厚生労働省

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平成20年7月30日
厚生労働省食品安全部
加地 監視安全課長
担当:日田,高田(内4241,4242)


平成19年度食品からのダイオキシン類一日摂取量調査等の調査結果について

我が国の平均的な食生活における食品からのダイオキシン類の摂取量の推計や個別食品における汚染実態を調査するため、従来より、国立医薬品食品衛生研究所を中心に調査を行い、その結果を公表してきたところですが、今般、平成19年度の調査結果がとりまとめられたので、お知らせします。

平成19年度における食品からのダイオキシン類の一日摂取量は、1.11±0.59pg TEQ/kgbw/日(0.42〜3.32pgTEQ/kgbw/日)と推定され、耐容一日摂取量(TDI)4pgTEQ/kgbw/日より低く、一部の食品を過度に摂取するのではなく、バランスのとれた食生活が重要であることが示唆されました。

なお、本調査結果については本日開催された薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会において報告されました。








本調査は、厚生労働科学研究費補助金(食品の安心・安全確保推進研究事業)「ダイオキシン類等の有害化学物質による食品汚染実態の把握に関する研究」(主任研究者 堤智昭 国立医薬品食品衛生研究所食品部主任研究官)においてダイオキシン類及び臭素化ダイオキシン等による食品汚染実態の把握並びに分析の迅速化等を目的として実施されたものです。









平成19年度ダイオキシン類等の有害化学物質による
食品汚染実態の把握に関する研究(概要)

主任研究者 堤智昭 国立医薬品食品衛生研究所食品部主任研究官

1 目的

ダイオキシン類の人への主な曝露経路の一つと考えられる食品について

(1)平均的な食生活における食品からのダイオキシン類の摂取量を推計すること

(2)個別の食品のダイオキシン類の汚染実態を把握すること 等

2 方法

(1) ダイオキシン類の食品経由摂取量に関する研究(トータルダイエットスタディ)

全国7地域の9機関で、それぞれ約120品目の食品を購入し、厚生労働省の平成14年度国民栄養調査並びに平成15、16年度国民健康・栄養調査の食品別摂取量表に基づいて、それらの食品を計量し、そのまま、又は調理した後、13群に大別して、混合し均一化したもの及び飲料水(合計14食品群)を試料として、「食品中のダイオキシン類測定方法ガイドライン」(平成11年厚生省生活衛生局)に従ってダイオキシン類を分析し、平均的な食生活におけるダイオキシン類の一日摂取量を算出した。

なお、ダイオキシン類摂取量への寄与が大きい食品群である10群(魚介類)、11群(肉類、卵類)及び12群(乳、乳製品)について、各機関が3セットずつ試料を調製し、それぞれについてダイオキシン類を測定した。

(2) 個別食品中ダイオキシン類濃度に関する研究

個別食品として、国内産及び輸入食品合計45試料について、(1)と同様にダイオキシン類を分析した。

3 ダイオキシン類の調査項目

従来通り、世界保健機構(WHO)が1997年に毒性等価係数を定めたポリ塩化ジベンゾーパラージオキシン(PCDD)7種、ポリ塩化ジベンゾフラン(PCDF)10種及びコプラナーPCB (Co-PCB)12種の合計29種。

4 結果の概要

(1) 一日摂取量調査(トータルダイエットスタディ)

食品からのダイオキシン類の一日摂取量は、1.11±0.59pgTEQ/kgbw/日(0.42〜3.32pgTEQ/kgbw/日)と推定された。この数値は、平成17、18年度の調査結果(1.20±0.66、1.04±0.47pgTEQ/kgbw/日)と比べ、ほとんど同レベルであり、日本における耐容一日摂取量(TDI)4pgTEQ/kgbw/日より低かった。

なお、同一機関で調製した試料であっても、魚介類、肉類、卵類、乳及び乳製品類として採取した食品の種類、産地等の差により、ダイオキシン類の摂取量には約1.5〜4.3倍の差が生じることが分かった。

<表1 ダイオキシン類一日摂取量の全国平均年次推移>

(5年間の調査結果)

  平成15年度 平成16年度 平成17年度 平成18年度 平成19年度
一日摂取量
(pgTEQ/日)
66.51
(28.95〜152.41)
70.47
(23.83〜146.60)
60.16
(23.40〜178.15)
52.23
(18.85〜97.20)
55.30
(21.18〜166.24)
体重1kg当たりの一日摂取量
(pgTEQ/kgbw/日)
1.33
(0.58〜3.05)
1.41
(0.48〜2.93)
1.20
(0.47〜3.56)
1.04
(0.38〜1.94)
1.11
(0.42〜3.32)

数値は平均値、( )内は範囲を示す。なお、体重1kg当たりの一日摂取量は日本人の平均体重を50kgとして計算している。

〈表2 ダイオキシン類一日摂取量の地域別年次推移〉

(単位:pgTEQ/kgbw/日)

