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重要事例情報−分析集



事例533:(休日の処方変更システム不備による誤薬)

発生部署(入院部門一般) キーワード(与薬(内服・外用))

■事例の概要(全般コード化情報より)
発生月【11月】 発生曜日【日曜日】曜日区分【休日】発生時間帯【10〜11時】
発生場所【ナースステーション】
患者の性別【男性】 患者の年齢【71】
患者の心身状態【意識障害】
発見者【2】
当事者の職種【看護師】
当事者の職種経験年数【5年7ヶ月】
当事者の部署配属年数【5年7ヶ月】
発生場面【内服】
(薬剤・製剤の種類)【循環器用薬】
発生内容【単位間違い】
発生要因-確認【確認が不十分であった】
発生要因-観察【          】
発生要因-判断【          】
発生要因-知識【          】
発生要因-技術(手技)【          】
発生要因-報告等【          】
発生要因-身体的状況【          】
発生要因-心理的状況【          】
発生要因-システムの不備【          】
発生要因-連携不適切【          】
発生要因-勤務状態【多忙であった】
発生要因-医療用具【          】
発生要因-薬剤【          】
発生要因-諸物品【          】
発生要因-教育・訓練【          】
発生要因-患者・家族への説明【          】
発生要因-その他【          】
間違いの実施の有無及びインシデントの影響度【間違いが実施されたが、患者に影響がなかった事例】
備考【                   】

■ヒヤリ・ハットの具体的内容
 降圧剤増量となり、ミニプレス(0.5mg)3丁3×から、ミニプレス(1mg)3丁3×となった。内服薬を見たら、ミニプレスが以前のままの分包となっていた。

■ヒヤリ・ハットの発生した要因
 休日に内服薬が変更になった時、その場で定時処方薬の変更ができなかった。

■実施したもしくは考えられる改善策
 申し送りを確実にする。



専門家からのコメント


■記入方法に関するコメント
 ヒヤリ・ハットの発生した要因にある、休日に変更指示があった時、その場で定時薬が変更できなかった理由や状況を書いて頂くと対策が具体的に挙げられるでしょう。
 例えば、(1)なぜ定時薬を日曜日に変更しなければいけなかったのでしょうか。(2)勤務状態は「多忙であった」とありますが、どのような状況であったのでしょうか。(3)患者の心身の状態は「意識障害」とありますが、どの程度だったのでしょうか。内服が可能だったのでしょうか。(4)休日の指示変更システムは平日と同じでしょうか。(5)休日は薬剤師が日当直していないのでしょうか。(6)薬剤師当直がいない場合、変更薬の払出しシステムはどのようになっているのでしょうか。
 また、休日の場合、薬剤の変更はだれが、どのように実施することになっていたのでしょうか。この場合の"以前のままの分包"の記載も、だれが、どのように分包(具体的には、ミニプレス1錠(0.5mg)を1mgにするために1回2錠ずつに作り直した)したかを記載すると、こうした業務自体を見直すために有効な情報となるでしょう。


■改善策に関するコメント
 「ミスは結果であり原因ではない」と言われるように、上記のような状況がわかれば、具体的な対策があがるでしょう。

薬剤師の休日勤務の検討
 薬剤師が夜間・休日勤務していない施設があることにより、平日とは異なった手順のなかで事故が発生している事例があります。この事例の報告者であり当事者は看護師となっていますが、夜間や休日に薬剤師が不在なためにやむを得ず状況に応じて薬剤業務を実施して起きたインシデントです。病院管理者はこうした事例をもとに夜間や休日の安全管理体制のあり方を見直す必要があるでしょう。

夜間・休日時の指示変更の検討
 薬剤師が休日勤務しても、平日と同じような対応はできないことが多いでしょうから、次に休日の指示変更時のルール等を検討します。
 この事例では、改善策として「申し送りを確実にする」ことが挙げられていることなどから、変更があった当日は指示通りに投与され、翌日の月曜日の担当者に連絡されなかったことが推測されます。休日の変更にやむを得ず病棟で対応することがある場合でも、月曜日には病棟内および薬局に変更指示がきちんと伝達されるようなしくみを確立しておくことが必要です。

マニュアルの遵守とルールの見直し
 ルールを決めても、ルールが守られないことが発生します。それは、現場状況と乖離したルールの時もありますが、時には医師・看護師間や医師・薬剤師間の力関係(権威勾配によって)で守られないときもあります。決められたルールを遵守できる環境作りも大切です。本事例の場合は、患者の状態が変化ない(血圧値は高めではあるが、金曜日と比較し大差ない)状況であったとすれば、インシデントの分析には医師も参加してもらい、患者の状況と日曜日に定時処方を変更した妥当性も検討できるとよいでしょう。




事例568:(麻薬性鎮痛薬の渡し忘れ)

発生部署(入院部門一般) キーワード(与薬(内服・外用)、麻薬)

■事例の概要(全般コード化情報より)
発生月【12月】 発生曜日【水曜日】曜日区分【平日】発生時間帯【14〜15時】
発生場所【病室】
患者の性別【男性】 患者の年齢【54】
患者の心身状態【睡眠中】
発見者【99】
当事者の職種【看護師】
当事者の職種経験年数【20年9ヶ月】
当事者の部署配属年数【  年9ヶ月】
発生場面【内服】
(薬剤・製剤の種類)【麻薬】
発生内容【無投薬】
発生要因-確認【          】
発生要因-観察【          】
発生要因-判断【          】
発生要因-知識【          】
発生要因-技術(手技)【          】
発生要因-報告等【          】
発生要因-身体的状況【          】
発生要因-心理的状況【他のことに気を取られていた】
発生要因-システムの不備【          】
発生要因-連携不適切【          】
発生要因-勤務状態【          】
発生要因-医療用具【          】
発生要因-薬剤【          】
発生要因-諸物品【          】
発生要因-教育・訓練【          】
発生要因-患者・家族への説明【          】
発生要因-その他【          】
間違いの実施の有無及びインシデントの影響度【仮に実施されていても、患者への影響は小さかった(処置不要)と考えられる】
備考【                   】

■ヒヤリ・ハットの具体的内容
MSコンチンを定期的(8時・14時・20時)に与薬している患者に、配薬するのを忘れてしまった。

■ヒヤリ・ハットの発生した要因
患者が寝ていたため、声を掛けるのを後回しにしているうちに忘れてしまった。患者も疼痛の訴えがなかった。他の患者のケアに追われており気持ちに余裕がなかった。

■実施したもしくは考えられる改善策
患者の状態を把握した上で、本人と相談したうえで与薬時間の設定を考慮する。



専門家からのコメント


■記入方法に関するコメント
 MSコンチンの服用のトラブルには、病棟の環境も影響します。病棟内のMSコンチン服用者数、MSコンチン服用者の服用パターン、MSコンチン使用に関するガイドラインの有無などについても分析が必要です。また、患者側の情報としては、疼痛コントロールの状態や患者の理解度、ADL、生活リズムなども明らかになっている方がよいでしょう。こうした情報があった方が改善策を検討しやすくなります。


