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(2)保険者指導、事業者指導について

   保険者(市町村)指導について

 介護保険制度が施行されて4年が経過する状況下において、保険者(市町村)の介護保険事務処理については、これまでの指導の成果もあって概ね定着してきていると思われるので、これまで国の指導指針で示してきた毎年1回の保険者に対する実地指導については、緩和する方向で指導指針の改正をする予定としている。
 市町村の16年度後半からの課題は第3期計画へ向けた諸準備であるので、そのためには、これまでの給付データ、要介護認定データ、ケアプラン評価分析等を通して、制度実施状況の分析評価を行うことが求められる。
 ついては、そのような取り組みが不十分と思われる保険者などを対象に重点的に技術的助言を行うようお願いする。
 また、制度実施状況の分析評価と併せ、上記(1)で示した国民健康保険連合会において新たに整備する各種の情報や介護費用適正化緊急対策事業等を有効に活用し、給付の適正化に保険者も積極的に取り組むよう指導をお願いする。
 なお、低所得者の保険料に関し独自の施策を講じている保険者のうち、(1)保険料の全額免除、(2)資産状況等を把握しない一律の減免、(3)保険料減免分に関する一般財源の繰り入れ、或いはこれらと同等の結果となる取扱いをしている保険者がみられるが、国民皆で制度を支える介護保険法の本旨に照らすと適切でないので、これらの方法により保険料の減免を行っている保険者に対しては今後とも指導方お願いしたい。
 また、利用料の減免についても、保険者の独自の判断により負担能力に関係なく全額を免除し、又は一律に軽減している保険者が認められる。介護保険の利用者負担は負担の公平性や適切なコスト意識の喚起の観点から設けられたものであるので、制度の趣旨を踏まえ節度を持った対応について指導方お願いしたい。

   指定事業所に対する適切な指導について

 平成12年4月の制度発足以来、介護サービス利用者の増大に伴い指定事業所(介護保険施設を含む。)数も増加してきているが、一方では、不適切な介護サービスの提供や不正な介護給付費の請求などを行ったため、指定の取消処分を受ける指定事業所も増加してきていることは誠に遺憾である。
 指定取消の対象等となった事業所数は、平成13年度30事業所、平成14年度90事業所、平成15年4月〜12月の9カ月間で74事業所、制度施行以来これまで33都道府県において201事業所の不正行為等が明らかになっているが、これらは氷山の一角であるとの危惧を指摘する向きもあることから、適切な事業運営の確保に向けた取り組みが切に求められているところである。
 したがって、このような状況認識に立って、今後の指導監査に当たっては、特に次の点に留意して実施されるようお願いしたい。

 (ア)指定取消事例の傾向に対応した指導等
  ○  制度実施以来の指定取消事例を概観すると、次のような傾向がみられる。
 @  サービス種類別にみると、訪問介護事業、居宅介護支援事業、通所介護事業、福祉用具貸与事業の順となっている。
 また、それを開設者の法人種別にみると、株式会社等及び特定非営利活動法人が行っている事業所の割合が他の法人種別に比して著しく高い傾向にある。
 A  主たる取消事由をみると、訪問介護事業の場合は「架空・水増し」、「無資格者サービス」、「名義借り指定申請」、「人員基準違反」、「同居家族へのサービス」などが多く、居宅介護支援事業の場合は「無資格者ケアプラン」、「架空ケアプラン」、「名義借り指定申請」などが多い傾向にある。
 なお、痴呆対応型共同生活介護事業(痴呆性グループホーム)においては、虐待とも言える極めて不適切なケアを事由とする取消例が発生している。
 B  不正不当行為が発覚した端緒は、事業所の職員や元職員等からの相談や苦情などの情報に基づくものが半数近くを占めている状況にある。
  ○  ついては、今後の事業所指導に当たっては、上記のような傾向を踏まえた上で実地指導の対象事業所を選定するとともに、指導内容を重点化した取り組みをお願いしたい。
  ○  また、不正請求や不適切なサービス提供を行っている事業所を排除するためには、事業所の職員・元職員や利用者・家族からの声を真摯に受け止める姿勢が重要であり、そのような情報提供を受け止める仕組みの構築が不可欠であるので、例えば、メール、FAX、電話などによる情報提供の受け皿として「介護適正化110番」のような窓口を設けていただくことを検討中であり、全国課長会議において具体案を提示する予定である。

