2,4,5-T試験法

1.装置
 電子捕獲型検出器付きガスクロマトグラフ及びガスクロマトグラフ・質量分析計を用いる。

2.試薬・試液
 次に示すもの以外は,第2 添加物の部C 試薬・試液等の項に示すものを用いる。
 なお,「(特級)」と記載したものは,日本工業規格試薬の特級の規格に適合するものであることを示す。
セトニトリル アセトニトリル300mlをすり合わせ減圧濃縮器を用いて濃縮し,アセトニトリルを除去する。この残留物を-ヘキサン5mlに溶かし,その5μlを電子捕獲型検出器付きガスクロマトグラフに注入して試験するとき,ガスクロマトグラム上の-ヘキサン以外のピークの高さは,2×10−11gのγ-BHCが示すピークの高さ以下でなければならない。
セトン アセトン300mlをすり合わせ減圧濃縮器を用いて濃縮し,アセトンを除去する。この残留物を-ヘキサン5mlに溶かし,その5μlを電子捕獲型検出器付きガスクロマトグラフに注入して試験するとき,ガスクロマトグラム上の-ヘキサン以外のピークの高さは,2×10−11gのγ-BHCが示すピークの高さ以下でなければならない。
ーテル エチルエーテル300mlをすり合わせ減圧濃縮器を用いて濃縮し,エチルエーテルを除去する。この残留物を-ヘキサン5mlに溶かし,その5μlを電子捕獲型検出器付きガスクロマトグラフに注入して試験するとき,ガスクロマトグラム上の-ヘキサン以外のピークの高さは,2×10−11gのγ-BHCが示すピークの高さ以下でなければならない。
化ナトリウム 塩化ナトリウム(特級)。当該農薬等の成分である物質の分析の妨害物質を含む場合には,-ヘキサン等の溶媒で洗浄したものを用いる。
ラムクロマトグラフィー用合成ケイ酸マグネシウム カラムクロマトグラフィー用に製造した合成ケイ酸マグネシウム(粒径150〜250μm)を130℃で12時間以上加熱した後,デシケーター中で放冷する。
イソウ土 化学分析用ケイソウ土を用いる。
酸エチル 酢酸エチル300mlをすり合わせ減圧濃縮器を用いて濃縮し,酢酸エチルを除去する。この残留物を-ヘキサン5mlに溶かし,その5μlを電子捕獲型検出器付きガスクロマトグラフに注入して試験するとき,ガスクロマトグラム上の-ヘキサン以外のピークの高さは,2×10−11gのγ-BHCが示すピークの高さ以下でなければならない。
チルエステル化剤 三フッ化ホウ素エーテル錯体10gを-ブタノール25mlに溶かす。
-ヘキサン -ヘキサン300mlをすり合わせ減圧濃縮器を用いて5mlに濃縮し,この5μlを電子捕獲型検出器付きガスクロマトグラフに注入して試験するとき,ガスクロマトグラム上の-ヘキサン以外のピークの高さは,2×10−11gのγ-BHCが示すピークの高さ以下でなければならない。
 蒸留水を用いる。当該農薬等の成分である物質の分析の妨害物質を含む場合には,-ヘキサン等の溶媒で洗浄したものを用いる。
水硫酸ナトリウム 無水硫酸ナトリウム(特級)。当該農薬等の成分である物質の分析の妨害物質を含む場合には,-ヘキサン等の溶媒で洗浄したものを用いる。
タノール メタノール300mlをすり合わせ減圧濃縮器を用いて濃縮し,メタノールを除去する。この残留物を-ヘキサン5mlに溶かし,その5μlを電子捕獲型検出器付きガスクロマトグラフに注入して試験するとき,ガスクロマトグラム上の-ヘキサン以外のピークの高さは,2×10−11gのγ―BHCが示すピークの高さ以下でなければならない。