■改善策に関するコメント
 MSコンチンは徐放錠のため、服用してもすぐには効果は現れません。定められた時間間隔で服用し、血中濃度をコントロールする必要があります。
 しかしMSコンチンには、
  内服薬である
  麻薬であるため、管理はほかの薬に比べ厳重で、利用状況に関するその場その場の把握が行いにくい(保管場所をあけて見なければ確認できない)
  服薬時に患者側の危急性がない(その場で疼痛を訴えている患者に使用するわけではない)
などの特徴があり、訪室時に患者が睡眠中であったり、患者が不在で薬を渡せないなどの状況下では、ほかの鎮痛薬では発生しにくい「渡し忘れ」というエラーが起きやすくなっています。

まず患者との間に共通理解と服薬の調整を
 MSコンチンという薬の服用方法について、患者・医療従事者が同じ理解をすることが重要です。場合によっては、患者が邪魔されたくない時間帯や、入浴・面会などで患者が不在になりがちな時間帯も出てきます。こうした時間を避けて服薬時間を設定し、その時間には薬を飲める状態にすることが必要です。また、その時間帯には患者には必ず部屋にいてもらうことにしたり、可能であれば自己管理(薬はナースステーションで預かって、時間になったらナースコールで呼んでもらったり、取りに来てもらうような方法)も考えられます。こうした方法をとる場合、患者が取りに来なかった場合、どのように対応するかを決めておく必要がありますが、患者の認知・運動能力に問題がなければ実施可能でしょう。

渡し忘れ予防のシステム
 渡し忘れは主に
  渡す時間を忘れる
  渡しに行ったが渡せず、そのまま忘れてしまう
 の2つのパターンで発生します。
 渡し忘れを予防するためには、
 (1)渡すことを忘れさせない仕組み(タイマーの利用など)
 (2)渡していないことに気づかせる仕組み(MSコンチンの保管場所の外側や、ナースステーションの目立つ場所に渡したことを記入するボードを準備する、など)
などの工夫が考えられます。万一、担当者が忘れてもリカバリーできる仕組みを作ることが必要です。
 また、複数の患者がMSコンチンを服用している場合、服用時間が異なると混乱 また、複数の患者がMSコンチンを服用している場合、服用時間が異なると混乱する場合もありますから、可能な限り服用時間を揃えるように調整することも必要でしょう。

疼痛管理のためのガイドラインの活用
 医療従事者間のMSコンチン使用に関する共通理解も必要です。
 がん疼痛管理治療ガイドラインなどに基づき対応策をあらかじめ決めて、その都度確認したり個人の判断に任されるような事態は避けるべきでしょう。




事例595:(入院患者と退院患者の内服薬の混同)

発生部署(入院部門一般) キーワード(与薬(内服・外用))

■事例の概要(全般コード化情報より)
発生月【10月】 発生曜日【木曜日】曜日区分【平日】発生時間帯【18〜19時】
発生場所【病室】
患者の性別【男性】 患者の年齢【71】
患者の心身状態【痴呆・健忘】
発見者【2】
当事者の職種【看護師】
当事者の職種経験年数【  年6ヶ月】
当事者の部署配属年数【  年6ヶ月】
発生場面【内服】
(薬剤・製剤の種類)【その他の薬剤】
発生内容【患者間違い】
発生要因-確認【確認が不十分であった】
発生要因-観察【          】
発生要因-判断【          】
発生要因-知識【          】
発生要因-技術(手技)【          】
発生要因-報告等【          】
発生要因-身体的状況【          】
発生要因-心理的状況【          】
発生要因-システムの不備【          】
発生要因-連携不適切【看護職間の連携不適切】
発生要因-勤務状態【勤務の管理に不備】
発生要因-医療用具【          】
発生要因-薬剤【          】
発生要因-諸物品【          】
発生要因-教育・訓練【          】
発生要因-患者・家族への説明【          】
発生要因-その他【          】
間違いの実施の有無及びインシデントの影響度【仮に実施されていても、患者への影響は小さかった(処置不要)と考えられる】
備考【                   】

■ヒヤリ・ハットの具体的内容
看護師管理の薬が他患者の退院処方の袋に混入して渡されていた

■ヒヤリ・ハットの発生した要因
1.薬局から上がってきた薬を確認するときに机の上が乱雑で別の患者の薬袋があることに注意を払っていなかった。
2.退院処方を手渡す際に袋から出して確認しながら渡さなかった。
3.同僚看護師が薬の確認を手伝ってくれ、看護師管理の薬は所定の場所になおしてくれたのだろうと思い込んで確認しなかった。
4.薬の確認時、出席予定の講演会の時間が迫っており焦っていた。

■実施したもしくは考えられる改善策
1.薬の確認は整理された場所で行う。
2.担当患者の薬は責任を持って所在の確認をする。
3.患者に手渡すときは手にとって患者と一緒に確認する。



専門家からのコメント


■記入方法に関するコメント
 他の患者の薬が薬袋に混入した経緯が明確ではありません。いつ、どのような経緯で何故、混入してしまったのかを5W1Hで記入しましょう。また、看護師管理の薬の取り扱いと、退院時処方の取り扱いもどのようになっていたのか検討しましょう。
 発生要因では、薬剤部から薬が届いた時に確認する方法について、注意すべきことや手順等は決まっていたのでしょうか。「別の患者の薬袋があることに注意を払っていなかった」とありますが、注意を払えなかった理由に背景要因がある可能性がありますので、その理由について検討しましょう。
 同僚看護師が行ってくれたと思い込んでいますが、その思い込みを誘発した要因は何だったのか検討しましょう。
 退院時処方は薬剤部から出された薬袋の中身について、病棟でも確認行為を行っている場合もあります。具体的に、どのようなシステムで実施していたのかを明らかにした上で要因分析をしましょう。薬剤部で確認してあれば、病棟で再確認する必要があるでしょうか。薬剤部との役割分担はどうであったか明確にしましょう。


■改善策に関するコメント
作業環境・空間も整理整頓だけでなく、途中で業務中断しても取り違えることがないような対策を立案しましょう。ある病院では、「業務中断カード」を作成し、業務を中断する時には業務中断カードを業務をしていた処置台等において注意を喚起しているところもあります。
 改善策2で「責任をもって」とありますが、具体的ではありません。どのような方法で配薬をするのか、また、そのルールの徹底をどのように実施し、評価するかまで立案しましょう。
 薬剤部門から出された薬袋の中身について、病棟部門でも確認行為を行っている場合もありますが、その時に違う薬袋と取り違えてしまう場合もあります。まずは、院内でのシステム上の問題を明らかにした上で、薬剤部との役割分担も明確にしましょう。薬剤部から病棟に薬を届ける場合、可能であれば、薬袋ではなく、配薬カートに一日分ずつ薬剤部で分包し配薬するような院内全体でのシステムの改善にも取り組んでみましょう。
 患者と共に確認するとありますが、具体的な方法と留意点が明確でなければ確認行為になりません。二人以上で確認行為を実施する時には、相手も確認してくれているだろうという気持ちが発生し、責任の分散が生じる恐れがあります。どのような方法で患者にも参画してもらうか具体的に検討しましょう。