 (イ)平成16年度における重点指導事項等
  ○  事業所に対する実地指導に当たっては、(1)介護報酬算定に関する告示を適切に理解した上、加算・減算等の基準に沿った介護報酬の請求であるか、(2)人員、設備及び運営に関する基準に定める職員の資格及び員数を満たしているか、(3)有資格者により行うべきサービスが無資格者により行われていないか、(4)真にサービスを提供したことを明らかにした書類が整理されているか、(5)その他、利用者が支払うべき
 1割相当額の利用料を徴収しているか、事業運営の透明性が確保されているか、などについて重点的にチェックする方向での取り組みをお願いしたい。
  ○  また、一方、利用者の尊厳を損なうサービス提供が行われたこと等に起因して指定取消となった痴呆性グループホームはこれまでで6事業所であるが、このようなサービス形態は外部の目が届きにくい環境でサービス提供が行われるため、虐待や利用者の尊厳を損なうようなサービス提供が行われている事例など極めて悪質なものも含まれている。
 当該事業においては管理者等の研修受講やサービス評価(自己評価、外部評価)、情報公開などを義務付けること等によりサービスの質の確保に向けた取り組みが行われているところであるが、そもそも経営者や管理者に利用者の尊厳を保持する発想がなければ、比較的固定的な少人数の人間関係の中でサービス提供が行われることから、不適切なサービス提供や虐待行為等が行われる危険性が高いものと危惧されているところである。
 指定取消処分を受けた事例がたとえ少数であっても、急増している痴呆性グループホーム全体に与えるマイナスイメージは多大であることに鑑み、事業所が所在する保険者とも連携し、16年度中に原則として管内全ての痴呆性グループホームに対して、介護保険法第23条又は24条に基づくいずれかの調査等を実施するようお願いする。

 (ウ)指導体制の効率的な運用
  ○  要介護認定者の増大に伴い事業者は増加しているが、一方、都道府県の指導体制の整備には一定の制約を受けざるを得ない状況にあるものの、引き続き管内の事業者動向等を見据えて必要な体制整備等にご努力をお願いする。
  ○  限られた体制の中で国民の信頼に応えていくためには、介護保険法の視点に立った事業者及び保険者への指導並びに老人福祉法及び社会福祉法の視点に立った老人福祉施設への指導について、状況に応じて弾力的に対応することが必要である。
 ついては、より指定事業所への指導を重点的に行うことができるよう、国が示しているこれらに係る指導指針を見直すこととしているので、都道府県におかれても事案に即応した機動性ある指導体制の確保にご配意願いたい。

 (エ)関係者間の連携強化
  ○  適正な介護サービスが継続されるためには、事業者の自律意識を高める意味において、都道府県のみならず保険者、市民も関心を持って地域の社会資源を見守っていくことが重要であると考えられるので、管内保険者や関係団体の連携に努めていただきたい。
  ○  そのような観点に立って、保険者に対しては、給付分析を多方面から行いつつ、介護保険法第23条に基づく調査等の活用、また、介護相談員派遣事業の活用や老人クラブ等の高齢者自身による自助・互助グループの協力を求めながら、地域が一丸となって適切な制度運営に取り組んでいただくよう指導方お願いしたい。
  ○  また、介護保険制度においては、ケアマネジャーが極めて重要な役割を担っているので、いやしくも、ケアマネジャーが架空請求、無資格者によるサービス提供などの不正不当行為が行われていることを知りながらケアプランの作成や給付管理を行うことがないよう、研修会等などの機会を通じて徹底願いたい。
 併せて、不正不当行為の疑いがある場合は、都道府県の介護保険指導担当課に情報提供するよう周知徹底願いたい。



○各法人種別における指定取消等事業所数(サービス別)

【平成12年4月〜平成15年12月末まで】 (単位:事業所)
事業者区分 取消等事業所数(合計) (内訳)
訪問介護事業 訪問入浴介護事業 訪問看護事業 訪問リハビリテーション事業 居宅療養管理指導事業 通所介護事業 通所リハビリテーション事業 短期入所生活介護事業 短期入所療養介護事業 痴呆対応型共同生活介護事業 特定施設入所者生活介護事業 福祉用具貸与事業 居宅介護支援事業 介護老人福祉施設 介護老人保健施設 介護療養型医療施設
株式会社等
(株式会社28,有限会社45,合資会社2)
<75事業者>
128 64 2 3     8       5   11 35      
特定非営利活動法人 <10事業者>
22 5 1       2       1     13      
医療法人 <16事業者>
21     2   3 1 2           5     8
社会福祉法人 <14事業者>
18 4         2 1 1 1       9      
その他の法人(企業組合1) <1事業者>
1 1                              
地方公共団体 <0事業者>
0                                
その他(個人5) <5事業者>
11     2 2 2   4                 1
   計 <121事業者>
201 74 3 7 2 5 13 7 1 1 6   11 62     9



○各法人種別における指定取消等事業所 出現率(サービス別)

【平成12年4月〜平成15年12月末まで】
事業者区分 取消等事業所数出現率 (内訳)
訪問介護事業 訪問入浴介護事業 訪問看護事業 訪問リハビリテーション事業 居宅療養管理指導事業 通所介護事業 通所リハビリテーション事業 短期入所生活介護事業 短期入所療養介護事業 痴呆対応型共同生活介護事業 特定施設入所者生活介護事業 福祉用具貸与事業 居宅介護支援事業 介護老人福祉施設 介護老人保健施設 介護療養型医療施設
株式会社等 0.45% 0.69% 0.22% 0.52%     0.31%       0.31%   0.22% 0.50%      
特定非営利活動法人 1.00% 0.58% 4.17%       0.40%       0.43%     2.62%      
医療法人 0.07%     0.05%   0.07% 0.10% 0.05%           0.10%     0.33%
社会福祉法人 0.05% 0.08%         0.03% 0.20% 0.02% 0.23%       0.12%      
その他の法人 0.01% 0.08%                              
地方公共団体                                  
その他 0.07%     0.14% 0.39% 0.02%   0.73%                 0.17%
0.16% 0.40% 0.11% 0.08% 0.10% 0.03% 0.10% 0.12% 0.02% 0.03% 0.16%   0.18% 0.25%     0.26%

