生活保護の医療扶助

厚生労働省社会・援護局保護課


医療扶助費の現状

生活保護費の内訳(平成19年度予算)   医療扶助費の内訳
生活保護費の内訳(平成19年度予算)   医療扶助費の内訳
生活保護費 総額2兆6,033億円    

医療扶助に関する取組

生活保護の医療の特徴
 
取組

○ 入院の割合が高い

− 生活保護受給世帯のうち高齢者世帯が4割、傷病・障害者世帯が4割


− 精神入院患者(32万人)の2割(6万人)が生活保護受給

○ 医療費単価は国民健康保険と比較して、

− 入院は国民健康保険の0.9倍

・ 1日医療費は低く、入院日数は長い

− 入院外は国民健康保険の1.4倍

・ 1日医療費は同等、通院日数は長い

○ 全福祉事務所において次の取組

− 長期入院患者の退院促進


− 通院日数の多い者に対する適正受診指導


− レセプト点検

○ 自立支援プログラムに基づく退院促進等(17年度〜)

− 自治体において、長期入院患者の退院促進等に関し、自立支援プログラムを策定し、医療機関、保健所、福祉施設等の外部組織とも連携しつつ、組織的に対応


精神入院患者の状況

精神入院患者の状況

生活保護精神障害者退院促進計画の策定

○退院可能精神障害者数のうち、2割程度が生活保護を受給しているとされることから、生活保護においても、適切な受入先の確保、個々の退院阻害要因の解消や退院に向けた指導援助を行うための自立支援プログラムの導入などにより計画的に退院促進を進めていくことが必要

○平成19年中に、各福祉事務所において、平成23年度における退院可能精神障害者数の減少目標値を盛り込んだ「生活保護精神障害者退院促進計画」を策定し、当該目標を達成するための所要の対策を実施

【計画策定の流れ(例)】

[1]各福祉事務所において退院可能精神障害者数を把握

[2]平成23年度まで各年度における減少目標値を設定

[3]退院促進を図るための取組等の計画・実施

各福祉事務所における退院促進の取組を支援するため、平成19年度予算において、セーフティネット支援対策等事業費補助金のメニューとして「精神障害者退院促進事業」を創設し、各福祉事務所に精神障害者退院推進員を配置するための費用や、関係団体へ退院促進事業の実施を委託する費用等について補助を行う。


生活保護精神障害者退院促進事業の概要(退院推進員の業務)

ア 支援対象者の把握

福祉事務所と精神病院で協議し、生活保護受給者で長期に精神病院に入院している者のリストの中から、退院可能性のある者を選定


イ 支援対象者(被保護者)ごとの自立支援計画の策定

選定した対象者を退院させ、施設入所や在宅生活に復帰させるまでの課題を分析し、自立支援計画を策定


ウ 自立支援計画に基づく支援

自立支援計画に基づいて、患者・家族との相談、退院後にサービスを提供する施設の選定・調整を行うとともに、病院における退院前の訓練、社会福祉施設等による退院後の訓練、サービスを提供


エ 必要に応じた関係機関(自立支援員<障害福祉施策・県委託事業>、精神病院関係者、障害福祉部門担当者等の連携)との連携


福祉事務所(生活保護)と障害福祉施策の連携

福祉事務所(生活保護)と障害福祉施策の連携

生活保護精神障害者退院促進事業の流れ(イメージ図)

生活保護精神障害者退院促進事業の流れ(イメージ図)

○ 退院促進事業の事例(福岡県)

福岡県では、生活保護の長期入院患者の退院を促進するため、平成17年度から「長期入院患者社会復帰促進事業」、平成18年度から「精神障害者社会復帰促進研究事業」及び「退院者等居宅支援モデル事業」を実施している。

(3事業ともにセーフティネット支援対策等事業費補助金を活用)

○長期入院患者社会復帰促進事業

精神障害者や高齢者の長期入院患者で退院可能な者について、自立支援プログラムの手法を導入し、社会復帰を促進するため、平成17年度から福祉事務所にコーディネート・アドバイザーを配置

1.コーディネートアドバイザーの配置

○ 平成17年度から、コーディネート・アドバイザー計6名を県福祉事務所3か所(田川、遠賀、糟屋)に配置し、社会復帰のための支援を実施。
(コーディネート・アドバイザー業務を福岡県社会福祉士会に委託)