事例596:(患者確認システムがないための薬剤交付ミス)

発生部署(薬剤部門) キーワード(情報・記録)

■事例の概要(全般コード化情報より)
発生月【11月】 発生曜日【月曜日】曜日区分【休日】発生時間帯【10〜11時】
発生場所【薬局・輸血部】
患者の性別【女性】 患者の年齢【70】
患者の心身状態【障害なし】
発見者【2】
当事者の職種【看護師】
当事者の職種経験年数【27年3ヶ月】
当事者の部署配属年数【2年  ヶ月】
発生場面【その他の情報伝達過程に関する場面】
(薬剤・製剤の種類)【          】
発生内容【誤指示・情報伝達間違い】
発生要因-確認【確認が不十分であった】
発生要因-観察【          】
発生要因-判断【判断に誤りがあった】
発生要因-知識【          】
発生要因-技術(手技)【          】
発生要因-報告等【間違いであった】
発生要因-身体的状況【          】
発生要因-心理的状況【思いこんでいた】
発生要因-システムの不備【          】
発生要因-連携不適切【多職種間の連携不適切】
発生要因-勤務状態【当直だった】
発生要因-医療用具【          】
発生要因-薬剤【          】
発生要因-諸物品【          】
発生要因-教育・訓練【マニュアルに不備があった】
発生要因-患者・家族への説明【          】
発生要因-その他【          】
間違いの実施の有無及びインシデントの影響度【間違いが実施されたが、患者に影響がなかった事例】
備考【                   】

■ヒヤリ・ハットの具体的内容
当直の薬品交付で外来患者様の処方薬が同姓同名の職員に薬が届けられた。

■ヒヤリ・ハットの発生した要因
同姓同名であり思いこんでいた。
本人以外の人が受領した。
外来と共済の区別がわからなかった。

■実施したもしくは考えられる改善策
交付方法の検討
薬袋の印字を外来診療と共済診療部で印字する。
本人自身で受け取る。



専門家からのコメント


■記入方法に関するコメント
 全体として、この報告は、具体性にかけています。つまり、今回のインシデントにおいて、何が重要なことなのかがうまく伝えられていません。当直の薬品交付で、どのようなことが行われたのかもっと詳細に記述してください。時間軸に沿って事実を記載するとよいでしょう。
 まず、外来患者の処方薬が、なぜ同姓同名の職員に届けられるのか報告事例の状況の理解が困難です。「届けられた」ということは、誰かが同姓同名の職員に届けたことになりますが、報告施設では職員には届けるシステムになっているのでしょうか。
 また、同姓同名の場合の確認方法はどうなっていたのでしょうか。一般の患者と職員が受診した場合とでは、薬品交付の手順が異なっているのでしょうか。代理の方に交付する場合の手順はどうなっていたのでしょうか。
 インシデント発生時の状況が発生誘因となっている場合が多いので、発生時の状況を記載する必要があります。どのような状況でどのように判断したのか、そしてどのように行動したのかを丁寧に記載することで、今後のエラー防止策を考える際の大きなヒントになりますので、必ず記載してください。
 また、改善策として、「薬剤の交付方法の検討」が挙げられていますが、現状の問題点をどのように改善するのが示されていません。具体的で実現可能な方法を含めた検討案を記載する必要があるでしょう。以下のコメントを参考にしてみてください。


■改善策に関するコメント
システムエラーとしての認識
 このケースは、薬局の担当者が患者確認を怠ったことが直接的な原因と考えられますが、現在のこの施設の業務運用の下では、同姓同名患者がいた場合にこういったミスが発生するかもしれないということは予見できると思われます。その意味で本件はシステムに起因するエラーであるということができます。インシデントの分析、対策立案はこのような視点に立って薬剤交付時に患者誤認をしないためのシステムの確立を院内全体で検討する必要があります。

本人確認の方法と薬剤交付ルートの見直し
 「本人以外の人が受領した」ことへの改善策として「本人自身で受け取る」ことが挙げられていますが、患者の状態しだいでは付き添われた方が受け取ることは日常です。「本人を確認する」方法は、直接、本人と顔を合わせることだけではないはずで、例えば、薬剤の引換券もしくは診察券で患者を確認しているところも多くあります。
 また「同姓同名の職員に薬が届けられた」とありますので、職員が受診した場合に、一般の患者とは別ルートで薬が交付されていることが推測されます。このとき別ルートの確認手順がおろそかであるとシステム全体が脆弱になりますので、一般患者と全く同じ手順を行うか、または別ルートをなくして一本化するほうが適切です。外来と病棟の区別を明確にすることも大切ですが、基本的な本人確認の手順をルール化し、遵守することがより重要です。




事例630:(指示伝達の不備による与薬ミス)

発生部署(入院部門一般) キーワード(与薬(内服・外用))

■事例の概要(全般コード化情報より)
発生月【12月】 発生曜日【木曜日】曜日区分【平日】発生時間帯【8時〜9時】
発生場所【病室】
患者の性別【男性】 患者の年齢【65】
患者の心身状態【障害なし】
発見者【3】
当事者の職種【看護師】
当事者の職種経験年数【2年9ヶ月】
当事者の部署配属年数【0年9ヶ月】
発生場面【内服】
(薬剤・製剤の種類)【循環器用薬】
発生内容【無投薬】
発生要因-確認【確認が不十分であった】
発生要因-観察【          】
発生要因-判断【          】
発生要因-知識【          】
発生要因-技術(手技)【          】
発生要因-報告等【          】
発生要因-身体的状況【          】
発生要因-心理的状況【          】
発生要因-システムの不備【          】
発生要因-連携不適切【          】
発生要因-勤務状態【          】
発生要因-医療用具【          】
発生要因-薬剤【          】
発生要因-諸物品【          】
発生要因-教育・訓練【          】
発生要因-患者・家族への説明【          】
発生要因-その他【          】
間違いの実施の有無及びインシデントの影響度【間違いが実施されたが、患者に影響がなかった事例】
備考【                   】

■ヒヤリ・ハットの具体的内容
僧帽弁置換術のためバイアスピリンワーファリン内服中であったが、下血により内服中止になっていた。内服再開の指示が出ていたが(転棟する前の病棟での指示)、患者に伝わっておらず、内服再開指示から5日後の循環器受診の時にINR値からワーファリンの内服がされていないのではないかと指摘され気づく

