ダミノジッド試験法

1.装置
 アルカリ熱イオン化検出器又は高感度窒素・リン検出器付きガスクロマトグラフ,ガスクロマトグラフ・質量分析計並びに水蒸気蒸留装置を用いる。水蒸気蒸留装置はガラス製で,その概略は,次の図による。
A:1,000mlの丸底フラスコ(水蒸気発生用)
B:1,000mlの丸底フラスコ(蒸留用)
C:蒸留トラップ
D:冷却管
E:100mlの三角フラスコ
図

2.試薬・試液
 次に示すもの以外は,第2 添加物の部C 試薬・試液等の項に示すものを用いる。
 なお,「(特級)」と記載したものは,日本工業規格試薬の特級の規格に適合するものであることを示す。
セトン アセトン300mlをすり合わせ減圧濃縮器を用いて濃縮し,アセトンを除去する。この残留物を-ヘキサン5mlに溶かし,その5μlを電子捕獲型検出器付きガスクロマトグラフに注入して試験するとき,ガスクロマトグラム上の-ヘキサン以外のピークの高さは,2×10−11gのγ-BHCが示すピークの高さ以下でなければならない。
基性アルミナミニカラム(1,710mg) 内径8〜9mmのポリエチレン製のカラム管に,塩基性アルミナ1,710mgを充てんしたもの又はこれと同等の分離特性を有するものを用いる。
泡用シリコン シリコンを消泡用に製造したものを用いる。
o-ニトロベンズアルデヒド o-ニトロベンズアルデヒド(特級)
o-ニトロベンズアルデヒド・メタノール溶液 o-ニトロベンズアルデヒド100mgにメタノール10mlを加えて溶かす。用時調製する。
ェノールフタレイン試液 フェノールフタレイン1gをエタノール100mlに溶かす。
-ヘキサン -ヘキサン300mlをすり合わせ減圧濃縮器を用いて5mlに濃縮し,この5μlを電子捕獲型検出器付きガスクロマトグラフに注入して試験するとき,ガスクロマトグラム上の-ヘキサン以外のピークの高さは,2×10−11gのγ-BHCが示すピークの高さ以下でなければならない。
 蒸留水を用いる。当該農薬等の成分である物質の分析の妨害物質を含む場合には,-ヘキサン等の溶媒で洗浄したものを用いる。
タノール メタノール300mlをすり合わせ減圧濃縮器を用いて濃縮し,メタノールを除去する。この残留物を-ヘキサン5mlに溶かし,その5μlを電子捕獲型検出器付きガスクロマトグラフに注入して試験するとき,ガスクロマトグラム上の-ヘキサン以外のピークの高さは,2×10−11gのγ-BHCが示すピークの高さ以下でなければならない。
ン酸緩衝液(pH5) リン酸一カリウム13.15g及びリン酸二カリウム0.59gに水を加えて溶かし,100mlとする。

