2,4-D、2,4-DB及びクロプロップ試験法(農産物)
1.分析対象化合物
農薬等の成分である物質 | 分析対象化合物 |
2,4-D | 2,4-D、2,4-Dナトリウム塩、2,4-Dジメチルアミン塩、2,4-Dエチル、2,4-Dイソプロピル、2,4-Dブトキシエチル、2,4-Dアルカノールアミン塩 |
2,4-DB | 2,4-DB、2,4-DBナトリウム塩、2,4-DBブチル、2,4-DBジメチルアンモニウム塩、2,4-DBイソオクチル |
クロプロップ | クロプロップ |
2. 装置
電子捕獲型検出器付きガスクロマトグラフ及びガスクロマトグラフ・質量分析計を用いる。
3. 試薬、試液
次に示すもの以外は、総則の3に示すものを用いる。
ブ | チルエステル化剤 三フッ化ホウ素エーテル錯体10gをn-ブタノール25 mLに溶かす。 |
2, | 4-D標準品 本品は2,4-D 99%以上を含む。 融点 本品の融点は138℃である。 |
2, | 4-DB標準品 本品は2,4-DB 98%以上を含む。 融点 本品の融点は117〜119℃である。 |
ク | ロプロップ標準品 本品はクロプロップ 98%以上を含む。 |
4. 試験溶液の調製
1)抽出
(1) 穀類、豆類及び種実類の場合
検体を420μmの標準網ふるいを通るように粉砕した後、その10.0gを量り採り、水20 mLを加え、2時間放置する。
これにアセトン100 mL及び4mol/L塩酸5mLを加え、3分間細砕した後、ケイソウ土を1cmの厚さに敷いたろ紙を用いてすり合わせ減圧濃縮器中に吸引ろ過する。ろ紙上の残留物を採り、アセトン50 mLを加え、3分間細砕した後、上記と同様に操作して、ろ液をその減圧濃縮器中に合わせ、40℃以下で約30 mLに濃縮する。
これをあらかじめ10%塩化ナトリウム溶液100 mLを入れた300 mLの分液漏斗に移す。酢酸エチル100 mLを用いて上記の減圧濃縮器のナス型フラスコを洗い、洗液を上記の分液漏斗に合わせる。振とう機を用いて5分間激しく振り混ぜた後、静置し、酢酸エチル層を300 mLの三角フラスコに移す。水層に酢酸エチル50 mLを加え、上記と同様に操作して、酢酸エチル層を上記の三角フラスコに合わせる。これに適量の無水硫酸ナトリウムを加え、時々振り混ぜながら15分間放置した後、すり合わせ減圧濃縮器中にろ過する。次いで酢酸エチル20 mLを用いて三角フラスコを洗い、その洗液でろ紙上の残留物を洗う操作を2回繰り返す。両洗液をその減圧濃縮器中に合わせ、40℃以下で約1mLに濃縮し、更に室温で窒素気流下で乾固する。
この残留物にn-ヘキサン30 mLを加え、100 mLの分液漏斗に移す。これにn-ヘキサン飽和アセトニトリル30 mLを加え、振とう機を用いて5分間激しく振り混ぜた後、静置し、アセトニトリル層を200 mLの分液漏斗に移す。n-ヘキサン層にn-ヘキサン飽和アセトニトリル30 mLを加え、上記と同様の操作を2回繰り返し、アセトニトリル層を上記の分液漏斗に合わせる。これにアセトニトリル飽和n-ヘキサン50 mLを加え、軽く振り混ぜた後、静置し、アセトニトリル層をすり合わせ減圧濃縮器中に移し、40℃以下で約1mLに濃縮し、更に室温で窒素気流下で乾固する。
(2) 果実、野菜、ハーブ及びホップの場合
果実,野菜及びハーブの場合は、検体約1kgを精密に量り、必要に応じ適量の水を量つて加え、細切均一化した後、検体20.0gに相当する量を量り採る。
ホップの場合は、検体5.00gを量り採り、水20 mLを加えて、2時間放置する。
これにアセトン100 mL及び4mol/L塩酸5mLを加え、3分間細砕した後、ケイソウ土を1cmの厚さに敷いたろ紙を用いてすり合わせ減圧濃縮器中に吸引ろ過する。ろ紙上の残留物を採り、アセトン50 mLを加え、3分間細砕した後、上記と同様に操作して、ろ液をその減圧濃縮器中に合わせ、40℃以下で約30 mLに濃縮する。
これをあらかじめ10%塩化ナトリウム溶液100 mLを入れた300 mLの分液漏斗に移す。酢酸エチル100 mLを用いて上記の減圧濃縮器のナス型フラスコを洗い、洗液を上記の分液漏斗に合わせる。振とう機を用いて5分間激しく振り混ぜた後、静置し、酢酸エチル層を300 mLの三角フラスコに移す。水層に酢酸エチル50 mLを加え、上記と同様に操作して、酢酸エチル層を上記の三角フラスコに合わせる。これに適量の無水硫酸ナトリウムを加え、時々振り混ぜながら15分間放置した後、すり合わせ減圧濃縮器中にろ過する。次いで酢酸エチル20 mLを用いて三角フラスコを洗い、その洗液でろ紙上の残留物を洗う操作を2回繰り返す。両洗液をその減圧濃縮器中に合わせ、40℃以下で約1mLに濃縮し、更に室温で窒素気流下で乾固する。
2)加水分解