■ヒヤリ・ハットの発生した要因
内服再開の指示が転棟当日であり、指示受けは前病棟によってされていた。転棟後も内服確認はしていたが、内容の確認まで出来なかった

■実施したもしくは考えられる改善策
薬剤変更があったものは、内容の確認も実施する



専門家からのコメント


■記入方法に関するコメント
 当事者は受け持ち看護師なのか、転棟時引継ぎを受けられた方なのか、たまたまミス発見日の担当者なのか分かりませんが、転棟時引継ぎを受けられた受け持ち看護師としてコメントします。また、病棟構成(診療科構成)も記載されるとよいでしょう。
 転棟前の病棟が係わっているので、状況が分からない点が多いと思いますが、発生要因の項目に沿って情報収集し整理するのも一つの方法と思います。
 発生要因−知識、教育・訓練
 当事者は部署配属後9ヶ月とありますが、僧房弁置換術後のワーファリンの必要性について知識があったでしょうか。或いは、配属時に教育されているでしょうか。疾患と術式薬効に関する知識がなければ、引継ぎ時に確認はできないでしょうし、判断もできません。
 発生要因−連携不適切、システムの不備
転棟時の引継ぎに関する決まりはどのようになっているでしょうか。
 発生要因―患者・家族への説明
 転棟前の病棟に限らず、施設として治療内容や指示変更等の患者・家族への説明はどのようなされているでしょうか。
 以上のようなことはどうなっているか、発生要因毎に検討し記入していくともう少し具体的な状況がみえるとより具体的な改善策が立てやすくなると思います。


■改善策に関するコメント
 上記に整理した発生要因に沿って改善策を考えてみます。

発生要因−連携不適切、システムの不備
 転棟はあらかじめ予定されている場合と、緊急の場合とがあります。特に治療に関わる内容は不可欠な引継ぎ事項です。院内であらかじめ患者の転棟時の引継ぎ確認事項のチェックリスト等を使って、何を確認して引き継げば良いかわかるような仕組を作っておくことも良いと思います。また治療の効果を左右する重要な薬剤などは、与薬方法、与薬時の注意などは、カルテの指示と、現物を照合して引き継ぐことが必要でしょう。

発生要因―患者・家族への説明
 医療の安全確保には患者参加が必要と言われています。今回の事例でも、弁置換後のワーファリンの必要性、下血時の中止とその影響や治療の見通し等が患者に説明され、質問し易い関係が構築されていれば、患者から早い時点で質問があったかもしれません。
 また患者自身で服薬管理ができると判断した場合でも、それが適切にできているか確認する責任は病院側にあるので、どのように確認をするかルールをきめて対応することが必要と考えます。場合によって、一時中断した薬剤に関しては、看護師側で一時保管し内服再開時に患者への説明とともに渡す等のルールを取り決めるなどヒヤリハットを防止するような対策を組織全体で検討しましょう。
 リスクマネジャーが中心となりそれぞれの違いや共通点を整理、組織全体で検討されると良いでしょう。




事例690:(患者低換気と人工呼吸器回路リークの誤認)

発生部署(入院部門一般) キーワード(人工呼吸器)

■事例の概要(全般コード化情報より)
発生月【 月】 発生曜日【  】曜日区分【  】発生時間帯【  】
発生場所【     】
患者の性別【  】 患者の年齢【  】
患者の心身状態【     】
発見者【     】
当事者の職種【     】
当事者の職種経験年数【  年  ヶ月】
当事者の部署配属年数【  年  ヶ月】
発生場面【          】
(薬剤・製剤の種類)【          】
発生内容【          】
発生要因-確認【          】
発生要因-観察【          】
発生要因-判断【          】
発生要因-知識【          】
発生要因-技術(手技)【          】
発生要因-報告等【          】
発生要因-身体的状況【          】
発生要因-心理的状況【          】
発生要因-システムの不備【          】
発生要因-連携不適切【          】
発生要因-勤務状態【          】
発生要因-医療用具【          】
発生要因-薬剤【          】
発生要因-諸物品【          】
発生要因-教育・訓練【          】
発生要因-患者・家族への説明【          】
発生要因-その他【          】
間違いの実施の有無及びインシデントの影響度【      】
備考【                   】

■ヒヤリ・ハットの具体的内容
ウォータートラップの除水を行い朝のラウンドをしていた。途中何度も人工呼吸器のアラームが鳴る。原因は低換気だったためいつもの状態だと判断し、患者に深呼吸をうながした。しかしアラームがとまらず、他の看護師が訪室したところ、ウォータートラップの接続のゆるみを発見する。接続を行ったところ、低換気は改善した。

■ヒヤリ・ハットの発生した要因
いつも低換気でなっていることからの思い込み。除水時の確実な接続ができていなかった。

■実施したもしくは考えられる改善策
思い込まず、アラームの原因追求を徹底する。



専門家からのコメント


■記入方法に関するコメント
 ウォータートラップの除水から接続のゆるみを発見するまでの時間経過やアラーム発生間隔などの記載があるとよいでしょう。また、同時に使用していたモニターやその状況の記載があるとよいでしょう。
 本例では、低換気アラームが鳴ったにもかかわらずにいつもの低換気と思いこみ、ラウンド中であったこともあり患者に深呼吸を促しすぐにその場を離れた事が想像されます。低換気アラームの際には、呼吸回路に漏れが無い状態において、呼吸を促し十分な換気の改善を確認してからその場を離れるのが基本です。深呼吸を促した後十分な換気量の改善があったか、すぐに離れなければならない要因が無かったかなどの記載があると良いでしょう。


■改善策に関するコメント
加温加湿器の適切な設定等による徐水作業の効率化
 ウォータートラップは完全に外した場合にはエアー漏れは生じない構造になっていますが本例のようにゆるみや斜めに挿入された場合にはエアー漏れが生じてきます。除水後は、アラームや換気量の確認を確実にするよう手順書等に明記するようにしましょう。加温加湿器を適切な設定にすることも除水頻度を減らすことができます。また、呼吸器回路は加温加湿器により加温加湿された吸気が蛇管を通過しながら冷却されるために結露し吸気側ウォータトラップに多くの水分がたまります。これを防止するためには加温加湿器を熱線入りヒータを用いることにより吸気口まで温度が保たれるため吸気側のウォータトラップが必要なくなります。呼気側にウォータトラップを付けたとしても除水の頻度をかなり減少させることが可能となり有効な方法です。

人工呼吸器の選択と適切な設定
 頻繁なアラームは、アラームに対する感覚が麻痺し本例のようにいつものアラームとの思いこみを生じやすくします一方むやみなアラーム設定の緩和は危険を伴いますが適切なアラーム設定を行うことも重要であると考えます。
 まず、いつも低換気でアラームが鳴っている状況を改善する必要があります。本事例では、人工呼吸器の種類や設定条件等が不明ですが適切な人工呼吸器の選択や設定によりアラームの頻度を少なくすることが可能であるか専門の医師や呼吸療法士に意見を求めることも有効と思われます。


