平成20年10月8日
大臣官房国際課国際協力室 |
第6回ASEAN・日本社会保障ハイレベル会合 結果概要
1.テーマ
次世代健全育成(健やかな次世代の育成を目指して)
−保健と福祉の緊密な連携の下で−
Healthy Next Generation
- under the Sound Collaboration between Health and Social Welfare -
2.開催概要
日時・場所 2008年9月8日(月)〜9月11日(木) 於:三田共用会議所
主催者 厚生労働省
実施機関 国際厚生事業団(JICWELS)
協力者 国際協力機構(JICA)、ASEAN事務局、
世界保健機関西太平洋地域事務局(WHO/WPRO)
参加者 ○ASEAN10ヶ国(ブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、シンガポール※、タイ、ベトナム)より、次官級2名を含む計36名 (社会福祉政策担当行政官各国2名及び保健政策担当行政官各国2名)
○ASEAN事務局(2名)、WPRO(1名)
※今回はシンガポールからの参加がなかったため9カ国の参加となった。
3.プログラム
9月8日(月)
・ 施設視察(埼玉医科大学総合医療センター、埼玉県内の保健センター等)
・ 歓迎レセプション(挨拶:村木太郎 厚生労働省大臣官房総括審議官(国際担当))
9月9日(火)
・ 本会合の趣旨「保健・福祉分野におけるASEANと日本の連携」
(板谷英彦 厚生労働省大臣官房国際課国際企画室長)
・ 基調講演「日本の次世代健全育成における発展経緯と現状」
(中村安秀 大阪大学人間科学部教授)
・ 講演「Ensuring and Protecting Maternal and Child Survival in ASIA」
(Dr. Narimah Awin WPRO母子保健担当課長)
・ 講演「ASEAN Strategic Framework and Plan of Action for Social Welfare, Family and Children」
(Dr. Bounpheng, Ms Mega Irena ASEAN事務局)
・ 講演「International Collaboration for Child Health and Welfare」
(小林尚行 JICA人間開発部母子保健課長)
・ カントリープレゼンテーション(ASEAN各国)
9月10日(水)
・ カントリープレゼンテーション(ASEAN各国)
・ 分科会
Group 1:
“Healthy Next Generation: supported by community and civil society”
Group 2:
“Healthy Next Generation: supported by the central and local government”
・ プレクロージングパーティー
9月11日(木)
・ 分科会報告
・ Summary, Conclusion and Recommendations
- 各国、ASEAN事務局、WPRO、大阪大学中村教授からのスピーチ
- 会議総括
・ 閉会
※ なお、本会合に参加各国から提出されたカントリーレポートについては、実施機関(国際厚生事業団(JICWELS))のホームページに掲載されております。
4.議論の概要
基調講演では、母子健康手帳をはじめとした日本の戦後から現在までの母子保健福祉に関する取組みが紹介された。WPRO、ASEAN事務局及びJICAの講演ではWHO、ASEAN及びJICAそれぞれの母子保健福祉に関する取組みが紹介された。また、各国のカントリープレゼンテーションを通じて各国の状況、成功事例等が紹介され、参加国間で情報・経験の共有がなされた。これらの本会合で提供された情報に基づいて、次世代健全育成に関する保健及び社会福祉サービスの現状と将来のあり方について、共通の問題点や、国レベル、地域レベル及び市民レベルで今後実施しうる活動について、意見交換し、活発な議論をおこなった。
今回の会合で、以下の事項について参加者の間で合意された。
・ 参加者は、今回のハイレベル会合における母子保健・福祉に関する議論、提言及び結果について自国のそれぞれの大臣やそれぞれの省の幹部に報告し、ASEAN事務局に対し、保健開発高級事務レベル会合及び社会福祉開発高級事務レベル会合に報告するよう要請すること