地域 北海道
地方
東北地方 関東地方 中部地方
東北A 東北B 関東A 関東B 関東C 中部A 中部B 中部C
平成10年度
2.77
1.26
2.06
2.14
2.00
1.87
2.03
平成11年度
1.29
1.47
1.65
4.04
1.59
1.68
1.53
1.57
2.42
平成12年度
0.84
1.10
1.92
1.30
1.72
1.48
1.44
1.41
1.80
平成13年度
0.67
2.02
1.08
1.99
1.42
1.65
1.53
平成14年度
0.88
0.94
1.44
1.16
1.46
2.05
1.46
2.01
2.76
1.34
2.33
3.40
0.90
1.17
1.51
1.40
1.67
1.93
0.62
0.68
1.28
平成15年度
0.84
1.03
1.33
0.72
0.84
1.35
0.78
1.86
3.05
0.90
1.01
2.93
1.02
1.06
2.05
1.34
1.48
1.86
0.58
1.15
1.50
平成16年度
0.48
1.03
2.48
0.48
0.80
2.93
1.64
1.80
1.87
1.05
1.75
2.34
0.72
0.91
1.83
0.64
0.71
2.03
平成17年度
0.67
1.80
3.56
0.64
1.15
1.57
0.55
0.87
1.26
0.70
1.33
2.03
0.69
0.80
1.40
0.47
0.60
1.86
平成18年度
0.38
0.45
1.71
0.53
1.06
1.85
0.60
0.94
1.47
0.79
1.00
1.38
0.67
0.87
1.00
0.46
0.70
1.24
平成19年度
1.07
1.56
1.60
0.45
0.70
0.79
0.81
1.01
1.34
0.82
1.00
3.32
0.80
0.91
1.38
0.43
0.55
1.70
地域 関西地方 中国四国地方 九州地方
関西A 関西B 関西C 中四国A 中四国B 中四国C 九州A 九州B
平成10年度
2.72
1.22
1.99
平成11年度
7.01
1.79
1.89
3.59
1.48
1.84
1.19
平成12年度
2.01
1.43
2.01
0.98
1.40
1.55
0.86
平成13年度
1.33
2.00
0.88
1.60
3.40
平成14年度
0.96
1.39
2.75
1.40
1.78
2.02
0.79
0.98
1.22
0.73
1.54
2.12
0.57
1.18
1.81
平成15年度
0.77
1.15
1.58
0.62
1.22
1.56
1.03
1.51
2.05
0.85
1.04
1.83
平成16年度
1.32
1.86
2.25
1.19
1.35
1.72
0.61
0.99
1.27
平成17年度
0.67
0.82
1.42
1.20
1.57
1.72
0.66
1.05
1.44
平成18年度
0.98
1.50
1.76
0.93
1.08
1.94
0.61
0.65
1.65
平成19年度
0.74
0.96
1.25
0.79
1.07
1.34
0.42
1.24
1.81

(注)平成19年度調査において各地方でのサンプリングを実施した自治体は以下のとおり。なお、数値は各地方毎の食品別一日摂取量を用いて算出されたものである。表の左から、北海道地方:北海道、東北地方:宮城県、関東地方:埼玉県、横浜市、中部地方:石川県、名古屋市、関西地方:大阪府、中国四国地方:香川県、九州地方:福岡県

(2)個別食品中のダイオキシン類等濃度調査
個別食品のダイオキシン類の測定結果は表3のとおりであった。

〈表3 平成19年度 食品中のダイオキシン類の濃度 (pgTEQ/g)〉

食 品 産地等 ダイオキシン類 (pgTEQ/g)
PCDD/Fs Co-PCBs Total
鮮魚 サケ(アキサケ)
サケ(アトランティックサーモン)
サケ(キングサーモン)
サケ(ギンサケ)
サケ(シロサケ)
サケ(ベニサケ)
サケ(ベニサケ)
国産
輸入
輸入
輸入
国産
輸入
輸入
天然
養殖
養殖
養殖
天然
天然
天然
0.026
0.035
0.026
0.044
0.046
0.20
0.084
0.095
0.16
0.25
0.12
0.13
0.34
0.19
0.12
0.20
0.27
0.16
0.18
0.55
0.28
トラウトサーモン 輸入 養殖 0.58 2.0 2.6
ブリ
ブリ
ブリ
ブリ
ブリ
ブリ
国産
国産
国産
国産
国産
国産
天然
天然
天然
天然
養殖
養殖
0.44
0.40
0.30
2.3
0.51
0.83
1.0
1.6
0.86
5.7
1.7
2.8
1.5
2.1
1.2
8.0
2.2
3.7
マグロ(ホンマグロ)
マグロ(ホンマグロ)
マグロ(ホンマグロ)
マグロ(ホンマグロ)
マグロ(メバチマグロ)
マグロ(メバチマグロ)
マグロ(メバチマグロ)
マグロ(メバチマグロ)
国産
輸入
輸入
輸入
輸入
国産
国産
輸入
養殖
養殖
養殖
養殖
天然
天然
天然
天然
0.54
0.57
0.24
0.53
0.030
0.50
0.35
0.022
4.9
4.7
2.5
3.7
0.20
2.9
2.3
0.30
5.5
5.2
2.7
4.2
0.23
3.4
2.6
0.32
マダイ
マダイ
マダイ
マダイ
マダイ
マダイ
マダイ
マダイ
国産
国産
国産
国産
国産
国産
国産
国産
天然
天然
天然
天然
養殖
養殖
養殖
養殖
0.83
0.23
0.30
1.2
0.13
0.15
0.067
0.067
0.89
0.48
0.41
3.1
0.42
0.65
0.38
0.43
1.7
0.71
0.71
4.3
0.54
0.80
0.44
0.50
健康食品 鰯精製魚油
鰯精製魚油
鮫肝油
鮫肝油
鮫肝油
鮫肝油
鮫肝油
マンボウ肝油
ヤツメウナギ油
ヤツメウナギ油



国産














5.0
1.5
1.0
11
1.3
0.000040
1.8
1.8
1.2
0.60
7.7
3.2
3.2
42
6.1
0.72
7.5
4.9
8.5
1.4
13
4.7
4.2
53
7.3
0.72
9.4
6.8
9.7
2.0
嗜好飲料 杜仲茶葉
ドクダミ茶
ハブ茶
ルイボス茶
ローズヒップ茶



輸入




0.23
0.13
0.00031
0.0000060
0.013
0.075
0.021
0.00023
0.000060
0.00025
0.30
0.15
0.00054
0.000066
0.013