3.標準品
,4,5-T 本品は2,4,5-T 98%以上を含む。
 融点 本品の融点は156℃である。

4.試験溶液の調製
a 抽出法
(1) 穀類,豆類及び種実類の場合
 検体を420μmの標準網ふるいを通るように粉砕した後,その10.0gを量り採り,水20mlを加え,2時間放置する。
 これにアセトン100ml及び4mol/l塩酸5mlを加え,3分間細砕した後,ケイソウ土を1cmの厚さに敷いたろ紙を用いてすり合わせ減圧濃縮器中に吸引ろ過する。ろ紙上の残留物を採り,アセトン50mlを加え,3分間細砕した後,上記と同様に操作して,ろ液をその減圧濃縮器中に合わせ,40℃以下で約30mlに濃縮する。
 これをあらかじめ10%塩化ナトリウム溶液100mlを入れた300mlの分液漏斗に移す。酢酸エチル100mlを用いて上記の減圧濃縮器のナス型フラスコを洗い,洗液を上記の分液漏斗に合わせる。振とう機を用いて5分間激しく振り混ぜた後,静置し,酢酸エチル層を300mlの三角フラスコに移す。水層に酢酸エチル50mlを加え,上記と同様に操作して,酢酸エチル層を上記の三角フラスコに合わせる。これに適量の無水硫酸ナトリウムを加え,時々振り混ぜながら15分間放置した後,すり合わせ減圧濃縮器中にろ過する。次いで酢酸エチル20mlを用いて三角フラスコを洗い,その洗液でろ紙上の残留物を洗う操作を2回繰り返す。両洗液をその減圧濃縮器中に合わせ,40℃以下で約1mlに濃縮し,更に室温で窒素気流下で乾固する。
 この残留物に-ヘキサン30mlを加え,100mlの分液漏斗に移す。これに-ヘキサン飽和アセトニトリル30mlを加え,振とう機を用いて5分間激しく振り混ぜた後,静置し,アセトニトリル層を200mlの分液漏斗に移す。-ヘキサン層に-ヘキサン飽和アセトニトリル30mlを加え,上記と同様の操作を2回繰り返し,アセトニトリル層を上記の分液漏斗に合わせる。これにアセトニトリル飽和-ヘキサン50mlを加え,軽く振り混ぜた後,静置し,アセトニトリル層をすり合わせ減圧濃縮器中に移し,40℃以下で約1mlに濃縮し,更に室温で窒素気流下で乾固する。
(2) 果実,野菜,抹茶及びホップの場合
 果実及び野菜の場合は,検体約1kgを精密に量り,必要に応じ適量の水を量って加え,細切均一化した後,検体20.0gに相当する量を量り採る。
 抹茶の場合は,検体5.00gを量り採り,水20mlを加えて,2時間放置する。
 ホップの場合は,検体を粉砕した後,5.00gを量り採り,水20mlを加えて,2時間放置する。
 これにアセトン100ml及び4mol/l塩酸5mlを加え,3分間細砕した後,ケイソウ土を1cmの厚さに敷いたろ紙を用いてすり合わせ減圧濃縮器中に吸引ろ過する。ろ紙上の残留物を採り,アセトン50mlを加え,3分間細砕した後,上記と同様に操作して,ろ液をその減圧濃縮器中に合わせ,40℃以下で約30mlに濃縮する。
 これをあらかじめ10%塩化ナトリウム溶液100mlを入れた300mlの分液漏斗に移す。酢酸エチル100mlを用いて上記の減圧濃縮器のナス型フラスコを洗い,洗液を上記の分液漏斗に合わせる。振とう機を用いて5分間激しく振り混ぜた後,静置し,酢酸エチル層を300mlの三角フラスコに移す。水層に酢酸エチル50mlを加え,上記と同様に操作して,酢酸エチル層を上記の三角フラスコに合わせる。これに適量の無水硫酸ナトリウムを加え,時々振り混ぜながら15分間放置した後,すり合わせ減圧濃縮器中にろ過する。次いで酢酸エチル20mlを用いて三角フラスコを洗い,その洗液でろ紙上の残留物を洗う操作を2回繰り返す。両洗液をその減圧濃縮器中に合わせ,40℃以下で約1mlに濃縮し,更に室温で窒素気流下で乾固する。
(3) 抹茶以外の茶の場合
 検体9.00gを100℃の水540mlに浸し,室温で5分間放置した後,ろ過し,冷後ろ液360mlを500mlの三角フラスコに移す。これに塩化ナトリウム18g及び4mol/l塩酸を加えてpH1以下に調整する。これをあらかじめ酢酸エチル100mlを入れた1,000mlの分液漏斗に移し,振とう機を用いて5分間激しく振り混ぜた後,静置し,酢酸エチル層を300mlの三角フラスコに移す。水層に酢酸エチル100mlを加え,上記と同様に操作して,酢酸エチル層を上記の三角フラスコに合わせる。これに適量の無水硫酸ナトリウムを加え,時々振り混ぜながら15分間放置した後,すり合わせ減圧濃縮器中にろ過する。次いで酢酸エチル20mlを用いて三角フラスコを洗い,その洗液でろ紙上の残留物を洗う操作を2回繰り返す。両洗液をその減圧濃縮器中に合わせ,40℃以下で約1mlに濃縮し,更に室温で窒素気流下で乾固する。
(4) (1)から(3)までに掲げる食品以外の食品の場合
 (1)又は(2)の場合に準じて抽出を行う。
b 加水分解
 a 抽出法で得られた残留物にメタノール20mlを加えて溶かし,100mlのナス型フラスコに移し,1.5mol/l水酸化ナトリウム溶液10mlを加える。これに還流冷却器を取り付けて,80℃の水浴中で30分間加熱した後,放冷する。これをすり合わせ減圧濃縮器中に移し,40℃以下で大部分のメタノールを除去する。この残留物をガラスろ過器(細孔記号G3)を用いて吸引ろ過し,ろ液を300mlの分液漏斗(I)に移す。ガラスろ過器上の残留物を少量のアセトン及び水を用いて洗い,洗液を上記の分液漏斗に合わせる。これにエーテル50ml及び10%塩化ナトリウム溶液100mlを加え,振とう機を用いて5分間激しく振り混ぜた後,静置し,水層を300mlの分液漏斗(II)に移す。これに4mol/l塩酸を加えてpH1以下に調整し,酢酸エチル50mlを加え,振とう機を用いて5分間激しく振り混ぜた後,静置し,酢酸エチル層を300mlの三角フラスコに移す。水層に酢酸エチル50mlを加え,上記と同様に操作して,酢酸エチル層を上記の三角フラスコに合わせる。これに適量の無水硫酸ナトリウムを加え,時々振り混ぜながら15分間放置した後,すり合わせ減圧濃縮器中にろ過する。次いで酢酸エチル20mlを用いて三角フラスコを洗い,その洗液でろ紙上の残留物を洗う。洗液をその減圧濃縮器中に合わせ,40℃以下で約1mlに濃縮する。
c ブチルエステル化
 b 加水分解で得られた溶液を20mlのナス型フラスコに移し,更に室温で窒素気流下で乾固した後,ブチルエステル化剤1mlを加える。上記のナス型フラスコに還流冷却器を取り付けて,90℃の水浴中で30分間加熱した後,放冷する。これをあらかじめ10%塩化ナトリウム溶液50ml及び-ヘキサン50mlを入れた200mlの分液漏斗に移し,振とう機を用いて5分間激しく振り混ぜた後,静置し,-ヘキサン層を200mlの三角フラスコに移す。水層に-ヘキサン50mlを加え,上記と同様に操作して,-ヘキサン層を上記の三角フラスコに合わせる。これに適量の無水硫酸ナトリウムを加え,時々振り混ぜながら15分間放置した後,すり合わせ減圧濃縮器中にろ過する。次いで-ヘキサン10mlを用いて三角フラスコを洗い,その洗液でろ紙上の残留物を洗う。洗液をその減圧濃縮器中に合わせ,40℃以下で約2mlに濃縮する。
d 精製法
 内径15mm,長さ300mmのクロマトグラフ管に,カラムクロマトグラフィー用合成ケイ酸マグネシウム5gを-ヘキサンに懸濁したもの,次いでその上に無水硫酸ナトリウム約5gを入れ,カラムの上端に少量の-ヘキサンが残る程度まで-ヘキサンを流出させる。このカラムにc ブチルエステル化で得られた溶液を注入した後,エーテル及び-ヘキサンの混液(1:19)50mlを注入し,流出液は捨てる。次いでエーテル及び-ヘキサンの混液(3:17)150mlを注入し,溶出液をすり合わせ減圧濃縮器中に採り,40℃以下で約1mlに濃縮し,更に室温で窒素気流下で乾固する。この残留物に-ヘキサンを加えて溶かし,正確に10mlとして,これを試験溶液とする。