 ※  上記は、指定取消等事業所数(平成15年12月末現在)を国保連へ介護給付費の請求があった事業所数(介護給付費実態調査月報-平成15年10月審査分-による)で除したものである。



訪問介護事業所、居宅介護支援事業所の主な取消事由等(15年12月分まで)

◎訪問介護事業所の主な取消等事由(重複該当あり)
不正の内容 具体例 該当数
架空、時間や回数の水増しによるサービス提供   38
無資格者によるサービス提供 無資格者が有資格者の名義を借りサービスを提供 25
虚偽の指定申請 勤務予定のないヘルパーを申請書に記載して指定を受けた 18
人員基準違反 サービス提供責任者が不在など 16
同居家族に対するサービス提供 利用者とヘルパーが同居家族であり、同居家族であるヘルパーが他のヘルパーの名義を使い請求 14
対象外サービスの提供 移送中の時間をサービス提供時間として請求 12
利用者負担の免除 利用者が支払うべき1割相当額を徴収していなかった 6
3級ヘルパーによるサービス提供 作為的に減算適用せずに請求 1
ケアマネ事業所に対する金銭供与 事業所の利用を斡旋依頼し金品を供与した 1

◎居宅介護支援事業所の主な取消等事由(重複該当あり)
不正の内容 具体例 該当数
無資格者によるケアプラン作成 ケアマネの名義を使い無資格者がケアプランを作成 32
架空、不適切なケアプランの作成 ヘルパー事業所等の架空請求を幇助するために架空のケアプランを作成していた 21
虚偽の指定申請 勤務予定のないケアマネの名前を借りて申請した 20
アセスメント、給付管理が未実施もしくは不適切 ヘルパー事業所等のサービス提供実績に基づき後付けで、ケアプラン・給付管理表を作成 11
人員基準違反 常勤のケアマネが不在など 10
要介護認定調査における無資格者の訪問調査 ケアマネでない者が訪問調査を実施していた 4
ヘルパー事業所からの金銭授受 ヘルパー事業所から紹介料的な金銭を受領した 1



介護保険事業所及び施設の都道府県別取消等事業所数(平成15年12月末現在)

介護保険事業所及び施設の都道府県別取消等事業所数(平成15年12月末現在)のグラフ

127件 (33都道府県 121事業者 192事業所 9施設
指定取消手続き中に廃止(辞退)届が提出された事例等を含む。)

都道府県 平成12年度 平成13年度 平成14年度 平成15年度
1 北海道 0 3 11 5 19
2 青森県 0 0 0 0 0
3 岩手県 0 0 0 0 0
4 宮城県 0 0 2 0 2
5 秋田県 0 0 0 0 0
6 山形県 0 0 0 0 0
7 福島県 1 0 0 0 1
8 茨城県 0 0 0 3 3
9 栃木県 1 0 3 3 7
10 群馬県 0 1 4 3 8
11 埼玉県 0 6 2 0 8
12 千葉県 0 0 1 0 1
13 東京都 0 3 4 3 10
14 神奈川県 0 0 1 0 1
15 新潟県 0 3 0 0 3
16 富山県 0 0 2 0 2
17 石川県 0 0 0 0 0
18 福井県 0 0 0 0 0
19 山梨県 0 0 0 0 0
20 長野県 0 0 0 0 0
21 岐阜県 0 0 3 2 5
22 静岡県 0 0 3 0 3
23 愛知県 0 0 3 1 4
24 三重県 0 4 0 1 5
25 滋賀県 0 0 1 3 4
26 京都府 0 3 30 9 42
27 大阪府 1 2 10 2 15
28 兵庫県 0 1 2 0 3
29 奈良県 0 0 2 0 2
30 和歌山県 1 1 0 2 4
31 鳥取県 0 0 0 0 0
32 島根県 0 0 0 0 0
33 岡山県 0 0 0 0 0
34 広島県 0 0 0 6 6
35 山口県 0 0 2 0 2
36 徳島県 0 0 0 1 1
37 香川県 0 0 2 2 4
38 愛媛県 0 0 0 0 0
39 高知県 0 0 0 0 0
40 福岡県 0 0 0 11 11
41 佐賀県 0 0 0 1 1
42 長崎県 0 3 0 1 4
43 熊本県 1 0 1 1 3
44 大分県 0 0 0 0 0
45 宮崎県 2 0 1 3 6
46 鹿児島県 0 0 0 10 10
47 沖縄県 0 0 0 1 1
7 30 90 74 201


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