1)抽出で得られた残留物にメタノール20 mLを加えて溶かし、100 mLのナス型フラスコに移し、1.5 mol/L水酸化ナトリウム溶液10 mLを加える。これに還流冷却器を取り付けて、80℃の水浴中で30分間加熱した後、放冷する。これをすり合わせ減圧濃縮器中に移し、40℃以下で大部分のメタノールを除去する。この残留物をガラスろ過器(細孔記号G3)を用いて吸引ろ過し、ろ液を300 mLの分液漏斗(I)に移す。ガラスろ過器上の残留物を少量のアセトン及び水を用いて洗い、洗液を上記の分液漏斗に合わせる。これにエーテル50 mL及び10%塩化ナトリウム溶液100 mLを加え、振とう機を用いて5分間激しく振り混ぜた後、静置し、水層を300 mLの分液漏斗(II)に移す。これに4mol/L塩酸を加えてpH1以下に調整し、酢酸エチル50 mLを加え、振とう機を用いて5分間激しく振り混ぜた後、静置し、酢酸エチル層を300 mLの三角フラスコに移す。水層に酢酸エチル50 mLを加え、上記と同様に操作して、酢酸エチル層を上記の三角フラスコに合わせる。これに適量の無水硫酸ナトリウムを加え、時々振り混ぜながら15分間放置した後、すり合わせ減圧濃縮器中にろ過する。次いで酢酸エチル20 mLを用いて三角フラスコを洗い、その洗液でろ紙上の残留物を洗う。洗液をその減圧濃縮器中に合わせ、40℃以下で約1mLに濃縮する。
3)ブチルエステル化
2)加水分解で得られた溶液を20 mLのナス型フラスコに移し、更に室温で窒素気流下で乾固した後、ブチルエステル化剤1mLを加える。上記のナス型フラスコに還流冷却器を取り付けて、90℃の水浴中で30分間加熱した後、放冷する。これをあらかじめ10%塩化ナトリウム溶液50 mL及びn-ヘキサン50 mLを入れた200 mLの分液漏斗に移し、振とう機を用いて5分間激しく振り混ぜた後、静置し、n-ヘキサン層を200 mLの三角フラスコに移す。水層にn-ヘキサン50 mLを加え、上記と同様に操作して、n-ヘキサン層を上記の三角フラスコに合わせる。これに適量の無水硫酸ナトリウムを加え、時々振り混ぜながら15分間放置した後、すり合わせ減圧濃縮器中にろ過する。次いでn-ヘキサン10 mLを用いて三角フラスコを洗い、その洗液でろ紙上の残留物を洗う。洗液をその減圧濃縮器中に合わせ、40℃以下で約2mLに濃縮する。
4)精製
内径15 mm、長さ300 mmのクロマトグラフ管に、カラムクロマトグラフィー用合成ケイ酸マグネシウム5gをn-ヘキサンに懸濁したもの、次いでその上に無水硫酸ナトリウム約5gを入れ、カラムの上端に少量のn-ヘキサンが残る程度までn-ヘキサンを流出させる。このカラムに3)ブチルエステル化で得られた溶液を注入した後、エーテル及びn-ヘキサン(3:17)混液150 mLを注入し、流出液をすり合わせ減圧濃縮器中に採り、40℃以下で約1mLに濃縮し、更に室温で窒素気流下で乾固する。この残留物にn-ヘキサンを加えて溶かし、正確に2mLとして、これを試験溶液とする。
5. 操作法
1)定性試験
次の操作条件で試験を行う。試験結果は標準品について、4.試験溶液の調製の3)ブチルエステル化と同様に操作して得られたものと一致しなければならない。
操作条件
カ | ラム 内径0.25 mm、長さ30mのケイ酸ガラス製の細管に、ガスクロマトグラフィー用5%フェニル−メチルシリコンを0.25μmの厚さでコーティングしたもの。 |
カ | ラム温度 50℃で1分間保持し、その後毎分25℃で昇温する。125℃に到達後、毎分10℃で昇温し、300℃に到達後5分間保持する。 |
試 | 験溶液注入口温度 260℃ |
検 | 出器 300℃で操作する。 |
ガ | ス流量 キャリヤーガスとして窒素又はヘリウムを用いる。 |
2)定量試験
1)定性試験と同様の操作条件で得られた試験結果に基づき、ピーク高法又はピーク面積法により定量を行う。
3)確認試験
1)定性試験と同様の操作条件でガスクロマトグラフィー・質量分析を行う。試験結果は標準品について、4.試験溶液の調製の3)ブチルエステル化と同様に操作して得られたものと一致しなければならない。また、必要に応じ、ピーク高法又はピーク面積法により定量を行う。
6.定量限界
2,4-D 0.005 mg/kg(穀類にあっては0.01 mg/kg)
2,4-DB及びクロプロップ 0.01 mg/kg(GC/MS使用時)
7.留意事項
1 | )本法は、2,4-D、2,4-DB及びクロプロップを同時分析するために、既通知の2,4-D試験法を改良したものである。改良点は、(1)合成ケイ酸マグネシウムカラムに試料溶液を負荷した後の、エーテル及びn-ヘキサン(1:19)混液50 mLによる洗浄操作を省いたこと、(2)最終試験溶液を2mLとしたこと、である。 |
2 | )2,4-Dは塩基性で水溶性となるため、抽出時には酸性に保つ必要があること。また、ブチルエステル化の際には、酢酸エチルの除去を行うこと。 |
3 | )特にクロプロップはGC-ECDにおける感度が低いため、定性及び定量にはGC/MSの使用が推奨される。測定に用いる主なイオン(m/z)は、2,4-DB:231、クロプロップ:256。 |
8.参考文献
なし
9.類型
A