2.対象者

○ 入院後3か月以上になる者で、受入条件が整備されれば退院が可能だとの主治医の判断があり、かつ社会復帰に積極的な支援を要する被保護者

3.退院支援の流れ

○ 退院可能性の調査

コーディネート・アドバイザーが、病院訪問等を行い、退院の可能性、受入先の整備条件等、社会復帰のための積極的支援の必要性及び本人の希望等の聴き取りを行う。

○ 対象者の選定と課題分析及び社会復帰個別プログラムの策定

コーディネート・アドバイザーは、上記調査を基に[1]対象者の選定、[2]対象者ごとの課題の分析、[3]社会復帰個別プログラムの案を策定し、福祉事務所において、本人・家族等への確認や必要に応じてケース検討会議等を行った上で決定する。

○ 社会復帰個別プログラムの実施及び状況把握

対象者に対し、諸制度の利用に関した必要な援助を行う。査察指導員は、課題整理票を参考に、実施状況の進行管理及び指導援助に対する助言を行う。

○ 社会復帰個別支援プログラムの評価及び見直し

  • 退院した者については、6か月間は生活状況を観察。
  • 退院に至らなかった者については、要因等の調査・分析を協議し、次期プログラム(案)を策定するとともに、初回プログラムと同様、必要な援助を行う。
4.事業の効果
  退院可能者数 退院者数
平成17年度 74名 18名

○精神障害者社会復帰促進研究事業

精神科病院における社会復帰促進に向けた手法を研究するため、医療機関にモデル病院として実践的な研究を行う場の提供等について協力を得るとともに、当該医療機関に研究員を派遣する。

(研究業務については(社)日本精神保健福祉士協会に委託)

1.研究員の業務

○ 主研究員は、モデル病院、副研究員の協力の下、対象事例の社会復帰に向け支援を行うとともに、事業推進のための会議等のコーディネート、自立支援プログラムの作成を行う。

○ 副研究員は、モデル病院内において、主研究員と協同し、事業の推進を行う。

2.モデル病院の業務

○ 主研究員の受入及び実践の場の提供

○ 副研究員の選出及び主研究員との協力体制の提供

○ 対象事例の提供及び主研究員との対象事例の社会復帰に関する検討

3.研究事業の流れ

○支援対象者の選定

○社会資源の調査

○対象者の面接、退院に向けた支援の実施

○研究事業推進会議(ケア会議)の開催

○事業計画・報告・検討を行うための研究事業検討会議の開催

会議の実施を通じて自立支援ネットワークの構築を図る

○事業実施のまとめ(自立支援プログラムの構築) 

○退院者等居宅支援モデル事業

長期入院患者等が地域生活への移行準備期間を過ごす宿泊先として、無料低額宿泊所を設置(NPO法人運営)し、地域での生活が送れるようになるためのトレーニングを行う。

宿泊所における自立支援

○家族関係回復、借金、福祉制度の活用など生活相談の実施

○金銭管理及び服薬の指導など日常生活支援

○食事の準備、調理の手伝い、部屋の清掃など、日常生活能力を養うためのトレーニング


○ 退院促進事業の事例(東京都(世田谷区))

世田谷区においては、福祉事務所及び保健所が相互に連携するとともに、NPO法人等に支援業務を委託し、コーディネーターとして担当PSWを設置するなどにより、精神障害者の退院支援を実施

(セーフティネット支援対策等事業費補助金を活用)

1.退院支援事業の委託

○ 平成18年度から、地域生活支援センター、精神障害者の支援を行っているNPO法人に、退院促進事業の実施を委託

2.対象者

○ 精神科病院に原則として6か月以上入院している者で、主治医により退院が可能と判断され、かつ本人が退院を希望する者のうち、事業による生活支援の対象と認められた者

3.事業実施の内容

○ 居住支援相談窓口の設置

受託法人において、住居確保の相談、病状悪化による生活困難や近隣トラブルに関する相談、家主・不動産業者等との調整支援など、住居の確保や居住継続支援に関する相談を行う

○ 対象者の個別生活支援

受託法人において、対象者との信頼関係の構築、支援計画の策定、地域のネットワークづくり、居住確保、日常生活状況確認及び居住継続に係る支援等を実施


○ ケア会議の設置・開催

福祉事務所、保健所、地区担当保健師等によるケア会議を開催し、対象者の決定、地域生活ケアプランの作成を行う

○ 退院促進連絡会の設置・運営

地域内の精神科病院及び社会復帰施設等関係機関との連絡調整、事業の進捗状況等に関する協議


○ 医療機関等への協力要請

  • 事業の円滑実施のため、精神科病院に事業実施全般に対して協力を要請
  • 不動産会社等が集まる場を設け、事業実施について協力を依頼
4.事業の効果
  支援対象者数 退院者数
平成18年度(6月〜11月) 18名 7名

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