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第11回 記述情報(ヒヤリ・ハット事例)の分析について
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第11回 記述情報(ヒヤリ・ハット事例)の分析について
表1 チューブ・カテーテル類関連のエラーおよびヒヤリ・ハットの実態調査
表2 戦略的エラー対策
記述情報検討班 名簿
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「医療事故防止のためのヒヤリ・ハット事例等の分析に関する研究」研究班
1 | 記述情報の収集の概要 |
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1) | 収集期間 平成16年2月25日より平成16年5月24日まで |
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2) | 施設数(カッコ内は前回の実績):(6月1日現在)
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3) | 収集件数
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2 | 分析の概要 |
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1) | 検討方法について | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
(1) | 専門性を重視した班構成 分析対象事例の選択および分析について、より専門的な視点から具体的な方策の提案を行うため、以前の記述情報の傾向を加味して、事例分析検討班メンバーを7つの班(「転倒、転落、抑制」「チューブ・カテーテル類」「注射/点滴、輸血」「内服薬/外用薬、麻薬」「検査」「器械操作」「食事・栄養」)に分けて検討を進めていくこととした。これらの班で分析検討してコメントを作成した事例について、さらに、各班の代表並びに副代者と電力及び運輸関係の事故分析を行っているヒューマンファクター分析の専門家による代表者会議で検討を行い、分析対象事例全体の概略とコメントの修正を行うとともに、分析手法に関する検討も行うことにした。分析にあたっては、既存のマニュアル・基準等を元に問題点を指摘し、改善の方策について示すこととした。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
(2) | 事例の選択方法の変更 従来の大きな枠組みの中で事例を選択しコメントを行っていくという方法ではなく毎回のテーマを設定し、分析すべき事例を絞り込み、分析対象事例候補として選定し、その中から分析対象事例を決定することとした。 分析対象候補事例の選定にあたっては、医療安全の観点から様々な指針や手順等が出されているにもかかわらず、それらが実践されていない事例については、基本的に除外した。 また、極端に情報量が少ない事例についても正確な分析ができないことから、除外とした。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
2) | 分析の方法 医療事故を防止する観点から、報告する医療機関が広く公表することが重要と考える事例について、発生要因や改善方策などを記述情報として収集した。 収集されたヒヤリ・ハット事例より、分析の対象に該当するものを選定し、より分かりやすい表記に修文した上でタイトルやキーワードを付した。 また、専門家からのコメントとして、事例内容の記入のしかたや記入の際に留意すべき点などを「記入方法に関するコメント」として、また報告事例に対する有効な改善策の例や現場での取り組み事例、参考情報などを「改善策に関するコメント」として述べた。 さらに、コード化情報として報告されたデータを重要事例情報に付加し、事象そのものや事象の背景をより正確に把握した上で分析を行った。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
3) | 分析対象事例の選定の考え方 収集された事例から、分析し公開することが有用な事例を選定した。選定の考え方は以下の基準によった。
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4) | 事例のタイトルおよびキーワードの設定 これまでと同様に、各事例にタイトル及びキーワードを付した。キーワードは以下のリストから選択した。
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3 分析結果及び考察
(1) | 全体の概要 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
○ | 3ヶ月間の報告期間で収集された件数は1,914件で、うち1,586件が有効な報告であった。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
○ | 前回に比べて報告件数は23件ほどの増加であったが、削除事例が増加したことで、有効事例としては293事例の減少となった。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
○ | 報告内容の記述についても情報量・内容ともに充実した事例が増加している。この事はヒヤリ・ハット事例報告への組織的な定着・浸透が伺える。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
○ | 発生件数割合が高い手技・処置は、以下のとおりである。与薬やチューブ・カテーテル類、転倒・転落に関する事例は依然として発生割合が高い。 これらの中では、「与薬(点滴・注射、輸血)」に関する事例の報告件数が前回の415件より減少した一方、「与薬(内服・外用、麻薬)」「チューブ・カテーテル類」「転倒・転落、抑制」の件数が増加している(前回データ:与薬;215件,チューブ・カテーテル;202件,転倒・転落;217件)。 また、「食事、栄養」「器械、器械操作」は前回より減少している。
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○ | 上記の分類の他、「その他」の中には、処置に関連した事例、外傷を起こした事例、離院・離棟、安静度が守られない事例、職員対応に関した事例などが含まれていた。 |
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(2) | 今回のテーマに関する事例について | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
○ | 今回のテーマは「チューブ・カテーテル類」とした。 テーマ決定の理由は、毎回、多くの事例が報告されていること、チューブの種類によっては命に関わる事故となる場合があることがあげられた。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
○ | 全体総括
以上に加え、人的要因が背景にある事例も多いことから、夜間の要員数も含めて組織的に体制整備を行うことが必要と考えられる。 また、今後説得力のある疫学研究の推進(「ヒヤリ・ハット発生頻度の記述疫学的研究」や「エラーに関連する職場環境、労働条件に関する研究」など)も必要と考えられる。 文献
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表1 チューブ・カテーテル類関連のエラーおよびヒヤリ・ハットの実態調査
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報告者 | 報告年 | 国 | 調査対象 | チューブ類事例数(頻度) | 考察 |
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Fraserら | 2001 | USA | ICU入院患者36名 | 10名(28%)が延べ42回自己抜去 | 88%が経管栄養チューブと血管内カテーテル(主に不穏による) |
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川村 | 2003 | 日本 | ヒヤリ・ハット11148件 | 700例(6.3%;経管栄養を除く) | 注射・内服の与薬関連事例についで多い |
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厚労省 | 2004 | 日本 | ヒヤリ・ハット12909件 | 1803例(14.0%) | |
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表2 戦略的エラー対策
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河野龍太郎:誤薬を防ぐシステムづくり - ヒューマンファクター - 工学の視点から、EBNursing、4(2):68−74、2004 を一部改変 |
図1 チューブ類の挿入から管理までの業務プロセス 文献5)を一部改変 |
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