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病院会計準則(改正案)作成にあたっての検討内容と結論

 
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W.病院会計準則(改正案)作成にあたっての検討内容と結論

1.財務諸表の体系及び区分・配列・運営指標について
 従来、財務諸表の体系には損益計算書、貸借対照表、利益処分計算書、附属明細表が掲げられていたが、今回、施設としての病院には、配当等、利益の処分行為が予定されないので、まず、利益処分計算書を体系から除外した。続いて、貸借対照表の資産・負債差額の本質を再確認し、これを資本としてではなく、純資産と位置付けた。その結果、貸借対照表における表示区分は、資産の部、負債の部及び純資産の部となる。
 業務活動を通じた増減プロセス及び結果を開示する財務書類を運営計算書と定義するのは非営利会計の理念型であるが、すでに損益計算書が病院関係者に広く普及しており、病院業務の効率性を示す経営指標の名称を変更しないで済むという利点が認められる。そこで、本研究班は従来どおり、一定期間の運営状況を把握するため損益計算書を作成・開示することとした。損益計算書においては、段階別計算を行い、医業損益、経常損益、当期純利益の各運営指標を明示する。
 また、近時の会計制度改革に沿って、キャッシュ・フロー状況を施設毎に把握する必要性が高まっている。施設としての病院におけるキャッシュ・フロー計算書の必要性について、種々の視点より検討を重ねた結果、病院経営上、運営状況を把握し、資金管理を円滑に進めていく上でキャッシュ・フロー情報は不可欠であるとの結論に至り、これを財務諸表体系に追加している。キャッシュ・フロー計算書においては、業務活動によるキャッシュ・フロー、投資活動によるキャッシュ・フロー、財務活動によるキャッシュ・フローの各区分を設け、病院におけるキャッシュ・フローをわかりやすく描写する。
 上記3つの基本財務諸表については、ある程度集約化し、経営状況の全体を把握しうるよう配慮しながら、本部費の明細・配賦基準の記載を含め、附属明細表を充実し、詳細な分析をも可能とする。さらに、財務諸表に記載されている会計数値の前提に関しては、脚注で開示することにより、会計情報の明瞭化を進めるものとする。

2.会計準則の体系について
 病院会計準則の構成内容については、本準則だけですべての指針を提示することは困難であり、また、開設主体間の制度のちがいも認められるところであり、基本的枠組みを中心に取り纏めることとし、従来同様、総則、一般原則を冒頭に掲げ、これに続いて各財務表について会計処理の原則及び手続並びに表示方法を示している。但し、最近の貸借対照表重視の流れを汲み、貸借対照表原則、損益計算書原則、キャッシュ・フロー計算書原則、附属明細表原則の順に配置した。
 なお、従来、巻末に一括して記載されていた注解及び別表として添付されていた各財務表の様式については、これを各財務表原則に続けて示すことにし、利便性を高めている。また、別表として、「勘定科目の説明」を付する。なお、財務諸表の科目について、基本財務諸表(貸借対照表、損益計算書、キャッシュ・フロー計算書)上は、一覧性を重視し、詳細な情報は附属明細表等によって補完する。
したがって、病院会計準則は下記のような構成となる。

  1.病院会計準則(改正案)について
  2.病院会計準則(改正案)
   T.総則
   U.一般原則
   V.貸借対照表原則
   W.損益計算書原則
   X.キャッシュ・フロー計算書原則
   Y.附属明細表原則
  3.別表 勘定科目の説明(改正案)

 
3.近時の会計国際化への対応
 企業会計をはじめ近時の会計制度の改革に配慮し、リース会計、研究開発費会計、退職給付会計等を導入し、財務諸表によって病院経営の実態をより適切に把握するように配慮するとともに、必要な脚注等を充実させ、会計情報を補完し、利用者の理解を図るため、その前提となる非会計情報についても記載することとした。
 リース会計については、ファイナンス・リース取引は実質売買取引であり、リース資産の利用者側ではオンバランス(貸借対照表に計上)することとした。
退職給付会計については、一時金及び年金を対象に、将来の退職給付予想額の現時点までの発生額にもとづき負債を認識する。
 税効果会計については、法人単位での負担すべき税額を基礎として、これを各施設に配賦する。
研究開発費については、無形固定資産として計上されるソフトウェアを除き、発生時の費用として処理することを基本とする。

4.純資産の部について
 複数の施設を開設する主体において、病院を会計単位として作成される貸借対照表上、資金調達源泉は負債と純資産に区分される。従来の病院会計準則で規定されていた資本の部を純資産の部に改訂し、これを資産と負債の差額と定義した。資本の部に記載された出資金、資本剰余金、利益剰余金の区別は単独の施設においては有用性が認められず、純資産の部に一括表示することが会計目的に適合する。
 施設としての病院における純資産は、病院運営活動を通じた損益計算の結果、増加又は減少するだけでなく、非償却資産の取得にあてる補助金、その他有価証券の評価差額等が発生した場合、さらには同一開設主体の他の施設又は開設主体外部との資金等の授受によっても変化する。   開設主体の財務諸表を作成するためには、施設単位で発生するこれらの取引を会計帳簿に記録しなければならず、開設主体の資本の部を構成する勘定を予め各施設において設定しておかなければならない。病院は会計帳簿において勘定ごとに取引、事象を記録するが、貸借対照表においては、これらを合計して記載することとなる。

5.損益取引区別の原則について
 病院の貸借対照表上、資本剰余金と利益剰余金の区別は必要でないものの、当期の業務活動の結果としての損益を適正に算定するためには、収益又は費用を発生させる取引とこれらを伴わないで純資産の増加又は減少をもたらす取引とを区別しておかなければならない。ここに損益取引区別の原則の意義がある。
 純資産の部において資本と利益を区別して表示することでなく、業務活動の結果、病院施設においてどれだけの純資産が蓄積されたかを示すこと、いわば組織としての効率性を測る経営指標を実態に合わせて適正に算定することが狙いである。純資産の部において、当期純利益又は当期純損失を内書きし、当期の業務活動の結果、増減した純資産の額を独立して表示し、純資産全体の中での構成を明示するのである。
 
6.補助金の会計処理
 補助金の会計処理については、補助金交付の意義を踏まえ、さらに計算構造の見直しを前提として、収益の繰延処理が妥当であるとの結論に達した。当初、受入時に負債として認識し、以後、補助対象業務の遂行に伴い、収益に計上する。

7.本部費の会計処理
 本部会計を設置するか否かは法人の裁量であるが、本部費の計上範囲、配賦基準を統一化しないと、病院間の比較が適正になされないばかりか、施設の経営実態に係わる判断を歪める虞もある。そこで、施設を複数併設する法人における本部費の会計処理については、異なる開設主体の施設間の比較可能性を高める見地から、各施設への配賦対象となる本部費の範囲を医業費用として計上される内容に限定し、配賦額の内容を明確にするとともに、附属明細表でその内訳及び配賦基準を明示することとした。なお、本部費は支出額を基礎に測定し、本部費配賦額として医業費用の末尾に表示して、医業損益を算定することとする。

8.繰延資産の取扱い
 繰延資産については、内容を個別的に検討し、また、近時の会計基準の動向に鑑み、これを独立の区分としては設定しないこととした。従来、繰延資産に計上されていた項目のうち、資産性が認められるものについては、固定資産の「その他の資産」の区分にとして表示することになる。なお、債券発行時に生じることが予想される発行額と償還額との差額は、別途、負債の部又は資産の部に記載する。



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