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8.母子保健対策について


(1) 新たな小児慢性特定疾患治療研究事業の確立について
 改正の基本的考え方
 今般の小児慢性特定疾患の見直しは、制度創設以来、四半世紀が経ち、事業を取り巻く状況も大きく変化していることから、そのあり方に関する専門家、患者代表等による議論を踏まえ、法整備を含めた制度の改善・重点化を行い、安定的な制度として新たな小児慢性特定疾患対策の確立を図るものである。
 具体的には、児童福祉法に本事業の根拠規定を整備した上で、
(1) 現行の小児慢性特定疾患治療研究事業の対象疾患を基本として医学的知見に基づく対象疾患の追加、除外を行うとともに、対象を重症者に重点化する
(2) これまで疾患により取扱いが異なっていた通院に対する給付について、疾患にかかわらず対象とする
(3) 18歳到達後20歳到達までの給付についても、疾患にかかわらず対象とする
(4) 低所得者層に配慮しつつ、無理のない範囲の自己負担を導入する
こととし、平成17年4月1日から施行することとした。

 疾患追加・除外、認定基準
 今般、新たな小児慢性特定疾患対策を確立するに当たり、従来の小児慢性特定疾患治療研究事業の対象疾患等について、以下の見直しを行うこととした。
(1) 対象疾患について、従来の小児慢性特定疾患治療研究事業の対象疾患を基本としつつ、治療方法の確立及び普及が強く求められる慢性疾患を追加するとともに、医療技術の進歩等により現在では急性疾患に分類される疾患等を除外することとした。
(2) 疾患の特異性に応じ、症状、検査値、治療内容等による一定の基準を設け、対象患者の重点化を図ることとした。ただし、症状が悪化し再度当該基準に該当するに至った者については対象とする。(具体的な基準は告示で定める。)
(3) 従来1か月未満の入院が対象となっていなかった疾患について、入院期間の制限を撤廃することとした。
 こうした見直しにより、本事業の対象となる疾患等については、「児童福祉法第21条の9の2の規定に基づき厚生労働大臣が定める慢性疾患及び当該疾患の状態(厚生労働省告示)」によることとした。(なお、追加・除外疾患については資料24参照)

 対象年齢
 現在の小児慢性特定疾患治療研究事業は、原則として18歳未満の児童を対象としているが、一部の疾患については、18歳になる前に既に事業の対象となっており引き続き治療が必要な者については、20歳未満まで延長して事業の対象としているところである。
 18歳到達後20歳到達までの給付についても、疾患にかかわらず対象とする。

 費用徴収
 小児慢性特定疾患治療研究事業については、安定的な制度となるよう法整備を図るとともに、制度内容の改善・重点化を図ることとしている。
 本制度の改善・重点化を行うに当たり、他の公費負担医療との均衡という観点から無理のない範囲の患者負担を導入することとした。
 患者負担の水準については、他の公費負担医療との均衡や子育て家庭の家計への負担を考慮し、低所得者に十分な配慮を行うこととした。
 具体的には、保護者の所得にもよるが、1か月当たり最高でも外来5,750円、入院では11,500円とした。
 また、住民税非課税世帯の場合は患者負担なし、所得税非課税世帯は外来1,100円、入院で2,200円とするなど、低所得者に十分配慮した患者負担とした。
 さらに、一定の重症者認定基準に該当する者については、患者負担を免除することとした。

 事業評価
 都道府県知事等は、連名簿等を活用し、本事業の実施状況について、定期的に調査・分析するように努めるものとし、国は、本事業の効果的運用のために実施状況等の評価を行うこととした。

 福祉サービス
 本事業の見直しと併せ、福祉サービスとして患者に対する日常生活用具の支給を行うとともに、患者を養育していた親による助言及び相談等の体制を充実することとしている。具体的には以下のとおり。
(1) 小児慢性特定疾患児日常生活用具給付事業
車いす、特殊寝台、入浴補助用具等13品目の日常生活用具について給付する事業を実施する(費用負担あり)。
  実施主体………市町村(国庫補助率1/2)
(2) 療育指導費の拡大
 小児慢性特定疾患児等を養育する親等の日常生活を送る上での不安や悩みを軽減するため、小児慢性特定疾患児等を養育していた者等による相談事業を実施する。
  実施主体………都道府県・政令市(国庫補助率1/2)