人工呼吸器装着患者の管理と教育
 今回の事例では「いつも低喚気でなっていることからの思い込み」で低喚気の原因が人工呼吸器の接続ミスというモノに原因があったことの原因追求が遅れてしまったようです。人工呼吸器装着中の患者の観察項目として、患者側の要因と人工呼吸器自体の要因を早期に発見できる確認項目をチェックシート等を利用して勤務交代の前後で確認していく事を習慣化していきましょう。さらに各確認項目の根拠について教育する機会を持つことも重要です。
 その他、動脈血の酸素飽和度や呼気中の炭酸ガス濃度をモニタリングするパルスオキシメーターやカプノメータを併用し呼吸器のトラブルなどによる換気不良を早期に発見することが重要です。




事例691:(患者移動時の酸素吸入停止)

発生部署(入院部門一般) キーワード(酸素吸入)

■事例の概要(全般コード化情報より)
発生月【11月】 発生曜日【木曜日】曜日区分【平日】発生時間帯【8時〜9時】
発生場所【病室】
患者の性別【女性】 患者の年齢【  】
患者の心身状態【床上安静】
発見者【2】
当事者の職種【看護師】
当事者の職種経験年数【  年7ヶ月】
当事者の部署配属年数【  年7ヶ月】
発生場面【酸素療法機器】
(薬剤・製剤の種類)【          】
発生内容【組立】
発生要因-確認【確認が不十分であった】
発生要因-観察【観察が不十分であった】
発生要因-判断【判断に誤りがあった】
発生要因-知識【          】
発生要因-技術(手技)【          】
発生要因-報告等【不十分であった】
発生要因-身体的状況【          】
発生要因-心理的状況【無意識だった】
発生要因-システムの不備【          】
発生要因-連携不適切【          】
発生要因-勤務状態【          】
発生要因-医療用具【          】
発生要因-薬剤【          】
発生要因-諸物品【          】
発生要因-教育・訓練【          】
発生要因-患者・家族への説明【          】
発生要因-その他【          】
間違いの実施の有無及びインシデントの影響度【間違いが実施されたが、患者に影響がなかった事例】
備考【                   】

■ヒヤリ・ハットの具体的内容
受け持ち患者のベッド移動があり数人の看護師が関わった。その時他の看護師が移動したベッドの位置にあった蒸留水に酸素のチューブを接続した。その際受け持ちとして接続が緩んでいないか、流量が確実に流れているかは確認したが蒸留水の口が切られているかまで確認しなかった。その後深夜勤務の看護師が酸素がカニュラに流れていないことに気づいた。

■ヒヤリ・ハットの発生した要因
接続や流量の確認は行ったが接続部分や実際に患者のところまで流れているか確認できていなかった。

■実施したもしくは考えられる改善策
酸素吸入療法を行っている際の確認事項を徹底する。接続部分の確認、流量の確認、酸素が患者の口元に届いているか、酸素チューブの破損はないか。



専門家からのコメント


■記入方法に関するコメント
 「蒸留水の口が切られているかまで確認しなかった」とあるのでディスポーザブル式の滅菌精製水ボトルを使用していると考えられます。この場合、具体的に製品名があると具体的な改善策が考えられます。
 また、接続部の確認と流量の確認はどのように行ったか具体的に記載されていると何をどのように注意すれば良いか改善策がより明確になります。


■改善策に関するコメント
 酸素療法を必要としている患者に対して酸素が長時間投与されていないことは一歩間違えれば重大な問題です。今回は発生時間帯が午前8時から9時の間で酸素が患者の口元まで流れていないことを深夜帯の看護師が気づくまでにかなりの時間が経っています。

業務分担と責任の明確化
1)ベッド移動など、多数で患者に関わった場合の業務分担と責任を明確化しておきましょう。特にこの事例のように酸素療法中の患者がベッド移動や検査等で移動する際前後の酸素飽和量測定等による患者の状態把握は習慣化することが重要です。
2)受け持ち看護師が責任を持って患者につながっているライン類を患者から離れる前に確認を必ず行うことを徹底する教育も重要です。
3)受け持ち看護師は職務経験が7ヶ月であるため、仕事への慣れと同時に患者のベッド移動をいっしょに行った先輩看護師への依存も考えられます。新人への具体的教育も検討しましょう。
4)最低でも各勤務帯の始まりと引き継ぐ前での定期点検のタイミングを決めておくのも必要ではないでしょうか。その際、何をどう点検するか簡単なチェックリスト等があると効果的に点検できるでしょう。

確認事項を徹底
 「流量が確実に流れているかは確認したが…」とありますが、酸素が流れているかいなかを確認するには、対策にある患者の口元もありますが、まず酸素流量計の目盛り、加湿器の蒸留水の気泡がでるなど視覚的に確認できます。
1)接続部分の確認(配管部、流量計、ボトル、チューブ類)、流量の確認(目盛り、気泡)、酸素が患者の口元に届いているか、チューブの長さは十分か、固定は安全か、屈曲や破損はないかなど。
2)確認事項をチェックリストとして工夫し酸素流量計に掛け、確認することもミスを防ぐのに役にたちます。

ディスポーザブル式の滅菌精製水ボトル使用に関する注意事項
1)使用する製品の取り扱いをスタッフ全員が理解しているか確認する必要があります。使用方法を徹底しましょう。
2)製品自体の仕組みについても安全面からの確認が病院として必要です。蒸留水の口が切られていないが「流量が確実に流れていた」という記述から次の3点が考えられます。
(1)流量計の目盛りを読んでいたのなら、流量計とボトルの接続部が若干緩く、わずかな流量だと横もれしていた可能性もあります。この場合は、ゆるみがないかアダプターと流量計、アダプターとボトルをしっかり確認しましょう。
(2)もし、視覚的に気泡が見えたのであれば、ボトル内に酸素は入り込んでいたと考えられます。本来なら内圧が上がり、ボトルが膨らむのですぐ分かると思いますが、圧が上昇すると安全弁が働くもの、アラームがなるもの等もありますので検討してもよいでしょう。
(3)一方、カヌラ側の口は開口する部分が細く、開口していなくてもカヌラを取り付けられるため、今回のミスにつながったとも考えられます。カヌラ取り付け部は明らかに取り付け不能な形や大きさのものを選ぶのも良いでしょう。メーカー側への要望としていくことも必要です。
【参考資料】
「基礎看護技術-一人で学べる方法とポイントー」、石井範子他、日本看護協会、2002




事例705:(シリンジポンプ誤操作)

発生部署(入院部門一般) キーワード(機器一般)