(注)産地等の欄における「−」は「不明又は該当せず」を表す。


【用 語 説 明】

ダイオキシン類:

ダイオキシン及びコプラナーPCB

ダイオキシン:

ポリ塩化ジベンゾ−パラ−ジオキシン(PCDD)

ポリ塩化ジベンゾフラン(PCDF)

コプラナーPCB(Co-PCB):

PCDD及びPCDFと類似した生理作用を示す一群のPCB類

トータルダイエットスタディ:

通常の食生活において、食品を介して化学物質等の特定の物質がどの程度実際に摂取されるかを把握するための調査方法。飲料水を含めた全食品を14群に分け、国民栄養調査による食品摂取量に基づき、小売店等から食品を購入し、必要に応じて調理した後、各食品群ごとに化学物質等の分析を行い国民1人あたりの平均的な1日摂取量を推定するもの。

TEF(毒性等価係数):

ダイオキシン類は通常混合物として環境中に存在するため、様々な同族体のそれぞれの毒性強度を、最も毒性が強いとされる2,3,7,8-TCDDの毒性を1とした毒性等価係数(TEF:Toxic Equivalency Factor)を用いて表す。なお、今回は1997年にWHOで再評価されたTEFを用いている。

TEQ(毒性等量):

ダイオキシン類は通常、毒性強度が異なる同族体の混合物として環境中に存在するので、摂取したダイオキシン類の量は、各同族体の量にそれぞれのTEFを乗じた値を総和した毒性等量(TEQ:Toxic Equivalent Quantity)として表す。

TDI(耐容一日摂取量):

長期にわたり体内に取り込むことにより健康影響が懸念される化学物質について、その量まではヒトが一生涯にわたり摂取しても健康に対する有害な影響が現れないと判断される一日当たりの摂取量。ダイオキシン類のTDIについては、1999年6月に厚生省及び環境庁の専門家委員会で、当面4pgTEQ/kgbw/日(1日に体重1kg当たり4pgTEQの意味。体重50kgの人であれば、4pgTEQ×50kgで計算し、TDIは200pgTEQとなる。)とされている。


厚生労働科学研究費補助金(食品の安心・安全確保推進研究事業)
総 括 研 究 報 告 書

ダイオキシン類等の有害化学物質による食品汚染実態の把握に関する研究

分担研究者 堤 智昭 国立医薬品食品衛生研究所 食品部主任研究官

研究要旨

本研究では、ダイオキシン類を中心に難分解性・蓄積性の高い有害化学物質について、食品汚染実態の把握及び分析の迅速化を目的として、研究を実施した。 (1-1)トータルダイエット方式による塩素化ダイオキシン類の摂取量調査では、全国9機関で調製したトータルダイエット試料を分析し、食事経由ダイオキシン類一日摂取量の全国平均が1.11 ± 0.59 pg TEQ/kgbw/dayであることを明らかにした。(1〜5ページ(PDF:484KB)、 6〜12ページ(PDF:357KB)、 全体版(PDF:940KB))

(1-2)個別食品のダイオキシン類汚染実態調査では、鮮魚30試料、魚油を使用した健康食品10製品、及び健康茶5製品について塩素化ダイオキシン類を分析し、汚染実態を明らかにした。また、ハイリスクグループの可能性のある魚介類多食者に対して、モンテカルロ・シュミレーション法による魚介類からの塩素化ダイオキシン類摂取量を予備的に推計した結果、摂取量の平均値は153.15 pg TEQ/dayと推計された。(1〜2ページ(PDF:495KB)、 3〜5ページ(PDF:499KB)、 6〜9ページ(PDF:337KB)、 全体版(PDF:1,145KB))

(1-3)トータルダイエット方式による有機フッ素化合物(PFOA及びPFOS)の摂取量調査では、全国2機関で調製したトータルダイエット試料を分析した。魚介と飲料水を除く食品群では当該化合物は未検出(ND)であった。ND=0として計算した場合の平均一日摂取量は、PFOAで0.06 ng/kgbw/day、PFOSで0.98 ng/kgbw/dayであった。NDを検出下限値の1/2の値として計算した場合は、PFOAで11.5 ng/kgbw/day、PFOSで12.1 ng/kgbw/dayであった。(1〜4ページ(PDF:483KB)、 5〜7ページ(PDF:330KB)、 全体版(PDF:913KB))

(1-4)“食品中のダイオキシン類及びコプラナーPCBの測定方法暫定ガイドライン”を改正した。毒性等価係数(TEF)の改訂、並びに分析技術の進歩等に伴う分析条件等の改訂を行い、“食品中のダイオキシン類の測定方法暫定ガイドライン”として改正ガイドラインを公表した。(PDF:496KB)

(2-1)ダイオキシン類に対する芳香族炭化水素レセプター(AhR)レポータージーンアッセイの高感度化を目的として、ダイオキシン類応答性DNA領域(DRE)を4〜20個まで連結したルシフェラーゼレポーターベクターのダイオキシン応答性を検討した。DREの挿入方向や、用量反応曲線を作製し検討した結果、DREを正方向に20個連結したベクターでは、2,3,7,8-TCDDに対するルシフェラーゼ活性が増強された。しかし、ブランクにおけるルシフェラーゼ活性も上昇したため、活性倍率(TCDDに対する活性/ブランクの活性)の大幅な上昇は認められなかった。(1〜3ページ(PDF:498KB)、 4ページ(PDF:485KB)、 5〜7ページ(PDF:278KB)、 全体版(PDF:1,078KB))

