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5.配偶者からの暴力(ドメスティック・バイオレンス)対策等について
 「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」(以下「DV防止法」という。)については、平成13年4月6日に成立、平成14年4月1日に全面施行されたところであるが、今般、同法の見直しが行われ、平成16年12月2日に「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律の一部を改正する法律」(以下、改正DV防止法という。)が施行された。
 改正DV防止法においては、(1)「配偶者からの暴力」の定義の拡大、(2)保護命令制度の拡充、(3)市町村における配偶者暴力相談支援センターの業務の実施、(4)被害者の自立支援の明確化等が規定されたところである。
 また、同法において、主務大臣は、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護のための施策に関する基本的な方針(以下、基本方針という。)を定めなければならないこと、都道府県は、基本方針に即して、当該都道府県における配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護のための施策の実施に関する基本的な計画(以下、基本計画という。)を定めなければならないこととされている。基本方針については、平成16年12月2日に告示されたところであるが、都道府県においては、基本方針に即し、各種施策の充実と取組の強化を盛り込んだ基本計画を策定していただくようお願いする。
 平成15年度における婦人相談所及び婦人相談員の受けた来所による相談実人員を見ると、74,564人(前年度72,691人)となっており、このうち、夫等の暴力を主訴とする者が19,103人(前年度17,611人)で相談理由の25.6%(前年度24.2%)を占めており、配偶者からの暴力による相談件数・割合が増加している。
 こうしたことから、関係機関との連携、研修の充実等を含め、配偶者からの暴力の被害者に対する適切な保護・支援の取組について一層の推進に努めていただくようお願いする。


(1) DV防止法改正後の婦人相談所等における対応について
 婦人相談所等における体制の強化について
 DV対策については、休日・夜間電話相談事業、婦人相談所職員等への専門研修、婦人相談所(一時保護所)及び婦人保護施設への心理療法担当職員の配置等様々な事業を実施し、被害者の保護・支援体制の充実、強化を図っているところである。
 今般、DV防止法が改正され、国及び地方公共団体の責務、基本方針及び基本計画の策定、被害者の国籍、障害の有無を問わず、人権を尊重すべきこと等が規定されるなど、被害者の保護・支援のための施策のさらなる充実・強化が求められているところである。
 被害者の保護・支援の中核的な役割を担う婦人相談所においては、今後とも、DV対策の充実を図るため、被害者への万全の対応及び婦人相談所等の体制整備について、一層の取組をお願いする。

 婦人相談所職員等への専門研修の実施について
 被害者が抱えている問題は複雑かつ深刻であり、相談・保護を必要とする被害者も増加しているが、心身ともに傷ついている被害者が、職務関係者からの言動により重ねて精神的被害を受ける「二次被害」の問題が指摘され、他方、相談に当たる婦人相談員等の精神的、心理的負担の増大、深刻化が指摘されているところである。
 婦人相談所、婦人保護施設、福祉事務所等においては、被害者の相談等に従事する職員に対し、DVに関する特性の理解や法律に関する研修を実施しているところであるが、こうした実情を踏まえ、さらなる研修の充実について積極的な取組をお願いする。

 婦人相談所の職員の配置について
 婦人相談所の経常経費は社会福祉事業費として交付税措置されており、婦人相談所の職員については、標準団体で所長、判定員など7名分の給与費等が計上されている。改正DV防止法の施行など婦人相談事業の高度、専門化を踏まえた婦人相談所職員の適正な配置をお願いする。

(2) 関係機関との連携について
 二次被害防止についての周知徹底
 被害者の保護・支援に当たっては、相談の受付、保護、自立支援に向けた福祉、医療、保健、学校、警察、司法等の関係機関の緊密な連携・協力が必要である。
 二次被害の問題については、その防止に努めるとともに、被害者の人権等に配慮して対応するよう、平成16年12月28日付で通知を発出したところであるが、各種の相談窓口等で被害者と接する可能性のある職員においても、二次被害の防止と人権等に配慮した対応に努めるよう、関係機関との連携を図るための会議等の場を通じて、周知徹底を図っていただくようお願いする。

 児童虐待の定義拡大に伴う児童相談所との連携の強化
 平成16年10月1日に「児童虐待の防止等に関する法律の一部を改正する法律」が施行され、児童が同居する家庭における配偶者からの暴力その他の児童に著しい心理的外傷を与える言動を行うことは児童虐待に当たることが明確化されるとともに、児童虐待を受けたと思われる児童を発見した者は、速やかにこれを児童相談所等に通告しなければならないとされたところである。これを踏まえ、被害者及びその同伴する子どもに対して適切な支援の措置を講ずるために、児童相談所と緊密な連携を図っていただくようお願いする。

 広域的対応についてのルールに則った自治体間連携
 また、広域措置により被害者の保護・支援を図る事例も増加しており、都道府県域を越えた広域的な連携が必要である。広域的な対応については、対応の内容、費用負担、連絡・調整等、その取り扱いについて、平成16年12月28日付で通知を発出したところであり、こうしたルールに則った自治体間の適切な連携など、ネットワークの整備について積極的な対応をお願いする。

(3) 人身取引について
 人身取引問題の経緯について
 米国務省が2004年(平成16年)6月に発表した「人身取引報告書」において、日本は第2分類のさらに特別監視リスト(基準を満たしていないが、努力をし、基準を満たすことを約束している国)と位置づけられた。
 人身取引議定書の批准も課題となっている中で、この問題に総合的・包括的な対策を講ずるため、平成16年4月、「人身取引に関する関係省庁連絡会議」が設置され、12月に「人身取引対策行動計画」が取りまとめられたところである。

 婦人相談所における一時保護について
 国際世論及び人身取引議定書の趣旨にかんがみ、これら被害者を不法残留者として、警察の留置場や入国管理局の収容所に収監・収容するのではなく、「被害者」として保護・ケアを適切に行う場所が必要である。
 婦人相談所が一時保護を行う対象者に、国籍要件は課しておらず、当然、これら人身取引被害者も保護の対象となると考えられる。
 このため、平成16年8月16日付で、被害者に対しては一時保護等、適切な支援を行うこと、警察署等関係機関との連携を図ることなど、婦人相談所における人身取引被害者への対応の強化について通知を発出したところである。本通知については、政府全体として人身取引対策に取り組んできた経緯の中で示した方針であることにも留意の上、人身取引被害者への適切な対応が行われるようお願いする。なお、実施に当たって不明な点等については、厚生労働省に相談されたい。

 一時保護委託の実施について
 平成17年度より、人身取引被害者の保護を促進するため、婦人相談所からの委託により、婦人保護施設、民間シェルター等において人身取引被害者の一時保護を実施することとし、そのために必要な予算を確保したので、ご了知いただくとともに、人身取引被害者に対する適切な保護をお願いする。


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