■事例の概要(全般コード化情報より)
発生月【11月】 発生曜日【木曜日】曜日区分【平日】発生時間帯【10〜11時】
発生場所【病室】
患者の性別【男性】 患者の年齢【40】
患者の心身状態【床上安静】
発見者【1】
当事者の職種【看護師】
当事者の職種経験年数【7年8ヶ月】
当事者の部署配属年数【3年8ヶ月】
発生場面【中心静脈注射】
(薬剤・製剤の種類)【循環器用薬】
発生内容【投与速度速すぎ】
発生要因-確認【確認が不十分であった】
発生要因-観察【観察が不十分であった】
発生要因-判断【          】
発生要因-知識【          】
発生要因-技術(手技)【          】
発生要因-報告等【          】
発生要因-身体的状況【          】
発生要因-心理的状況【思いこんでいた】
発生要因-システムの不備【          】
発生要因-連携不適切【          】
発生要因-勤務状態【多忙であった】
発生要因-医療用具【          】
発生要因-薬剤【          】
発生要因-諸物品【          】
発生要因-教育・訓練【          】
発生要因-患者・家族への説明【          】
発生要因-その他【          】
間違いの実施の有無及びインシデントの影響度【間違いが実施されたが、患者に影響がなかった事例】
備考【                   】

■ヒヤリ・ハットの具体的内容
 ICUから帰室直後の患者さんに注入されていた薬剤が5/Hから2.5/Hに減量となり、ICUから借りてきたシリンジポンプから病棟のシリンジポンプに交換した際、2.5/Hと設定したつもりが、25/Hと設定し、アラーム音がなった。

■ヒヤリ・ハットの発生した要因
 声に出し設定はしたが、設定時、ポンプの数字を逆から見て設定してしまった。

■実施したもしくは考えられる改善策
 正面から設定をする。



専門家からのコメント


■記入方法に関するコメント
 具体的な内容として記載する際に必要なアラームの種類を記載しましょう。この事例の場合、事例の動作を検討すると終了のアラームが鳴って初めて自分が設定に間違えだったと気がついていると思われます。また、発生要因を考察すると数字の逆とはどの方向から見たのかを特定することは出来ません、もう少し具体的に表現しましょう。
 改善策はもう少し全体面から考え記入すると良いでしょう。
 ICUと病棟のポンプの機種の不統一も要因として考えられますが、ICUから借りたシリンジポンプから病棟のシリンジポンプに交換した際になぜ交換する必要があったか記載があると、設定を間違えた原因が明確になり、有効な改善策の立案ができると考えます。


■改善策に関するコメント
 シリンジポンプの設定を正面から実施することは誤操作を回避する上で重要なことです。しかしもう少し総合的に考えると、
1.シリンジポンプの管理体制の見直し
シリンジポンプの管理運用体制を部署ごとに行うのではなく、患者単位で行い、病棟を転棟してもそのまま使用すればインシデントは少なくなり、機種を統一することでもっと少なくなります。シリンジポンプ、輸液ポンプを一箇所で管理する中央管理方法を取り入れることでインシデントは少なくなります。
2.設定の確認
声を出して確認することは非常に良いことです。しかし、その場のみではなく、忙しい中でももう一度確認すれば良いと思います(出来れば違う人がダブルチェック)。
3. 小数点表示の小さい機器が出回っているので修理する。
最近、テルフュージョンシリンジポンプTE-331/TE-332において小数点表示が小さい為、視認性向上を目的として電子部品の変更を行っています。該当する場合には早めに修理に出しましょう。




事例706:(シリンジポンプの故障)

発生部署(入院部門一般) キーワード(機器一般)

■事例の概要(全般コード化情報より)
発生月【12月】 発生曜日【金曜日】曜日区分【平日】発生時間帯【8時〜9時】
発生場所【病室】
患者の性別【女性】 患者の年齢【59】
患者の心身状態【意識障害、床上安静、その他】
発見者【99】
当事者の職種【看護師】
当事者の職種経験年数【  年9ヶ月】
当事者の部署配属年数【  年9ヶ月】
発生場面【輸液・輸注ポンプ】
(薬剤・製剤の種類)【          】
発生内容【機器の故障】
発生要因-確認【確認が不十分であった】
発生要因-観察【          】
発生要因-判断【          】
発生要因-知識【          】
発生要因-技術(手技)【          】
発生要因-報告等【          】
発生要因-身体的状況【          】
発生要因-心理的状況【          】
発生要因-システムの不備【          】
発生要因-連携不適切【          】
発生要因-勤務状態【          】
発生要因-医療用具【故障していた】
発生要因-薬剤【          】
発生要因-諸物品【          】
発生要因-教育・訓練【          】
発生要因-患者・家族への説明【          】
発生要因-その他【          】
間違いの実施の有無及びインシデントの影響度【間違いが実施されたが、患者に影響がなかった事例】
備考【                   】

■ヒヤリ・ハットの具体的内容
患者はカコジンD12ml/Hで血圧保持していた。8時に残量12ml、注入速度12ml/Hを確認した。8時45分に看護学生が訪室したらシリンジポンプが停止しており注入速度も0mlになっていたと報告あり。すぐに指示量を再開した。バイタルサインには変化は見られなかった。主治医報告し様子観察となった

■ヒヤリ・ハットの発生した要因
使用していたシリンジポンプのアラーム音が鳴らなかず故障していた。4時に薬液を更新したときにアラーム音が鳴らないことに気付いていなかった。

■実施したもしくは考えられる改善策
物品点検時は数だけでなく故障はないかの点検も行っていく。



専門家からのコメント


■記入方法に関するコメント
 発見時の薬液残量、シリンジポンプのメーカー、製造年度、種類等の記載があると故障の状態や状況が判明し具体的な改善策が考えられます。
 機器の管理体制の記載もあるとよいでしょう。


■改善策に関するコメント
考えられる故障
 1.要因記載にあるようにアラームが鳴らなかった可能性がある。
 2.4時に薬液更新を行い8時に残量12ml注入速度12ml/hrを確認した時から既に48mlの注入がなされ12mlの残量は多すぎる。注入精度がくるっていた可能性がある。
 3.シリンジポンプが停止し注入速度も0になっていたことからバッテリ及び電源系の故障の可能性がある。
 本事例は、機器の故障が原因と思われます。しかし具体的内容や要因の記載事項から推測すると機器の故障を発見できる機会が何度かあることが想像されます。

使用機器の正しい理解とチェック体制
 シリンジポンプ等の正しい使用方法やアラームについて、講習会等により理解を深める事によりミスを防止すると共に故障の早期発見につながります。また、定期的なチェック体制を確立すると同時に、チェック時には前回チェックからの注入量を同時に記入する事が必要です。また、この事例では、停止に気づき、すぐに指示量を再開していますが、機械のチェックを行わずにこのような行為を行う事は、非常に危険です。薬剤によっては、患者を死に至らせる可能性もあります。