(2-2)食品試料のAhR結合活性(ダイオキシン様活性)についてバイオアッセイにより実態調査を行った。高濃度でAhR活性が見込まれる試料として、加工食品であるサプリメントや健康食品(50種類の市販品)を取り上げ、レポータージーンアッセイ(ダイオキシン類とAhRとの結合を、ルシフェラーゼ活性により検出するバイオアッセイ)により評価した。その結果、主に大豆、ゴマ、プロポリスを原料とする試料の一部が、高濃度でAhR活性を示した。(1ページ(PDF:527KB)、 2〜4ページ(PDF:322KB)、 5ページ(PDF:525KB)、 6〜8ページ(PDF:298KB)、 全体版(PDF:895KB))

(2-3)食品中ダイオキシン類・PCBsの一斉迅速測定法の確立を目的として、分析に使用する内部標準物質中の不純物の検定を行った。13C12-mono-ortho PCBsの内部標準製品中に微量ながら13C12-non-ortho PCBsが不純物として含まれており、ネイティブnon-ortho PCBsの定量精度が著しく低下することが確認された。そこで、一斉法で使用予定である13C12-PCBs(1〜10塩化物)の内部標準物質(2製品)について不純物の有無を調べた結果、1製品に微量の不純物(2,3,4,6,7,8-hexaCDF)の存在が示唆された。不純物量は分析精度に著しい影響を及ぼすものではないが、低濃度域の定量精度に少なからず影響を及ぼすと考えられるため注意が必要である。(1〜6ページ(PDF:480KB)、 7〜10ページ(PDF:443KB)、 全体版(PDF:1,127KB))

(2-4)食品中のベンゾトリアゾール類の迅速機器測定法を開発することを目的とし、ベンゾトリアゾール類の測定のための基本物性を明らかにするとともに、HPLC分析とLC/MS/MS分析での当面の条件を決定し、高感度分析の可能性を示した。また、脂肪分の異なる3種類の魚を用いて、5種類の方法で脂肪のアルカリ分解条件を検討し、従来法の問題点を明らかにし、新しい抽出液分解法を提案した。(1〜2ページ(PDF:495KB)、 3ページ(PDF:592KB)、 4ページ(PDF:507KB)、 5ページ(PDF:505KB)、 6ページ(PDF:295KB)、 7ページ(PDF:636KB)、 8ページ(PDF:266KB)、 9ページ(PDF:585KB)、 10ページ(PDF:489KB)、 全体版(PDF:1,068KB))

(3)食品における臭素化ダイオキシン類及びその関連化合物質の汚染実態を調査した。本年度は、(1)臭素系ダイオキシン類、臭素化ジフェニルエーテル類(PBDEs)に、臭素化ビフェニル(PBBs)、コプラナー塩素・臭素化ビフェニル(PXBs)を加えた新たな分析法の検討と、その分析法を用いた個別食品での汚染調査、(2)三地域(九州、中国・四国、中部)の魚介類(45試料)についてヘキサブロモシクロドデカン(HBCDs)を分析した。その結果、(1)では、高分解能GC/MSによる検討の結果、PBDEs、PBBs、PXBs及びテトラブロモビスフェノールA については1種類のカラム(SLB-5MS)で測定が可能であった。魚試料の調査では、アナゴから4臭素化ダイオキシンが微量に検出された。PBDEsではすべての魚から#49、#47、#100、#99、#154、#153、#209などの異性体が検出され、PBBsでは4種類の魚から4-6臭素化体が検出された。PXBsは今回の魚試料からは、検出されなかった。(2)では、ΣHBCDsの中央値は、九州(0.04 ng/g ww、 1.1 ng/g lw)<中国・四国(0.08 ng/g ww、 7.0 ng/g lw)<中部(1.2 ng/g ww、 100 ng/g lw)の順に汚染が高くなり、この結果からも、海産食品のHBCD汚染が地域によっては、進んでいることが示唆された。(1〜13ページ(PDF:435KB)、 14〜15ページ(PDF:461KB)、 16〜17ページ(PDF:473KB)、 18〜19ページ(PDF:471KB)、 20〜21ページ(PDF:473KB)、 22〜25ページ(PDF:404KB)、 26〜28ページ(PDF:396KB)、 全体版(PDF:1,713KB))

分担研究者

米谷民雄国立医薬品食品衛生研究所

食品部長

堤 智昭国立医薬品食品衛生研究所

食品部主任研究官

中川礼子福岡県保健環境研究所

生活化学課長

A.研究目的

ダイオキシン類に代表される難分解性かつ高蓄積性の有害化学物質は、一旦、環境中に排出されると長期間にわたり残留する。また、高蓄積性であるため食物連鎖を経て食品中に濃縮された結果、食品中に高濃度に残留し、人の健康に影響を及ぼす危険性がある。そこで、これら有害化学物質の人体への影響を評価するためには、食品汚染状況の把握が重要である。さらに、汚染調査を効率的に行うために、食品中の有害化学物質を迅速に測定できる分析法の開発が必要

   とされる。

本研究の目的は、ダイオキシン類(塩素化、臭素化、塩素・臭素化混合物)を中心に、臭素化難燃剤及び有機フッ素化合物について、トータルダイエット調査及び個別食品の汚染調査を行い食品からの摂取量を推定する。また、食品中のダイオキシン類、ポリ塩化ビフェニル(PCBs)、及びベンゾトリアゾール類を対象に、バイオアッセイや機器分析による迅速測定法を開発する。これらの目的のために、次の研究を実施した。