5.操作法
a 定性試験
 次の操作条件で試験を行う。試験結果は標準品について,4.試験溶液の調製のc ブチルエステル化と同様に操作して得られたものと一致しなければならない。
操作条件
ラム 内径0.25mm,長さ30mのケイ酸ガラス製の細管に,ガスクロマトグラフィー用5%フェニル―メチルシリコンを0.25μmの厚さでコーティングしたものを用いる。
ラム温度 50℃で1分間保持し,その後毎分25℃で昇温する。125℃に到達後,毎分10℃で昇温し,300℃に到達後5分間保持する。
験溶液注入口温度 260℃
出器 300℃で操作する。
ス流量 キャリヤーガスとして窒素又はヘリウムを用いる。-ブチル(2,4,5-トリクロロフェノキシ)アセテートが約15分で流出する流速に調整する。
b 定量試験
 a 定性試験と同様の操作条件で得られた試験結果に基づき,ピーク高法又はピーク面積法により定量を行う。
c 確認試験
 a 定性試験と同様の操作条件でガスクロマトグラフィー・質量分析を行う。試験結果は標準品について,4.試験溶液の調整のc ブチルエステル化と同様に操作して得られたものと一致しなければならない。また,必要に応じ,ピーク高法又はピーク面積法により定量を行う。

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