(2)健やか親子21の推進について(中間評価を含む)
 健やか親子21について
 我が国の母子保健は、20世紀中の取組の成果として既に世界最高水準にあるが、妊産婦死亡や乳幼児の事故死など残された課題があり、思春期における健康問題や親子の心の問題の拡大、小児医療水準の確保など新たな課題も存在している。
 「健やか親子21」は、このような、子どもと親の健康の課題を整理し、21世紀の母子保健の取組の方向性と目標(値)を示して、関係機関・団体が一体となってこの目標達成に取り組む国民運動計画である。その達成のためには、国民をはじめ、教育・医療・保健・福祉・労働・警察等の関係者、関係機関・団体がそれぞれの立場から寄与することが重要である。
 具体的には、効果的な調整・推進を図り、関係機関・団体が一体となって各種取組を進められることを目的として、平成13年4月に「健やか親子21推進協議会」が設立され、平成16年12月現在で75団体が参加している。
 また、平成13年5月から公式ホームページを開設し、健やか親子21に関する資料や母子保健・医療の関連データとともに、各地方公共団体・関係団体の取組状況などを掲載している。更に、健やか親子21全国大会や厚生労働科学研究子ども家庭総合研究推進事業公開シンポジウムなどの開催により、運動の推進ならびに普及啓発を図っている。
 健やか親子21の計画の対象期間は10年間であり、中間の年となる2005年(平成17年)には、必要な見直しを行うこととしており、目標の達成状況や取組状況を評価し、後半5年間において、より効果的な推進ができるよう検討を行う予定である。

「健やか親子21」の概要
21世紀の母子保健の主たる課題を提示
(1)思春期の保健対策の強化と健康教育の推進
(2)妊娠・出産に関する安全性と快適さの確保と不妊への支援
(3)小児保健医療水準を維持・向上させるための環境整備
(4)子どもの心の安らかな発達の促進と育児不安の軽減
各課題に関する2010年の目標(値)を提示
関係機関・団体等による国民運動の展開方法を具体的に提示

 地方自治体が策定する行動計画および子ども・子育て応援プランにおける健やか親子21の推進について
 平成15年7月、次世代育成支援対策推進法が成立し、16年度中に行動計画の策定が全ての都道府県と市町村に義務づけられた。この行動計画は、現行の児童育成計画と母子保健計画の推進状況や推進に係る課題の分析を行い、その結果を活用していくことが必要であるとしていることから、児童福祉担当部局と母子保健担当部局との協働、教育委員会をはじめとする行政各部局と住民の参画のもとに策定が進められている。
 市町村においては平成8年5月1日の旧厚生省児童家庭局母子保健課長通知に基づき母子保健計画が策定され、さらに見直しが行われているが、市町村行動計画は母子保健計画を包含しているものであり、母子保健計画を市町村行動計画の一部として組み入れることが適当である。
 行動計画策定指針(平成15年8月22日 関係7大臣連名告示)においては、「計画の策定に当たっては、21世紀における母子保健の国民運動計画である『健やか親子21』の趣旨を踏まえたものとすることが望ましい。」とされていることから、今後も健やか親子21が推進されるような行動計画の策定をお願いしたい。
 さらに、平成16年12月に策定された「子ども・子育て応援プラン」においても、健やか親子21の趣旨を踏まえた内容をプランに盛り込んだところであるので、積極的に健やか親子21を推進するよう努めていただきたい。

(3) 食育の推進について
 「食育」の推進については、「子ども・子育て応援プラン」にも盛り込まれているところであり、地域特性や子どもの発達段階に応じた取組の充実を図るため、地域においては食育推進連絡会を設置するなど関係機関の連携による取組の一層の推進を図っていただきたい。なお、従来、「食育等推進事業」として都道府県・市町村に対する補助を行ってきたが、本事業は、平成17年度より「次世代育成支援対策交付金」に移行されることとなったのでご留意いただきたい。
 国においては、昨年2月に検討会報告書として「楽しく食べる子どもに〜食からはじまる健やかガイド〜」を作成し、11月にはその普及啓発の一環として食育シンポジウムを開催したところであり、今後は、低出生体重児の増加等を踏まえ、妊産婦の食生活支援方策に関する検討を進め、今秋にはとりまとめを行う予定である。

(4) 不妊治療に対する支援
 不妊に悩む方々に的確な情報を提供し、専門的な相談に応じられる体制を地域において整備することは重要であることから、従来より、「不妊専門相談センター事業」により、相談体制の推進に努めてきたところである。
 さらに、平成16年度より、次世代育成支援の一環として、配偶者間の体外受精及び顕微授精に要する費用の一部を助成する「特定不妊治療費助成事業」を創設し、相談事業と併せて総合的な支援対策を講ずることとしたところであり、今後とも、不妊治療に対する支援については、効率的・効果的な実施に努めていただきたい。
 なお、両事業については、各自治体における子どもの健康の確保と母子保健医療体制等の一層の充実が図られるよう、従来の周産期医療ネットワークの整備事業、不妊に対する支援事業等を再編・整理し、補助基準の緩和等を図ることにより、各自治体の主体的かつ弾力的な事業運営を可能とすることを目的として、平成17年度より創設される「母子保健医療対策等総合支援事業」に移行されることとなったのでご留意いただきたい。


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