(1)食品からの塩素化ダイオキシン類及び有機フッ素化合物の摂取量調査

(1-1)塩素化ダイオキシン類のトータルダイエット調査

(1-2)塩素化ダイオキシン類の個別食品汚染調査

(1-3)有機フッ素化合物のトータルダイエット調査

(1-4)食品中のダイオキシン類分析法ガイドラインの改正

(2)食品中のダイオキシン類等の有害化学物質に対する迅速測定法の開発

(2-1) ダイオキシン類に対する高感度レポータージーンアッセイの開発

(2-2) 食品試料の芳香族炭化水素レセプター結合活性の調査

(2-3) 食品中ダイオキシン類およびPCBsの迅速一斉分析法の検討

(2-4) 食品中ベンゾトリアゾール類の迅速測定法の開発

(3)食品中の臭素化ダイオキシン類及びその関連化合物の汚染調査

B.研究方法

(1-1)塩素化ダイオキシン類のトータルダイエット調査

トータルダイエット試料は、全国7地区の9機関で調製した。厚生労働省の平成14年度国民栄養調査並びに平成15、16年度国民健康・栄養調査の各地区における食品別摂取量表に基づいて、それぞれ食品を購入し、それらの食品を計量し、そのまま、または調理した後、13群に大別して、混合均一化したものを試料とした。さらに第14群として飲料水を試料とした。第10群(魚介)、11群(肉・卵)及び12群(乳・乳製品)は、各機関で魚種、産地、メーカー等が異なる食品で構成された各3セットの試料を調製した。これらについて、「食品中のダイオキシン類測定方法ガイドライン」に従ってダイオキシン類を分析し、一日摂取量を算出した。なお、第10、11及び12群を除く食品群試料は9機関で調製した試料を各群毎に5ブロックに分け、複数機関の試料を混合して分析を行った。

(1-2) 塩素化ダイオキシン類の個別食品汚染調査 

鮮魚(30試料)、魚油を使用した健康食品(10試料)、及び嗜好飲料として健康茶(5製品)について、「食品中のダイオキシン類測定方法ガイドライン」に従ってダイオキシン類を分析した。

また、ハイリスクグループの可能性のある魚介

  

類多食者について、モンテカルロ・シュミレーション法による魚介類からの確率論的暴露評価を予備的に行った。ダイオキシン類汚染データは、平成10〜18年度に行われた魚介類の個別食品汚染調査結果を使用した。

(1-3)有機フッ素化合物のトータルダイエット調査

トータルダイエット試料は、全国2地区の2機関で調製した。厚生労働省の平成14年度国民栄養調査並びに平成15、16年度国民健康・栄養調査の各地区における食品別摂取量表に基づいて、それぞれ食品を購入し計14食品群を調整した。有機フッ素化合物(PFOA及びPFOS)の分析にはLC/MS/MSを使用し、安定同位体による内標準法により定量した。

(1-4)食品中のダイオキシン類分析法ガイドラインの改正

毒性等価係数(TEF)の改正、分析条件の更新を中心に“食品中のダイオキシン類及びコプラナーPCBの測定方法暫定ガイドライン”を改正した。改正作業を行うにあたりダイオキシン類分析の専門家より構成される検討会を開催し、検討項目について議論した。

(2-1)ダイオキシン類に対する高感度レポータージーンアッセイの開発

芳香族炭化水素レセプター(AhR)結合レポータージーンアッセイの高感度化を検討した。ダイオキシン類応答性DNA領域(DRE)を4〜20個まで連結したルシフェラーゼレポーターベクターの検討を行った。各ベクターを培養細胞株(Hepa1c1c7)に一過性のトランスフェクションを行い、2,3,7,8-tetrachlorodibenzo-p-dioxin(TCDD)暴露により誘導されたルシフェラーゼ活性を比較した。

(2-2)食品試料のAhR結合活性の調査

ダイオキシン類の迅速測定法(バイオアッセイ)の信頼性確保に関する基礎的検討を目的に、食品試料のAhR結合活性(ダイオキシン様活性)について実態調査を行った。高濃度で

AhR活性が見込まれる試料として、濃縮物が中心の加工食品であるサプリメントや健康食品(50種類の市販品)を取り上げ、AhR結合レポータージーンアッセイ(ダイオキシン類とAhRとの結合を、ルシフェラーゼ活性により検出するバイオアッセイ)により評価した。

(2-3)食品中ダイオキシン類およびPCBsの迅速一斉分析法の検討

食品中ダイオキシン類・PCBsの迅速分析法の確立を目的に、分析に使用する内部標準物質中の不純物の検定を行い、種類の異なる内部標準製品を抽出時に同時使用する(混合して使用する)ことが可能であるか調べた。国内で市販されている内部標準製品のうち3種類を入手し、各々を高分解能ガスクロマトグラフ/高分解能質量分析計(HRGC/HRMS)に注入して分析した。

(2-4)食品中ベンゾトリアゾール類の迅速測定法の開発

食品中のベンゾトリアゾール類の迅速測定法を開発することを目的に、ベンゾトリアゾール類の測定のための基本物性を明らかにするとともに、HPLC分析とLC/MS/MS分析での当面の条件を検討した。また、脂肪分の大きく異なる3種類の魚を用いて、5種類の方法で脂肪のアルカリ分解条件を検討し、従来法の問題点を明らかにし、新しい抽出液分解法を提案した。

(3)食品中の臭素化ダイオキシン類及びその関連化合物の汚染調査

臭素化ダイオキシン類及びその関連化合物質の汚染実態を明らかにすることを目的として、(1)臭素系ダイオキシン類(PBDD/DFs、 MoBrPCDD/DFs)、臭素化ジフェニルエーテル類(PBDEs)に、臭素化ビフェニル(PBBs)、コプラナー塩素・臭素化ビフェニル(PXBs)を加えた新たな分析法の検討と、その分析法を用いた個別食品での汚染調査、(2) 三地域(九州、中国・四国、中部)の魚介個別食品45試料についてヘキサブロモシクロドデカン(HBCDs)を分析した。(1)では、GC分析カラムの検討、前処理法の分画条件などを検討し、測定対象化合物を全て測

  

