厚生年金
 平成11(1999)年の制度改正により、これまで 34.5%と見込まれていた最終保険料率が2025年度以降27.6%(国庫負担割合2分の1の場合は2020年度以降25.2%)と見込まれ、制度の安定化が図られた。
 将来の被保険者数は将来推計人口や就業構造の変化により異なってくるため、今後とも幅をもった複数のケースを想定して財政見通しを示していく必要がある。

・国共済
 国共済の最終保険料率は、職域部分を除くと厚生年金とほぼ同程度の水準と見込まれているが、組合員数はここ数年微減しており、また、定員の削減方針が示されていることから、今後の組合員数の動向に十分な注意を払う必要がある。
 2000年度の総合費用率は農林年金に次いで高く、組合員数の動向や積立金の運用状況によって受ける影響が大きい財政状況といえる。

・地共済
 地共済の最終保険料率は職域部分を除くと厚生年金より1割程度低くなると見込まれているが、総合費用率は、今後20年間くらいはその増加が各制度の中で最も大きい。また、組合員数はここ数年微減しており、現時点の財政状況が比較的良いとはいえ、今後は楽観できない。

・私学共済
 私学共済の最終保険料率は職域部分を除くと厚生年金より1割程度低くなると見込まれており、総合費用率は、2000年度では他の共済制度と比べて最も低いが、2050年度には最も高くなると見込まれている。また、現在の保険料率は平準保険料率の6割未満であり、他制度と比較して低くなっている。学齢人口の減少に伴い組合員数が減少傾向になることが予測されており、現時点の財政状況が各制度の中で良いとはいえ、将来は楽観できない。

・農林年金
 農林年金の最終保険料率は職域部分を除くと厚生年金とほぼ同程度の水準と見込まれているが、この保険料率は、組合員数が直近3年間では減少しているにもかかわらず、今後10年間くらいは組合員数一定という見通しを基に算出されたものであり、組合員数の直近の傾向を反映していない。
 総合費用率は最も高くなっており、2020年度までの約半数の年度で積立金の取崩しという状況が見込まれている。また、保有積立金は、これまでの組合員期間に係る年金の給付に必要な財源の2割を下回っており、将来の保険料に依存する割合が高い。
 こうしたことから、農林年金の財政状況は各制度を通じて最も厳しいといえる。今後組合員数が見通しより減少すれば、保険料率をさらに高くしなければならない。


総合評価

・将来予測の重要性
 制度改正により厚生年金の最終保険料率は、年収の20%に近い水準と見込まれている。共済制度の職域部分の給付費は厚生年金の1割程度となっており、共済各制度の最終保険料率は、厚生年金の1割増程度の範囲内にあると見込まれている。
 保険料率を見込む前提となる被保険者数・組合員数について、その動向等に基づくできる限り正確な将来見通しをもつことは極めて重要である。

・制度間の公平性
 現在の保険料率は、私学共済についてはまだ13.3%と著しく低いが、その他の制度は、職域部分を含めて概ね17%から19%の間にあり、大きな差はない。職域部分を除いた最終保険料率は、国共済及び農林年金は厚生年金とほぼ同程度の水準、地共済及び私学共済は厚生年金より1割程度低い水準と見込まれている。
 このような現在の保険料率及び最終保険料率の差は、各制度の成熟化の度合や積立比率、基礎年金拠出金に相当する保険料率の差などが原因であり、制度が分立したままではこの差を完全になくすことは難しい。

・保険料率の計画的な引上げ
 今回の保険料率の引上げの見送りが年金財政に与える影響は大きく、年金財政の長期的安定性及び世代間の負担の公平性の観点からは保険料率の凍結や計画的引上げの先送りはすべきでない。

・詳細な情報開示の必要性
 各制度から提出されないデータがあり、今回の検証は提出資料の範囲内に留まらざるをえなかった。
 各制度ができるだけ詳細なデータや情報を公開し、それに基づいて精度の高い財政検証を行うことは重要であり、各制度の真剣な取組みを要請したい。

・おわりに
 我が国の年金制度は、今回改正により各制度を通じて制度の安定化が図られたが、残された課題も多い。
 政府及び各保険者においては、年金制度の一元化などを含む制度のあり方について幅広く検討し、制度のより一層の安定性、公平性の確保と信頼性の向上に努力することを望みたい。



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