3.標準品
メチルヒドラジン 本品は1,1-ジメチルヒドラジン97%以上を含む。
 沸点 本品の沸点は62〜64℃である。

4.試験溶液の調製
a 抽出法
(1) 穀類,豆類,種実類,果実,野菜,抹茶及びホップの場合
 穀類,豆類及び種実類の場合は,検体を420μmの標準網ふるいを通るように粉砕した後,その5.0gを量り採る。
 果実及び野菜の場合は,検体約1kgを精密に量り,必要に応じ適量の水を量って加え,細切均一化した後,検体10.0gに相当する量を量り採る。
 抹茶の場合は,検体5.0gを量り採る。
 ホップの場合は,検体を粉砕した後,5.0gを量り採る。
 これに水80mlを加え,振とう機を用いて30分間激しく振り混ぜた後,ガラス繊維ろ紙を用いて吸引ろ過する。ろ紙上の残留物を採り,水40mlを加え,5分間振とうした後,上記と同様に操作してろ液を1,000mlの丸底フラスコ(蒸留用)中に合わせる。
(2) 抹茶以外の茶の場合
 検体6.0gを100℃の水360mlに浸し,室温で5分間放置した後,ろ過し,冷後ろ液120mlを1,000mlの丸底フラスコ(蒸留用)に移す。
(3) (1)及び(2)に掲げる食品以外の食品の場合
 (1)の場合に準じて抽出を行う。
b 蒸留
 上記の丸底フラスコに水酸化ナトリウム60g(野菜及び果実の場合は,65g)を水冷しながら,少量ずつ加えて溶かす。これに消泡用シリコン1〜2滴を加えた後,直ちに蒸留装置に取り付ける。別に,リン酸緩衝液(pH5)5ml及びフェノールフタレイン試液1滴を入れた100mlの三角フラスコを水蒸気蒸留装置に取り付け,1,000mlの丸底フラスコ(水蒸気発生用)を加熱しておく。留液が45mlになるまで水蒸気蒸留し,留液が着色しないことを確認する。蒸留が約15分間で終了するように加熱強度を調節する。
c 誘導体化
 上記の留液に1%o-ニトロベンズアルデヒド・メタノール溶液1mlを加えて振り混ぜた後,30℃で2時間放置する。これに-ヘキサン50mlを加えて5分間振とう後,静置し,-ヘキサン層を採り,液層分離ろ紙を用いて200mlのナス型フラスコ中にろ過する。水層に-ヘキサン50mlを加え,上記と同様に操作して,-ヘキサン層をナス型フラスコ中に合わせる。-ヘキサン10mlを用いてろ紙上の残留物を洗い,洗液をナス型フラスコ中に合わせ,40℃以下で-ヘキサンを除去する。この残留物にアセトン及び-ヘキサンの混液(1:19)5mlを加えて溶かす。
d 精製法
 塩基性アルミナミニカラム(1,710mg)にアセトン及び-ヘキサンの混液(1:19)10mlを注入し,流出液は捨てる。このカラムにc 誘導体化で得られた溶液を注入した後,アセトン及び-ヘキサンの混液(1:19)10mlを注入し,溶出液をすり合わせ減圧濃縮器中に採り,40℃以下でアセトン及び-ヘキサンを除去する。この残留物にアセトンを加えて溶かし,正確に5mlとし,これを試験溶液とする。

5.操作法
a 定性試験
 次の操作条件で試験を行う。試験結果は標準品について4.試験溶液の調製c 誘導体化と同様に操作して得られたものと一致しなければならない。
操作条件
ラム 内径0.25mm,長さ10〜30mのケイ酸ガラス製の細管に,ガスクロマトグラフィー用5%フェニル―メチルシリコンを0.25μmの厚さでコーティングしたものを用いる。
ラム温度 60℃で2分間保持し,その後毎分10℃で昇温し,280℃に到達後5分間保持する。
験溶液注入口温度 280℃
出器 280℃で操作する。
ス流量 キャリヤーガスとしてヘリウムを用いる。ジメチルヒドラジンの誘導体が約13分で流出する流速に調整する。空気及び水素の流量を至適条件に調整する。
b 定量試験
 a 定性試験と同様の操作条件で得られた試験結果に基づき,ピーク高法又はピーク面積法により定量を行い,ジメチルヒドラジンの含量を求める。さらに,次式により,ダミノジッドの含量を求める。
ダミノジッドの含量(ppm)= 2.67×ジメチルヒドラジンの含量(ppm)
c 確認試験
 a 定性試験と同様の操作条件でガスクロマトグラフィー・質量分析を行う。試験結果は標準品について,4.試験溶液の調製のc 誘導体化と同様に操作して得られたものと一致しなければならない。また,必要に応じ,ピーク高法又はピーク面積法により定量を行う。
d 検量線
 ジメチルヒドラジン水溶液1mlにリン酸緩衝液(pH5)5ml及び水40mlを加えたものについて4.試験溶液の調製のc 誘導体化と同様に操作する。

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