定できるHRGC/HRMS法の検討を行った。また、開発した方法を使用して5種類の鮮魚の汚染調査を実施した。(2)では既に開発した分析法により、HBCDsを分析した。試料は2004年-2005年に九州地方(天草)、中部地方(三河湾、伊勢湾)、中国・四国地方(瀬戸内海)の鮮魚店から、各地域で捕れた魚介類を購入した。各15件、計45試料で生鮮魚介が44試料、加工食品が1試料であった。

C.結果及び考察

(1-1)塩素化ダイオキシン類のトータルダイエット調査

ダイオキシン類の国民平均一日摂取量は1.11 ± 0.59 pg TEQ/kgbw/day(範囲0.42〜3.32 pg TEQ/kgbw/day)であった。これは、平成10年度以降(平成10〜18年度)の調査結果の中で2番目に低い値であった。最大値は3.32 pg TEQ/kgbw/dayであり、昨年度の最大値(1.94 pg TEQ/kgbw/day)よりやや高い値であったが、この場合でも日本における耐容一日摂取量(4 pg TEQ/kgbw/day)を下回っていた。なお、同一機関で調製した試料であってもダイオキシン類摂取量には1.5〜4.3倍の差が認められた。

(1-2) 塩素化ダイオキシン類の個別食品汚染調査

鮮魚についてはサケ・マス(8試料)で平均0.55 pg TEQ/g(範囲0.12〜2.6 pg TEQ/g)、ブリ(6試料)で平均3.1 pg TEQ/g(範囲1.2〜8.0 pg TEQ/g)、マグロ(8試料)で平均3.0 pg TEQ/g(範囲0.23〜5.5 pg TEQ/g)、マダイ(8試料)で平均1.2 pg TEQ/g(範囲0.44〜4.3 pg TEQ/g)のダイオキシン類が検出された。また、魚油を使用した健康食品では、0.72〜53 pg TEQ/gのダイオキシン類が検出された。添付書に従い健康食品を摂取した場合、ほとんどの製品ではTDIの25%以下のダイオキシン類摂取量であった。鮫肝油を使用した1製品については比較的高め(53 pg TEQ/g)のダイオキシン類が検出され、本製品を摂取した場合はTDIの約60%に相当した。健康茶では0.000066〜0.30 pg TEQ/gのダイオキシン類が検出された。鮮魚や

健康食品と比べると、汚染濃度は低濃度であった。

また、魚介類多食者に対して、モンテカルロ・シミュレーション法による魚介類からのダイオキシン類摂取量を推計した。その結果、摂取量の平均値は153.15 pg TEQ/dayと推計され、TDIの約75%であった。摂取量の内訳は平均PCDD/Fs曝露量が42.37 pg TEQ/day、平均Co-PCBs曝露量が110.78 pg TEQ/dayと推計された。

(1-3)有機フッ素化合物のトータルダイエット調査

TDS試料を全国2地区(関東及び関西地区)で調製したTDS試料について、PFOA及びPFOSを分析した。その結果、魚介類(10群)にPFOSが、飲料水(14群)にPFOA及びPFOSが検出された。その他の食品群ではPFOA及びPFOSは未検出(ND)であった。ほとんどの食品群がNDであるため正確な摂取量を把握するのは困難であるが、ND=0として計算した場合の平均1日摂取量は、PFOAで0.06 ng/kgbw/day、PFOSで0.98 ng/kgbw/dayであった。また、NDに検出下限値の1/2の値を用いた場合の摂取量は、PFOAで11.5 ng/kgbw/day、PFOSで12.1 ng/kgbw/dayであった。リスク評価を行うため、ND=LOD/2の場合の摂取量を、健康リスクの初期評価として提案されている無毒性量等(PFOA及びPFOS共に0.03 mg/kg/day)と比較した。その結果、無毒性量等はPFOAで2.6×103、PFOSで2.5×103倍大きい値であった。平均的な食生活をする限り、PFOA及びPFOSによる健康影響が生じるとは考えにくかった。

(1-4)食品中のダイオキシン類分析法ガイドラインの改正

TEFの改訂及び分析技術の進歩等に伴い、“食品中のダイオキシン類及びコプラナーPCBの測定方法暫定ガイドライン”を改正した。TEFについては、WHOより提案された新しいTEF(2005 TEF)に変更した。前処理操作については、DMSO分配処理操作の追加、及び前処理操作に必要な試薬等を見直した。また、ガスクロマトグラフ分析条件の例示、試料測定時の確認

  

事項(相対感度係数の変動の許容範囲等)も見直した。これらの改正点をとりまとめ、“食品中のダイオキシン類の測定方法暫定ガイドライン”として公表した。

(2-1)ダイオキシン類に対する高感度レポータージーンアッセイの開発

DREを4〜20個まで連結したルシフェラーゼレポーターベクターのTCDD暴露によるルシフェラーゼ活性を検討した。連結したDREが正方向に数が多くなるとルシフェラーゼ活性が増大し、DREを4つしか含まない従来の場合と比較し、最大5倍の活性増強が認められた。各TCDD濃度におけるルシフェラーゼ活性倍率(各TCDD濃度における活性/TCDDを含まないブランクの活性)を算出したところ、DREを正方向に20個連結したpGL7.5Fベクターが最も高い倍率を示した。そこで、pGL7.5Fを含むいくつかのベクターについて、TCDD用量反応曲線(3.14〜314 pM)を作製した。その結果、ルシフェラーゼ活性はTCDD濃度に依存して誘導され、特にpGL7.5FベクターではDREを4つしか含まない場合と比較すると、いずれの濃度でも高い活性が認められた。しかし、活性倍率については、いずれの濃度においても大幅な違いは認められなかった。この原因としては、レポーターベクター上の連結したDRE数が増えるに従い、ブランクにおけるルシフェラーゼ活性が上昇したためだと考えられる。今後は、ブランクにおける活性を下げる何らかの工夫が必要になると考えられる。