機器の管理体制について
 輸液ポンプやシリンジポンプ等、医療機関内に多数あり部署内における使用数の変動のある機種は、臨床工学技士等による中央管理を行い定期的な保守管理を行うことが必要です。また、使用後点検等により正常動作の確認を行う体制が機器の安全使用のために重要であると同時に機器の有効利用へつながります。




事例710:(不用意な放射線の照射)

発生部署(放射線部門) キーワード(機器一般)

■事例の概要(全般コード化情報より)
発生月【11月】 発生曜日【火曜日】曜日区分【平日】発生時間帯【12〜13時】
発生場所【外来その他の場所】
患者の性別【女性】 患者の年齢【不明】
患者の心身状態【障害なし】
発見者【1】
当事者の職種【看護師】
当事者の職種経験年数【  年8ヶ月】
当事者の部署配属年数【  年8ヶ月】
発生場面【尿道カテーテル】
(薬剤・製剤の種類)【          】
発生内容【不必要行為の実施】
発生要因-確認【          】
発生要因-観察【          】
発生要因-判断【          】
発生要因-知識【          】
発生要因-技術(手技)【その他】
発生要因-報告等【          】
発生要因-身体的状況【          】
発生要因-心理的状況【          】
発生要因-システムの不備【          】
発生要因-連携不適切【          】
発生要因-勤務状態【          】
発生要因-医療用具【          】
発生要因-薬剤【          】
発生要因-諸物品【          】
発生要因-教育・訓練【          】
発生要因-患者・家族への説明【          】
発生要因-その他【          】
間違いの実施の有無及びインシデントの影響度【間違いが実施されたが、患者に影響がなかった事例】
備考【                   】

■ヒヤリ・ハットの具体的内容
介助の看護師の足があたって放射線がでた

■ヒヤリ・ハットの発生した要因
膀胱鏡の光源の位置調整をしていたら、撮影用のフットスイッチが足にあたった。スイッチの位置の問題か

■実施したもしくは考えられる改善策
看護師の注意。位置に工夫。触れたくらいで線が出ない工夫を



専門家からのコメント


■記入方法に関するコメント
 この事例では環境的な要因が重要でなると思われます。部屋の広さ、部屋にいた人の人数、患者と機器の位置関係、フットスイッチや光源の位置などが記述してあると、分析に有効です。
 また、看護師は経験年数が8ヶ月であり、機器に対する知識や経験が十分でなかったことがうかがわれますが、そういった情報についても具体的に記述するとよいでしょう。


■改善策に関するコメント
 人体への不要な放射線被曝は、対象が患者であれ医療従事者であれ、避けるべきことは論をまたない状況です。どの程度の線量以上の被曝が、健康に対して影響を及ぼすのか、あるいはそのようなしきい値がそもそも存在するかという点については、厳密には議論のあるところではあるすが、ここでは、放射線防護上の視点から以下述べることとします。

 透視での被曝線量は10mGy/分程度(あるいはこれを超える程度)であるとされています。(X線検査の平均皮膚線量 国連科学委員会 1977)
 このような機器で、現実に明確な健康への影響を生じるのは、(1)放射線照射中であることが気づかれない場合、(2)線量が本来の線量を大幅に超える場合の2つの場合であると考えられます。
 通常、放射線照射中であることは、透視時の警報音で気づかれます。したがって、機器の取り扱い説明書にしたがった点検整備を行うことは当然として、機器が正常に動作していると過信することなく、警報音を含め正常に機器が動作していることを日常的に意識して使用する必要があります。
 線量が本来の線量を超える状態となっているか否かは、外観上の点検などからは判断が困難であるが、取り扱い説明書にしたがった定期的な機器の点検整備を行うことが、このような問題を防止する当然の前提となります。
 以上のような機器の適正な管理・使用を前提として、加えて、フットスイッチの形状、安全装置の整備についても、各企業の配慮が期待されます。




事例711:(名称類似薬の取り違え)

発発生部署(薬剤部門) キーワード(調剤)

■事例の概要(全般コード化情報より)
発生月【10月】 発生曜日【日曜日】曜日区分【休日】発生時間帯【12〜13時】
発生場所【薬局・輸血部】
患者の性別【男性】 患者の年齢【27】
患者の心身状態【障害なし】
発見者【3】
当事者の職種【薬剤師】
当事者の職種経験年数【7年  ヶ月】
当事者の部署配属年数【7年  ヶ月】
発生場面【酸素療法機器】
(薬剤・製剤の種類)【その他の薬剤】
発生内容【薬剤取り違え調剤】
発生要因-確認【確認が不十分であった】
発生要因-観察【観察が不十分であった】
発生要因-判断【判断に誤りがあった】
発生要因-知識【知識が不足していた】
発生要因-技術(手技)【          】
発生要因-報告等【          】
発生要因-身体的状況【          】
発生要因-心理的状況【慌てていた】
発生要因-システムの不備【          】
発生要因-連携不適切【          】
発生要因-勤務状態【多忙であった】
発生要因-医療用具【          】
発生要因-薬剤【薬剤名が似ていた】
発生要因-諸物品【          】
発生要因-教育・訓練【教育・訓練が不十分だった】
発生要因-患者・家族への説明【          】
発生要因-その他【          】
間違いの実施の有無及びインシデントの影響度【仮に実施されていても、患者への影響は小さかった(処置不要)と考えられる】
備考【                   】

■ヒヤリ・ハットの具体的内容
注射伝票が病棟から送付され、注射伝票には正確に記載されていたが、薬剤師が思いこみでソルコーテフ500mgのところ、ソルメドロール500mgを調剤し病棟に送付した。

■ヒヤリ・ハットの発生した要因
当事者を取り巻く環境が業務が煩雑であった。
薬品名がよく似ていた。注射調剤は監査は実施していない。

■実施したもしくは考えられる改善策
薬品保管ケースの色分けをして、類似品ありと注意書きを行った。監査を実施



専門家からのコメント


■記入方法に関するコメント
 注射伝票とは薬品請求伝票のことでしょうか、それとも注射処方せんの意味でしょうか。どちらにもとれる記載です。通常注射薬の払い出しは、薬品請求伝票による薬品の払い出しと、患者氏名・薬品名・使用量・使用時間・投与経路・投与速度等の記載された注射処方せんによる注射薬調剤とがあります。また正確に記載されていたのは薬品名の事でしょうか。詳しい記載があると取り違えの原因を探る手がかりとなります。
 さらに「薬剤師が思い込み」とありますが、何をどう思い込んだのでしょうか。ソルコーテフと正しく読みながらソルメドロールを調剤したのでしょうか?それともソルメドロールと読み違えたのでしょうか?そもそも名前の類似した薬品があること自体を認識していたのでしょうか。ソルコーテフは特徴的なバイアルで、ソルメドロールと形状は全く異なります。詳しい記載があると何故そう思い込んだかの分析が可能となります。
 また、要因のなかで業務が煩雑とあります。休日の12時から13時という時間帯で多忙となった環境と業務の状況がわかるとインシデント発生の環境的な問題が浮かび上がってきます。


