スピロメシフェン試験法(畜水産物)

1. 分析対象化合物

スピロメシフェン
4-ヒドロキシ-3-メシチル-1-オキサスピロ[4.4]ノナ-3-エン-2-オン(以下、エノール体という。)

2. 装置

液体クロマトグラフ・質量分析計(LC/MS)又は液体クロマトグラフ・タンデム型質量分析計(LC/MS/MS)

3.試薬、試液

次に示すもの以外は、総則の3に示すものを用いる。

スピロメシフェン標準品 本品はスピロメシフェン98%以上を含み、融点は96〜101℃である。

エノール体標準品 本品はエノール体99%以上を含み、融点は256〜258℃である。

4.試験溶液の調製

1)抽出

試料5.00gにアセトニトリル、ギ酸及び水(80:1:20)混液100 mL並びにn-ヘキサン10 mLを加え、ホモジナイズした後、毎分3,000回転で5分間遠心分離を行う。アセトニトリル、ギ酸及び水混液層を採り、n-ヘキサン層及び残留物にアセトニトリル、ギ酸及び水(80:1:20)混液50 mLを加えてホモジナイズし、上記と同様に遠心分離を行う。得られたアセトニトリル、ギ酸及び水混液層を合わせ、アセトニトリル、ギ酸及び水(80:1:20)混液を加えて正確に200 mLとし、この20 mLを採り、40℃以下で約4mLまで濃縮する。

2)精製

オクタデシルシリル化シリカゲルミニカラム(1,000 mg)にアセトニトリル及び水各10 mLを順次注入し、流出液は捨てる。このカラムに1)で得られた溶液に水10 mLを加えたものを注入した後、容器をアセトニトリル及び0.01%ギ酸溶液(2:3)混液10 mLで洗い、洗液をカラムに注入し、流出液は捨てる。次いでアセトニトリル及び0.01%ギ酸溶液(9:1)混液10 mLを注入し、溶出液に同混液を加えて正確に10 mLとしたものを試験溶液とする。

5.検量線の作成

スピロメシフェン標準品の0.0005〜0.01 mg/L及びエノール体標準品の0.00025〜0.005 mg/Lを含むアセトニトリル及び0.01%ギ酸溶液(9:1)混液の混合標準溶液を数点調製する。それぞれLC/MSの場合は10μL、LC/MS/MSの場合は4μLを注入し、ピーク高法又はピーク面積法で検量線を作成する。

6.定量

試験溶液10μLをLC/MSに、又は4μLをLC/MS/MSに注入し、5の検量線でスピロメシフェン及びエノール体の含量を求める。次式により、エノール体を含むスピロメシフェンの含量を求める。

スピロメシフェン(エノール体を含む。)の含量(ppm)=A+B×1.36

A:スピロメシフェンの含量(ppm)

B:エノール体の含量(ppm)

7.確認試験

LC/MS又はLC/MS/MSにより確認する。

8.測定条件

カラム:オクタデシルシリル化シリカゲル 内径2.0 mm、長さ150 mm、粒子径5μm

カラム温度:40℃

移動相: アセトニトリル及び0.01%ギ酸溶液の混液(1:1)から(9:1)までの濃度勾配を4分間で行い、(9:1)で11分間保持する。

イオン化モード:スピロメシフェンESI(+)、エノール体ESI(−)

主なイオン(m/z):

1)LC/MSの場合
スピロメシフェン273、エノール体271

2)LC/MS/MSの場合
スピロメシフェン;プリカーサーイオン273、プロダクトイオン91、67
エノール体;プリカーサーイオン271、プロダクトイオン209、159

注入量:

1)LC/MSの場合 10μL

2)LC/MS/MSの場合 4μL

保持時間の目安:スピロメシフェン 9分
エノール体 5分

9.定量限界

各化合物 0.01 mg/kg (エノール体はスピロメシフェン換算)

10.留意事項

1)試験法の概要

スピロメシフェン及びエノール体を試料からアセトニトリル、ギ酸及び水(80:1:20)混液にn-ヘキサンを加えた溶液で抽出する。n-ヘキサンを分離し、アセトニトリル、ギ酸及び水混液層をオクタデシルシリル化シリカゲルミニカラムで精製した後、LC/MS又はLC/MS/MSで測定及び確認する方法である。なお、スピロメシフェン及びエノール体のそれぞれについて定量を行い、エノール体についてはその含量に換算係数を乗じてスピロメシフェンの含量に変換し、これらの和を分析値とする。

2)注意点

(1) スピロメシフェンからエノール体への変換を抑えるためにギ酸酸性下にて抽出を行う。

(2) 精製が不十分な場合は、グラファイトカーボンミニカラム(250 mg)による精製を追加するとよい。

操作概要を以下に示す。オクタデシルシリル化シリカゲルミニカラム精製操作で、アセトニトリル及び0.01%ギ酸溶液(2:3)混液10 mLをカラムに注入し、流出液を捨てた後、予めアセトニトリル及び0.01%ギ酸溶液(9:1)混液5mLで洗浄したグラファイトカーボンミニカラムをオクタデシルシリル化シリカゲルミニカラムの下部に接続する。この連結カラムにアセトニトリル及び0.01%ギ酸溶液(9:1)混液10 mLを注入し、溶出液にアセトニトリル及び0.01%ギ酸溶液(9:1)混液を加えて正確に10 mLとしたものを試験溶液とする。

11.参考文献

なし

12.類型


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