(2-2)食品試料のAhR結合活性の調査

50種類の市販品について、レポータージーンアッセイ(ダイオキシン類とAhRとの結合を、ルシフェラーゼ活性により検出するバイオアッセイ)により、AhR結合活性を評価した。その結果、主に大豆、ゴマ、プロポリスを原料とする試料の一部が,高濃度でTCDDと同等のAhR活性を示した。今回、一部の試料が高濃度ではあるが、食品成分に由来すると考えられるAhR活性を示したことから、特に活性を示した食品原料中のダイオキシン類濃度を本バイオアッセイにより測定する際は、測定結果の慎重な解釈が必要であるこ

とが考察された。

(2-3)食品中ダイオキシン類およびPCBsの迅速一斉分析法の検討

内部標準製品(3種類)についてHRGC/HRMS分析し、不純物の検定を行った。その結果、13C12-mono-ortho PCBsの8種同族体を成分とする内部標準製品中に、微量ながら4種類の13C12-non-ortho PCBs同族体(#77、#81、#126、#169)が不純物として含まれていることが確認できた。当該製品を魚試料中ダイオキシン類分析に使用したとき、これらの不純物の影響によって、4種類のネイティブnon-ortho PCBs各同族体の定量精度は著しく低下した。そこで一斉分析法で使用予定である13C12-PCBs(1〜10塩化物の27種化合物)の内部標準物質で、組成と濃度が同じ2製品について不純物の有無を調べた。その結果、1製品に微量ながら2,3,4,6,7,8-hexaCDFの存在が示唆された。2,3,4,6,7,8-hexaCDFの不純物量は分析精度に著しい影響を及ぼすものではないと推察されたが、本製品を一斉迅速分析に使用する際には、検出限界値付近の低濃度領域において精度に少なからず影響を及ぼす量として、注意が必要と考えられた。

(2-4)食品中ベンゾトリアゾール類の迅速測定法の開発

測定対象とする6種類のベンゾトリアゾール類の測定のための基本物性を明らかにするとともに、HPLC分析とLC/MS/MS分析での当面の条件を決定した。HPLC条件はSunFireC18(2.1×150mm、 3.5μm)カラムを用い、メタノール/水(99/1〜97/3)を移動相として、305nmと340nmの検出波長により測定した。LC/MS/MS条件はSunFireC18(2.1×150mm、 3.5μm)カラムを用い、メタノール/水(99/1)を移動相として、APCI(+)のイオン化法でMRM測定した。

また、魚試料の前処理法として、5種類の方法で脂肪のアルカリ分解条件を検討し、従来法の問題点を明らかにし、新しい抽出液分解法を提案した。抽出液分解法では、4試料が同時に抽出できる加熱流下式高速抽出装置SE-100型(ダイアインスツルメンツ社製)を用いて抽出を行

  

った。魚試料を、30℃で15min静置後、エタノール・ヘキサン混合液(1:1)を6mL/minで75min間通液して抽出液を得た。抽出液にKOHを加えアルカリ分解後、水を加えてヘキサン抽出する方法を開発した。

(3)食品中の臭素化ダイオキシン類及びその関連化合物の汚染調査

全ての対象とする臭素系化合物の分析を1種類のGCカラムで高感度測定できないかを検討した。GCカラムとして5%フェニルメチルポリシロキサン系のDB-5、ENV-5MS、SLB-5MS、VF-5MSを検討した。感度、分離能について検討した結果、今回検討したカラムでは、全ての臭素系化合物を1種類のカラムで分析することはできないと考えられた。そこでPBDEs、PBBs、PXBs、TBBPA(エチル化体)はSLB-5MSで、PBDD/DFsはDB-5で測定することにした。

また、測定対象化合物の分画試験を行い、前処理操作の分析フローを決定した。すなわち、魚試料(凍結乾燥物)を高速溶媒抽出し、硫酸処理後、シリカゲルカラム精製を行う。その後、フロリジルカラムにより第1分画(PBDEs、PBBs、PXBs)と第2分画(PBDD/DFs)に分画する。第1分画はDMSO分配を行い、HRGC/HRMS分析に供する。第2分画は活性炭カラム精製を行い、HRGC/HRMS分析に供する。

本法による魚試料(5種類)を分析した結果、アナゴから4臭素化ダイオキシンが微量に検出されたが、その他の魚からはPBDD/DFsは検出されなかった。PBDEsではすべての魚から#49、#47、#100、#99、#154、#153、#209などの異性体が検出され、PBBsでは4種類の魚から4-6臭素化体の異性体が検出された。PXBsは今回の魚試料からは、いずれの異性体も検出されなかった。

次に、三地域(九州、中国・四国、中部)の魚介個別食品45試料についてHBCDsを既報に従い分析した。その結果、ΣHBCDsの中央値は、九州(0.04 ng/g ww、1.1 ng/g lw)<中国・四国(0.08 ng/g ww、7.0 ng/g lw)<中部(1.2 ng/g ww、100 ng/g lw)の順に汚染が高くなり、この結果からも、海産食品のHBCD汚染が地域によっては、進んでいることが示唆された。



D.結論

1. トータルダイエットによる摂取量調査の結果、塩素化ダイオキシン類の一日摂取量は、1.11 ± 0.59 pg TEQ/kgbw/day(範囲0.42〜3.32 pg TEQ/kgbw/day)であり、TDIを下回っていた。

2. 鮮魚、健康食品、及び健康茶について塩素化ダイオキシン類濃度を調査した結果、鮮魚と健康食品の一部で比較的高い濃度のダイオキシン類が検出された。一部の食品を多食することを避け、バランスのとれた食生活を送ることが、ダイオキシン類摂取量を減らすために有効であると考えられる。