■改善策に関するコメント
 注射薬は最終的に医師や看護師など施行者が確認を行う為、薬剤部での確認が行われていない施設があります。しかし注射薬は直接患者の血液中に薬が投与される剤形です。その取り扱いは内服薬以上に注意が払われる必要があります。改善策にも示されたとおり薬品請求伝票であれば薬品名・規格・数量を、注射処方せんであれば使用量・使用時間・投与経路・投与速度等を含めた鑑査を実施する必要があるでしょう。
 簡便に実施できる対策として、薬品名・規格・数量の他、薬品にコード番号を付記し薬品管理を行うのも一案です。ソルコーテフの規格は500mgの他100mg、250mg、1000mgと4規格あるように同一の薬品でも複数規格採用の場合は取り違えの危険性があります。請求時にコード番号を同時に付記することで請求側も正しく請求する事ができ、払い出し側においても薬品ケースの薬品名・規格だけでなくコード番号を確認することで調剤時の識別性が高まります。
 またバーコードリーダーを利用した確認システムの導入を検討してはどうでしょう。客観的に薬品を認識するシステムは、思い込みといった人的ミスの防止を可能とします。さらに注射ピッキングシステムは薬剤師の肉体的な稼働を減少させ、薬学的な視点を重視する等、本来的な業務に専念することを可能とします。安全確保のための投資も必要かも知れません。
 そして人は誰でもミスを犯すという前提に立ち、過誤の事例や確認の段階で発見された事例を分析・報告し注意喚起することが必要でしょう。薬剤取り違えの原因は様々ですが、「薬剤師の知識・経験の不足」と「慣れから来る不注意」に集約されると言われています。個々の薬剤師が細心の注意を払い調剤することは言うまでもありませんが、調剤過誤の誘発要因を排除する工夫が必要です。対策の薬品保管ケースの色分けをして、類似品ありと注意書きを行うといったハードの改善の他、調剤や調剤過誤防止マニュアルを作成し教育を続けていくソフトの改善も必要です。
 日本薬剤師会より調剤事故防止マニュアルが出されています。以下にその一部を紹介します。
1、常に、調剤室内の整理・整頓に心がける。
2、調剤室の照度を確認する。
3、薬品棚の配置や医薬品の配列順序に一定のルールを作る(薬効順、五十音順等)
4、取り違えやすい(類似した)医薬品は、隣接する薬品棚に置かない。
5、取り違えやすい(類似した)医薬品の薬品棚には識別しやすいような色、印、線等を付けておく。
【参考資料】
調剤事故防止マニュアル、日本薬剤師会、平成13年4月




事例863:(造影剤使用可否の入力ミス)

発生部署(臨床検査部門) キーワード(検査・採血、情報・記録)

■事例の概要(全般コード化情報より)
発生月【10】 発生曜日【水曜日】曜日区分【平日】発生時間帯【10〜11時】
発生場所【検査室】
患者の性別【女性】 患者の年齢【37】
患者の心身状態【不明】
発見者【3】
当事者の職種【医師】
当事者の職種経験年数【10年月数不明ヶ月】
当事者の部署配属年数【10年月数不明ヶ月】
発生場面【文書による指示受け】
(薬剤・製剤の種類)【          】
発生内容【誤指示・情報伝達間違い】
発生要因-確認【確認が不十分であった】
発生要因-観察【          】
発生要因-判断【          】
発生要因-知識【          】
発生要因-技術(手技)【          】
発生要因-報告等【          】
発生要因-身体的状況【          】
発生要因-心理的状況【          】
発生要因-システムの不備【コンピュータシステムの不備】
発生要因-連携不適切【          】
発生要因-勤務状態【          】
発生要因-医療用具【          】
発生要因-薬剤【          】
発生要因-諸物品【          】
発生要因-教育・訓練【          】
発生要因-患者・家族への説明【          】
発生要因-その他【          】
間違いの実施の有無及びインシデントの影響度【仮に実施されていいた場合、患者への影響は中等度(処置が必要)と考えられる】
備考【                   】

■ヒヤリ・ハットの具体的内容
CT検査において、ヨードアレルギーがあり、造影剤使用否の患者に対し、検査方法が造影ありで入力されていた。

■ヒヤリ・ハットの発生した要因
確認が不十分

■実施したもしくは考えられる改善策
オーダリング上で以前の検査での造影剤副作用が反映される。造影剤使用否であれば、検査方法で造影剤ありを選択できないようにする。



専門家からのコメント


■記入方法に関するコメント
 エラー防止を考える際に、「エラーの発生を防止する」方策と、「エラーが発生した場合に、その拡大を防ぐ」方策とに分けて考える必要があります。今回のケースは造影剤使用という間違ったオーダーがなされましたが、未然に防ぐことができました。したがって、考察すべき要因としては(1)間違ったオーダーをしてしまった失敗要因と、(2)間違ったオーダーであることに気づき訂正したという成功要因とに分けられます。
 まずエラーが起こった失敗要因についてですが、「確認が不十分」といった当時者に帰属する要因のみならず、それを引き起こした環境要因などにも眼を向けましょう。なぜ以前の検査結果を参照していなかったのでしょうか。参照していたけれども入力時の単純ミスがあったのでしょうか。
 次に(2)ですが、今回は幸いにも未然にエラーを発見したわけですが、どのようにして発見したのかを分析し、成功要因を明らかにすることも重要です。


■改善策に関するコメント
 造影剤に関しては死亡例も報告されており、十分な配慮が必要です。関連する部門が合同で、運用方法を含めたしくみ(システム)として対策を検討する必要があるでしょう。
【造影剤に関連した死亡事例】
 ・問診せずにCT検査後造影剤ショックで死亡した事例(2000年9月)
 ・副作用検査は実施していたが、眼底造影剤静注後心肺停止した事例(2003年3月)

造影剤副作用の既往の検知と警報のコンピューター化
 本ケースでは、おそらくオーダリングシステムの機能として、副作用等の情報表示機能や禁忌となる組み合わせを選択不可にするようなチェック機能が実装されていないものと思われます。このような場合、根本的にはオーダリングシステムの仕様変更により対応することで、こうした事例は確実に減少すると考えます。造影剤アレルギー患者に投与することで死亡例も出ているため、根本的な対策が必要ですが、まずは以下のような運用面で補完する必要があります。

造影剤アレルギーチェックの工夫
 アレルギーなどの重要情報がオーダリングシステムで伝達できないとしたら、紙ベースで確実に情報伝達できるような工夫が必要となります。たとえば、診療録の最初のページにアレルギーなどの情報を記載し、検査オーダーの際には必ず診療録を確認する、あるいは患者の持つIDカードに造影剤等のアレルギー既往を記載することなどが考えられます。


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