・ ASEAN・日本社会保障ハイレベル会合がASEAN+3保健大臣会合及びASEAN+3社会福祉大臣会合等の決議をフォローアップするための基礎として位置づけられること
・ 本会合でなされた議論はASEAN及び日本にとって母子保健・福祉に関する短期的及び長期的な課題を克服するために重要であり、価値のあるものであること
また、母子保健・福祉サービスを向上させるために、以下の点が重要であるとの共通認識を得た。
・ 保健と社会福祉に責任を有する省庁が連携すること
・ 中央政府と地方政府が連携すること
・ 関係者(政府、地域社会、NGOや民間部門を含む民間部門)が連携すること
今回の会合を通じて、将来的に参加国における母子保健・福祉を向上させるために、以下の点が提案された。
・ 保健システム及び社会福祉システム間の協力を推進し、両省庁間のコミュニケーションを深めること
・ 保健及び社会福祉セクタ間におけるギャップや協力の必要性についての評価を行うこと
・ 母子保健・福祉に関するデータ収集・分析システムを向上させること
・ 母子保健・福祉に関する最良の慣行(best practice)の情報を提供すること
・ 母子保健・福祉に関する統合された戦略的な枠組みを作り出すこと
・ 能力や、情報・専門的知識の共有関係を強めるため、ASEAN諸国間及びASEAN日本間のネットワークを強化すること
・ 各国内において、国際機関、NGO、市民社会等の利害関係者との協力関係を継続すること
最後に、参加者より本会合は非常に有意義なものであり、今後も本会合が継続されること、さらなる発展への期待が表明された。
【参考】
会合の経緯
厚生労働省では、1996年のリヨンサミットにて我が国が提唱した世界福祉構想を受け、東アジアを中心とする地域協力を推進すべく、1997年より2002年まで東アジア社会保障行政高級実務者会合を開催し、社会保障分野における協力関係の強化を図ってきた。その実績を踏まえ、2003年より、特にASEAN地域に焦点を当て、社会福祉及び保健医療の分野における緊密な関係をさらに発展させ、また、当該分野での人材育成を強化するため、ASEAN10ヶ国から社会福祉と保健医療政策を担当するハイレベル行政官を招聘し、ASEAN・日本社会保障ハイレベル会合を開催している。
その間、ASEAN側も福祉・医療分野での日本、中国、韓国との協力を模索し始め、2004年にASEAN+3保健大臣会合及びASEAN+3社会福祉開発会合が設置された。これまで、ASEAN+3保健大臣会合については、2004年4月にマレーシアで第1回会合、2006年6月にミャンマーで第2回会合が開催され、2008年10月にフィリピンで第3会会合が開催される予定である。また、ASEAN+3社会福祉会合については、2004年12月にタイで第1回会合、2005年11月にマレーシアで第2回高級事務レベル会合、2006年12月にミャンマーで第3回高級事務レベル会合が開催されている。当省は、これらのASEAN+3の活動に積極的に貢献しているところである。
ASEAN・日本社会保障ハイレベル会合のテーマは、ASEAN諸国やASEAN事務局からの提案、ASEAN+3保健大臣会合・社会福祉開発大臣会合の議論などを踏まえて選定している。第1ステージ(2003〜2006年)では、人材育成、高齢化社会への対応、母子・障害者保健福祉、社会的弱者(児童・女性)支援をテーマとし、福祉と保健サービスの連携を軸に、中央政府と地方政府との連携、官民の役割分担、コミュニティー活動などについて議論を行ってきた。ASEAN諸国からの参加者(2003〜2008年)は延べ204名にのぼる。
また、本ハイレベル会合は、ASEAN+3保健大臣会合及び社会福祉開発大臣会合を支える事業として関係国間で位置づけられている。特に、ハイレベル会合への参加を契機として、保健と福祉という異なるセクタ間の協調強化に向けた取り組みがASEAN諸国で活発になっているところである。累次のハイレベル会合の結果は上記ASEAN+3会合に報告され、ASEAN側より、日本のイニシアティブに謝意が表されるとともに、今後も保健と福祉サービスの連携に焦点を当てて会合を継続してほしいとの意向が示されている。また、2008年10月の第3回ASEAN+3保健大臣会合において今回の会合の結果を報告する予定である。