3. ハイリスクグループの可能性のある魚介類多食者に対して、モンテカルロ・シミュレーション法による魚介類からのダイオキシン類摂取量を予備的に推計した。その結果、摂取量の平均値は153.15 pg TEQ/dayと推計された。

4. トータルダイエット試料によるPFOA/PFOSの摂取量調査を実施した結果、ND=0の場合の平均1日摂取量はPFOAで0.06 ng/kgbw/day、PFOSで0.98 ng/kgbw/dayであった。ND= LOD/2の場合は、PFOAで11.5 ng/kgbw/day、PFOSで12.1 ng/kgbw/dayであった。毒性試験データから考察すると、平均的な食生活をしている場合、健康影響が生じる可能性は低いと考えられた。

5. 連結DREを正方向に多く導入することで、レポーターベクターのTCDD応答性が高まった。しかし、連結DREを多く含むと、ブランク値におけるルシフェラーゼ活性の上昇が生じるため、活性倍率の大幅な上昇は認められなかった。今後は、検討したベクターを使用して安定細胞株を作製し、ブランク値の低いクローンを選択する必要があると考えられる。

6. 市販加工食品50種を試料とし、ダイオキシン様活性を評価した。その結果、大豆抽出物、ゴマ抽出物、プロポリス抽出物などの含有加工食品が、高濃度でAhR活性を示した。

7. ダイオキシン類及びPCBs分析用の一部の

 

内部標準物質(安定同位体)には、ネイティブのダイオキシン類が不純物として含まれていた。不純物の影響によりダイオキシン類の定量精度が低下する場合があるため、注意が必要であった。

8. 6種類のベンゾトリアゾール類の基本物性およびHPLCとLC/MS/MS分析の例から、魚介類試料中のベンゾトリアゾール類を高感度で迅速測定できる可能性を示した。従来のアルカリ分解・抽出法の問題点を改善し、新規の抽出液分解法を提案して分解条件と分解後の抽出条件を決定した。

9. 臭素化ダイオキシン類及びその関連化合物を効率よく分析するHRGC/HRMS分析法を開発した。魚試料(5試料)の汚染調査では、アナゴから4臭素化ダイオキシンが微量に検出されたが、その他の魚からはPBDD/Fsは検出されなかった。PBDEsではすべての魚から#49、#47、#100、#99、#154、#153、#209などの異性体が検出され、PBBsでは4種類の魚から4-6臭素化体の異性体が検出された。PXBsは今回の魚試料からは、いずれの異性体も検出されなかった。また、日本の3つの地域(九州、中国・四国、中部)から集めた魚介食品45試料についてHBCDsを分析した。ΣHBCDsの中央値は、九州<中国・四国<中部の順に汚染が高くなり、この結果からも、海産食品のHBCD汚染が地域によっては、進んでいることが示唆された。今後はPBDE汚染とともにHBCD汚染の推移についても継続的に注視する必要があると考えられる。

E.健康危険情報

なし

F. 研究発表

1. 論文発表

1) Hori T, Yasutake D, Tobiishi K, Ashizuka Y, Kajiwara J, Nakagawa R, Iida T, Tsutsumi T, Sasaki K. Comparison of accelerated solvent extraction and alkaline digestion-hexane shaking extraction for determination of dioxins

in animal-origin food sample. Organohalogen Compounds 2007: 69: 1118-1121.

2) Murata S, Nakagawa R, Ashizuka Y, Hori T, Yasutake D, Tobiishi K, Sasaki K. Brominated flame retardants (HBCD,TBBPA and ΣPBDES) in market basket food samples of northern Kyushu district in Japan. Organohalogen Compounds 2007: 69: 1985-1988.

3) Tsutsumi T, Amakura Y, Tanno K, Yanagi T, Kono Y, Sasaki K, Maitani T. Dioxins and other organohalogen compounds in fish oil supplements on the Japanese market. Organohalogen Compounds 2007: 69: 2371-2374.

4) Ashizuka Y, Nakagawa R, Murata S, Yasutake D, Hori T, Horie M, Nishioka C, Takahashi T, Tamura I, Teshirogi T, Sasaki K. Daily intake of brominated dioxins and polybrominated diphenyl ethers estimated by market basket study. Organohalogen Compounds 2007: 69: 2769-2272.

5) Ashizuka Y, Nakagawa R, Hori T, Yasutake D, Tobiishi K, Sasaki K. Determination of brominated flame retardants and brominated dioxins in fish collected from three regions of Japan. Mol. Nutr. Food Res. 2008: 52: 273-283.

2.学会発表

1) 芦塚由紀,中川礼子,村田さつき,堀 就

 

英,安武大輔,堀江正一,西岡千鶴,高橋哲夫,田村征男,手代木年彦,佐々木久美子:マーケットバスケット方式による臭素化ダイオキシン及び臭素化ジフェニルエーテルの摂取量調査.第16回環境化学討論会 (2007.6).

2) 村田さつき,芦塚由紀,中川礼子,堀 就英,佐々木久美子:食品の有機臭素系化合物分析とその汚染濃度.第16回環境化学討論会 (2007.6).

3) 村田さつき,芦塚由紀,中川礼子,堀 就英,佐々木久美子:食品中の臭素系難燃剤の分析.第44回全国衛生化学技術協議会年会 (2007.11).

4) 堤 智昭、天倉吉章、柳 俊彦、河野洋一、中村宗知、野村孝一、内部博泰、丹野憲二、佐々木久美子、米谷民雄:トータルダイエットスタディによるダイオキシン類摂取量調査〜ここ数年間の全国調査結果について〜. 第44回全国衛生化学技術協議会年会 (2007.11).

G. 知的財産権の出願、登録

なし

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